戦国武将が現代に転生! しかし、その姿はキュートな犬だった! という、ぶっ飛んだ設定と謎の新人声優たちの出演で話題を呼んでいるTVアニメ「織田シナモン信長」。そのオープニングを飾る主題歌「Sunny Sunny Girl◎」で、新人声優・熊田茜音さんがアーティストデビューを果たす。
2020年1月29日リリースのシングル「Sunny Sunny Girl◎」で、ソロアーティストとしてデビューを果たした熊田茜音さんは、2017年に上松範康さん、影山ヒロノブさん、畑亜貴さん、鈴村健一さんら業界のトップランナーたちが審査員を務めた次世代声優アーティストオーディション「ANISONG STARS」にて、若干17歳ながらグランプリを受賞。
その後、TVアニメ「転生したらスライムだった件」エレン役や、TVアニメ「ライフル・イズ・ビューティフル」渋沢泉水役などを演じ、着実にキャリアを積み重ね、今回満を持してソロアーティストとしてデビューする。
今回は、そんな記念すべき1stシングル「Sunny Sunny Girl◎」制作の裏話やアーティストとしてのテーマ、思いをたっぷりと語っていただいた!
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キャラソンではなく「熊田茜音」として歌うことに向き合うところから
──ついにソロアーティストとしてデビューすることになったわけですが、実感はありますか?
熊田 正直な気持ち、すごすぎる……という気持ちです。それこそ私、たくさんのオーディションを受けては落ちてきたので、その頃からするとまったく想像できていなかった未来です。その時の夢が、思い描いていた夢よりも大きくかなっている状況で、すごくうれしいことが続いています。周りの方の支えを感じながら驚きの日々を送っています。
──今回、「織田シナモン信長」ではヒロインの市子役とオープニングテーマ「Sunny Sunny Girl◎」を担当されますが、順番的にはどちらから決まった感じでしょうか?
熊田 最初に尾田市子役の合格から決まって、その少し後にまさかの主題歌を歌うことになりました。
──最初に楽曲を聴いた時は、どんな印象でしたか?
熊田 すごくオケが気持ちいいなって。聴いただけで明るく、元気になれるサウンドで好きな曲調だと思いました。この音楽にどんな言葉が乗るんだろうって楽しみにしていたんですが、その後にもらった歌詞が、その楽しみ、期待を上回るほど歌っていて気持ちいい楽曲になっていて……。転がるような言葉をこだまさんが乗せてくださいました。内容もすごくポジティブ、かつやさしさが垣間見える歌詞で、最高に好きな曲になりました。
──転がる感じというと、まさにサビ辺りなんて言葉がリズムを刻んで、コロコロと転がっていくような感覚ですよね。
熊田 わかります、わかります! 特にサビを歌うのが気持ちよくて。周りの方に、よくあんなに口が回るねって言われるんですが、歌詞を覚えて歌うと意外とできちゃうんです。
──やはり声優ならではの、活舌のよさが生きているのではないでしょうか。
熊田 やっぱり歌ううえで、言葉をちゃんと届けたいという思いがあるんです。なので活舌にはすごく気を付けて歌っていたので、そう言っていただけるとすごくうれしいです。
──「ライフル・イズ・ビューティフル」のキャストによるユニット「ライフリング4」ではキャラクターとして歌っていた面が強かったと思いますが、今回はアーティスト・熊田茜音として歌っています。キャラクターから離れて、自分自身として歌うのは難しかったですか?
熊田 とっても難しかったです。「ライフリング4」に限らず、それまで歌ってきたキャラソンでは「このキャラならどう歌うかな」とか「このキャラの中で、どう表現したいか」というキャラクター第一で歌っていたんです。でも「Sunny Sunny Girl◎」は、アーティスト・熊田茜音として何を届けたいか、ということを明確にして歌わないといけないから、最初はものすごく歌い方に悩みました。
だけどディレクターさんにたくさん相談して、私は曲を聴いてくれた人が元気に、幸せになってほしい。ちゃんとパワーをまっすぐに伝えたいということに気づけたんです。それを受けて、ディレクターさんから「だったらもっと地に足をつけて、お腹から声を出して、体全部で歌わないと届かないよ」とアドバイスをいただきました。ただ、最初はまだ体ができあがっていなくて、お腹から声を出すのがすごくきつかったです。
「Sunny Sunny Girl◎」を録り終えた時は、ふーっと全身の力が抜けましたね。そのくらい全身全霊で歌いました。でも、それがあったからこそ私は「熊田茜音」としての歌い方を見つけられた気がします。
──今までは「こう歌えばいい」みたいなイメージが最初からあったけど、今回は自分で答えを見つけないといけなかったと。
熊田 そうですね。たとえば「ライフリング4」の時は、演じていた渋沢泉水ちゃんがお姉さんっぽいキャラクターだったので、温かみとか包み込むやさしさを表現したいと思っていたんです。だから声質は地声よりもやわらかく、泉水ちゃんの声で歌おうって思ったし、泉水ちゃんならどう歌うかなって想像しながら歌っていました。「熊田茜音として」とか「熊田茜音が届けたい」という思いは排除していたので、ソロアーティストとしての歌は、そこが不思議な感じというか、新たな扉の前に立った感覚があります。
──作詞のこだまさおりさんや作曲の山口朗彦さんとは、事前に打ち合わせをしたり?
熊田 実は、まだこだまさんや山口さんとはお会いしてはいないんですけど、私はこういう思いをお客さんに届けたいとか、こういうアーティストになりたいというのを、スタッフさんを介してお伝えさせていただきました。私自身、まだ自分を全部理解できるほど大人じゃないので、そこはスタッフの皆さんと一緒に「熊田茜音ってこういう人だよね」って考えていきました。なので、私の意見自体はたくさん取り入れていただけました。
──今回の楽曲は、熊田何%くらい表現されていますか?
熊田 あははは(笑)。戸愚呂100%みたい(笑)。そういう意味では、今回の曲は熊田100%です。ちゃんと私の中にある感情を100%表現してもらっている曲ですし、曲を通して私が表現している感情は100%私の中にあるものなので。
思い切り楽しんだMV撮影
──実際に歌って印象に残ったところや、気に入ったところを教えてください。
熊田 全体的に明るくてポジティブでやさしい曲じゃないですか。いつもは当たり前で気づかないけど、ちゃんと周りを見たら隣にはいつも見てくれる人がいるんだよとか、好きなものに囲まれているんだよっていうポジティブでやさしさにあふれていて。それでいて全力で明るい感じが、きっと聴いてくれた人を幸せにできるんじゃないかと感じられて、すごく好きです。
──MVも、まさにそんな映像に仕上がっていて、見ているだけで元気になりますね。個人的には、おばあちゃんが突然立ち上がって踊るところがすごく微笑えましくて(笑)。
熊田 すごくやさしい方でしたよ。急にめちゃめちゃ踊るじゃないですか(笑)。でも撮影が終わったらちょっと照れてらっしゃって、大先輩の方なのに、「かわいい」ってキュンとしちゃいました。
──熊田さんの元気なキャラもビンビン伝わってくる映像でした。撮影はいかがでしたか?
熊田 すごく楽しかったです。当たり前ですがMVを撮るのも初めてで、「MVってこう撮るんだ」って感じでした。だから「まずは元気に歩いてください!」って言われて、「何に使われるんだろう?」って思いながら歩いたシーンが、「こう使われるんだ!」って仕上がっていく面白さがありました。監督がすごくやさしい方で、初めての撮影なのでどうしたらいいんだろうって悩んでいたら、「何も考えなくていいから。楽しく動いてくれればいいのを作るよ!」って言ってくれたので、楽しく撮れました。
それに、みんなで踊ってるシーンがあるじゃないですか。私、あの快晴の中で踊るのがとっても楽しくて。「皆、楽しもうね!」みたいなノリがあったんですよね。笑い声に包まれながら撮影したので、「こんなにMV撮影って楽しいんだ!」って、心から楽しみ切った現場でした。まさにサニーサニーでした。
──今回、ビジュアル面では黄色がフィーチャーされていますが、もともと好きな色なんですか?
熊田 はい。黄色が私のアーティストカラーになるんですけど、そこもスタッフさんが私のパーソナルな部分を踏まえて考えてくださいました。もともと好きな色だったんですが、この色の衣装を着てジャケットを作っていただいたらより好きになって、すぐに黄色い小物に目がいくようになりました。
黄色って爽やかですし、ビタミンカラーでもあるじゃないですか。私、オレンジとかバナナみたいなビタミンカラーの果物も好きなんです。だから、そういうものもジャケット写真に使ってくださって。
──体によさそうなビジュアルですよね(笑)。
熊田 そうなんです。私、体にいいんです(笑)。私の曲を聴いてくれた方が健康になってくれたらいいですよね。そういう思いを込めて今回の3曲を歌っています。
パッケージも自分の顔が写ってるからちょっと恥ずかしいけど、家に飾ってもよさそうな感じじゃないですか? きっと元気になると思います!
──ちなみに「織田シナモン信長」の世界観は、意識はされましたか?
熊田 ギャグ要素のあるアニメのオープニングテーマということで、本編に向けて明るく始まり感のある歌い方にしようというのは意識しました。
あとこだまさんの歌詞ですごいと思ったのが、「Wonder Wonder Days」のような、犬を彷彿とさせる歌詞ですね。実際に意識して作られているかはわからないのですが、自分としてはこの遊び心が素敵で面白いなと思っています。
佐伯youthKさんはお父さんで、畑亜貴さんはお母さん!
──カップリング曲についてもうかがいたいと思います。「YOUR FREE STAR」は、これまでの熊田さんのインタビューでうかがったお話が、全部歌詞に込められていますよね。
熊田 そうなんです! 私の人生がきれいな言葉で綴られているんです。「YOUR FREE STAR」は、自分の心の奥に常にあることをわかりやすく、まっすぐ言葉にしていただいた歌なんですけど、まずメロディが素晴らしいですよね。胸にジーンとくるのに、明るいメロディで。すごく好きなのが「叶えたいから叶える」「伝えたいなら伝わる」っていう歌詞です。すっごくポジティブじゃないですか。さらに「そのためには一歩を踏み出さないといけないよ」「その一歩は私が支えるよ」というアーティストとして自分が伝えたい思いと、「とりあえずステップ!イエイ!」って感じの難しく考えずに楽しく一歩踏み出そうというノリのよさが、まっすぐに言葉になっているので、今回の3曲の中で特に私らしい曲になっています。
──正直、この曲を聴いて、インタビューする必要ないんじゃないかと思いました(笑)。「熊田茜音さんってどんな方ですか?」と聞かれたら、「とりあえずこれを聴け」って言っちゃいそうです。
熊田 あはは(笑)。そう言っていただけて嬉しいです! でも本当に自分もびっくりでした。作ってくださった佐伯youthKさんって、ずっと自分と一緒に生きてきた人なのかなって。この曲もスタッフさんに思いを伝えて作っていただいたんですけど、何でこんなにばれちゃってるんだろう。
──そして「First Step, Fun Step!」。この曲も、まさしく熊田さんの人生そのものですよね。畑亜貴さんの詞がすごいなと。
熊田 本当にそう思います。曲をもらった時は「畑さんはお母さんなの?」って驚きました。
私が声優の世界に入るきっかけになったオーディション「ANISONG STARS」の審査員に畑さんがいらっしゃって、その時からいつか自分の曲を作ってもらいたいと思っていたんですが、こんなに早くかなうなんてって本当にびっくりしたし、心から嬉しかったです。この曲は私がオーディションを受けてからアーティストデビューするまでの物語を歌にしていただいているんですけど、「こんなに自分のことがばれているなんて!」って思いました。
いつも歌を歌わせてもらう時は、まず自宅で歌詞を朗読するんです。そこで言葉を体に入れ込むんですけど、この曲に関してはその作業が一番少なかったです。それほど「私の言葉」で書いていただいていたので、今回の3曲の中では一番感情的に歌った曲になっています。
周りの人からしたら小さいことかもしれないけど、私の中ではとてもつらかった思い出とか、それでも一歩を踏み出す勇気を出せたことなんかが、レコーディングしながらワーッと思い出されました。
私の心の中の声を聴いてくださった方が、ちょっとでもがんばるきっかけになってくれたらいいなとか、今自分がやっていることがどんなに素敵なことか、ということとか。あとは、落ち込むこともあるけど、大丈夫だよ。がんばること自体がすごいことだよ、って自分を認めてあげるきっかけの曲になったらと思っています。
──「始まりはいつも自分から」っていう最初のフレーズから、一気に心がつかまれました。
熊田 これも、いつも自分が思ってることなんですよね。例え辛い思いをしたとしても、考え方をちょっと変えるだけでその経験は全部自分の力になるじゃないですか。だから言い訳したり人に頼ったりするばかりではなく、自分から動き出したら絶対に世界は変わると思ってるし、私自身オーディションなどの経験からそういうことを感じた瞬間が何度かあったから、やさしい気持ちを持ちながらも、でも強く進んでいこうという思いが最初のフレーズからドン!って押し寄せてきます。
特に「悩んでたって泣いてたって」のフレーズとか、ヤバいです!
──この曲も、特に畑さんと打ち合わせたりしたわけでもなく、スタッフに伝えていただいた形ですか?
熊田 そうなんです。だから「あれ? 畑さんって、私のお母さんだったかな?」って(笑)。だから今回のCDでは、佐伯さんはお父さんで、畑さんはお母さんみたいなイメージがあります。