個人クリエイターと共同で小さなプラモデルを創りだす! 「キャビコ」ブランドを展開する金型メーカー、エムアイモルデが製品づくりの舞台裏を明かす【ホビー業界インサイド第70回】

キャビコというブランドから発売されている低価格の小さなプラモデル、「チョイプラ」シリーズをご存じだろうか? 最近では「装甲騎兵ボトムズ」とコラボ、主役ロボのスコープドッグが独特のアレンジで発売されたので、それで知った人も多いのではないだろうか。
「チョイプラ」シリーズの面白さは、既存のメディアに頼らないロボット・キャラクターのオリジナリティ、個性豊かな新進クリエイターとのコラボ、それらのエッセンスを小さなランナーにギュッと込めた充実感にある。
そんなキャビコのプラモデルを企画・製造しているのは、静岡県の金型メーカー、エムアイモルデ。同社の代表取締役、宮城島俊之さんにお話をうかがった。

自動車パーツの金型製造業から、大河原邦男氏デザインのロボットプラモ製造へ

── エムアイモルデさんは、本業は金型製造メーカーだと聞いているのですが?

宮城島 はい、お客様から注文をもらって、金型を設計/製造して納める仕事です。金型をお客様に納めて終わりますので、「型売り」とも言います。主に自動車の内装部品で、プラスチック製パーツ用の金型を専門につくっています。私の父が1982年に創業した会社で、最初の2年間は金型はつくらず、金型設計のみを行っていたそうです。今年で創業39年になります。

── つくっているのは、インジェクション用の金型ですよね?

宮城島 はいそうです。10年前、リーマンショックのあおりで自動車関係だけで事業を継続することが難しいと考え、異業種への進出を考えていました。7~8年前、知人の金型業者からの紹介で、ロボット物のプラモデルの金型を受注しはじめました。ところが、自動車部品の金型とプラモデルの金型とでは、工程も時間の使い方も、まったく違いました。自動車部品のルーチンで金型製造する場合、2つの金型を同時につくり始めても、あるいは1週間ズレてスタートしても、同じルーチンなので調整は容易です。そこへプラモデルの金型の仕事が入ってくると、要求される納期が自動車部品と比べて極端に短いので、今までのルーチンの中では対応できないのです。車部品とプラモデルの両立が難しいので、プラモデルの仕事はフェードアウトしてしまいました。しかし、かなり部品点数の多い精密なキットも任されていましたから、技術力は身につきました。

── そのときの技術が、「チョイプラ」シリーズにも生かされているわけですか?

宮城島 「チヨイプラ」第1弾の発売は、2018年でした。大河原邦男さんのオリジナルデザインである「イグザイン」を模型化したのですが、その経緯をお話しします。JMRP(全日本製造業活性化計画)という組織が、イグザインの商標管理をしています。イグザインのデザインを製造業者が使う場合、技術力をアピールするだけなら、ロイヤリティなしで使わせてもらえます。商品として販売する場合は、ロイヤリティを支払います。どこの製造業者も、自社製品はつくりたい。しかし、いいアイテムが見つからない。我々は「あの大河原さんのデザインであれば、ぜひともプラモデル化したい」と思い、イグザインを模型化させてもらうことにしました。ただ、いきなりプラモデルにするのではなく、まずはレジン製のガレージキットとして販売しました。無名のメーカーである我々が、大河原さんのデザインをお借りして全高20cmのガレージキットにしたわけですが、ワンダーフェスティバルで8個しか売れませんでした。それでも健闘したほうだと、周囲からは反響をいただけましたが……。
そこで次は、ひとつの金型に収まるようなオマケ感覚のプラモデルとして、イグザインを模型化することにしました。お手軽に数分程度で組み立てられる少パーツ数のプラモデルなら、投資もおさえられ、販売価格を低くすることができるからです。その時点では、まだキャビコというブランド名もチョイプラというシリーズ名も決まっていなくて、サイズだけ決めてつくり始めました。

── 金型の技術力をアピールしたいなら、何もロボットのプラモデルである必要はなかったのではありませんか?

宮城島 それは、私が早朝から模型店に並んだガンプラブームの直撃世代だからです。もちろんロボットが好き、大河原さんのデザインが好きなので、イグザインを見た瞬間にプラモデル化しようと決めてしまいました。