アキバ総研をご覧の皆様、いかがお過ごしでしょうか。ゲーム買い過ぎちゃう系ライターの百壁ネロでございます。突然ですが皆様、最近、「いいゲームで遊んだな~!」という実感をしましたか? いいゲーム体験の基準は人それぞれではありますが、「思わず時間を忘れてプレイし続けてしまう」「キャラクターを動かしているだけでもなんとも言えない充実感が得られる」なんてことがあると、筆者は「いいゲームで遊んだ」という実感ができるなと個人的には考えていたりします。
というわけで今回は、「いいゲーム」で遊びたい人にオススメの作品、Steamで発売中の「ENDER LILIES Quietus of the Knights」をご紹介していきます。
「ENDER LILIES」の物語と基本システムを紹介! 少女リリィは魂たちとともに果ての国を進む……。
「ENDER LILIES Quietus of the Knights」(以下、ENDER LILIES)は、ゲームを進めていく中で獲得したスキルによって行けるエリアが広がっていく、いわゆる「メトロイドヴァニア」と呼ばれるスタイルの探索型2D横スクロールアクションゲームです。レベルアップやスキル強化といった概念があり、RPG的なプレイ感も含まれています。
本作で最も目を引くのは、退廃的ではかなげな色使いが特徴的な、美しすぎるグラフィック。ゲーム中のアニメーションは、独特の幻想的な雰囲気も相まって動く絵本を見ているような錯覚を覚え、随所に挿入されるムービーシーンは思わず見とれてしまうほどのクオリティ。ゲーム内容を知らなくてもこのグラフィックだけで即購入を決めてしまう、いわゆる「ジャケ買い」的な人も多数いるのではないかと感じます。
ゲーム内容のご紹介の前に、まずは「ENDER LILIES」のストーリーと世界観をご紹介していきましょう。
本作の舞台は「果ての国」と呼ばれる世界。そこでは、突如降り始めた死の雨によって、生きとし生けるものすべてが、「穢者(けもの)」と呼ばれる狂暴な生きる屍となってしまいました。その人智を超えた悲劇に人々はなすすべがなく、やがて王国は滅びてしまいます。そんな滅び果てた世界の薄暗い教会の奥深くで、記憶をなくした少女「リリィ」が目覚める……というのが本作のあらすじ。
グラフィックの雰囲気にマッチしたダークファンタジー風の物語が、プレイヤーを否が応でもワクワクさせてくれます。ちなみに、物語の全体像やリリィが何者なのかなどのバックボーンは、最初からすべてがプレイヤーに明示されているのではなく、リリィが冒険を進める中で徐々に明かされていく形になっています。これは、映画的な作りのストーリー構成と言えるかもしれません。
リリィは教会で目覚めた直後、かたわらで彼女を見守っていた「黒衣の騎士」という不死の存在と出会い、彼とともに冒険へ旅立つこととなります。
実はこの「黒衣の騎士」との出会いが、本作のバトルシステムの根幹となっています。道中には、禍々しい風貌の穢者が多数はびこり、リリィに襲いかかりますが、か弱い少女であるリリィはジャンプや回避といったアクションこそできるものの、自力で戦うすべを何も持っていません。そこで、この「黒衣の騎士」の力を借りるのです。
リリィは、「スキル」と呼ばれる技を合計6種類までスロットにセットすることができ、対応するボタンを押すことで発動することができます。上述の「黒衣の騎士」もスキル扱いとなっており、対応したボタンを押すと、リリィの目の前に黒衣の騎士が現れて剣を振るって前方を攻撃し、攻撃を終えると消滅します。これが、リリィが使える最もオーソドックスな通常攻撃。「リリィ自身が戦うのではなく、不死の存在の力を借りて敵を攻撃する」というこのユニークなシステムは、リリィのキャラクター設定や物語の内容とぴったりマッチしており、プレイヤーを「ENDER LILIES」の世界観に自然と引き込んでくれます。
リリィは荒廃した世界を旅する中で、さまざまな強敵と出会います。そんなボス級の敵との戦いに見事勝利できたら、倒れた相手を「浄化」することで、リリィが新たなスキルを習得します。こうして手に入れたスキルもまた、スキルスロットにセットして対応するボタンを押すことで発動が可能、その都度、浄化したボスキャラが出現し、リリィのために力をふるってくれます。
苦戦を強いられた相手が仲間になり、自分のために戦ってくれる(しかも、かつて自分を苦しめた攻撃技で!)というこのシチュエーションは、まさに「昨日の敵は今日の友」のような、なんとも胸アツなものがあります。
異なるスキルを同時に発動できるのも、本作のユニークな特徴です。たとえば、敵をホーミングする遠隔攻撃を撃つスキル「西の商人」を呼び出た状態で、強力な鉄球を振り回して攻撃するスキル「守り人シーグレット」を呼び出し、さらに「黒衣の騎士」の剣で近接攻撃をする、といったことが可能。
仮にリリィ自身がひとりで戦うようなシステムだったとしたら、鉄球を振り回しながら剣も振りつつホーミング弾を撃つというのは物理的に不可能そうに思えますが、リリィのために仲間が力をふるってくれるというシステムだからこそ、複数種類の攻撃を同時に発動できるという、他に類を見ない独自性の高い戦闘が実現できているのだと筆者は感じました。
「ENDER LILIES」の魅力は、ワクワクが止まらない探索要素&やりごたえ抜群のRPG要素にアリ!
前述ですが改めて、本作は「メトロイドヴァニア」スタイルのアクションゲームとなっています。
「メトロイドヴァニア」の特徴といえば、探索を進めて新たなスキルやアイテムを手に入れることで、これまで行けなかったエリアに行けるようになるシステム。本作「ENDER LILIES」では、ボスキャラを倒してリリィが特殊なアクションを手に入れることで、行動範囲が徐々に広がっていく仕組みになっています。通常のジャンプでは届かなかった大きな段差は2段ジャンプで到達できるようになり、潜れなかった水面の底には水中移動アクションで進行が可能になる……といった具合。新たなアクションを手に入れるたびに「そういえばあの場所、このアクションを使えば行けるかも……?」というように、一度通過した場所を再び訪れる楽しみを味わえます。これぞ、メトロイドヴァニアの真骨頂。
「いくらメトロイドヴァニアの醍醐味と言っても、はるか昔に通り過ぎてしまった場所まで戻るのは面倒すぎるのでは……?」と心配される方もいるかと思います。その点について、「ENDER LILIES」は実に行き届いたシステムが完備されています。それは、ずばり「ファストトラベル」。道中に登場する、セーブや回復が可能なレストポイントから、「ファストトラベル」を選択することで、今までに行ったことのある別のレストポイントへすぐにワープすることができるのです。しかも、道中はいつでも好きなタイミングで最後に休んだレストポイントに戻ることが可能。このシステムによって、プレイヤーは新たなアクションを手に入れたあとすぐに行きたい場所の近くまで戻ることができるので、ストレスの少ない快適な探索が楽しめます。
ちなみにこのファストトラベルでは、道中に出会う穢者である「馬車を引く馬」が登場します。ファストトラベルを単なるワープではなく、黒衣の騎士たち同様「リリィのために力を貸してくれる存在」のおかげという演出にしている点は、筆者的にとてもグッときました。
さらに本作は、「マップ」もかなり親切な設計になっています。リリィが今いるエリアである「現在地」やエリア同士がどう繋がっているかがわかる「ルート」の表示、そしてレストポイントの所在地がひと目でわかるのはもちろんのこと、「未開のルート」、「残されたものがあるエリア」や「すべて探索し終えたエリア」までマップ上にわかりやすく表示される仕組みになっています。これにより、新しいアクションを手に入れたときは、未開のルートが繋がっているエリアや残されたものがあるエリアに戻る、といった効率のよい探索が可能。他のメトロイドヴァニアジャンル作品と比べても、とても遊びやすい部類に入るシステムであると筆者は感じました。
さて、メトロイドヴァニアとして快適な作りとなっている本作ですが、本記事の始めに少し触れたように、単なるアクションゲームではなく「RPG」としての要素も含まれています。
まずは、キャラクターのレベル。道中、敵を倒していると、リリィの頭上にレベルアップの表示が出ることがあります。これは、敵を倒すと手に入る「穢れ」という名の経験値が一定数に達することで起きるもの。レベルが上がるとリリィの力、すなわち攻撃力が増加します。今までは倒すために三回斬りつける必要があった敵が2回で倒せるようになるなど、レベルの恩恵は随所で実感できるはず。
しかし、ここで気をつけておきたいのは、レベルが上がってもリリィのHPの上限は上がらないということ。HP上限を上げるためには、「レリック」と呼ばれる装備品の、HP上限を増やす効果のあるものを身につけるか、「お守りのかけら」というアイテムを手に入れる必要があります。これらは道中に発見できるアイテムであるため、習得したアクションなどを駆使しながらエリアの隅々まで探索することが重要。
つまり、リリィをしっかり強化するためには「攻撃力アップのために敵を倒してレベルを上げて、HPアップのためにエリアをくまなく探索する」というプレイが要求されるということ。敵との戦闘とエリアの探索、どちらかにプレイが偏らないように考えられたバランスの良い成長システムであると感じました。
本作において強化ができる要素はリリィ自身だけではありません。リリィのお供をする魂たち、すなわちリリィがセットする「スキル」も強化が可能になっています。
与えるダメージの上昇や、攻撃回数の増加など、スキルを強化することは攻略への近道と言っても過言ではありません。このスキル強化のためには、魂や穢れの「残滓(のこりかす)」というものを消費します。これは、道中にリリィが出会う赤い光を宿した亡骸を調べ、ステージ上にあるタルや木箱などのオブジェクトを壊すことで獲得可能です。
先述した「お守りのかけら」同様、エリアをくまなく探索することがカギとなります。スキルは最大6レベルまで強化できますが、そのためには大量の残滓が必要であるため、プレイヤーは必然的に「どのスキルから優先的に強化していくか」ということで頭を悩ませることとなります。遠隔攻撃系のスキルを強化して道中の敵戦を少しでも楽にしていくか、それとも威力の高い近接攻撃を強化して大型の敵との接近戦に備えるか……。プレイヤーの数だけ戦略が生まれるのも、本作の奥深さのひとつです。
キャラクターのレベルアップ、レリックやお守りのかけらといったアイテム収集要素、そして残滓を集めて行うスキル強化と、探索アクションゲームとしての面白さだけではなくRPG的な成長システムもこれでもかと盛り込まれている本作。総じて、「ああ、今、どっぷりゲームで遊んでいるな」という充実感をプレイヤーに感じさせてくれる作品であると筆者は感じました。
ココがスゴい! 「ENDER LILIES」の筆者的推しポイント
グラフィック、音楽、世界観、そしてゲームシステムと、どこを切り取っても「良い!」であふれている本作ですが、筆者的な推しポイントはずばり、「ほどよいヒリヒリ感」です。
ダークな雰囲気が漂うゲームはたいてい高難易度であるというのがゲーム界のセオリー(?)ですが、本作「ENDER LILIES」もまたそのセオリーにならって、難易度が高めに設計されている作品です。道中の敵の攻撃はそのほとんどが高い威力を持ち、2、3回まともに受けてしまうとHPがギリギリの状態に陥ってしまいます。普通の敵でこれならボスは当然ながら、さらに強力。油断をするとあっという間にゲームオーバーになってしまいます。
敵もボスもかなり手強い本作ですが、しかし、思わずプレイを投げ出したくなるような理不尽な難易度ではありません。その理由のひとつが、「敵が攻撃のタイミングを知らせてくれる」というシステムにあります。本作に登場する敵は、プレイヤーに対して攻撃を仕掛ける前に、必ず“赤い光を発する”という特性を備えているのです。つまりプレイヤーは、その赤い光を見て、攻撃の手を止めて回避の準備ができるということ。攻撃したら次は避けるという、いわゆる「ヒット&アウェイ」戦法を心がければ、おのずと敵とのバトルを攻略できる作りになっているのです。
とは言え、ヒット&アウェイを成功させるためには、敵ごとの攻撃パターンをしっかり覚えることが不可欠。相手の動きをきちんと見極めなければ、あっという間に窮地に追いやられてしまいます。特にボス戦では一度のミスが命取り。敵の攻撃を受けてしまったらどうにかして回復をしたいところですが、実は本作、リリィが好きなタイミングで祈りを捧げて回復を発動するアクションが存在しています。とは言え、回復の祈りには使用回数に制限があり、さらに祈りを捧げている間は動くことができず隙が生まれてしまうという制約付き。攻撃を避けるタイミングだけではなく、回復するタイミングも見極めが重要となっているのです。
一瞬の隙を突かれるとまたたく間にピンチに陥り、逆に敵の一瞬の隙をうまく見抜けばノーダメージでバトルを制することも可能。「死にゲー」と呼ばれる高難易度作品群のエッセンスをうまく取り込んだこの「ヒリヒリ感」と、敵を撃破できた際の極上の達成感こそが、本作の中毒性を高める大きな魅力になっていると筆者は感じました。
とは言え、実は本作には、ゲームオーバー時に付与されるマイナス要素、いわゆる「デスペナルティ」がほとんど存在しません。高難易度死にゲー作品には、一度ゲームオーバーになると所持金を失し、手に入れたアイテムをロストしてしまうようなものがありますが、本作のデスペナルティは、強いて言うならば最後に立ち寄ったレストポイントに戻される程度。筆者はゲーム好きですが決して上手い人間ではないため、キツいデスペナルティでゲームを投げ出してしまった経験も過去にありました。そんな筆者にとって、本作のこの絶妙な「厳しすぎないヒリヒリ感」は、ゲームにどっぷりハマれる最大の魅力となりました。
そしてもうひとつ、細かな部分ですが筆者の推しポイントをご紹介しておきます。
リリィがレストポイントの椅子に座ると、セーブやスキルの付け替えといったメニューが画面に現れるのですが、このとき、リリィの周囲に、現在セットしているスキルを持つ仲間たちが実体化して出現するのです。
この演出が「リリィはひとりじゃない!仲間たちと一緒に戦ってるんだ!」という、ジーンとくるものをひしひしと感じさせてくれて、筆者的にはとてもお気に入りなんです。
ちなみにこの画面では、特定のボタンを押すことでゲームのUIメニューを非表示化することが可能。それはすなわち、最高のスクリーンショットを撮影できるチャンスということです。いやはや、なんとも心憎い機能ですね……!
あなたがゲームに求めるものが、きっと「ENDER LILIES」にある!!
というわけで、「ENDER LILIES Quietus of the Knights」をご紹介しました。
メトロイドヴァニアとしての面白さ、RPGとしてのやりごたえ、高難易度アクションとしての絶妙なバランス、鳥肌もののグラフィックと音楽、ダークで美しい物語と世界観。ゲーマーが「これが欲しい!」と思う要素が、これでもかとばかりにたっぷりと詰め込まれている本作。ゲームが好きな方には是が非でもプレイしていただきたい、オススメのタイトルです。
- タイトル情報
- 「ENDER LILIES Quietus of the Knights」(Live Wire, Adglobe)
- ジャンル:アクション
- 2021年6月21日発売
- 価格:2,728円(2022年1月14日時点)
- コピーライト:(C) 2021 Live Wire, Adglobe
https://store.steampowered.com/app/1369630/ENDER_LILIES_Quietus_of_the_Knights/
- 筆者:百壁ネロ
- ゲーム買いすぎちゃう系フリーライター。現在積みゲー300本以上。小説家でもあります。著作は「ゆびさき怪談 一四〇字の怖い話」(PHP研究所)、「ごあけん アンレイテッド・エディション」(講談社)など。
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