「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!」OP主題歌「ワンダーステラ」、「コメット・ルシファー」OP主題歌「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」、「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」OP主題歌「虹を編めたら」と、この1年も、続々とTVアニメの主題歌を手がけてきたfhána。約1年ぶりとなるセカンドアルバム「What a Wonderful World Line」には、時代を見通す、彼らのメッセージが詰まっている。
「だから、それでもこの世界線を肯定しよう。」というテーマ
──前作「Outside of Melancholy」から約1年ぶりのアルバムがリリースされます。この1年はfhánaにとってどんな時間でしたか?
yuxuki waga アルバムを出して、いろいろな場所で演奏した結果、今に至ったという感じですね。アニサマやリスアニ!LIVEという大きなイベントへの参加もあり、前よりも、直にファンの方々と会う機会が増えました。
kevin mitsunaga いろいろな「初めて」がありましたね。
towana 初の海外ライブとしてアトランタ(Anime Weekend Atlanta)にも行きましたし。ファーストアルバム「Outside of Melancholy」をリリースして初ワンマンライブ、初ツアーだったから、その後にあれだけの経験をして、まだ1年しか経ってないんだという感覚です。
yuxuki ファーストアルバムを出すまでに、アニメの曲は結構やらせてもらっていたので、曲は知ってもらっているけど、fhánaがどんな人たちなのか知らないという状態から、去年は僕らを知ってもらえる機会が多かったのかなと。僕も、楽器店の店員さんに「この前のライブ、行きました」と声をかけられたことがあって(笑)。そういう身近なところから、fhánaをナマで見てくれる人が多くなってきたと感じるようになりました。
佐藤純一 体力的、精神的には大変な1年でもありましたね。その感覚が、今回のアルバムにつながっているというか。「What a Wonderful World Line」というタイトルは、「なんてすばらしい世界線」という、一見ポジティブなメッセージなんですけど、1960年代に作られたルイ・アームストロングの「What a Wonderful World」も、ベトナム戦争中で世界が素晴らしいとは言い難い時代だからこそ生まれた、世界の美しさを訴える曲でした。2016年の今も、きれい事だけではすまされない、理想とはほど遠い状態だと思っていて、「だから、それでもこの世界線を肯定しよう」と。そんなテーマが、アルバム全体を貫いているんです。
──こんな時代だからこそ、ポジティブなメッセージを届けたいと。
佐藤 それをやることで、自分自身がまずは楽になりたいという思いがありました。この世界に生きているということに客観的な意味はあるかというと、ないと思うんです。生きる意味というのは、1人ひとりが見つけ出さなければいけないもので、灰色の世界に色彩を与えるのは自分自身の意思なんだと。それを歌ったのが1曲目の「The Color to Gray World」で、アルバム全体で伝えたいメッセージでもあります。
──「The Color to Gray World」で始まって、2曲目がアルバムタイトル曲の「What a Wonderful World Line」です。この曲は、とてもポジティブな雰囲気を持つ曲ですね。
佐藤 でも、歌詞はストレートにポジティブではないんです。「分かりあえることなど望まない」とか「バラバラな世界」といった言葉が入っていて。でも、世界をそう捉えているからこそ、わかり合えたと思えたほんの一瞬が、まるで人生にとっての贈り物のようにに輝くのではないかと。信じることをやめなければ、奇跡が起こるかもしれない。世界は美しいんだというのが、「What a Wonderful World Line」で、これはラストの「gift song」にもつながるメッセージです。
──曲と曲が呼び合って、つながり合っているアルバムなんですね。
佐藤 7曲目の「虹を編めたら」は、TVアニメ「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」のOP主題歌ですが、他者と混ざることのできない人間というものを、7色が並行する虹にたとえて作った曲でした。でも、虹の色を編むように、それが交差していったらいいんじゃないかなと。個々の存在は保たれたまま、人と人が交わるということをイメージしたのが「編む」という言葉で、人はわかり合えないかもしれないけど、それぞれ認め合うことはできると思ったんです。この考え方も、アルバムを通して発信しているメッセージですね。
──人と自分は違うとわかっていれば、むしろ歩み寄ることができると。
佐藤 逆に、誰かと完全にわかり合うということは、自分と他人の区別がなくなって、すべての人が同一の存在になるということで、すごく孤独な世界なんです。わかり合えないからこそ、人は孤独じゃないんだと。そう考えて曲作りをすることで、自分自身も楽になれたように思います。
──「虹を編めたら」はアニメ作品のために作られましたが、今回のアルバムのテーマにも合致した曲になっていると。
佐藤 そうですね。何曲かタイアップ曲が入っている中で、一番合致したのは「虹を編めたら」だったんですが、「ワンダーステラ」(TVアニメ「Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ!」OP主題歌)も、「コメットルシファー ~The Seed and the Sower~」(TVアニメ「コメット・ルシファー」OP主題歌)も、今回のアルバムの世界線にたどり着くステップを、段階的に踏んできたなという感じがしています。
yuxuki それぞれのシングルをリリースした時のアートワークも象徴的で、「ワンダーステラ」で1人1色ずつだったんですけど、「コメットルシファー」で全員がモノクロになって、「虹を編めたら」で色彩が与えられて、不思議とアルバムのテーマに繋がったんです。そういう流れが偶然にもできていたのは面白いなと。
──そうやってアルバムまでたどり着いたというのは、運命的ですね。「世界線」という言葉がぴったりハマる1枚という感じがします。
yuxuki fhánaが一番最初に作ったCDが「New World Line」というタイトルで、そう考えると、今までのすべてが今回の「What a Wonderful World Line」とつながっているように思えます。「世界線」というのは、fhánaのひとつの大きなキーワードですね。