これがイヤホンズ! 体感3年!? を祝う2周年記念LIVE「月世界旅行楽団」レポート

TVアニメ「それが声優!」の劇中声優ユニットを具現化する形で誕生した、高橋李依、高野麻里佳、長久友紀による声優ユニット、イヤホンズ。その2周年記念LIVE「月世界旅行楽団」が2017年6月18日に東京キネマ倶楽部にて昼夜2部行われた。その昼の部をレポート!

オープニング映像に導かれまずはバンドメンバーが登場。そう、今回はイヤホンズ初のバンドを迎えてのライブだ。
1曲目は最新シングルのカップリング「理想郷物語」をライブ初披露。マイクスタンドに足を絡からませるセクシーな振り付けもあり、キネマ倶楽部独特の雰囲気に合わせての選曲か。
続いてはそのシングルの表題曲「一件落着ゴ用心」。イントロでの「セイ!」「ハイ!」「GO FIGHT!」を会場一体で叫び、その勢いのままに「ススメ!音羽少女隊」と畳みかけてきた。

最初のトークパート。「えーえーえー」と間を引き延ばしつつジェスチャーで光るブレードのカラーチェンジをうながし、会場がイエローに染まったところで「イエロー担当の高橋李依、りえりーです!」と自己紹介。高野麻里佳さん長久友紀さんもそれにならい、会場はイエロー、ブルー、ピンクの順に包まれた。

次のパートは「結成のきっかけ」と紹介されて2ndシングル「それが声優!」からデビューシングル「耳の中へ」。もっとも多く披露されてきたであろう、ファンにはおなじみの曲だ。だからこそ初のバンドサウンド、そして2年間での進化を強く感じた方も多いだろう。

イヤホンズはステージでの凝ったフォーメーションも光るユニットだ。前回の1周年LIVEでは高橋さんの足の怪我でそこを出し切れなかった悔しさはあったと思う。しかしそれを経ての今回。後方にバンドがいて奥行の狭いステージでの、触れ合うような距離での複雑な交錯も華麗に決めていく姿からは、無念の中からもポジティブなものを拾い上げ練り上げてきた頼もしさを感じられた。

また「それが声優!」内での早口言葉は、当時のリリースイベントでは「失敗せず言い切れるか?」が毎回のテーマにされるほど危うい個所であったが、それも昔の話。いまや語尾のニュアンスで遊んでみたり言い切る瞬間にくるっとターンしてみせたり、+αを加える余裕っぷりだ。

成長を見せつけてからのトークパートでは、高橋さんがデビューを振り返って「2年前か〜。3年くらい前な気がするんだけど」と言うと、高野さんも「ファンの方たちにも『3周年LIVE行きます!』って言われて、わたしも3周年な気がしちゃってた」と続ける。長久さんが「それくらい濃厚な時間」と語ると、会場も大きくうなずいていた。ファンにとっても「体感3年」レベルに濃い2年だったようだ。

次に披露されたのは、イヤホンズの曲でもっとも幻想的な「Magic of love」。優雅な椅子と例の魔法の本が雰囲気を高める中、作曲者である永井ルイ氏がサブステージに登場。ミッドレンジにエネルギーを圧縮した粒子ビームのような音色のギターで花を添える。

そして次が本日最大のサプライズ。場内アナウンスで「イヤホンズ初ソロ楽曲初披露」を発表! すぐさま披露開始!

高橋李依さん「パラレルギャロップ」はメリーゴーランドというモチーフのほかにサウンドや振り付けの面では、禁酒法時代を舞台にしたミュージカル「シカゴ」を意識、加えて元はキャバレーだった東京キネマ倶楽部の雰囲気も生かしたものとなっていた。芸術も下品さも浪漫もまぜこぜの猥雑な魅力を、アイドルポップスとミュージカルと昭和歌謡スイングが入り混じったようなサウンドと、特に右手の振りで豊かに表現。

高野麻里佳さんの「UNRURY COASTER」はジェットコースターをモチーフにしたストレートなロックサウンド。「ノイズビューティことまりんか」の声は、ナチュラルで心地よい歪み成分のおかげでどんなサウンドの曲でも楽器に負けずに抜けてくる、椎名林檎さんのようなタイプの声質だ。バンドサウンドとの相性は抜群。イヤホンズ内最強と思われる身体能力でステージングでも躍動し、「まりんか+ロック」の強さを証明した。

ソロパート最後は長久友紀さん。サブステージにセットされたドラを長久さんが思い切り叩くとチャイナなイントロが。観覧車モチーフの「いーあるさんせっと」だ。ドラ始まりでチャイナなこの曲名というところから曲の雰囲気を想像してみてほしい。おそらくその期待通りな曲だ。担当キャラがチャイナ服を着たりご本人がソロイベントでチャイナ服姿を披露していたりもする、長久さんのイメージに重なる楽しいソロ曲。

「アトラクション」を共通のテーマにしたというこれらのソロ曲は、終演後プレミアムチケット購入者にCDを配布。いずれはぜひ、より多くのファンに聴いてもらえる機会を願いたい。

続いては闇パート。「予め失われた僕らのバラッド」から「Yummy Yummy Party」と続けて披露された。シングルのジャケットやリリースイベントでも披露されている小悪魔衣装での歌唱だったが、ツノが印象的だったその衣装に今回は長いツメも追加された完全体!
なおそのリリースイベントでは、まりんかプロデュース「でこ出しがっきゅ」が誕生したが、今回の長久さんは「でこ出し+ポニテ」に進化していた。これもまりんかプロデュースだったようだ。

ライブも終盤。「成長!全力シンデレラ」でのタオル回しからのラストを任されたのは「サンキトウセン!」。
こちらの振り付けは「AKIBA’S TRIP -THE ANIMATION-」劇中で3人が演じた「まにあ〜ず」のライブシーンのために作られており、アニメ映えが最優先。人間が踊るためには作られていない。しかしそれを再現!
イヤホンズ史上でも飛び抜けてキャッチーなこちら「サンキトウセン!」はコンピレーションアルバム「AKIBA’S COLLECTION」収録曲だが、ライブ終了直後から配信サイトでの単曲発売も開始。チェックしてほしい。

そしてもちろん沸き起こったアンコールを求める「イヤホンズ」コール。それに応えて登場した3人からまたもサプライズ発表。
この2周年LIVE、去年の1周年LIVE、一昨年の「イヤホンズ vs Aice5」が、dアニメストアで配信決定!
さらにこの夏のコミケで原作同人誌「それが声優!」が最終巻を迎えることを受け、作中のイヤホンズの3人、双葉、いちご、鈴としての新曲制作を発表!「『それが声優!』最終巻SPECIAL Ver.」としてコミケにて販売されるとのことだ。

ここからいよいよ本当にラストスパート。

ラジオ番組風の演出でほかの曲を挟む展開の「あなたのお耳にプラグイン」に今回差し込まれたのは、こちらもライブ初披露「イヤホンズのスーダラ節」。酒と競馬と女好きでの失敗を「分かっちゃいるけどやめられねぇ」と繰り返す男を描いた、クレージーキャッツの名曲のカバーだ。
イヤホンズ版では歌詞に沿った小芝居が曲中に入るのだが、ライブではキャラを生かしたアドリブを混じえてさらにパワーアップ。音楽好きの高野さんは「飲み過ぎて(イヤホンで音楽を聴く喜びを語るうちに)終電を逃す女」、課金兵の高橋さんは「賭け事(十連ガチャ)に失敗して嘆く男」、なぜかオチ担当になりがちな長久さんは「女(まりんか)に転がされる男」を演じて喝采を浴びた。

ステージ全員と会場全体での記念撮影。そして長久さんからは「今年は全員元気にパフォーマンスできました」、高野さんからは「コマクちゃんたちにはそばにいてほしい」、高橋さんからは「作品で繋がった仲間とは必ずしもずっと一緒にいられるわけじゃないのに2周年を隣で迎えられたことがほんとにほんとにうれしい」と、それぞれの喜びが語られた。

最後の曲はクラシックの名曲たちのフレーズを再構築した「ヨロコビノウタ」。イヤホンズもファンも喜びを爆発させるこの歌で2周年ライブはまさに大団円を迎えた。

(取材・文/高橋敦)

イヤホンズ2周年記念LIVE「月世界旅行楽団」

■セットリスト
<第1部>
01.理想郷物語
02.一件落着ゴ用心
03.ススメ!音羽少女隊
04.それが声優!
05.耳の中へ
06.Magic of love
07.パラレルギャロップ(高橋李依ソロ)
08.UNRURY COASTER(高野麻里佳ソロ)
09.いーあるさんせっと(長久友紀ソロ)
10.予め失われた僕らのバラッド
11.Yummy Yummy Party
12.成長!全力シンデレラ
13.サンキトウセン!
EN.1あなたのお耳にプラグイン〜イヤホンズのスーダラ節〜
EN.2ヨロコビノウタ