2017年、夏。またひとつ「セーラームーン」の歴史が動いた。国民的ヒロイン、セーラームーンこと月野うさぎとちびうさの25周年の誕生日を祝うイベント「25th Anniversary うさぎ BIRTHDAY!!」が、東京・丸の内TOEIにて、6月30日、7月1日、7月2日の3夜連続で開催。名作、劇場版「美少女戦士セーラームーンR」(以下、劇場版R)をHDリマスター版で、しかも発声可能で楽しめる作品初の応援上映が開催された。
1993年に公開されて以来、多くの人を魅了し、その人生を狂わせてきた「劇場版R」。本作は“花”をモチーフに、耽美なストーリー、魅力的なアクション、そしてセーラー戦士たちの絆をぎゅっと60分に濃縮。クオリティの高さはもちろん、当時一般的ではなかった「女児向けアニメの劇場版」をヒットさせ、現在に至る道筋を作った金字塔的作品だ。また、のちの「少女革命ウテナ」「輪るピングドラム」にもつながる幾原作品の原点でもある。
本イベントは上映前にスペシャルゲストのトークショーも開催されるということもあり、チケットは第1夜、第2夜と即完売。好評につき第3夜が急きょ追加されたほどの人気ぶりだった。今回は第2夜に行われた、主人公・セーラームーンこと月野うさぎ役の三石琴乃さんと幾原邦彦監督のスペシャルトークの模様をお届しよう。
過酷なスケジュールにやせ細る幾原監督
夜の丸の内TOEIの館内は、かつてセーラー戦士に憧れた元女児たち(もちろん元男児たちも!)の姿であふれていた。期待感に満ちた場内にMC担当の喜屋武ちあきさんによる導入アナウンスが流れると、懐かしのBGMと共に響き渡る澄んだ声!
「ムーン・クリスタルパワー・メイクアップ! 愛と正義のセーラー服美少女戦士、セーラームーン! 月にかわっておしおきよ!」
……三石さんによる「ナマ」の名セリフに、悲鳴に近い歓声が上がる。この時点で涙腺がピャッとゆるんだ人も多かったはず。そして盛り上がる場内に幾原監督も登壇。監督が「セーラームーン」関連イベントに登場するのは、なんとこれが初めて。「20数年ぶりにセーラームーンに帰ってきました!」との挨拶に、興奮でいっぱいの拍手がわき起こった。
お2人が揃ったところでいよいよトーク開始。まずは当時を振り返っての軽い思い出話が繰り広げられる。ちなみに三石さんと幾原監督がじっくり話すのは「ウテナ」の現場(三石さんは有栖川樹璃を演じている)以来とのこと。互いの印象を聞かれ、「印象……」と呟き顔を見合わせるお2人。監督から三石さんへの第一印象は、「すごくきれいな人だ!」。いっぽう、三石さんから監督への印象は「小ジャれている」だったとか。
しかしそんな小ジャレた幾原監督も、制作が忙しくなってくるとどんどん痩せていったそうで、「横から見ると見えないくらい、青ーく薄ーくなっていた」と三石さん談。無印「セーラームーン」から「劇場版R」の制作にかけての時期は、まさに忙しさのピーク。監督はろくに睡眠も取れなかったようで、「あまりに忙しくて部分的に記憶が飛んでいる」と苦笑を浮かべた。