アメリカ発CGアニメのスピンオフを、日本アニメの文法でつくる! 「RWBY 氷雪帝国」のストーリーを創出した虚淵玄(ニトロプラス)×冲方丁の仕事術【アニメ業界ウォッチング第89回】

「RWBY(ルビー)」とはアメリカの独立系スタジオ、ルースター・ティースが自主的に制作している3DCGアニメシリーズ。現在はVolume.8まで公開されており、日本語版のBlu-rayも発売されている。ルビー、ワイス、ブレイク、ヤン……個性の異なる4人の少女たちがチームを組んで、それぞれの特殊能力を駆使して魔物と戦う「RWBY」は、日本のアニメ・漫画・ゲーム文化の多大な影響のもとに生まれた作品だ。その「RWBY」のスピンオフが、ほかでもない日本で2Dアニメとしてつくられる……と聞けば、誰もが驚くだろう。
しかも、制作スタジオは「化物語」「魔法少女まどか☆マギカ」など、ファンタジックな世界観の映像化が得意なシャフト。そして「まどか☆マギカ」でも知られる虚淵玄(うろぶちげん)さんがアニメーション原案を、「PSYCHO-PASS サイコパス 2」および「PSYCHO-PASS サイコパス 3」や「蒼穹のファフナー」シリーズの冲方丁(うぶかたとう)さんがシリーズ構成と脚本を担当している。理想的なスタジオと最高の脚本家チームにより、日本のアニメらしい個性的なスピンオフに仕上がりつつあるようだ。
今回は、虚淵さんと冲方さんにストーリー構築の要点、原作アニメも含めた「RWBY」の魅力についてお聞きした。

創意工夫に富んだ「RWBY」の3DCGは、「絵」として完成度が高い

── まず、原作アニメである「RWBY」の印象を聞かせてください。

虚淵 まず、本編が始まる前に、ルビー、ワイス、ブレイク、ヤンがそれぞれ単独で戦う短いトレーラー映像が公開されましたよね(2012年11月)。その時点ですでに驚いていたのですが、長編としてシリーズ化すると聞いて、「本腰を入れて取り組むのか」と期待感がふくらみました。当初は同人アニメのような草の根レベルから出発したのに、世界的に広がって長期シリーズとして展開するのは、レアな例でしょう。ですから、「これは伝説的なアニメ作品になるのではないか」と、初期のころから感じていました。

冲方 僕は数年前に、Volume.1~4あたりまでを一気にソフトで見ました。日本のコンテンツから影響を受けている部分もあるけれど、アメリカならではの視点もあって、ハイブリッドな面白い作品という印象でした。人間を描くうえで気をつけないといけないところ、キャラクターの扱い方など、日本人とは違う感性でつくられているので、個人的に勉強させてもらえました。

── 映像的には、いかがでしたか? ディズニーなど大手スタジオのハイエンドなアニメに比べると、チープに見えかねないCGだと思うのですが。

虚淵 今でこそマシンのスペックが向上し、作り手のスキルもアップしていますが、初期の「RWBY」のビジュアルにも独特の味わいがありました。それほど制作費がかかっているわけではないし、キャラクターの声は制作スタッフが持ち回りで演じていたほどでしたよね。それなのに、こんなにも壮大な長編シリーズをつくってしまう熱量に脱帽しました。シリーズの当初は、街を歩いているモブのキャラクターたちがシルエットでしたよね。その割り切りは潔いし、創意工夫して乗り切っているとも言えます。自分たちの持ち札で何を表現すべきか、それを見極める判断力は映像のクオリティとは関係なく、素晴らしいと思いました。

冲方 「絵」として、ちゃんと成り立っているんですよね。確かにモブはシルエットだし建物も平面的に描いてあるんだけど、しっかりと奥行きが感じられる。それは、「絵が上手い」ということでしょう。それと、虚淵さんのおっしゃった初期のトレーラー映像を見たとき、「なんでこんなに動きがすごいんだ?」と驚きました。誰が、どんな理屈でアクションを考えて絵コンテを描いているのだろう……と思っていたら、ひとりのスーパークリエイター(原作者のモンティ・オウム氏)が動きをつけていると後で知りました。力業ではなく、才能なんですね。動きを見せたいときは、背景をゴチャゴチャさせないほうがきれいに見せられます。アクションに特化した絵づくりで、とても完成度が高いと思いました。

── ストーリーは、どうでしょう? 最初は学園モノとしてスタートして、今は異世界をクエストする神話的な冒険モノに広がっていますが……。

冲方 明らかに自分の知っているストーリー運びと違うので、「こういうアニメなんだ」と先入観を持たないようになりました。各エピソードの尺もまちまちだし、次に何が起こるのか本当にわからない作品です。

虚淵 長尺で展開するとしても、せいぜい5~6話ぐらいの規模の学園ドラマで収めるものと油断していました。まさか、ここまで大風呂敷を広げるつもりで最初から壮大なストーリーを用意していたとは、さすがは「スター・ウォーズ」をつくったお国柄だなあ、という驚愕がいまだに続いています。現時点ですでに、どうやって畳むのか見当もつかない(笑)。

冲方 「RWBY」は、ビックリ箱のような作品です。フットワークが軽いので、作り手が「こっちのほうが面白い」と思った方向へ、どんどん進化していくんでしょうね。

── では、「RWBY 氷雪帝国」の企画がどのように立ち上がったのか聞かせてください。