「ワイズマンズワールド リトライ」が2024年5月30日に発売された。「あの頃の“RPG”をもう一度」というコピーを掲げた2010年発売のニンテンドーDS用RPG「ワイズマンズワールド」を現行機用にリメイクした作品だ。
危険なダンジョンで外界と隔絶されたウィザレストの街。主人公クラウスは行方不明になった師を捜し、外界への道を見つけ出すためダンジョンへと挑む。彼を助けるのは師が創った3人の人造生命ホムンクルス。彼女らをモンスターの魂と融合させることで戦力を充実させていくのだ。
もともとの「ワイズマンズワールド」は、老舗ゲームメーカーだったジャレコが最後に発売した家庭用ゲームで、隠れた名作として長年支持され続けてきた。
あらゆる手を尽くしてネットでの話題を呼ぼうとしたプロモーションチームと、「あの頃の“RPG”をもう一度」という思いでゲームを作った開発陣の思いが詰まった本作が、14年の時を経て鮮やかによみがえったのである。2010年当時を振り返りつつ、「~リトライ」のプレイフィールも見ていこう。
ジャレコ最後の家庭用ゲームを振り返る
ジャレコはアーケードゲームの黎明期から活躍したメーカーである。ゲームセンターではかわいらしい車が駆け巡る「シティコネクション」や、飛行機に変形するロボットが戦う「フォーメーションZ」といった個性的なゲームを多数発売。ファミコンでは最初に参入したサードパーティーのひとつであり、少年忍者がさまざまなジャンルで活躍する「忍者じゃじゃ丸くん」シリーズ、幽霊となった主人公が敵の体に憑依して戦うアクションをゲームボーイに移植した「ファンタズム」など、据置機から携帯機まで幅広いラインアップを展開していた。
そんなジャレコも2014年には事業は停止。結果的に「ワイズマンズワールド」は、ジャレコの家庭用ゲーム機最後の作品となった。
この頃のジャレコは苦境にあった。2009年5月にWii用RPG「黄金の絆」を発売したものの、セールス的にはいまいち。実際に遊んだユーザーの評判も芳しくなかったという。
そんな中、ジャレコは「ユーザー本位のゲームメーカーとしてモノづくりへの情熱を大切にしよう」(当時のプレスリリースより)というコンセプトのもと「株式会社ジャレコ 崩壊への序曲」なるサイトを開設し、カウントダウンをスタート。カウントダウン終了時には「ジャレコ再生プロジェクト」として「the:rpg(仮)」という作品を発表、同作に登場するモンスターのデザインなどを公募している。勘の鋭い読者ならお気づきと思うが、この「the:rpg(仮)」が「ワイズマンズワールド」だ。
主人公クラウスは、師を捜し出し、外界への道を探すべくダンジョンに挑む
戦いの中では、重い決断を迫られることも。ボスを倒して得た魔力があればダンジョンの崩壊を食い止められるが、目の前にはその魔力がないと助けられない瀕死の人がいる。世界を取るか、人命を取るか?
モンスターデザイン公募も行われ、実際に採用されたものの一部は良くも悪くも本作はネット上のゲームファンの間で話題を呼んだ。
「好きの反対は無関心」「悪名は無名に勝る」という言葉もあるどおり、娯楽において関心を持たれないのは致命的である。ゲームをヒットさせるべく、使える手段を総動員した。それが「ワイズマンズワールド」のプロモーションにおける一連の流れということなのではないだろうか?
かくして「ワイズマンズワールド」は型破りなプロモーションで注目を集めたが、そのいっぽうで、こういった施策によるユーザー側の色眼鏡がゲーム内容への正当な評価を妨げた部分もあったはずである。今回のリメイクではこうしたノイズを可能なかぎり排除し、より純度の高い「ワイズマンズワールド」を目指した、文字通りの「リトライ」であると思われる。
「モンスターの魂」「触媒」といったリソースを使い、柔軟にパーティーを編成する
冒頭から、長々と本作に関するエピソードを振り返らせていただいたが、ここからはゲーム内容について話をしていこう。本作はコマンド選択式+ターン制というスタンダードなスタイルと、ホムンクルスの強化などとがったシステムをあわせ持つ、王道と革新的システムが同居する作品だ。「あの頃の“RPG”をもう一度」というコピーからもわかるとおり、ゲームやゲーマーに向き合った正統派RPGであり、型破りなプロモーションとは違った印象を受ける内容となっている。
フィールドにはモンスターのシンボルがうろついており、接触すると戦闘に突入する。一般的なRPGだと主人公が万能系の攻撃役、仲間は盾役や補佐役ということが多いが、本作にはそうした常識は当てはまらない。クラウスはさまざまな魔法を使えるが物理攻撃は大したことがない。いっぽう、ホムンクルスたちの能力はどのモンスターを融合させるかで決まってくる。つまり、ホムンクルスたちをしっかりと融合させてバトル全体を組み立てて行く、RPGファン向けの凝ったシステムになっているというわけだ。
戦闘では素早さが高い順にコマンド入力の順番が巡ってくるため、敵味方が入り乱れて戦うことになる。味方が連続して攻撃を当てられれば「チェイン」ボーナスが発動。攻撃の組み合わせにより、攻撃力やドロップ率がアップするなどの特殊な効果を得られるのだ。「攻撃を当てられれば」というのがポイントで、味方の行動順が連続していても、途中に回復を挟んでしまうとチェインボーナスは途切れてしまう。敵味方の行動順とにらめっこしつつ、ある時は無理をしてでも攻め込んでチェインボーナスを狙い、またある時は回復を重視するといった独特の戦術を組み立てられる。敵、特にボスの行動には傾向があり、こちらがどれくらいのダメージを食らうかはある程度予測を立てることが可能だ。長期戦の中でダメージと回復の収支を考え、数ターン先を読んで行動を決めるボス戦は、コマンド選択式RPG好きにはたまらないプレイ感といえるだろう。
連続して攻撃を当てれば「チェイン」ボーナスが発動
戦闘が終わればクラウスやホムンクルスたちのHP、クラウスが魔法を使うのに必要なMPも全回復し、たとえやられていてもノーペナルティで復活できる。どんなにボロボロになろうと、全滅さえしなければ勝ちというわけで、一戦一戦に全力を出せるし、回復のために街へ戻る必要もない。結果としてプレイヤーは戦闘に集中できるというわけだ。
いっぽうホムンクルスがスキルを使うためのSPは街へ戻らないと回復できない。ダンジョンを探索するのであれば、スキルに頼りすぎずとも雑魚との連戦に耐える融合が必要なわけで、ホムンクルスを中心にバトルを組み立てるという本作のコンセプトが強調されている。
複数のモンスターのシンボルをうまくまとめて戦闘に突入すれば「連戦」が発生。複数の敵パーティーと連続して戦うことになる。この「連戦」が発生すると、手に入る経験値やドロップ率もアップする。シンボルが激しく動く中で思わぬ連戦を強いられるも、逆転勝利してレベルアップできた、なんてこともあって面白い。
普段は1回の戦闘が終わると全回復するが、「連戦」では回復なしでの戦いに
そして、本作の大きな特徴がホムンクルスとモンスターの魂を融合させるシステムだ。ホムンクルスはそのままでは戦えず、モンスターを倒すとドロップする魂を融合させなければならない。この時、HPや攻撃力などのパラメータの傾向やスキルは、魂の持ち主であるモンスターから引き継がれる。HPと攻撃力が高い、いわゆる脳筋系モンスターの魂を融合させればホムンクルスも脳筋系となるし、モンスターが操る厄介なスキルも自分のものとできる。そのため、新しいモンスターが出るたび、融合させるのが楽しみになってくるのだ。融合のたびに魂は消費されるし、モンスターを倒しても魂は必ず手に入るわけでは“ない”ところがRPG好きのツボを押さえている。戦ってレアなドロップを狙うのはRPGにおける楽しさのひとつだが、本作ではこれがパーティーの強化に直結するわけで、戦闘が終わるたびに「魂出ろ、魂出ろ……」と祈るような気持ちになるのだ。
モンスターの魂はいわゆるドロップアイテム。入手できるかは運次第で、必要な数がそろっているとは限らない。「~リトライ」では魂の所持数制限もなくなった
特筆すべきは、融合に絡んだ本作独自の戦略性である。魂を融合させての強化やスキルを継承できる数には限界がある。ここに、戦闘において地・水・火・風の属性の影響が大きいこと、魂が消費型であること、どのスキルを継承させるかは自由であることが絡み、しっかりとパーティーを組み立てる考え方をしなければならないということだ。
ホムンクルスを強くするには、次々と強いモンスターの魂と融合させなければならない。その際のパラメータは、後から融合させた魂のものに上書きされる。融合させたモンスターとして生まれ変わるようなもの、と言い換えてもいいだろう。たとえば、強いモンスターの魂と融合した状態であっても、雑魚の魂と融合させると、ホムンクルスの能力は雑魚のものとなってしまう。
逆にいえば、強いモンスターの魂さえ手に入れれば一気に強くなれるということで、強敵と戦う際のモチベーションが上がる。そして、本作のモンスターは地・水・火・風の属性を持ち、“火は風に強いが水に弱い”といった相性が存在。その影響は魂を融合させたホムンクルスにも及ぶ。ホムンクルスたちは経験値をためてレベルアップすることもできるが、属性の影響は大きい。また、バトルにおける回復役、攻撃役といった役割はどの魂を融合させるか、どのスキルを継承してくるかで決まる。そして、融合の際に継承できるスキルの数は決められている。つまり属性と役割を考えなければならないわけだ。
どんなにスキルを持っていても、融合後に継承できる数は限られている。頭の悩ませ所だ
こうしたシステムの重要さと面白さが表れているのがボス戦である。本作のボスは非常にタフで素早いうえ、全体攻撃も当たり前。不利属性で戦うと一瞬でパーティーが半壊するが、同属性なら余裕で耐えきれたりもする。そのため、弱点属性を突けるスキルをどこからか継承してきつつ、攻撃に耐えられる属性のモンスターを融合させなければならない。言い換えれば、スキルを継承するための融合と、攻撃されても死なない体を作る融合、複数回の融合を計画的に行わなければならないということだ。
たとえば、とあるボスは物理攻撃が強い。普通に戦うと厄介な相手なのだが、“防御力は非常に高いが、魔法攻撃にはからっきし弱い”モンスターの魂を融合させれば、バトルがかなり楽になる。その分の魂が必要になるが、ホムンクルス3体すべてを同じ融合にする極端な編成も可能だし、現在融合しているのと同種の魂を融合させてパラメータを底上げしていくこともできる。そして、ゲームを進めるとモンスターの魂に加え、パラメータを上げる「触媒」アイテムも一緒に融合させられるようになる。
長所を伸ばすも、短所を補うもプレイヤーの判断次第だが、触媒も消費型なうえ、融合にはお金が必要になる。強力な触媒ほど要する費用も高くなるため、強さを求めるのであれば常に金欠気味となる。魂と触媒の在庫、そしてお財布とにらめっこしつつ頭を悩ませるのはとても面白い。HPを追求するか? 魔法防御で耐えるか? スキルは何を持たせるか? 強いモンスターの魂が2個しかないが、2人のホムンクルスに与えるか、それともひとりに集中するか? お金はクラウスの装備を買うのと触媒融合のどちらに使うべきか? 今妥協したパーティーを作るより、狩りに行って理想を目指すべきか……? とやりくりするのは楽しい。同時に「モンスターの魂も触媒もお金も何もかもほしい!」と渇望することにもなり、まさにコピーが掲げる「あの頃の“RPG”」っぽい感覚だ。
ボスはタフなうえに素早く、全体攻撃も当たり前に使ってくる強敵だ
これらのシステムが組み合わさることにより、本作のプレイは前向きなものになる。どんなにダメージを受けても戦闘後には全回復できるので、アグレッシブな戦法を採れる。街へ戻る際も何も消費することなく、コマンドひとつで自宅のベッドの前に戻れる。ダンジョンの要所にはチェックポイントがあり、再度突入する際もそこからスタートできる。加えて、「~リトライ」ではどこでもセーブできるようになった。要するに、どんどんモンスターと戦って魂や触媒、お金を稼ぎ、融合やパーティー編成を考えるためのシステムと周辺環境が整えられているので、楽しく遊べるということだ。
そして、特筆したいのがドット絵へのこだわりである。モンスターの魂をホムンクルスに融合させると、ホムンクルスの姿はそのモンスターにちなんだものになる(モンスターの擬人化と表現するとわかりやすいだろうか)。言い換えれば、モンスターの数だけホムンクルスの姿があるということ。モンスターとしてのデザインと融合後のホムンクルス版デザイン、それぞれが動くアニメーションが用意されているというわけで、これはひとつの突き抜けた方向性といっていい。作り手の「カッコいいモンスターを出したい! モンスターと人の中間的な姿も出したい! こいつらが戦う様をRPGとして表現したい!」という声が聞こえてくるかのようだ。
画面左前列の「ケルベロス」は三頭の獣
「ケルベロス」の魂をホムンクルスに融合させると、モンスターと人の中間的な姿になる
魂を融合させることで、ホムンクルスの姿はさまざまに変化していく
本作は「あの頃の“RPG”をもう一度」という目標に向け、コマンド選択式+ターン制というトラディショナルなスタイルに、ホムンクルスの強化などのとがったシステムを組み合わせた作品である。アグレッシブに戦っていく過程では、強さへの渇望と積み上げていく喜びが喚起される。融合や触媒のシステムを理解することで一気に強くなれるスピード感と合わせ、国産RPGらしいプレイ感がある。2010年の発売から現在まで、隠れた名作として愛されて続けてきたのもうなずける。
なお今回の「~リトライ」では、キャラクターデザインがリファインされ、ドット絵もHD化で美しくなった。どこでもセーブができるようになったのに加えてセーブスロット数も増え、魂を含んだアイテム所持数の制限が撤廃。戦ったことのあるモンスターとの再戦や、クリアしたセーブデータを引き継いでのニューゲームもできる。特にアイテム所持数の撤廃とどこでもセーブの恩恵は大きく、セーブデータを分けつつ試行錯誤していけば、初プレイの人もシステムに慣れやすいはずだ。
本作が発売された当時、会社を建て直すためになりふり構っていられないというジャレコ側のプロモーションにおける思惑が存在したであろうことは確かだ。しかし、14年という歳月が、ゲーマーに向けてRPGの面白さを再度問いかける作品を作りたいという開発側の意図がストレートに伝わる状況を生み出したのではないだろうか。「~リトライ(再挑戦)」というタイトルからは、そこに込められた作り手の思いも見えてくるかのようだ。ニンテンドーDS版を遊んだ人はもちろんのこと、コマンド型RPGが好きな人であれば、本作の魅力を存分に楽しむことができるだろう。
(文/箭本進一)
タイトル情報
■ワイズマンズワールド リトライ
対応機種:PS5/PS4/Switch ※Xbox One、Steam 2024年発売予定
メーカー:シティコネクション
発売日:2024/5/30
ジャンル:RPG
価格:パッケージ版4,950円(税込)
Switchダウンロード版3,980円(税込)、PS5/PS4ダウンロード版3,960円(税込)
プレゼントキャンペーン概要
Switch版「ワイズマンズワールド リトライ」を抽選で1名様にプレゼント!
2024年5月30日発売のSwitch版「ワイズマンズワールド リトライ」(通常版)を抽選で1名様にプレゼント
<応募要項>
・応募期間:2024年5月30日(木)~2024年6月6日(木)23:59
・当選人数:1名
・当選発表:賞品の発送をもって発表にかえさせていただきます
・賞品発送:順次発送予定
・応募方法:以下の専用応募フォームにて受付
<注意事項>
・応募には会員登録(無料)が必要です。
・応募はひとり1回に限らせていただきます。
・抽選結果・発送状況に関するお問い合わせには応じられません。
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・下記の場合は、当選を無効とさせていただきますので、ご注意ください。
同一住所または同一世帯で複数回ご当選されている場合
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