「廣田さん、あまりにマイナーすぎるプラモを取り上げると、アクセス数が伸びないんですけど……」と担当者から注意された矢先に、こんな物を出してきて、すみません。今回は「特装機兵ドルバック」(1983年)の味方側の支援メカ(ガンダムでいうジムやボールのようなやられメカ)、パワードアーマー「PAC-48 ガーディアン」(グンゼ産業)です!
1983年は、前年に「超時空要塞マクロス」がヒットした影響なのか、ものすごい数のロボットアニメが製作された。「ドルバック」の玩具は、「マクロス」のバルキリーを発売して変形玩具界のトップに立ったタカトクが担当。なので、ジープ・戦車・ヘリコプターがそれぞれ変形する3体のロボットが主役メカとして登場する。だったら、内容も「マクロス」のようなミリタリー風のロボットアニメ? それとも、ロボットが必殺技で悪を倒す70年代的ロボットアニメ? 世界観やキャラクターは、どこか70年代のテイストを引きずっているのではあるが……
上の画像は、この「PAC-48 ガーディアン」に封入されていたチラシなのだが、左上の青い「オベロンガゼット」(ヘリ変形メカ)、真ん中の黄色い「ムゲンキャリバー」(ジープ変形メカ)、右下の四角い「ボナパルトタルカス」(戦車変形メカ)、この3機が“バリアブルマシン”と呼ばれる新開発の主役ロボットだ。そのほか、まわりにいるロボットたちがパワードアーマーで、これらは最初から地球連邦軍に広く配備されていた戦闘用強化服。 パワードアーマーでは侵略者であるイデリア軍に対抗できないので、バリアブルマシンたちが独自に活躍して、ストーリー後半では量産されたり、フルアーマーガンダムのような強化型に改造されたりする。(「けっこう、マニアックな展開じゃん?」と思ってしまうのだが……)
▲ 右下の2機が敵側のメカ。だけど、敵味方ともに1/72だったり1/100だったり、スケールが統一されていない。そんな中、パワードアーマーだけは1/24でスケール統一されているという優遇ぶり
また、敵のイデリア軍は1話限り登場の怪獣のようなやられメカを送りこんでくるのではなく、量産された機動兵器で部隊を組んで攻めてくる。……そうした敵味方の兵器開発競争や戦術的な駆け引きを描きこめば、かなりミリタリックなアニメになりそうでしょ? でも、兵器に関するマニアックな描写や会話は皆無と言ってよく、主人公の撃つ弾はほとんど百発百中で、そういうアバウトさは70年代っぽい。パワードアーマーに比べて、バリアブルマシンにどんな優位性があるのかも、ほとんど説明されない。「撃てば当たる、だから強い」「強いから主役ロボ」って感じ。戦闘シーンはスピーディーでスタイリッシュな作画なんだけど、その絵柄がミリタリックなはずのメカ設定からは乖離しているんだよね……ホントに、不思議な作品だ。
バリアブルマシンが活躍すればするほど、どんどんパワードアーマーの存在感は薄れていくのだが、忘れたころに大挙して出てくるので油断はできない。後にパワードアーマーのみを主役にした短編アニメもつくられたほど、一部に熱狂的なマニアがいる。
パワードアーマーのプラモデルは1/24スケールで続々と発売され、パワードアーマー専用の乗り物「バックファイアー」なんて物までキット化された。このガーディアンのキットに封入されている小冊子「ドルバック・メカ 改造情報・第8号」を見てると……
▲ 表面にはガーディアンをほかのキットで改造したバリエーション例が紹介されており、裏面は「ユニット&ジョイント方式」で手足を交換することによって、「むずかしい大改造にチャレンジする前に、この方法で各メカをオリジナルメカに改造してみてください」との提案が
すなわち、パワードアーマーのキットを複数購入し、手足を取り替えて遊ぶカスタマイズが推奨されているのだ(スケールが違うはずの敵メカとも手足を交換するよう提案されているのが、少し気になるが)。
そう、「ドルバック」のプラモデルはいずれも、 ポリキャップ(説明書ではポリブッシュ)によって手足を“後はめ”できる点が先駆的だった。300~500円の低価格帯キットでは、必ずしもポリキャップが使われるとは限らない時代だったからだ。
では、1/24スケール「PAC-48 ガーディアン」のキットを見てみよう。
▲ 400円のキットだが、ランナーは2色3枚。デカールも付属。そして、ポリキャップはオレンジ色! 一体なぜ? ほかにキャリバーとタルカスのキットも持ってるけど、どちらもオレンジ色。ポリキャップを強調するための戦略?
▲ 股関節や足首を単純な軸可動ではなく、左右方向にもねじれるようにするためのT字形の軸パーツが入っている。細いアンテナパーツもきれいに抜けているし、かなり意欲的なキットであることがわかる
▲ 右腕の大砲の後方に位置するマガジン部分。ミリタリーモデルによく見られる細いリブが彫ってあるが、未来的にアレンジされているところが抜群にカッコいい
▲ 手首のパーツに注目。人間の手を模した従来のロボットの手首ではなく、飽くまで“人の手に似た形のマニュピュレーター”としてデザインされている。この手首は、握りこぶしをつくることは難しそう……人間の手首とは違い、武器の操作さえ出来れば十分なのだろうね。そう解釈すると、カッコいいじゃないか!
最初は(自分で選んでおいて何だが)「ドルバック? パワードアーマー? あれってS.F.3.Dのパクりじゃん……」などと思っていけたけど(「S.F.3.Dオリジナル」のプラモデルが日東科学から発売されたのは1983年末~1984年にかけてなので「ドルバック」シリーズと同時期)、ランナーを見る限り、何かしらのポリシーが感じられる。これはいろいろと新発見があるのでは……?
では、ついに組むぞ、人生初のパワードアーマー体験!!