【サンライズフェスティバル2021】「魔女として始まった女が、ひとりの女の子に立ち戻る物語」──「コードギアス 復活のルルーシュ」谷口悟朗監督&C.C.役のゆかなさんトークショーレポート

アニメ「コードギアス 復活のルルーシュ」上映イベントが2021年10月29日、東京・グランドシネマサンシャイン池袋にて開催され、上映後のトークショーに谷口悟朗監督、C.C.役のゆかなさんが登壇した。

本イベントは、2021年10月1日~31日に開催された上映イベント「サンライズフェスティバル2021 REGENERATION」の一環として行なわれた。

 

「コードギアス」は2006年に放送開始されたTVアニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」から始まったクロスメディアコンテンツシリーズ。日本が「エリア11」という名称で神聖ブリタニア帝国に支配されている架空の世界を舞台に、他者に命令を強制できる力“ギアス”を手に入れた青年、ルルーシュ・ランペルージを中心とした群像劇が描かれる。「コードギアス 復活のルルーシュ」は2019年2月に公開された劇場版最新作だ。

 

 

トーク冒頭に「復活のルルーシュ」が自身にとってどんな作品か聞かれると、谷口監督は「自分からするとやっと最終章を作れたという感覚です。そこに向けて協力してくれたサンライズのメンバーやバンダイナムコアーツの湯川さんをはじめとする人たちには感謝しています。この作品に関してはよくぞ撮らせてもらえたという感覚が大きかったので」と語った。ゆかなさんは「直前に資料をいただいて、『復活のルルーシュ』をやるということには正直びっくりしました。きっとまたルルーシュがたくさんしゃべるのかなと思って台本を見たら、全シリーズを足してもC.C.こんなに話したかなというぐらい台詞があったので、もうちょっと早く教えてほしかったです(笑)。作品としてはTVシリーズと劇場版があったうえでのひとつの着地点なのかなという感覚があって、すっきりした部分がありました。やれてよかったと思います」と語っていた。

 

谷口悟朗監督

「復活のルルーシュ」がC.C.がメインともいえる物語になったことについて谷口監督は、「最初に脚本のプロットをいくつか書いてもらったんですが、どれも違うわとなったんです。大きな流れとして、魔女として始まった女が、ひとりの女の子に立ち戻る物語だと規定しないと成立しないと感じたんです。それでも最初は、主人公はルルーシュだと考えていたんですが、コンテを切っているうちにこれはC.C.の話だなとなりました。ルルーシュはTVシリーズの終わりにされた問いかけに対するアンサーを出せればそれでいいのかなと」と語った。脚本制作は谷口監督と大河内一楼さんが中心となって行ない、どこまでファンムービーとしての要素を入れるか、といった点で悩みながらかなりの稿数を重ねたとのことだ。

 

台本についてゆかなさんはC.C.が主役という面を喜びつつも、C.C.のわがままが原因で起こったことについて責められる役回りだったことを「監督に謝ってほしい(笑)(ゆかなさん)」「いやだ!(監督)」とかけ合って、観客を笑わせていた。ひとりでルルーシュを支えながらがんばって、責任も引き受けるC.C.が、どんなに孤独でけなげかを力説するゆかなさんだった。

 

「復活のルルーシュ」のアフレコの裏話を尋ねられたゆかなさんは「(「復活のルルーシュ」の前の)劇場版3部作の1本目の時は10年ぶりだったので、あ、久しぶり!という感じがありました。いろいろな人の人生と過ごした時間があらわになったアフレコだったと思います。あの3部作があったおかげで『復活のルルーシュ』にちゃんと入れたので、あって助かりました」と語っていた。谷口監督は劇場版3部作の音声を新録するにあたって、一から物語を演じ直すのに、キャスト陣に歴戦の風格があることが悩みどころだったと明かしていた。「復活のルルーシュ」では最初は別録りの予定だった戸田恵子さんと一緒にアフレコができたそうで、ラストシーンを一緒に演じられたことをゆかなさんも喜んでいた。

 

ゆかなさん

TVアニメから15年たっての変化や作品への向き合い方を聞かれた谷口監督は「自分はテレビアニメに救われてきた人間なので、この作品で恩返しができたかなと思います。その後は自分の仕事の幅を広げるために、文化庁さんのお仕事を手伝ったり、海外向けの作品をやったりしています」と語ると、「計算外だったのはルルーシュ役の福山くんに声優養成所の講師に呼ばれたことです」と会場を笑わせた。講師就任にあたっては、ゆかなさんも監督から相談を受けたとのことだ。

 

ゆかなさんは15年前を振り返って、「私は15年前にこの作品に参加できてすごく楽しかったです。毎週みるみる痩せていく谷口監督を見ているのも楽しかったです(笑)。こんなに自分も他人も削ってつきつける人っていないので、あの時期あのテンションの谷口監督と作品が作れてすごくよかったです」とトーク。ジョークの中にも、当時監督が作品に全てを注いでいたストイックさが垣間見えた。谷口監督は作品の特性上意図的に役者さんを追いこんで演技を引き出していたことや、今のキャリアのキャスト陣と仕事をする時は別のやり方があることなど、踏みこんだ演技論、演出論についても語っていた。

 

トークでは、TVアニメ制作当時の過酷な制作環境に関する話題も。コンビニを改装したスタジオに近所の人が入ってきてしまうこともあったそうで、スタッフが「不審なおじいさんが犬を連れて入ってきた」というから調べてみたら、実は富野由悠季さんだった……という笑い話を明かす谷口監督だった。

 

トークショー後半にはファンからの質問コーナーも。家入レオさんの主題歌「この世界で」についての質問では、ゆかなさんは同曲が流れる旅のシーンについて、「あのシーンでC.C.は本当に途方に暮れていて、(通常ではない状態の)ルルーシュと2人でいるからこそ孤独。孤独ってひとりでいる時は感じなくて、他者がいるけれど交流がないからこそ感じるものだと思うんです。ひとりで背負って心のなかで戦って、背負って、さまよってきたけど、折れなかった」と振り返った。谷口監督は「家入さんとは女性側から見た問いかけや、置かれている状況を歌にしてほしいと話していたんです。(主題歌が流れるシーンを)ビジュアルコンテにしていたので、絵の尺などに合わせてこうしてほしいといった話をしながら詰めていきました」と語っていた。

 

最後のメッセージで谷口監督は「いろいろあった『コードギアス』シリーズも15周年を経て、いろいろな形で広がっていきそうでほっとしています。できるだけ多くの(新しい)スタッフさんに入ってもらうことで、可能性が広がればいいなと思っています。私たちが想定もしていなかったような掘り下げが生まれたりすると、このシリーズをやった意義があると思います。そのためにルルーシュについてはひとつの決着をつけて放流した部分もあるので。ここまでやってこられたのも、ひとえにファンの皆様の応援のおかげだと思いますので、引き続き応援いただけるとありがたいと思います。今日はありがとうございました」と感謝を伝えた。

 

ゆかなさんは15年間応援してくれた人がどれぐらいいるかを挙手で確認すると、「15年間たくさんのコンテンツがあって、いろんな価値観の変遷もあって、その中ずっと応援してくださって本当にありがとうございます。15年ってすごい年月だと思うんです。皆さんにもいろいろな変化や状況がある中で、ずーっと好きでいてくださるのがどれだけ貴重なことか。想像すると本当に本当に感謝の言葉しかありません。楽しみに待っていてくれた皆さんに、こういう形で新作や、広がった世界をお届けできる環境があることが本当に嬉しいです。これから(作品に)新しい風が入ってきて、新しい展開があるからこそ、C.C.やルルーシュ、ほかのキャラクターの今まで見たことがない表情や物語が見られる可能性があるんじゃないかと思います。それを形にする機会をくださったのはみなさんの力だと思います。これからもキャラクターたちの新しい表情を一緒に見て行けたらいいなと、私も楽しみにしています。応援してくれたら私たちもがんばれるから! スタッフさんたちが体重減らしながらやりたいなと思える、しんどいけれど立ち上がるかと思えるのも、皆さんの応援あればこそだと思うので、これからもあおっていきましょ!」と、ゆかなさんらしい言い回しでメッセージを伝えた。温かい拍手が巻きおこる中、トークショーは終了となった。

(取材・文・撮影/中里キリ)