【犬も歩けばアニメに当たる。第7回】「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ」を今からでも見るべき、たったひとつのシンプルな理由

心がワクワクするアニメ、明日元気になれるアニメ、ずっと好きと思えるアニメに、もっともっと出会いたい! 新作・長期人気作を問わず、その時々に話題のあるアニメを紹介していきます。

心揺さぶる激闘! そして深い余韻を残すクライマックス

ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」の後編「エジプト編」が終わった。第3部前半にあたる「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」と合わせて、全48話。丸1年をかけて、原作コミック17巻(文庫版では10巻)にわたる長編が、すべてアニメ化された。ファンにとっては至福の時間だった。

ことにラストステージ、仲間から犠牲者が出始める42話以降は、まさに毎週が神回! キャラクターの心情に寄り添った情感ゆたかな音楽に乗せて、DIOやその手下との死闘が展開された。

奇妙で不思議な異能バトルを、アニメはよくぞ描ききってくれたと思う。原作コミックの魅力を「そのまま」アニメにするというのは実は大変なことで、ストーリーやセリフを「そのまま」アニメにしただけでは足りない。アニメとしての演出を加えたうえで、仕上がりの「印象を同じにする」作業が必要になる。

そういった意味で「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」は、原作の魅力を本当にそのまんま……と感じさせる高等技術で、アニメで描き出してくれた。ワケのわからないところや若干の矛盾、セリフや展開の笑えるおかしさまで含めて。

ことに、演出の技を駆使して描かれたメインキャラの死亡シーンは、音楽のすばらしさもあいまって、切々と胸にせまるものになった。

改めて見ると、「ジョジョの奇妙な冒険」(以下、ジョジョ)は、登場人物の最期のエピソードが秀逸だなあ、としみじみ思う。

どの部でも、どの敵を相手にしても、最後は死力を尽くした戦いになる。その結果、仲間からも犠牲者が出る。時にその死はあっけなく、時に孤独だ。致命傷を負うのは一瞬で、最後の言葉も残せないことだってある。それは、現実の死にも極めて近い。

でも、なぜかその死には、どこか突き抜けた爽快感がある。

それは、登場人物の誰もが自分の生き方に納得して、運命を選びとって、一瞬一瞬を全力で生き抜いているからだろう。別れは悲しいが、彼らは恨みや悔いを残さず、役割を終えて仲間に後を託し、満足して消えていく。

見ている側の切ない心情は、残された者たちに重ねられる。「死してなお受け継がれる思い」は、現在の週刊少年ジャンプの看板作品「ONE PIECE」や「NARUTO」とも共通するテーマだ。

すべてが終わって視聴者の胸に残るのは、ジョセフのセリフにもある「実に楽しい旅だった……!」という思い。後味はさわやかだ。

アニメで見られてよかった! アニメならではのお楽しみがいっぱい

筆者は第3部の連載時、リアルタイムに週刊少年ジャンプを読んでいた読者だった。毎週放送されるテレビアニメでは、当時の感覚に近いものを懐かしんだ。

毎回、奇怪で謎の多い敵が登場し、ハラハラドキドキさせて、最後には必ず次のエピソードへの引きがある。連載コミックを楽しむようにアニメでも、ただ毎週の話を楽しんだ。

このリズムが繰り返されると、登場人物にも話にも、愛着がわいてくる。アニメが放送された1年間は、彼らといっしょに見ている私たちも旅をした1年間だった。作品とともに時間を重ねることの意義は大きい。

「ジョジョ」特有のセリフまわしを、マンガらしいデフォルメたっぷりに熱演したキャスト陣にも拍手を贈りたい。人気の豪華声優が入れ替わり立ち替わり登場しては、熱演、怪演をくりひろげる。時に笑い、時にうならされた。

なかから1人を選ぶなら、エンヤ婆を演じた鈴木れい子さんに助演女優賞を捧げたい。不気味なのになんともいえぬ愛嬌があって、ポルナレフとの漫才のようなバトルが実に楽しかった!

オープニングの仕掛けにもしびれた。第1部、第2部、第3部前半のオープニングを歌った男性アーティスト3人が、最後の「エジプト編」のオープニングで結集し、すべての因縁が決着するDIOとのバトルを盛り上げた。

ことに、DIOのスタンドの「時を止める」能力が明らかになった終盤で、オープニングでもDIOとの対峙で時が止まる演出がされたのは、何とも粋だった。

ちなみにこの時、公式サイトにもDIOが出現して、サイトを閲覧しようとすると何度も「時を止め」られる、という仕掛けがあった。ヒジョーにイライラして、憎ったらしいと思う気持ちをかき立てられて「……うまい!」と感じたものだ。

圧倒的で普遍的な「おもしろさ」が、アニメでさらに伝わる!

「ジョジョ」という作品の魅力を、知らない人に向けて簡潔に語るのは難しい。これまでは、「ジョジョ立ち」やネットでのセリフ遊びなど、キャッチーな部分だけがネタとして扱われることが多かった。

でも、アニメで第1部から第3部が放送され、作品を知らない人も目にする機会ができた結果、物語やキャラクターの魅力に触れることができた人の数は、飛躍的に増えただろう。

そう。「ジョジョ」は「おもしろい」。

物語もキャラクターも、圧倒的で普遍的な魅力がある。

これが、今からでも見るべき「たったひとつの単純(シンプル)な理由」だ。なかでも第3部は、王道のバトルものであり、約50日の旅と戦いを描いた、異国情緒あふれるロードムービー。わかりやすく楽しく、誰にもお勧めできる。

「聖闘士星矢」や「ドラゴンボール」、「SLUM DUNK」を連載していた黄金期の週刊少年ジャンプにあって、「ジョジョの奇妙な冒険」は絵にも話にもクセのある異色の作品だった。

でも今改めて見ると、努力(「ジョジョ」の場合は「勇気」が妥当か)、友情、勝利という要素がそろった、実に王道で骨太の作品になっているのがわかる。

特に、ホラーやオカルト要素が強かった第1部・第2部に比べて、第3部はチームバトルでロードムービーという、わかりやすいおもしろさがある。年をとったジョセフまで含めた個性的かつ強靭な男5人に、後半は犬のイギーがチームに加わって、最後は皆の思いがひとつになる。その爽快さ!

主人公の空条承太郎は、寡黙で熱い心を秘めた武闘派の高校生。年齢に似合わぬ沈着冷静さもあって、ヒーローの風格という点では、第1部主人公のジョナサン、第2部主人公のジョセフをしのぐ。ぶっちゃけ、「ジョジョ」で一番好きな主人公だ(みんな好きなんだけど)。

また、第2部主人公のジョセフは、お茶目でしたたかな老年の男性となって登場。孫の承太郎と息の合ったコンビを見せる。ジジイかっこいいよジジイ。

とっつきやすい楽しさが、第3部にはたっぷり詰まっているのだ。

精神エネルギーが具現化しした「スタンド」は、「ジョジョ」のこの後の部にも引き続き登場する。

スタンドという概念が初登場する第3部は、第1部・第2部の集大成でもあり、第4部以降の始まりでもある。そういう意味でも、第3部を知ると、「ジョジョ」という作品がざっくりわかるといっても過言ではない。

最後まで見ると、また頭から見たくなる。話題の作品として、再放送する局もあるだろう。そして、これだけ第3部のクライマックスが盛り上がると、第4部以降のアニメ化にも期待せずにはいられない。

新たに見始めるには長く感じるかもしれないけれど、最終話まで見て決して後悔しないアニメとして、まだ見ていない人は見ることを強くおすすめする。

そしてぜひ、いっしょに第4部アニメ化を待つ同志になってほしい。

(文/やまゆー)