「アンチテーゼ」「クラクトリトルプライド」と勢いのあるシングルを続けてリリースし、バンドを背負っての全国ツアーを成功させたことで、アーティストとして大きな飛躍を遂げた夏川椎菜。その成果となる、シングル2枚を含む2ndアルバム「コンポジット」がついに完成した!
アルバムには喜怒哀楽、それぞれの感情を表現した13曲を収録。みずから作詞を手がけた曲も多く、今の夏川椎菜のすべてが詰まった、充実の1枚となった。また、完全生産限定盤のBlu-rayには、昨年2021年7月に開催された「夏川椎菜 Zepp Live Tour 2020-2021 Pre-2nd」@Zepp DiverCity(TOKYO)の模様が完全収録され、これも見どころに。
かわいい系のポップスからエッジの効いたロックまでどの曲もリスナーの感情を刺激し、楽曲の世界観に引き込んでいくのが夏川椎菜。唯一無二の音楽を堪能してほしい!
3年間、歌い続けてきたことで、成長を感じています
── 2ndアルバム「コンポジット」、早速聴かせていただきました。夏川さんにとっては前作「ログライン」以来、約3年ぶりのアルバムですね。どんな作品にしたいと考えましたか?
夏川 1stアルバム以降、「アンチテーゼ」「クラクトリトルプライド」と2枚のシングルをリリースして、「アンチテーゼ」は喜怒哀楽の「怒」、「クラクトリトルプライド」は「楽」を表現した楽曲だったんです。アルバムもそれを引き継いで、喜怒哀楽のどれかに当てはまる曲を集めた1枚にしようというコンセプトが、早い段階で決まりました。この3年の間に得た経験と歌への学びを生かしつつ、今、私はこんな感情でいます、こんな気持ちで生きていますということを、ファンのみなさんに聴いてもらえるアルバムにできたらいいなと思いました。
── この3年のアーティストとしての成長、変化というものを、どう感じていますか?
夏川 そうですね……、1stアルバムのときよりは体力がついたかなと思います(笑)。歌に余裕が出てきたことで、細かいニュアンスに気を配ったり、音を思うように伸ばしたりすることができるようになりました。それによって、頭の中でこう歌いたいと思い描いたことが、しっかり表現できるようになってきたと思います。
── 成長できた要因として、まずは体力の向上があったと?
夏川 はい、それは間違いないと思います。1stアルバムを出したころは、ライブで歌っていて息切れしちゃうこともありましたし、喉も壊しやすかったんですけど、スパルタ訓練を受けた結果(笑)、ちょっとやそっとじゃ枯れない声と壊れない喉が手に入りました。
── 夏川さんがパワーアップされたのは、「コンポジット」を聴いてよくわかりました。体力を激しく消費する楽曲が揃っていて、これを今後はライブで披露していくんだな、すごいなと。
夏川 レコーディングでは1曲1曲身を削るようにして歌って、毎日、「今日も出し切った~!!」という心地いい疲れを感じつつ、肉体的にはしおしおになった状態でスタジオから帰っていました(笑)。だから、今後のライブに向けて、一層がんばっていきたいです。
── 体力をつけるために、エクササイズしたようなことはあったんですか?
夏川 「毎日、ランニングしてました!」とか言えたら説得力があるんでしょうけど、特に何もやっていないんです(笑)。でも、常に新曲は、その時点での夏川の全力よりも少し高いレベルにあるものをいただいていたので、それを歌いこなす努力を重ねることが、日々のトレーニングになっていたと思います。特にライブのときは準備が絶対に必要で、スタジオを借りて「こそ練」を重ねていました。ライブを重ねることが一番の鍛錬になっていたと思います。
── 実戦的に鍛えていったという感じですね。体力面以外で、成長を感じることはありますか?
夏川 耳が鍛えられたというとちょっと大げさなんですけど、音楽の聴き方が変わってきたなあと思います。以前は「かわいい曲だな」とか「この人、音を外さなくて上手いな」とか感じるだけだったのが、今は、細かい感情の入れ方とかニュアンスの付け方に気づけるようになって、自分だったら、どう歌うだろうと考えながら聴くようになりました。
── スキルと意識の両方に、成長を感じているということですね。その成果がまさに、2ndアルバム「コンポジット」だと思います。高いアーティスト性を感じ、端的に言ってかっこいいアルバムでした。
夏川 うれしいです。ありがとうございます。
── 先ほどもおっしゃったように、喜怒哀楽を表現するということが、今回のコンセプトになっているんですよね。
夏川 先行シングルにならってアルバムの新曲も、歌詞の方向性や楽曲を聴いたときのフィーリングが喜怒哀楽のどれかに当てはまるように作っていきました。4thシングル「アンチテーゼ」とカップリングの「RUNNY NOSE」が「怒」、5thシングル「クラクトリトルプライド」とカップリングの「That’s All Right !」が「楽」の曲だったので、アルバムの新曲9曲は「喜」と「哀」を多めに集めてバランスを取って。そのうえで、アルバムの流れが喜→怒→哀→楽となるように組み立てていきました。でも、完成したアルバムを聴いてみたら、曲によってはっきりと感情が4つに分けられているわけではなく、全体を通して、グラデーションのようになだらかに感情が移り変わっていく感じになっていました。
── 中には複数の感情が入りこんでいる曲もありました。そのほうがよりリアルですよね。アルバムタイトルの「コンポジット」には、どんな思いがこめられているのでしょうか?
夏川 「コンポジット」は「合成」という意味がある単語で、日々過ごす中で感じたいろいろな感情が合わさって、今の夏川ができていますよ、という思いをこめました。
リード曲「ハレノバテイクオーバー」は、田淵智也さんからの2度目の提供曲です
── では、各曲についておうかがいします。1曲目「ハレノバテイクオーバー」はUNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんの作詞・作曲、R・O・Nさんの編曲によるアルバムのリード曲です。
夏川 「クラクトリトルプライド」に続く田淵さんからの提供曲で、今回は歌詞も書いていただきました。「クラクトリトルプライド」とは違う方向性を持ちつつ、ライブで盛り上がる「喜」の曲を作ってくださいとお願いして。さらに、1曲目にふさわしい、世界が開けるようなイメージの曲ということもお伝えしました。
── 今の言葉通りの曲になりましたね。
夏川 はい。喜びにあふれた曲調で、歌詞には「始まるんだ」という言葉が入っていて。もともと「クラクトリトルプライド」を最後の曲にしようと決めていたので、今回のアルバムは田淵さんの曲で始まり、田淵さんの曲で終わることになりました。
── 「感情を4つに分けろって雑が過ぎないか?」という歌詞があって、アルバムのコンセプトにもつながっていますね。
夏川 そうなんです。いきなり感情をはっきりと4つに分けることを否定していて(笑)。でも逆に、田淵さんって予言者なんじゃないかと思うほど、アルバムの未来を言い当てていて。さっきも言った通り、アルバムが完成してみたら、感情は4つに分けられるものじゃなくて、もっと複雑なものなんだという結論にたどり着いていたんです。
── さすが田淵さんですね。「ハレノバテイクオーバー」も田淵曲らしく歌詞の言葉数が多くて、歌うのは大変だったのではないでしょうか?
夏川 はい、大変でした。「クラクトリトルプライド」よりもさらに。でも、聴いただけでは「クラクトリトルプライド」のほうが難易度が高そうに感じるんですよね。それがもどかしくて(笑)。より判別しにくいところで難しいというのが「ハレノバテイクオーバー」で、私に求められるレベルが一段上がった感がありました。
── この曲にはミュージックビデオ(MV)があります。YouTubeではすでにショートバージョンが公開されていて、アルバムのBlu-rayにはフルサイズのMVが収録されます。撮影はいかがでしたか?
夏川 まず、「ハレノバテイクオーバー」というタイトル通り、晴れの日に撮れたのがよかったです。外ロケは見事に晴れまして、きれいな青空の下で、ダンサーさん4人を従えてパフォーマンスすることができました。今までのMVで見せた笑顔とは違う、「してやったり」という感じのかっこいい笑顔を意識して、「楽しい!」というよりも「ついてこいよ」という雰囲気になって、ライブのときの私に近い感じになったと思います。
── 歌っているときの表情には、力強さがありました。室内での撮影では、ダンスシーンのほか、夏川さんがパソコンで映像編集しているシーンもありました。モニターの画面に映っているのは、今まさに見ている「ハレノバテイクオーバー」のMVなんですよね。このアイデアは面白いなと思いました。
夏川 YouTubeにいろいろな映像をアップしている私らしいMVになりました。「コンポジット」という言葉は映像用語でもあって、「ハレノバテイクオーバー」だけでなくアルバム全体を意識したMVでもあるんです。合成によって、画面の中にまた画面があるみたいな感じでカットをつないでいくことで、いろいろな感情がシームレスにつながっていく様子を視覚的に表現しました。
── フルサイズのMVには、ショートバージョンでは見ることのできない、「あるもの」を破壊するシーンがあるんですよね。
夏川 壊してますね(笑)。初回生産限定盤のみに収録されているMVのメイキングを見ると、あのシーンがなぜああいう演出になったのか、理由がわかると思います。また、壊している「あるもの」は、1stアルバムで印象的に使われていた物でもあって、1stアルバムから2ndアルバムにかけて、私は変わったんだぞというメッセージも込められています。