アニメ・ゲーム業界の第一線で活躍するクリエイターたちにインタビューを行い、仕事の流儀や素顔に迫っていく連載企画。記念すべき第1回は、「アイドルマスターミリオンライブ!」、「ロボットガールズZプラス」、「テラフォーマーズリベンジ」などで大活躍の声優・平山笑美さんに、お仕事からプライベートに関することまで、幅広く語っていただいた。
──声優を目指したきっかけは何ですか?
平山笑美(以下、平山)子供の頃から劇や、自分の声を録って遊ぶことが好きで、ジブリアニメを見るのも大好きでした。小学4年生の頃、母から声優という職業があることを教わり、「私のやりたいことすべてが詰まっている職業だ!」と気づき、声優を目指しはじめました。
──他の職業に興味はなかったのですか?
平山 高校進学の際、一時期だけ獣医に憧れたこともありました。動物も好きなので、「動物のお医者さんもいいかも」と少し迷いましたが、やはり一番やりたい声優を選びました。
──声優になるまでに苦労されたことはありますか?
平山 いろいろありますが、特にダンスが大変でした。私が高校生の頃には、すでに声優が歌ったり踊ったりするのが主流になっていましたが、高校までダンスをやったことがなかったので不安でした。高校時代にも地域のダンススクールに通ったりしたのですが、最初は先生の動線を見極められないくらい、鈍くさかったです。
──専門学校に入ってからはいかがでしたか?
平山 私が通った専門学校では、全コース全学年(数百人)で大ホールを使ってミュージカルをするんですよ。嬉しいことに、私は声優コースの学生としてただ1人、セリフ付きのキャストに選ばれました。けれども、他のキャストは全員ダンスコースの学生で、ダンスが抜群にうまかったのです。本番3週間前に先生から、「踊れないんだったら、このシーンから外しますよ」と言われたときにはかなりアセりました。最後は一緒のシーンに出た仲間にも助けてもらいながら、何とか踊りきることができました。
──影響を受けたアニメはありますか?
平山 やはりジブリアニメですね。小さい頃から「魔女の宅急便」が大好きなんです。内容がわかるようになってからは、「天空の城ラピュタ」も好きになりました。特に、シータが飛行石を壁の穴からパズーに渡すシーンは印象的で、彼女の「海に捨ててぇ~!」というセリフは、私のものまねレパートリーのひとつだったりするんですよ。
──転機になったお仕事はありますか?
平山 「アイドルマスターミリオンライブ!」ですね。北上麗花ちゃんという女の子を演じさせてもらっていますが、「プロデューサー」と呼ばれる方々だけじゃなく、普段あまりアニメやゲームに興味のない人からも注目してもらい、周囲の見る目がガラっと変わった気がします。この作品ではお芝居だけでなく、歌やダンスなどありとあらゆることにも挑戦させてもらっています。
──「ミリオンライブ!」は今年で3周年を迎えましたね。
平山 3年も関わらせていただいたお仕事は、「ミリオンライブ!」が初めてなんですよ。年単位でやってますと、「麗花ちゃんだったら、こういう言い方や歌い方をするだろうな」ということが、スッと出てくるようになりました。
──ゲームではセリフの途中で短いアカペラが入ることがありますが、あれはアドリブでしょうか?
平山 そうですね。私が麗花ちゃんの気持ちになって、即興で作曲しました。
──キャラクターソングを歌うときに、気をつけていることはありますか?
平山 麗花ちゃんの魅力が100%発揮されるよう、いろいろなテクニックを使っています。たとえば「サマ☆トリ~Summer trip~」は、夏の浜辺で男女が盛り上がっているイメージの歌なのですが、曲中の「イエーイ!」というかけ声などは「弾けている麗花ちゃん」、「ちょっと酔った麗花ちゃん」、「ちょっと小悪魔な麗花ちゃん」といった異なった演技を合わせて作っているんですよ。
──ライブではいかがでしょうか?
平山 体調管理は徹底してやっています。楽曲は1日でも歌わない日があると、最高の状態では歌えないので、どんなに忙しくてもライブまで1日1回は歌うように心がけています。ステージごとに演出を変えることもありますよ。たとえば、2016年4月3日に行われた「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」の福岡公演では、麗花ちゃんの声で「どげんしよったと~?」と福岡の方言を添えて、ファンの方々に挨拶しました。
──「ロボットガールズZプラス」の翔ちゃん(ゲッター翔)を演じるときに気をつけていることは?
平山 恥ずかしがり屋のボクっ娘を演じるのは初めての経験だったので、最初は難しく感じました。演技的にはボソボソしゃべりの中から、恥ずかしさと一生懸命さが伝わるように工夫しています。
──原作との関係で、注意したことはありますか?
平山 原作は拝見しました。原作にも橘翔ちゃんというゲッター翔のパイロットで、ボクっ娘の女の子が登場します。ただ、「ロボットガールズ」はそれ自体、独立した作品ですので、原作が好きな方にもまた違った視点で楽しんでいただけると嬉しいです。
──仲のいい声優さんはいらっしゃいますか?
平山 そうですね……。桐谷蝶々さん、山村響さんといった方々とは、プライベートでも遊んだり、旅行に行ったりしています。特に、桐谷さんは私が声優を始めた頃からの親友で、「ミリオンライブ!」でもお仕事をご一緒しました。(筆者注:桐谷蝶々さんは宮尾美也役で参加されています。)
──目標とする声優さんは?
平山 「○○さんのような声優になりたい」という意味での目標はないのですが、坂口芳貞さんの「水のような」お芝居には憧れています。初めて役を演じるとき、多くの人は「こういう役にならねば」と思わず肩に力が入ってしまうと思うのですが、坂口さんは水のようにスッと役に入っていき、まるで「坂口さんご自身がその役になる」感じで演じられるんです。
──今後演じてみたい役はありますか?
平山 気が強くてアクションをする、「戦う女の子」を演じてみたいです。「天空の城ラピュタ」のシータのような、「純粋なヒロイン」も素敵ですね。これまでおとぼけキャラやクールキャラを演じることが多かったので、今後はストレートに自分の気持ちを伝えるキャラにも挑戦してみたいと思います。
──2016年のご予定は?
平山 4月からTVアニメ「テラフォーマーズリベンジ」でペギー・フォーティ役を演じさせてもらっています。このほかにもいろいろなアニメ・ゲーム作品に参加していますので、今後の発表を楽しみにしていただければと思います。
──ファンの方にメッセージをお願いします。
平山 まだまだ未熟者ですので、2016年はいろんな意味で第一歩になる年だと思っています。今年はさらにワンステージ上がった平山笑美をお見せできるよう頑張りますので、皆さん、応援よろしくお願いいたします!
(取材/文:crepuscular)