フリューのアクションRPG「REYNATIS/レナティス」が2024年7月25日に発売される。リアルに再現された渋谷で「魔法使い」たちが派手なバトルを繰り広げる中、現代の世相を反映した物語が展開するアクションRPGのインプレッションをお届けしていこう。
「REYNATIS/レナティス」の舞台は2024年、つまり現代の日本。この世界では魔法が禁止されており、「魔法使い」たちは弾圧されている。魔法使いは魔法を隠して一般人に紛れるか、政府に反抗する魔法使い集団「ギルド」に参加するか、魔法を取り締まる警察「M.E.A.」に所属するか、どこにも属さない「ノラ魔法使い」になるかを選ぶしかなかった。中でも渋谷は、魔法使いだけに見える異世界への入り口「フォグ」が点在しており、自己顕示欲を抑えきれない魔法使いたちを引き寄せている。渋谷の街で、最強を目指すノラ魔法使いである大学生・霧積真凛と、M.E.A.に所属する西島佐理、対照的な2人が出会うことで混沌とした状況が動き始める……。
本作で描かれるのは、リアルな街に魔法や魔法使いが存在する、現実とフィクションの狭間にある渋谷だ。渋谷の地形は現実と同様に再現されており、駅前からスクランブル交差点を渡れば109があり、少し足を伸ばせばセンター街や道玄坂、宮下公園といったおなじみのスポットも存在。「TSUTAYA」を始めとする実在の店舗やブランドともコラボしており、ビルや店舗に現実そのままのロゴや看板が掲出されているため、あちこちを観光して回るのも楽しい。
そんな渋谷に魔法の要素が振りかけられているのが、本作の魅力的な部分の一つだ。夜には外出自粛令が出されているのだが、魔法使いたちや違法薬物「ルブルム」の中毒者が起こす騒ぎを見物に来た一般人たちがうろついており、緊張感に満ちている。
そして、渋谷のあちこちにはフォグや、魔法のグラフィティ「ウィザート」が点在しており、魔法使いだけがこれを見ることが可能だ。関東圏に住む人であれば週末に遊びに行く街、その他エリアの人にはアニメや漫画で見知った街、当たり前の場所が実は魔法の街であり、そこに神秘が隠されているという辺り「ハリー・ポッター」シリーズにも通ずるところがある。また、承認欲求をこじらせた人々や外出自粛令、騒ぎを見物に来た一般人といったキーワードも現代的で、プレイヤーを物語の世界に引き込んでくれることだろう。
渋谷の街には違法薬物中毒でモンスターと化した人間「ダムド」や、魔法を取り締まるM.E.A.の隊員がいて、バトルに突入することもある。
バトルはアクション性が高いことに加えて、システムはかなり独特。「解放」と「抑圧」という2つのモードを切り替えて戦わなければならない。
解放モードは魔法使いであることを隠さない状態で、さまざまな魔法を使うことができる。本作では通常攻撃からスキルまで全てが魔法なので、攻撃モードと考えてもいいだろう。ボタンを連打するだけで剣や銃、拳にハンマーといった魔法武器で華麗な連続攻撃ができ、画面も派手派手だ。特に佐理は通常攻撃でも空中を飛び回るため、リアルな渋谷の街並みとの対比が見ていて面白い。
スキルもボタン一つで使え、魔法生物を召喚したり、飛び道具を放ったり、強力な連打攻撃を仕掛けたりとバリエーションも多彩。新しいスキルはビルやトンネルの壁に描かれたウィザートを探し出すことで手に入るので、探索とバトルが組み合わさっているのも面白いところだろう。
全ての攻撃はMPを消費し、MPが尽きると攻撃手段がなくなってしまう。MP回復を待って待機するのもいいが、抑圧モードを理解すればバトルがより楽しくなる。
抑圧モードは、フードや帽子を被って魔力を抑え、自分が魔法使いであることを隠す状態。自分からは一切攻撃できない。しかし、敵の攻撃が迫ると時間がスローになり、ここでタイミング良く回避ボタンを押し離しすると「回避吸収」が発動。攻撃を無効化してMPを回復することができる。ここから解放モードに切り替えると「バースト」が発動し、スローな時間の中で一方的に攻撃可能となる。
近年のアクションRPGでは、攻撃をギリギリで弾いたり回避する「パリィ」や「ジャスト回避」が流行している。本作の抑圧モードと解放モードはこうした高等テクニックを気軽に楽しめるシステムといえる。モードの切り替えと回避吸収を使いこなせれば、解放モードでMPが尽きるまで大暴れし、抑圧モードの回避吸収からバーストで再び大暴れする……といった本作ならではの戦いが可能。耐える抑圧モードとイケイケの解放モードのコントラストが鮮やかで、まさに抑圧と解放だ。
雑魚敵なら抑圧モードからの解放だけで楽に圧倒できるが、ボス戦ともなるとそうもいかない。抑圧モードでも回避吸収できない大技を使ってくるからだ。
こうなると、ジャンプや移動で攻撃範囲から逃れなければならない。通常攻撃に大技が混ぜ込まれることもあるため、攻撃を見極めて適切な対応をするのが重要だ。中にはボスが大技を使いまくるのに、味方には近接系のキャラクターしかいない……なんてこともあるが、ボスの動きをしっかりと見て、大技の死角に潜り込んで攻撃すれば道は開ける。
この辺りはアクションゲームのノリで、雑魚戦とはひと味違ったスリルある戦闘を楽しめる。倒されてもペナルティなしにすぐコンティニューできるため、戦いながらボスのパターンを見切っていこう。
渋谷の探索中にも抑圧モードと解放モードを切り替えられるのが面白いところ。
抑圧モードなら魔法使いであることもバレず普通に過ごせるが、バトルなどで解放モードにした途端大騒ぎとなる。一般人と会話できなくなるばかりかSNSで「魔法使いが現れた!」という情報が拡散されてしまうのだ。放置していくとトレンドランキングが上昇していき、1位になってしまうとM.E.A.の精鋭が取り締まりにやってくる。そうならないためには街の特定スポットでほとぼりを冷ましたり、現場を離れて逃げ回るのが重要になるのだ。
なお、警官である佐理の場合はどこで解放モードにしようと通報されることはない。頼る者のない真凛と公僕である佐理という立場の違い、そしてSNSの炎上がゲームシステムで表現されているのがユニークだ。
物語の面でも現代的な色合いが強い。佐理はM.E.A.に所属し、人を不幸にするルブルム撲滅を目指すが、M.E.A.の組織は硬直化していて思い通りには動けない。メッセージアプリで同僚と愚痴をこぼしたり、仕事や歓迎会の打ち合わせをする辺りはサラリーマンあるあるで、社会人のプレイヤーなら感情移入できるだろう。
一方の真凛はどこにも所属しないノラ魔法使いだが、思ったほど自由ではない。M.E.A.は容赦なく魔法使いを取り締まるし、ギルドの庇護は受けられない。加えて魔法使いの血はルブルム中毒者にとって価値があるため、四方八方から狙われているような状態だ。それでも魔法使いたちは自己顕示欲や己が目的のために渋谷に惹きつけられるし、ノラ魔法使いを助ける「オウル」という支援グループも存在している。組織に属さない者が立場の弱さゆえに辛い思いをするというのは、現代の縮図といえるだろう。
リアルな渋谷という舞台に魔法というファンタジー要素を加え、現代的な物語を爽快なバトルシステムが彩る「REYNATIS/レナティス」。モードの切り替えや回避吸収に伴うボタンの押し離しといった部分は本作の個性であり、慣れると派手なバトルがさらに奥深くなるという印象。アクションゲーム好きやRPG好きはもちろん、物語も青年マンガや深夜アニメ的な内容のため、こうしたエンタメが好きな人も楽しめるタイトルといえるだろう。
(文/箭本進一)
【タイトル情報】
■「REYNATIS/レナティス」
対応機種:PS5/PS4/Switch
発売日:2024/7/25
ジャンル:アクションRPG
価格:8,778円(税込)
メーカー:フリュー