1997年に全3話がリリースされたOVA作品「新機動戦記ガンダムW Endless Waltz」。TVアニメ「新機動戦記ガンダムW」の人気を受け製作された続編で、作中にはカトキハジメ氏によってリファインされた主役ガンダムが登場。これらの機体が活躍するコミック「新機動戦記ガンダムW Endless Waltz敗者たちの栄光」も2010年から2018年にかけて発表されるなど、四半世紀を過ぎた今日でも人気を誇るシリーズである。
その「Endless Waltz」(以下、EW)の主役機の1体にして、「死神」の異名を持つガンダムデスサイスヘルが「GUNDAM FIX FIGURATION METAL COMPOSITE」(以下、G.F.F.M.C.)に登場。同ブランドではこれまでメイン主役機のウイングゼロガンダムとその派生機を展開してきたが、ほかの主役機が商品化されるのは今回が初となる。そこでBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の企画担当者・稲吉太郎さんに、「G.F.F.M.C.ガンダムデスサイズヘル(EW版)」の魅力とギミックについて解説をお願いした。
(記事中の製品は開発中の試作のため、実際の商品と異なる場合もあることはご了承ください )
--「UC」や「THE ORIGIN」、「ククルス・ドアンの島」など、これまでのラインアップからG.F.F.M.C.は宇宙世紀作品が多い印象でしたので、今回の「デスサイズヘル(EW版)」の発表はかなり予想外でした。
稲吉 G.F.F.M.C.はカトキハジメさんプロデュースのブランドなので、カトキさんに縁のある機体は宇宙世紀に限らず商品化をしたいと考えています。そのひとつであるウイングガンダムゼロがご好評いただけたので、同じ世界観の機体であるデスサイズヘルの商品化に踏み切ることができました。
--稲吉さんも、デスサイズヘルには深い思い入れがあるそうですね。
稲吉 僕自身は『SEED』や『00』がストライクの世代で、『ガンダムW』はTVもOVAもリアルタイムではぼんやり記憶でした。でも「EW」の機体には思い入れがあるんです。まだガンダムとして認識していなかった頃に、友達のお兄さんにプラモデルを見せてもらい、あまりのかっこよさに感動したんです。特にロボットなのに有機的な翼のウイングゼロと、コウモリのような羽を持つデスサイズヘルには魅了されました。
--2018年に「ウイングガンダムゼロ(EW版)」を発売したとき、ほかの機体の商品化は想定されていたのでしょうか?
稲吉 当時、自分は企画担当ではなかったのですが、「シリーズ展開したい!」という野望はありました。そしてブランドの担当になってから、早い段階で「デスサイズヘルやりたいです!」とカトキさんに相談しました。最初のウイングゼロの後に「スノーホワイト」を発売し、そして「ウイングガンダム(EW版)」……いわゆるアーリータイプを発売し、これでカトキさんが手がけたウイングガンダムを続々と商品化できました。これで「縦軸」は埋まりましたので、やりたかった「横軸」へも展開ができるようになりました。
--では商品のアピールをお願いします。
稲吉 過去に発売された立体物の長所を取り入れつつ、G.F.F.M.C.ブランドならではの新解釈を盛り込みました。ウイングゼロでいうところの翼がふくらんだりスカートの装甲が開いたりするギミックですね。あれに相当するギミックをカトキさんと相談し、背面のアクティブクロークが広がる新設定を考えていただきました。ゼロの「ゼロモード」に対して、「グリムリーパーモード」と名付けています。過去商品でもアクティブクローク開閉は再現されましたが、G.F.F.M.C.版はブロックごとに伸びて大きく広げることができます。ただ横に伸びるだけではなくいろいろな展開方法を取り入れており、このギミックだけでカトキさんと1年以上もやりとりをしました。
アクティブクロークの展開比較。右側が「グリムリーパーモード」状態
--1年ですか!? たしかに複雑な広がり方をしますね。
稲吉 TV版デスサイズヘルのように羽を縦に長くすることもできますし、この状態で防御形態にすると身体を大きく包むことができます。ギミックが複雑なので保持力を高めるため随所にPOMを使用しています。また翼を広げた状態でポージングできるよう補助支柱も付属する予定です。また設定のアクティブクロークは背中にピッタリ付いた状態ですが、商品では背面から保持アームを展開することで本体との隙間を広げることもできます。こうすることでポージング時の印象が大きく変わるので、ぜひ試していただきたい機構です。
こちらが設定通りの、背中にピッタリ付いた状態
こちらは見映え重視の、背中からアクティブクロークを離した状態。カコミ内の保持アームで、アクティブクロークを支えている
--そしてデスサイズヘルの象徴ともいえるビームシザースですが、形状の異なる3タイプが用意されていますね。
稲吉 通常のビームシザースのほか、コミック『敗者たちの栄光』版のダブルビームシザースも付属します。これは『ガンダムW』ファン待望の武装だと思います。さらに今回はツインビームシザースというオリジナル武器を2本付けました。こちらはTV版デスサイズのビームサイズから逆算したデザインで、1本に2本分のビーム発生機を付けるとTV版ビームシザースのような2枚刃になります。また2本の柄を繋げて「ビーム・ナギナタの鎌Ver.」のような武器も作れます。
ツインビームシザース(一番左)とビームシザース(左から2番目)。全ての武装に、ビーム刃のエフェクトをセット可能
--プレイバリューが高いですね。ビームシザースだけでも十分に遊べます。
稲吉 まだまだ武器はありますよ(笑)。『敗者たちの栄光』版で登場した追加装備のホーネットも付属しています。TV版バスターシールドのように腕に付けることができますが、腰アーマーに装着するとロングスカート状になりシルエットが一変します。もちろん先端のクローは開閉しますし、僕のこだわりで左右が連動して動くようにしました。
--さらに大型のシールドもありますね。
稲吉 新設定の「バスターシールドヘル」ですね。ウイングゼロに付属したシールドの形状を踏襲しつつ、TV版バスターシールドを思わせるデザインです。そしてウイングゼロのシールド同様、飛行形態に変形する際の機首になります。
『敗者たちの栄光』に登場した新武装「ホーネット」2基と、新設定の「バスターシールドヘル」
--デスサイズヘルもバード形態になるのですか!?
稲吉 「カラス」の意味もある「レイブンモード」と言います。もともとウイングゼロを変形させたのは「せっかく翼があるのだから飛行形態にしたい」という発想なので、同じく羽を持つデスサイズヘルもそのコンセプトで開発しています。飛行形態はなるべく翼が後方に向くよう配慮しました。また本形態でもすべての武器が装備可能で、フル装備時はホーネットのクローが前方を向き、なおかつ赤いパーツが横に並ぶよう調整しました。目指したのは『ガンダムW』らしい「理にかなっていながらもケレン味のある機体」です。
--OVAとコミックに加えてTV版のデザインをもリスペクトし、さらに変形までするなんて豪華すぎますね。
稲吉 カトキさんには「デスサイズとデスサイズヘルの集大成にしたいです!」とお願いしました。ただ詰め込みすぎて下品にならないよう、リスペクトすべき部分は取捨選択しています。あとカラーリングにもこだわりました。アニメ版の両脚はブルーグレイ1色なのですが、商品ではわずかに異なる近い複数の色を使い分けています。
--そうなんですか? 言われなければ気付かないほど微妙な違いですね。
稲吉 目指したのは、その微妙さです。脚部をアニメどおり単色にすると間延びしてしまいますが、あまりに違う色を混ぜると本来のかっこよさを損なってしまいます。そこで本来のカラーリングを活かしつつ、立体映えする色味でカトキさんとフィニッシャーさんが仕上げてくださいました。あと別売のウイングゼロと並べることも意識しています。最初に発売したゼロは光沢仕上げでしたが、その後、リニューアル販売された「ウイングガンダムゼロ(EW版)Noble Color Ver.」はマットカラーなんですよ。どちらとも並べられるようグロス感とマット感が両立できる表面処理をしています。
接写しても間延びを感じさせない密度感とマットな質感。ブルーグレイ部に複数の色が使われていることがわかる
--素晴らしいアイテムです! では最後に今後のラインアップのヒントをいただけますでしょうか。
稲森 先ほどもお話ししましたが、カトキ版ウイングガンダムの続々ラインアップという「縦軸」が達成できたので、次は「横軸」にも移行します。昨年の「魂ネイション2022」ではアーリータイプの「デスサイズ(EW版)」の試作も展示しました。そしてスノーホワイトに相当するデスサイズのバリエーション機も見据えています。今後も「Endless Waltz」シリーズにご期待ください。
(取材・文/高柳豊[TARKUS])
【商品情報】
■GUNDAM FIX FIGURATION METAL COMPOSITE ガンダムデスサイズヘル(EW版)
・メーカー:BANDAI SPIRITS
・2023年7月発送予定
・プレミアムバンダイ内魂ウェブ商店で2/27より受注受付開始
・価格: 33,000円 (税込)