昨年は、「鬼滅の刃」「約束のネバーランド」などブームを巻き起こした作品の完結も話題になった週刊少年ジャンプ(以下「少年ジャンプ」)。その新たな看板作品のひとつとして注目されているのが、2020年10月よりTVアニメが放送中の「呪術廻戦」だ。
今回は、「呪術廻戦」でオカルト×バトル要素を持つ作品の魅力に目覚めた読者の皆さんのために、これまでアニメ化されたオカルト×バトルな「少年ジャンプ」の名作を、アキバ総研独自の視点でレコメンド!
新型コロナウイルスという目に見えない病魔によって、日々の生活がリアルに脅かされているご時世だが、悪霊や悪魔など得体のしれない存在と戦うヒーローたちの姿を見れば、免疫力がつくこと間違いなし!?
幽☆遊☆白書
連載開始から30年を経てもなお舞台化や企業コラボが行われ、最近はなんと実写ドラマ化も発表されるなど、もはや説明の必要がないほど有名な大ヒット作だが、とりわけ大きな話題を呼んだのが、1992~1995年に放送され最高視聴率20%以上を記録したTVアニメ版だろう。
もともと「ジャンプ黄金期」の一角を支えた作品だったが、アニメ版で人気キャラ・飛影を檜山修之さんが、蔵馬を緒方恵美さんが演じたことで、その人気は不動のものとなったと言っても過言ではない。
物語は、事故で死亡して幽霊となった少年・浦飯幽助が数々の試練を乗り越えて蘇生。その後、霊界探偵として妖怪たちと戦うというアクション活劇だ。
子どもから大人まで男女ともに人気を集めた理由は、まず仲間とともにトーナメントに挑み、強い敵を倒していくというわかりやすさ。そして、幽助や桑原、蔵馬に飛影といった個性的なキャラクターたちだ。なかでも蔵馬と飛影は、作者の富樫義博先生に「このふたりが主人公」と言わしめるほど圧倒的人気を誇る。
蔵馬はそのうるわしいビジュアルと、「綺麗な薔薇には棘があるのさ」といったキザな台詞まわしが女子 に大ヒット。クールな飛影は、「邪眼」や、腕に黒龍を封じるといった要素を子どもたちがこぞって真似をしたことで、「中二病」ブームを作ったきっかけとも言われた。態度はトゲトゲしているのに仲間想いな「ツンデレ感」も、特に女子にはたまらないようだ。
その「少年ジャンプ」での人気を受けて、1992にTVアニメ化。上述した人気声優陣のハマりっぷりなどのほかに、アニメ版「幽☆遊☆白書」を語るうえで外せないのがアニメオリジナル要素だろう。特に原作で駆け足だった「魔界トーナメント編」がバトルシーンを増やしてじっくり描かれたこと、原作と違う展開であってもアニメが最終回まできちんと描かれたことは、ファンにとって満足度が高かったようだ。
また、アニメでは、最強の敵である戸愚呂兄弟チームの大将・左京が、桑原の姉・静流にライターを渡すシーンを追加。言葉ではなく目で恋愛感情を匂わせる様子が視聴者をドキドキさせ、アニメ版で好きなオリジナルシーンとしてここをあげる人も多い。
これらの点からアニメ「幽☆遊☆白書」は、オリジナル要素を多めに取り入れたアニメとしては、比較的高評価を得ていたと言えるのではないだろうか。誰もがわくわくできる王道のバトルストーリー、声優陣によって魅力が一層増したキャラクターたちのかけ合い、最終回での感動、それらを“アニメ単体”で存分に楽しむことができる。
BLEACH
2004年~2012年まで放送され、「NARUTO」に並ぶ長期アニメとなったのが「BLEACH」。霊感体質の高校生・黒崎一護が死神の朽木ルキアと出会ったのをきっかけに、悪霊たちとの戦いに身を投じるバトルアクションだ。
「死神代行編」から始まったアニメは、実に全366話におよぶ。特に人気が爆発したのは、ルキアを救出するため一護が死神たちの世界へ行く「尸魂界(ソウル・ソサエティ)篇」だろう。にこにこしたやさしいキャラかと思いきや、実はラスボスだった藍染惣右介や、女性ファンの多い市丸ギンなど、魅力的な死神が沢山登場し、息もつかせぬバトルが続く。常時クライマックスといってもよい盛り上がりを見せた。
また、アニメ版は、「バウント篇」「斬魄刀異聞篇」など、アニメオリジナル回が多彩なところもポイント。もとよりキャラクター数も膨大な本作だけに、オリジナルエピソードが挿入されるとなると、ますますキャラクターは増加。しかし、そんな多彩な登場人物たちによるほっこりする交流やコミカルなシーンが描かれたり、原作にないバトルシーンが楽しめるのも、アニメ版「BLEACH」の醍醐味と言える。
ちなみに、「日番谷先遣隊奮闘記」など一部は、原作者の久保帯人先生が原案を担当したという。現在、複数のサブスクリプションサービスで配信中なので、アニメオリジナル回だけでもチェックしてみてはいかがだろうか。
もうひとつアニメ版「BLEACH」の特徴として、他と一線を画していたオシャレな主題歌にも言及したい。初期OPテーマであるORANGE RANGEの「*〜アスタリスク〜」をはじめ、YUIの「Rolling star」やSCANDALの「少女S」など、当時の若者に流行した楽曲が採用されており、ジャンプ作品で「オシャレでかっこいいアニメ」といえば本作を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。ちなみに現在放送中の「呪術廻戦」の主題歌も、非常にオシャレ。まさに、現代の「BLEACH」的ポジションだと思う。
なお、昨年3月には20周年プロジェクトとして最終章「千年血戦篇」のアニメ化が発表されており、再び「BLEACH」人気が再燃することが予想される。この機会に、ぜひアニメ版を振り返ってみよう。
地獄先生ぬ~べ~
上述の「幽☆遊☆白書」や「BLEACH」が“オカルト要素のあるバトルアニメ”だったのに対し、まさしく“オカルトアニメ”だったのが、1996年~1998年に放送された「地獄先生ぬ~べ~」。鬼を封じた手を持つ小学校教師の鵺野鳴介(ぬ~べ~)が、生徒たちと学校生活を送る中で、妖怪や霊と向き合う物語だ。
本作には、トイレの花子さんや口裂け女など、子どもなら誰もが知っている怪談が数多く登場し、迫力のありすぎる描写がトラウマになった人も多いだろう。今も「ぬ~べ~といえばどれがトラウマ回だった?」とよく話題になる。
また、ビジュアル的な衝撃だけでなく、パラレルワールドに飛ばされた生徒の郷子が、廃人のようになったぬ~べ~に会ってショックを受ける回など、精神にくるトラウマ回も多い。
しかし、ただのオカルト作品というわけではないのが、本作の魅力だと言える。筆者も本作を大人になって改めて観返した時、ほぼ全話で泣けてしまった。
みんなを幸せにする座敷童の話(第25話)や、生徒の亡くなった母が会いに来る話(第42話)などハートフルなものはもちろん、とりわけ、ぬ~べ~の恩師・美奈子先生が鬼にとりこまれた姿で現れる話(第34話)は、大好きな美奈子先生をぬ~べ~が泣く泣く討つという点でつらく、今でも泣ける。
また、アニメ版のぬ~べ~は毎回、「人に言った悪口は自分に返ってくる」「人を見た目だけで怖がってはいけない」など大事なことを教えてくれる。さすが先生である。
童心にかえりたい、子どもの頃の大切な気持ちを思い出したい……そんな時にぜひ観てほしい。
ちなみに、本作はお色気シーンも人気を博した。アニメ版では、大事な部分を隠すのに、初めて少年ジャンプのマークを被せるという手法を取ったらしい。
ムヒョとロージーの魔法律相談事務所
「ぬ~べ~」と同じくオカルト色が強いのが、2018年~2020年に2シーズンにわたって放送された「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」だ。現代を舞台に、魔法律相談事務所の所長であるムヒョ(六氷透)と助手のロージー(草野次郎)が依頼を受け、死霊にまつわる事件を解決していく。
取り扱う事件は現代社会に沿ったリアルなものになっており、特に1話目の、女子同士の友情がこじれて悪霊になった話は衝撃的だ。襲いくる女の子の描写には、アニメ制作陣の気合いを感じることができる。それでいて毎回ちゃんと泣かせてくれるオチになっているので、見た後はほっこりとした気持ちになれるだろう。
ムヒョの天才的でひねくれたキャラクターも、「少年ジャンプ」王道の主人公とは一線を画しており面白い。正義の味方というより“執行人”として霊を罰するため、甘い考えの者には厳しい現実をつきつけるのだ。たとえば、なぜ自分が人に恨まれるのか自覚のない人間には、「お前、自分がまわりからどう思われてるのか知らんのか?」と知りたくないことも教えてくれる。
そしてアニメ版は、そんなムヒョの声優を務める村瀬歩さんの演技にも注目。村瀬さんといえば「ハイキュー‼」の日向翔陽など、まっすぐな少年やかわいい系キャラを演じるイメージが強い人も多いかもしれないが、本作ではどこか不気味で威厳あるムヒョを好演。EDクレジットを見るまで村瀬さんだと気づかなかったほどで、改めてその声域に驚かされた。
「ぬ~べ~」のようにじっとりと怖いのは苦手だが、オカルトものは好き、という人におすすめの作品だ。
約束のネバーランド
最後に、作品カテゴリーとしてはサスペンスだが、オカルト要素やホラー要素を持ちつつバトル要素も含む「約束のネバーランド」をご紹介する。
本作は第1期が2019年1月から3月にノイタミナ枠でアニメ化、2021年1月より第2期が放送中だ。アニメーション制作は「Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-」「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」などで知られるCloverWorksが、監督は「エルフェンリート」「テガミバチ」「君と僕」などを手がけた神戸守さんが担当している。
本作の物語は、孤児院で幸せな日々を送っていた子どもたちが、ある日自分たちが鬼の食料として育てられていることに気づき脱出をはかる……というところから始まる。
オカルトとは、主に科学で解明できない神秘的なものや超自然的なもの、目で見えないものを指すと言われており、映画では幽霊や悪魔が描かれることが多いので、鬼を連想する人は少ないかもしれない。
しかし、子どもが出荷されて鬼に食べられるというのは、主人公のエマたちにとって日常では絶対にあり得なかった未知の恐怖であり、ある意味オカルトと言えるのではないだろうか。初めて鬼を目にしたエマたちの恐怖に震える様子には、思わずこちらもごくりと唾をのんだ。
また、アニメ版でも原作に劣らず死体などのグロ描写や、恐怖が背後から迫ってくるようなスリル、子供たちの絶望などは見事に表現されており、見ごたえたっぷり。そのいっぽうで、子供たちが「あきらめない」を胸に一丸となって困難に立ち向かう強い姿には、感動すること間違いなしだ。
アニメ第1期の最後は、エマたちが知恵を駆使していよいよハウスからの脱出をはかる、息をのむ展開となった。第2期では、その逃亡劇にどんな結末が待っているのか……? 引き続き注目だ。
(文/編集部K)