いまだから観たい「ラジオ」をテーマにしたアニメ3選【アキバ総研ライターが選ぶ、アニメ三昧セレクション第16回】

2021年もそろそろ終わり。昨年に続いて「失われた1年」になってしまった方も多いのではないだろうか? テレビでは毎日暗いニュースが流れる中、筆者の心の支えとなっていたのが「ラジオ」だ。

今回は、在宅での作業が増えて気が滅入りそうになってしまった日々の生活に、潤いを与え続けてくれた、「ラジオ」にまつわる3作品を紹介する。

波よ聞いてくれ

 

原作は「無限の住人」の沙村広明先生による青年漫画。舞台は北海道の札幌市。飲食店に務める鼓田(こだ)ミナレは、とあることがきっかけで地元FMラジオ局「藻岩山ラジオ局(MRS)」のラジオDJを務めることになる……というのが大まかなストーリー。

 

第1話の冒頭は、ミナレが森で熊と対峙するという衝撃的なシーン(実際はミナレの卓越したトーク術により、あたかも対峙しているように聴かせていた)から始まり、その後、ミナレがパーソナリティに起用されることになった理由が描かれる。

 

ミナレを抜擢したチーフディレクターの麻藤兼嗣(まとう かねつぐ)や、ミナレと仲良くなった南波瑞穂(なんば みずほ)、ツッコミどころ満載のミナレの元カレ・須賀光雄(すが みつお)など、魅力的な登場人物たちが物語を彩る。

 

アニメの最終回では、2018年9月6日の午前3時過ぎに発生した「北海道胆振東部地震」のエピソードが描かれている。最近では「大正オトメ御伽話」で主人公らが関東大震災に巻き込まれるというシーンが登場したが、常に震災と隣り合わせの状態で生活している我々にはとても身近に感じるエピソードだったのではないだろうか。

 

ちなみに「ミナレに似ている」と噂になった、タレント・歌手のファーストサマーウイカさんが自身のラジオ番組「ファーストサマーウイカのオールナイトニッポン0(ZERO)」にて、アニメの名シーン(ラジオ番組でトークをする場面)をサプライズで披露するという「異色のコラボ」も行なわれ、ファンをよろこばせたことも。ラジオ好きには特にたまらない施策となった。

 

アンドロイド・アナ MAICO 2010

その「オールナイトニッポン」でもおなじみ、在京ラジオ局「ニッポン放送」が展開したメディアミックスプロジェクト「MAICO2010」。

 

プロジェクトの一環で制作されたテレビアニメは、いまは懐かしいWOWOWのノンスクランブル枠「アニメコンプレックス」内で放送された。舛成孝二さんが監督を務め、黒田洋介さん、倉田英之さん、白根秀樹さんらが脚本を務めた“知る人ぞ知る名作”だ。

 

「メディアの波に飲まれる」という危機感から世界初となる「アンドロイドアナウンサー」の開発を決めたニッポン放送で働く社員たちと、アンドロイドアナ・MAICOの交流を描くというストーリー。当然、SF的な要素も含まれているが、ラジオ局でどのように生放送、収録が行なわれているのかを知ることができ、このアニメを観てラジオ業界を目指そうと思った人もいるのでは?

 

なお、個人的な感想になってしまうが、「輝いてるよ!」の口ぐせがクセになる放送作家・スガちゃんの死は「機動戦艦ナデシコ」のダイゴウジ・ガイが死んだときと同じくらいの衝撃を受けた。

また、「ドレミ」の音程だけで作られた、斬新過ぎる歌詞が特徴のオープニングテーマ「MAICOは踊る」は一聴の価値アリだ。

 

ラジオ番組に話を移すと、アニメと同時期にアニメソングのカウントダウン番組「岩男潤子と荘口彰久のスーパーアニメガヒットTOP10」がニッポン放送でオンエアされていた。その週のアニメの総集編のような番組が放送されていたのだが、番組ディレクターの勅使川原昭さんは、映画化されて話題となった小説「スマホを落としただけなのに」の原作者でもある。

 

いま思うと、2010年になってもMAICOは生まれてこなかったなぁ……「北斗の拳」感)。来年あたり、リアルに「MAICOプロジェクト」を立ち上げませんか、ニッポン放送さん(笑)!

 

洲崎西 THE ANIMATION

最後は少々強引かもしれないが、「文化放送 超!A&G+」ほかで放送中の人気ラジオ「洲崎西」のパーソナリティ・洲崎綾さんと西明日香さんが主人公の5分アニメだ。女子高校生という設定の洲崎綾(演じるのは本人)と西明日香(演じるのは……以下略)が意気投合し、ハチャメチャなスクールライフを送る。

 

正直なところ、番組リスナーじゃないとわからないネタも多数。逆に言うと、ここまでラジオリスナーに寄り添ったアニメはほかにないのでは?と思える、大変貴重(希少?)な作品である。また、ネット局に関してはTOKYO MXのほか、2人の故郷である石川県と兵庫県でも放送されており、両パーソナリティにも大いに寄り添った、愛にあふれた作品と言えよう。

 

なお、記者は以前、番組(ラジオ)のイベント向けにオフィシャルインタビューを担当させていただいたのだが、番組の歴史があまりにも長く、アニメについての話はほとんどできなかった。いつか改めてじっくり語っていただきたいところだ。

 

こうして見てみると、ラジオを題材にしたアニメ作品は意外に少ない。声優がパーソナリティを務めたり、アニメ作品を取り上げた番組などを表すアニメラジオ、略して「アニラジ」という言葉がアニメ・声優・ゲームファンに浸透していることを考えると、「洲崎西」のように、今後ラジオ番組が原作のアニメが増えてくるのでは……?とひそかに期待している。

  

<ライター紹介>

佐伯 敦史

さえき あつし

 

アニメ・声優・ゲーム・アイドルなどの情報をご紹介するポータルサイト『れポたま!』で編集・ライターを務める。

「やくならマグカップも」「ピーチボーイリバーサイド」「ダンベル何キロ持てる?」ほか、各種作品でオフィシャルライター/カメラマンを担当。

深夜ラジオに目がなく、ウイークデーのゴールデンタイム(AM1時~3時)の番組を録音して移動中に聴くのがライフワーク。もちろんアニラジも大好き。ラジオにまつわる今年一番のトピックスは、TBSラジオで深夜に放送中の、超人気ラジオのハガキ職人と知り合えたこと。番組ノベルティグッズをプレゼントしてもらい、「人生における10大トピックス」のひとつになった。