2017年12月1日よりYouTubeにて公開されるXFLAGオリジナルアニメ「いたずら魔女と眠らない街」。リアリティのある描写とファンタジー要素が融合し、見終わったあとにほんわかと暖かい気持ちになる。そんなクリスマスシーズンにピッタリの素敵な作品になっている。そこで、本作を手がけた小松田大全監督と主人公の木戸あかりを演じた潘めぐみさんに、本作の魅力についてたっぷり語ってもらった。
――小松田監督が本作に参加することになった経緯を教えてください。
小松田 脚本がある程度決定した段階でお声がけいただいたんです。アニメーション制作会社・サンジゲンの松浦裕暁代表からオファーをもらったんですが、これまでもサンジゲンのスタッフとお仕事することが多かったので「もちろんやります」と答えました。企画がどう立ち上がったのかを知らないがゆえに、自分側にどう引きつけていくのか、どこを強調していくのかを考えたり、キャラクターを掘り下げていくところからスタートしましたね。
――自分の得意なことや、強みを出すにはどうしたらいいかを考えたということですか?
小松田 そういう意味で言うと、映像的にアクションを立てるというところですかね。そこは自分の得意とするところなので。でも考えたのはむしろ内容ですね。今回の作品を見せたいターゲットが、高校生や大学生だとうかがったんです。僕の甥っ子がちょうど中学生と高校生なんですけど、その子たちは「モンスト」のゲームを楽しみながら、アニメも見ていたんです。それよりもさらに上の大学生にアニメを見てもらう動機を持ってもらうには、何かひとつ要素を足さないとなぁと思っていたときに、職業モノとして、これから社会に出る人たちに予習してもらうのがいいんじゃないかと考えたんです。
――より身近にとらえられますよね。
小松田 なので、その部分でのディテールを足せればと思いました。NYPD(ニューヨーク市警察)のことも設定考証の人に調べてもらい、日本の警視庁との連携研修プログラムがあるとしたら、どういうことが可能なのか、拳銃は持てるのかなど、細かいところまで調べたうえで、アニメの中の嘘をつきました。実際に銃は貸せないんですけど、そこはアニメの世界観を優先しました。
――警察を舞台にするというのは決まっていたんですか?
小松田 それも決まってました。
――その職業によりリアリティを持たせることで、職業モノとしての色合いを濃くしていったんですね。場所がニューヨークというのも、ターゲットの視聴者たちが外国に興味を持ち始める年代ということでぴったりですよね。
小松田 幸いにというか、自分もニューヨークに行ったことがなかったんです。だから子供の頃に「ゴーストバスターズ」(1984年)を見て、胸に抱いたニューヨークへの憧れみたいなのを、このアニメにも込められたらいいなと思いました。そんな「憧れのニューヨーク」を描こうと思ったので、「本当はこの場所とこの場所は近くないんだけど……」みたいなところは映像としての嘘をついて、視聴者にとって楽しいほうを優先しましたね。
まさに「圧倒的」だった、潘めぐみの演技
――そして潘さんは、主人公の木戸あかりを演じていますが、まず本作と連動する「モンスト」にはどんな印象がありましたか?
潘 以前からゲームはプレイしていたんです。もともと身近なティーンエイジャーたちが遊んでいて、「何だい? それは」ってところから興味を持ち始めました。引っ張ったりする操作方法が面白いですよね。
モンストアニメのほうは、このお話をいただいてから見始めたんですけど、ショートアニメなのでサクサク見れちゃうんですよ。しかも(YouTubeで公開されているから)手元で好きなときに、誰でも見られるのでどんどん見ちゃいました。
――アニメというメディアがあると、より感情移入しちゃいますよね。
潘 はい。ゲームの楽しみ方も変わりました。モンスターに思い入れが増しちゃうから、「誰を使おう!」「ガチャでまた出てきちゃったけどむげにはできない」、みたいな(笑)。今はあまりモンスターと思って接していないかもしれないです。
――台本を読んだ印象はいかがでしたか?
潘 先ほどの職業モノというところで言うと、私が演じた木戸あかりというキャラクターが25歳くらいの女の子で、彼女がニューヨークに行くところから始まるんです。
台本を読む前にキャラクターイメージを読んだんですが、アクティブで明るい。気の強さがあるけどかわいいって書いてあって、見た目とイコールでした。でも台本を読むと、イコールというかプラス要素がたくさんありましたね。まずぬいぐるみのアップル……という名の自分と話すところから始まるんですよ。そこで「この子は何か抱えている!」みたいな(笑)。
――冒頭で気づいてしまったんですね。
潘 私のセリフがアップルからだったんです。しかもその前にフラッシュフォーワード(※劇中に未来のシーンを挟むこと)から始まるので、明るいと聞いていたけど、抱えているものは大きいぞって思いました。そこで第一印象とはだいぶ変わりましたね。
小松田 あかりのことを語り始めると、父親が不在とか影の部分が出てしまうんだけど、アニメではあえて語らないところでとどめておこうと思ったんです。真っすぐなあかりの中に、少しだけ弱い部分があって、それが折々であかりの足を引っ張るんだけど、弱ければこそ人を巻き込んで自分の目標へ向かっていける。そういうところをうまく描ければなって。
潘 そこに想像の余地がある気がします。視聴者側も全部説明されてしまうと、そのイメージで見ちゃうんですよね。でも想像の余地があることで、いろんな人の気持ちになって考えられるから、それは素敵だなって思いました。アニメってそういうものだよな!って。
――もしかしたらこういう過去があったのかもしれないと想像しながら見ると、何気ないシーンでも不意に涙が出てきたりしません?
潘 グッと来ますよね! 最後のシーンの意味も変わってくると思うので、40分がかなり深いです!
小松田 作り手としては、あかりの過去としてAならAと決めているルートがあるんですけど、それはBでもあると解釈はできて、答えはこちら側からは言わないんです。それは想像しながら補っていってもらいたいと思います。しかも配信という自由な形のいいところは何度も見られるというところで。1回目と2回目では解釈の幅が広がって、変わってくると思います。
――ちなみに潘さんは、あかりの影の部分を意識して演じたのですか?
潘 第1声がアップルだったので、彼女が抱えているものっていったい何だろうって考えながら読んではいたけど、あまり意識はしていなかったかもしれません。こういうシチュエーションで、この人と対しているからこういう気持ちになる。それは自然となっていくものだったので深くは考えていませんでした。
――確かに第1声のアップルは、かわいくて明るい声でしたね。
潘 そうなんです。アップルのセリフの最後に(あかり)って書いてあったので、これはもしかして私がやるなのかな?と思い、香盤表を確認しました。アップルがモンスターになったときは野中藍さんが演じているんですけど、あかりの明るい部分がモンスターのアップルになっているのかなと思いました。そしてその対称としてリバティがいるのかなって。
小松田 そういうところをキャストの皆さんに話し始めると、芝居が逆に複雑になっちゃうんですよ。でもすべてを察して、あかりの陽の部分に徹してくれている。何という勘のよさ! ありがとうって思ってました(笑)。
潘 て、照れますね。
小松田 潘さんとはラッキーなことに前の作品(「ブブキ・ブランキ」)から続けて一緒にやらせてもらっているんですけど、演技力の部分では、すごく信頼しているんです。でも潘さんの過去の作品から見ても、新人の社会人という引き出しはないのかもしれない。果たしてどんな引き出しを開けてくれるのか……と思ったら、そこにはものすごいものが詰まっていて「圧倒的じゃん!」って思いました(笑)。
潘 恥ずかしくなってきました……。でも、ガッツがあって負けん気が強い役を演じることは多かったので、明るいキャラクターという話をうかがったとき、自分にオファーがきた意味がわかったような気がしました。でもフタを開けてみたら人間味があって複雑なキャラでしたね。人って明るいだけではないし、明るいにも理由があるから。そういう意味では、あまりアニメのキャラクターとしては捉えてなかったかも。普段、アニメを見てると、エマみたいなキャラクターは出てこないですよね? どちらかというと外画っぽいというか。