2020年7月からスタートしたTVアニメ「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」最終章(2ndクール)。そのエンディングテーマとなっているのが、藍井エイルが歌う「I will…」だ。
大切な人への想いをテーマに、彼女自身が作詞した「I will…」は、作品の世界観に寄り添いつつ、多くのリスナーの共感を呼ぶ、普遍性の高い楽曲に。今回は、歌詞にこめられた想いやメッセージについて、たっぷり語ってもらった。
「I will…」は、大切な人への思いをテーマに歌詞を書きました
── 新曲「I will…」は壮大な楽曲ですね。
藍井 今までの藍井エイルの曲の中で一番難しいですね。出だしを聴くと、「あ、バラードなのかな?」という印象なんですけど、途中から展開が変わって、最終的にアップテンポの曲になっていくんです。その変わりようを聴いていただきたくて、早く配信が始まってほしいと思っていたんです(先行配信は7月20日スタート)。ファンの方の反応が楽しみですね。
── フルサイズを聴くと驚きがありますよね。
藍井 あると思います、2コーラス目のBメロから曲の雰囲気ががらりと変わるので。展開が難しくて、作曲者の方はドSだと思いました(笑)。
── ははは(笑)。作曲者は、TAMATE BOXさんとSakuさんの共同クレジットになっています。でも、エイルさんがみずから、この曲を「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」最終章のエンディング候補曲に選んだということですよね?
藍井 難しいことは最初からわかっていたんですけど、歌ってみたいと強く感じて、スタッフさんと一緒に選んでいきました。アニメ制作サイドにもOKをいただけて、採用にいたりました。
── 難易度の高い曲だからこそ、この壮大さ、ドラマチックさが出たのでしょうね。作詞はエイルさんです。どのようなテーマで書いていったのでしょうか?
藍井 テーマはわりとすぐに決まって、大切な人の心に歩み寄ったり、支えたりすることについて書いていこうと思いました。
── 具体的なキャラクターを思い浮かべたりしたんですか?
藍井 主にユージオ視点で書いています。でもユージオにしか当てはまらない言葉を選んでいるわけではないので、たとえばアスナだったり、ほかのキャラクターのことを思いながら聴いていただくことができると思います。
── このインタビューは、第14話「無限の果て」の放送直後におこなっているのですが、あの話数はエンディングテーマの反響も大きかったですね。
藍井 ファンのみなさんからは今、「I will…」はおじ様(ベルクーリ)の曲だと言われています(笑)。そういうふうに、いろいろと解釈しながら聴いていただいているのはうれしいです。
── エイルさんも、放送のリアルタイムで、Twitterでつぶやいていますよね。
藍井 はい、毎週一緒に見ようねって、ファンの方と約束しています。
── 「I will…」の歌詞は、「ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld」のストーリーからインスパイアされて書いた部分が多いと思うのですが、いかがですか?
藍井 ストーリーを教えていただいて、それと自分の心情を重ね合わせて書いていきました。ユージオを失って心が壊れてしまったキリトの姿というのは、見ている私たちにとって心が苦しくなるものでしたが、いなくなってしまったユージオにとっても、キリトのことが気がかりだったと思うんです。そのユージオの立場を想像してみたとき、「そばにいるよ、大丈夫だよ」ということをなんとかして伝えたいんだろうなと、切ない気持ちになって。それが「I will…」の歌詞のテーマになりました。「どれだけ遠く 離れてしまっても」という部分は、ユージオとキリトの距離を表しています。
── ユージオのことを思うと、その部分が本当に切なく聞こえます。そのいっぽうで、作品から離れて聴いても、普遍性のある歌詞になっていると思いました。
藍井 アニメを見て楽曲を聴いてくださるみなさんにも、それぞれ大切な人がいると思うので、アニメに寄り添いつつ、多くの方の心に触れるような歌詞にしたいなと思いました。私も、大切な友だちが悩んでいたとき、何かしてあげられることはないかと考えたことが過去に何度もあったので、そういった経験も入れ込んで書いていきました。
── 歌詞でこだわったところは、どこでしょうか?
藍井 どの曲もサビの歌詞が大事だと思って書いてますが、今回は特にサビのメロディとワードを合わせるのが難しかったです。ひと言目でグッとくるような表現にしたいなと思って、「泣かないで誰よりも優しい人よ」という、アニメを見ている人なら、誰を指しているかひと目でわかるワードを使いました。ここはすごくこだわったポイントです。
── 同じサビで、「ずっと心は繋がっていく 繋がっている」と微妙に語尾を変えて同じ言葉を繰り返しているところも、強く印象に残りました。
藍井 最初は「繋がっていく 繋がっていく」だったんですけど、「繋がっていく 繋がっている」のほうが、希望が確認に変わっていく感じがしていいなと思って、直しました。
── つまり、「繋がっていく」と「繋がっている」の間には、時間の経過があるんですね。すごい、深いです。
藍井 私も書き直して、グッと来ました。それから少しネタバレになってしまうかもしれないんですけど、「夜を乗り越えるたびに 酷く怯えてしまう君」というのも、1日経つごとにユージオのことを忘れていってしまうのではないかと、恐怖心にとらわれているキリトをイメージしています。
── お話をうかがうと、ワードの1つひとつがアニメと深く結びついているのがわかります。そのいっぽうで、エイルさん自身の経験も歌詞に反映されているとおっしゃっていましたね。
藍井 たとえば、「眠れなかったいつかの夜」という歌詞から始まる2コーラス目のBメロは、私自身の経験がもとになっています。今は辛いけれど、またきっと笑えるときがくるよと。全体として、つらく切ない思いから始まって、だんだん希望が広がっていく歌詞になっていて、「I will…」という未来を予感させるタイトルがそれを象徴しているんです。
── 希望というのは、ユージオとキリトにもあるということですよね。
藍井 そうですね。ラスサビの「まぶた閉じれば あなたが笑っている」というのは、どんなに離
れていても気持ちはつながっているということを表しました。