今年も残すところあとわずか。12月には30タイトル以上のテレビアニメが最終回を迎え、作品のラストを締めくくった。今回はその中から注目の5タイトルを総括レビュー!
オンラインRPGを舞台にさまざまな世界観を描いた『ソードアート・オンラインII』。カードゲーム「WIXOSS-ウィクロス-」を題材にしたオリジナルアニメ第2期『selector spread WIXOSS』。狐、犬、狸とバラエティ豊かなケモノたちが織り成す非日常コメディ『繰繰れ! コックリさん』。4人の少女たちが登山を通じて成長していく『ヤマノススメ セカンドシーズン』。そして夫婦のラブラブっぷりが胸をえぐる『旦那が何を言っているかわからない件』といずれも話題作がそろった。
ついに完結した2014年秋アニメを振り返って、新年の幕開けに備えよう。
■「ソードアート・オンラインII」
ゲーム世界にダイブすることで物語が進む「SAO」シリーズ。だが第2期のマザーズ・ロザリオ編では、仮想空間から現実世界を体験するという、これまでとは逆のエピソードが展開された。注目したいのは、本作終盤の第23話「夢の始まり」だ。病に冒され仮想空間で時を過ごしている少女・ユウキ。彼女のもう一度学校に行きたいという夢を叶えるため、アスナは特殊な通信装置を使って現実世界をバーチャル体験させる。仮想空間のスクリーンには現実の光景が映し出され、ユウキはそれを眺めることで、かつて暮らしていた世界をもう一度味わっていく。
このシーンに心を動かされるのは、見るという行為でユウキと私たちがつながっているからだろう。そしてユウキはスクリーンに映ったアスナに触れようと思わず手を伸ばす。そこに存在しないものに触れようとする彼女の身振りは、第23話のラストでアスナへ受け継がれることになる。その瞬間を見逃さないでほしい。
■「selector spread WIXOSS」
「WIXOSS-ウィクロス-」に関わった少女たちが、バトルの勝敗に関わらず悲惨な運命に巻き込まれる展開で話題をさらった本作。バトルを避けようとするがゲームの魅力に引き込まれていく主人公・小湊るう子をはじめ、一筋縄ではいかないキャラクターたちがダークな世界観を盛り上げていった。
そんな中「WIXOSSの世界に入りたい」という無邪気な夢を持つ少女・ちよりと、そのカードの宿主(ルリグ)・エルドラのデコボココンビは一種の清涼剤として愛されてきた。第9話「その別れは唐突」はその2人をフィーチャーしたエピソードだ。彼女たちのビジュアルがなぜか似ている点など、深い意味を持たないお約束だろうとスルーしていたところまで鮮やかにひも解かれていく。単なるコメディリリーフではないことを証明するかのように、ちよりとエルドラが感情を爆発させるシーンは必見。最終話のエピローグでも思わずニヤリとさせられる。
■「繰繰れ! コックリさん」
人形を自称するデンパ少女の市松こひなに取り憑いたのは、世話好きでお人好しなコックリさん、ストーカー気質の狗神、無職のプロでエロ親父の信楽と、強烈過ぎる物の怪たち。登場人物全員がカオスなキャラクターのハチャメチャコメディが繰り広げられていく。実はコックリさんと狗神は女性に変身することができ、女体化した2人(匹?)の姿もキュートでかわいらしい。気付けば信楽以外の全員が女性になって温泉へ行くハーレムチックな回もあり、予想がつかないストーリーを楽しむことができる。
キャストも豪華声優陣がそろい踏み。とりわけ信楽を演じた中田譲治はお馴染みのダンディーな声はもちろんショタ声も披露しており、その熱演は圧巻のひと言。毎回微妙に変化するオープニングや、次回予告が実写の動物映像コーナーだったりと、遊び心も盛り沢山。続編がオンエアされる日を心待ちにしたい。
■「ヤマノススメ セカンドシーズン」
少女たちが山に挑むアウトドアアニメとして注目を集めた『ヤマノススメ』。第2期では5分から15分枠へと拡大し、半年間にわたり全24話が放送された。その魅力は何と言っても本格的な登山描写だ。一瞬しか映らない風景もていねいに描き込まれ、現地の名所や珍しい看板が本編を彩っている。富士山の山頂に郵便局があるなどトリビア的な発見もでき、細やかなロケハンを行ったことが感じられる仕上がりとなった。
また、母親とハイキングをしたり、山小屋の主人と交流したりと、主人公・雪村あおい達を支える人々にも視線が注がれている。先人たちが切り開いた道をたどる登山をテーマにした、本作ならではのポイントと言えそうだ。富士山の登頂に失敗してしまうなど、山登りの厳しさもきちんと描かれており、見ていると次第に山へチャレンジしてみたくなってしまう。
■「旦那が何を言っているかわからない件」
ヒロインが男性キャラとキスをしただけでオタは泣き崩れ、スレは荒れ果てるアニメ界隈。そんなナイーブな僕らを、夫婦のイチャイチャ描写でこれ見よがしに煽りまくる本作。あろうことか第1話の冒頭から「滅茶苦茶セックスした」と断言。エンディングではラブラブなデュエットソングが流れ出し、お風呂場で洗いっこをする映像まで見せつけられる。ごていねいにカラオケバージョン(誰と歌えばよいのか…)やクリスマスバージョン(誰と祝えばよいのか…)さえ存在する始末。もともとは2ちゃんねるに投稿されていたコミック原作らしく、挑発するメディアの面目躍如と言ったところか。
そんな小憎たらしい作品でありながら、なぜか共感さえ覚えてしまうのは、誰もが人生に感じる焦りや寂しさを描いているからに他ならない。第11話「人が一人で生きてきて」ではそれらの感情が突き刺さるようなタッチで表現された。主演を務めた田村ゆかりを筆頭に、キャスティングの妙も光る一作。
(文/高橋克則)