2021年夏アニメの中間レビューでは話題の5作品をピックアップ! 「メロディ」連載のマンガが原作の「かげきしょうじょ!!」、「月刊コミックガーデン」「MAGCOMI」連載の異世界ファンタジー「迷宮ブラックカンパニー」、「ラブライブ!」シリーズ最新作「ラブライブ!スーパースター!!」、マッドハウスによるオリジナルアニメ「Sonny Boy -サニーボーイ-」、「スーパーアニメイズム」おしり枠とWebで放送・公開中の「俺、つしま」。5タイトルを紹介します。
大正時代に創設され、女性だけがステージに立つ紅華歌劇団。その人材育成を目的とする紅華歌劇音楽学校に入学した新入生たちの学校生活を描いた青春ストーリー。しなやかな手足と恵まれた体躯を持つ渡辺さらさは「ベルサイユのばら」のオスカル役を射止めるべく邁進していく。
テレビのアスペクト比が4:3のスタンダードサイズから16:9のビスタサイズに移行して十数年。身長178センチの少女を主人公に据えることは、横長のテレビ画面で縦長のキャラクターを収めるという矛盾への挑戦にほかならない。第1話のAパート、桜の木の前で写真を撮ろうと思ったさらさは、後に寮の同室になる奈良田愛にスマートフォンを手渡す。愛はスマホを縦に構えることで画面も縦に縁取られ、さらさの高身長が際立つレイアウトとなる。ポーズを決めるさらさの左手はフレームに収まり切らずにはみ出し、規格外である彼女の片鱗まで示される。トップスターへの道程を追いかけたくなる鮮やかな幕開けだ。
タワーマンションの最上階に住み、不労所得で暮らしていた主人公・二ノ宮キンジが、何の前触れもなく異世界に転移。ダンジョンで肉体労働に従事する羽目になるお仕事アニメだ。ファンタジー世界が舞台ではあるが、亜人やダンジョンが存在する以外の光景は現実とそこまで変わらず、巨大企業のビルが立っていたり、退勤時にタイムカードを押したりする割り切り方が清々しい。むしろ現実に近いがゆえに、労働者を不当に搾取する資本家への怒りがふつふつと湧いてくる。
そんなプロレタリアートに甘んじながらもキンジは悪知恵を働かせて一発逆転を狙う。第1話で巨大なドラゴンと対峙しながら、相手より高い場所に立って飼い慣らしてしまうのも、彼の上昇志向の現れに映る。ダンジョンの奥深くに潜り、成り上がりを目指すキンジの向上心に学びたい。
作詞家の阿久悠は、音を周囲と共有できないヘッドホンを嫌い、「歌が空を飛ばなくなった」と評したが、本作は街中でふと聞こえてくる歌声が印象に残る。人前では歌えない澁谷かのんは登校中にひとりで熱唱し、唐可可(タンクゥクゥ)のマンションからはボイストレーニングの声が漏れ、嵐千砂都は道すがらに即席ラップを刻み、スマホには子役時代の平安名すみれが嫌々披露したグソクムシの歌が映される……。まるで本作のサブタイトルと同じように、歌も世界に溶け込んでいるかのようだ。
本編には多彩なスクールアイドルたちが登場するが、上海からやってきた唐可可の行動力がひときわ目立つ。スクールアイドル部の設立を認められず自主退学しようとしたり、部活動の自由を求めて署名運動を買って出たりと、アグレッシブな姿勢に惹かれてしまう。NHK Eテレの放送ではミニコーナー「リエラのうた」をオンエア。絵本のようなタッチで描かれた短編アニメも楽しめ、「みんなのうた」を彷彿とさせる仕上がりとなった。
校舎ごと異次元に閉じ込められてしまった中学生が漂流する日々を送るオリジナルアニメ。36人の生徒たちにはそれぞれ不思議な能力が備わっているが、その効果は必要以上に説明されず、映像やセリフから推測するしかない。さらにOPはなくEDはエンドロールのみ、劇伴もほとんど流れないストイックな作りで、余計なものを削ぎ落とした先にある面白さを味わえる。
とくに第1話では校舎の外を黒で塗り潰しているため、目は自然と動くもののほうへ向かう。完全な闇の中でキャラクターが飛ぶシーンと、その結末は爽快感にあふれており、黒の表現に長けた有機ELテレビを買ってよかったと思わされるほど。毎回予想を裏切るストーリーもオリジナルならでは。今期もっとも攻めたタイトルの行方に要注目だ。
Twitter発の猫マンガをショートアニメ化。立派な体格の野良猫・つしまが猫好きのおじいちゃんに拾われて、ほのぼのかつシュールな日常を過ごす。つしま役は大塚明夫が担当。ダンディな役で知られるが、ライオン、パンダ、ニワトリ、カピバラ、マレーバクなど、数々の動物を演じた経験を持ち、その手腕は本作でも健在。ふてぶてしくも憎めないつしまの愛らしさを引き出している。
おじいちゃん役は数々の少年役を演じてきた田中真弓。そんなベテラン2人の軽快なかけ合いが気持ちいい。アニメ化にあたっては、テレビアニメとWebアニメを異なるスタッフが手がけ、同時期に発表するという珍しい手法を採用。テレビ版はつしまのキジトラの柄がリアルに表現され、ハードボイルドな魅力がたっぷり。Web版ではデフォルメタッチで、ときにはおじいちゃんに思いっきり甘えるキュートなつしまを堪能できる。
(文・高橋克則)
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