2021年10月16、17日、ライブ「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ 佐賀よ共にわいてくれ~」2DAYSが、幕張メッセ国際展示場 7・8ホールで行われた。
昨年3月に予定されていた幕張メッセイベントホールでのライブは、コロナ禍により直前で中止となり、そのリベンジを今年2月、府中の森芸術劇場 どりーむホールで果たしたゾンビィアイドルグループ「フランシュシュ」だが、本当のリベンジは果たせていなかった。なぜなら昨年の幕張ライブには出演予定だった山田たえ役の三石琴乃さんが府中では出演できなかったからだ。
そのリベンジを果たすべく、今回のライブではついに三石さんがついにサプライズで登場。8人のフランシュシュが実現した。そんな歴史的なライブの模様を、2日目を中心にレポートする。
出演者は、本渡楓さん(源さくら役)、田野アサミさん(二階堂サキ役)、種田梨沙さん(水野愛役)、河瀬茉希さん(紺野純子役)、衣川里佳さん(ゆうぎり役)、田中美海さん(星川リリィ役)、特別出演の花澤香菜さん(楪舞々役)、サプライズ出演の三石琴乃さん(山田たえ役)、かぬか光明さん(デスおじA役)、佐藤せつじさん(デスおじB役)。
第2期「リベンジ」の名場面がよみがえる神セトリ!
「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ 佐賀よ共にわいてくれ~」、幕張メッセ2DAYSの2日目の幕が上がる。
ホールには、6号(=リリィ)と5号(=ゆうぎり)、そして3号(=愛)による影ナレが響き渡る。「今日はみんなが笑顔になってくれたら嬉しいな。フランシュシュがもっともっとエターナルになるために、みんなも準備して待っててね」というリリィのトゥインクルな言葉のあと、いよいよライブ本編がスタートした。
まず、これまでのフランシュシュのリアルライブを振り返るOPムービーが流れ始める。ここでは、TVアニメ「ゾンビランドサガリベンジ」第12話のライブOPムービーと同じBGMを使っていて、演出もなるべく同じような形にしていたところが素晴らしい。
そして、6人がステージに現れ披露されたオープニングナンバーは、もちろん「REVENGE」! 全員が横を向き、拳を突き上げるパフォーマンスは、アニメのライブシーンそのままで、まさしく最初からクライマックスだ。フランシュシュのライブを観るたびにいつも感心することだが、本業が声優であるはずなのにみんな歌が抜群にうまい!
ダンスもかなり練習をしたと思うが、踊りながらブレない歌声でパフォーマンスする面々を見ていると、このハイクオリティなステージングこそがフランシュシュの魅力であり、すごさなのだと改めて実感した。
幕張メッセという広い会場に、これでもかというほど力強い歌声を響かせたあとは、TVアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」OPテーマ「大河よ共に泣いてくれ」でさらに盛り上がる! 本渡さんと河瀬さんによる〈Aah〉の叫びも迫力満点で、それぞれがアドレナリン全開で声を張り上げているのがよくわかった。かと思えば、落ちサビでは情感たっぷりに田野さんと本渡さんが歌いあげており、その表現はエモーショナルで豊かだ。
自己紹介を挟んで歌ったのは、第2話「ぶっ壊れかけのレディオ SAGA」EDで使用されたサキのメイン曲「風の強い日は嫌いか? FranChouChou cover」。オレンジ色のペンライトが会場を明るく照らす中、ロック風にアレンジされた曲を歌っていたのだが、この曲はアウトロのセリフが何より感動的だった。ホワイト竜(CV.白竜)からレギュラーラジオを引き継いだサキが、曲中のセリフで〈いつだって変わらずそばに居るから心配すんな〉と言い切るのがすごくカッコいい。
しかも最後の最後に、ホワイト竜からラジオとともに受け継いだ言葉でもある〈忘れるな。お前の探している答えはいつだってサガにある!〉というセリフをライブで付け足していたところもエモかった。この部分はアニメのEDにはあったものの、CD音源にはなかったところなので、田野さんの粋な計らいだろう。田野アサミは、もはやサキだった。
衣装チェンジ時のMCでは、デスおじA役のかぬか光明さんと、デスおじB役の佐藤せつじさんが登場! グッズ紹介では、デスおじの2人のボイスが入っているというペンライトの使い方を説明。1台1台の音量は小さいのだが、合わさるとそれなりの声になり、会場に声が響くのがシュールだった。
続いての曲は「佐賀事変」。第1期放送終了後に発表され、第2期「ゾンビランドサガリベンジ」第8話「佐賀事変 其ノ壱」&第9話「佐賀事変 其ノ弐」をもって回収された楽曲である。
衣川さんの歌い出しがあまりにセクシーなうえに、歌そのものもうますぎて鳥肌モノのこの曲。フランシュシュの息の合ったダンスパフォーマンスもさることながら、スクリーンでは、このエピソードで絶大な人気を博したゲストキャラクター・伊東正次郎と百崎喜一が笑顔で踊っている第9話のED映像も流れていたので、それに感動した人も多かっただろう。
そして純子のソロ曲「50と4つの忘れ物」を、河瀬さんが心を込めて歌い上げる。作曲者である山下洋介さんによる、生のアコースティックギターと息を合わせながらのパフォーマンスは見事だった。
続いては、第5話「リトルパラッポ SAGA」から、大空ライトの歌を担当した阿部カノンさんによる「命」が披露される。2日目は1日目よりもだいぶリラックスしていたのか、前日以上に透き通った高音が会場の隅々までよく響いていた。その後は田中美海さんがステージに飛び出し、スキャットの「リトルパラッポ」を披露。
まさにアニメと同じ展開で、田中さんはステージ上で踊りながらスキャットするという芸当を見せつけたが、その完成度の高さに、彼女もまた演じるリリィと同じく天才なのではないかと誰もが思ったはずだ。
続いて「目覚めRETURNER(3号ソロVer.)」を種田梨沙さんがソロでパフォーマンス。フランシュシュ全員バージョンとは少し歌詞も違っていて、実はこのソロバージョンにも癖になるよさがある。
純子メインの「激昂サバイブ」は、もはやアイドルソングというよりミクスチャーロック。メンバーのラップもカッコよかったし、昭和アイドルから一転ロックバンドのフロントマンと化した純子を演じる河瀬さんのボーカルは、すさまじい迫力だった。
舞々、そして伝説の山田が参戦! そして衝撃の発表が……!
第2期の新曲を6曲連続で披露したあと、フランシュシュの6人は第1期の赤い衣装で登場。田中さんが「リトルパラッポ」練習の模様をメンバーに見せたとき、衣川さんはそれをスマホで撮影していたそうだが、録画ボタンを押し忘れていたため、ただ画面越しに田中さんを見ていただけだった……というレッスン中のおもしろエピソードなどを和気あいあいと話したあとは、第1期の曲をメドレーで一気に披露。「FLAGをはためかせろ!/ヨミガエレ/アツクナレ/特攻DANCE ~DAWN OF THE BAD~」を、トロッコでゆっくりと移動しつつ、後ろの席の観客にまで歌を届けた。フラットな会場である幕張メッセならではの演出である。
最後の「特攻DANCE ~DAWN OF THE BAD~」でステージに戻った6人は、がっつりスタンドマイクでパフォーマンス。ここも最高にアガる瞬間だった。
アイアンフリルの詩織役・徳井青空さんのVTR出演後は、かねてよりゲスト出演することがアナウンスされていたフランシュシュ7号こと、楪舞々役・花澤香菜さんが登場!
第7話「マイマイレボリューション SAGA」での、舞々のお披露目学祭ライブを再現した花澤さんは、衣装も振り付けもアニメのままという気合いの入りよう。観客のペンライトの緑一色という受け入れ体制もバッチリだった。そしてアニメと同じく、加入したかと思ったら即卒業宣言をして「光へ(with7号ver.)」を歌う。美しいハーモニーが、会場をしっとりと包み込んだ。
デスおじの2人が次の曲のペンライトの振り方をレクチャーしたあと、再び、アニメ12話のライブシーンが再現される。
アニメでフランシュシュが着用した衣装を彷彿とさせる、白いドレスをまとった6人が登場。本渡さんによる、アカペラでの「輝いて」のワンフレーズを歌うところからスタート。まさに、さくらが乗り移ったかのような、伸びやかな歌声には鳥肌がが立った。そこに重なっていくメンバーの歌声も本当に心地よい。
最後の「追い風トラベラーズ」もアニメの振り付けをバッチリ再現。イントロでひとりずつバトンをつなぐようにポーズを決めていくところから始まるのだが、改めて冒頭の〈どうせ何も変わらない どうせ何も諦めない きっとまだ希望が残ってる〉は「フランシュシュ」というグループを見事に表した歌詞だなと思った。ファンと一緒に〈とうっとうっとうるとうっとうっとうる〉の振りを合わせて楽しむと、最後は本渡さんの〈(いえいえーい)〉のフェイクが炸裂。ここも完璧すぎて爽快だった。アニメでは、最後にさくらが号泣するのだが、ライブでは爽やかな感動が横たわっていたように思える。あり得たかもしれないもうひとつのパフォーマンスという意味でも、素敵なステージだった。
アンコールでは、「リベンジ」第12話でのたえのコール&レスポンス映像が流れたのだが、今思うとこれこそが伏線であった。第1期OPテーマ「徒花ネクロマンシー」で盛り上がる中、終盤にメンバーの背中からたえ役の三石琴乃さんが登場したのだ。フランシュシュは、リアルライブではずっと6人で活動してきたが、本来は7人組ユニットである。そのフルメンバーが、ついに勢ぞろいしたのである。公では初の7人フランシュシュのパフォーマンスが見られたのはとても貴重だった。
ここで三石さんが観客に向かって、ボディランゲージでフランシュシュへエールを送ろうと提案。三石さんによる「フランシュシュ」の音頭に合わせてクラップと足踏みで大好きだという気持ちをステージへ送ったのだが、これにはメンバーも涙ぐみながら受け止めていた。
最後に、ステージから去るときに「ちょっとこれを見て」と笑顔でスクリーンを指差す三石さん。するとスクリーンに「ゾンビなき戦い 佐賀復讐篇」と題した謎の映像が流れる。佐賀出身の俳優・白竜さん&村井國夫さんが出演したこのPVは、「復讐の先」がテーマのショートムービーだったが、要するに言いたかったことは「ゾンビランドサガ 映画化決定」だ。
最後にゾンビになった村井さんが「復讐が終わるんじゃない、また始まるんだ」と意味深な言葉を残していったのだが、スタッフによる本気すぎる作りのムービーに、フランシュシュ一同も映画化決定の喜びよりも情報の多さに混乱をきたしてしまった模様。映像が終わった後、ようやくじわじわと喜ぶという結果になったが、そういうところが悪ノリが大好きなこのコンテンツらしい。
少し落ち着いてから、ようやく「やったー!」と口を揃えるキャスト。前日に田野さんが「3期も映画化も決まっていないけど、応援してください!」と言っていたので、本当にキャストもこの情報は知らなかったはず。だからこそファンのみならず、キャストにとっても非常に大きなサプライズであり、プレゼントにもなったはずだ。
続く最後の挨拶では、誰もがお互いのメンバーが大好きなこと、「ゾンビランドサガ」にはまだまだ先があるということを喜んでいた。衣川さんが言ったように、映画があるということは新曲もあるしライブもやるはず。田野さんも、この先があるのはみんなのおかげと言いつつ、最初のライブのときに言った「日本武道館に行きたい」という願いを改めて口にした。
本渡さんもファンがいるから練習もがんばれたと語る。「ゾンビランドサガ」は原作のないオリジナル作品ということもあり、初期のTwitterのフォロワー数が100人台だったというエピソードを語ったり、2018年に佐賀で開催されたバルーンフェスタ参加時のヒット祈願で「2期も3期も、劇場版をやりたーい」と叫んだことが叶いつつあると、ここまで走ってきた軌跡と奇跡のような展開を噛み締めたりと、実に感慨深げだ。
そしてこれが本当のラスト曲。披露したのは「リベンジ」のEDテーマ「夢を手に、戻れる場所もない日々を」だ。もう一度トロッコに乗り込んだ6人は、ファンのみんなへ挨拶をするように会場を回り、最後のサビはステージで。ここでは、三石さんと花澤さんも加わった8人で手を振りながら歌唱。最後に本渡さんは「また必ず会えることを信じてます。ありがとう」と感謝を述べた。
その後自撮り棒を使い、思い出をしっかり写真に収めた8人は、最後に「私たちのいるここがサガだ!」と叫び、ライブを締めくくった。
これで終わりではない、まだ続きがあるという新たな希望を持つことのできる、最高の一夜となった。
(取材・文/塚越淳一)