10年の時を経て進化した「SAO」の始まりの物語に注目してほしい! 「劇場版 ソードアート・オンライン ープログレッシブー 星なき夜のアリア」兎沢深澄/ミト役・水瀬いのりインタビュー!

いよいよ2021年10月30日に公開となる「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブー 星なき夜のアリア」。「ソードアート・オンライン」シリーズとしては2作目の劇場版となる本作は、TVシリーズ第1期で描かれた原点《アインクラッド》編を主人公・キリトではなくアスナからの視点で描く。

劇場版の新キャラクターとして登場するのが、水瀬いのりさん演じる兎沢深澄/ミトだ。ゲーマーで、《SAO》の世界ではミトとしてプレイしている彼女は、明日奈(アスナ)を《SAO》に誘うくだりをはじめ、キーパーソンとして描かれる。

そんな兎沢深澄/ミトをいかに演じたのか、そして《SAO》シリーズへの想いを、水瀬さんに聞いた。

 

学生時代からのファンだった「SAO」

 

ーーもともと作品を見ていたとうかがっているのですが、「ソードアート・オンライン」シリーズの中では、どのキャラクターが好きなのですか?

 

水瀬 私はアスナさんです。やっぱりカッコいいですよね。今回の劇場版ではかわいい部分がいっぱい描かれていますけど。

 

ーーでは、憧れのアスナとたっぷりからむことができたのですね。

 

水瀬 そうなんですよ。学生時代から見ていた作品だったので、うれしかったです。

 

ーー改めて、この作品のどんなところが魅力だと思いますか?

 

水瀬 人々が娯楽や癒やしを求めてやるのがゲームなので、本来であれば、話題の新作だからみんなログインしよう!となるものなんですけど、実際にログインをしてみたら、自分の命がかかっていたという、「そんなのってありかよ!」という導入部分に当時は衝撃を受けました。

 

「これは、ゲームであっても遊びではない。」という謳い文句が当時から脳裏に焼き付いていて、自分の命がかかっている状況で、それぞれがどうやってゲームに向き合っていくのか、そういう究極の選択を強いられる世界観は本当に唯一無二だなと思いました。

 

ーーこの作品はゲームの中ですが、現実とは違う世界に行って旅をするみたいな作品も当時は新しかったですし、すごくワクワクしましたよね。

 

水瀬 10年前というのもびっくりなんですよ。まだまだ自分の中に鮮明に記憶が残っているので……。

 

 

ーーそして、このシリーズでずっと主人公・キリトを演じているのが、水瀬さんとの共演も多い松岡禎丞さんです。当時はまだ新人と言われていた頃ですからね。

 

水瀬 なので、伝説の始まりですよね(笑)。

 

ーーその頃の松岡さんの演技と、今の演技のイメージは違いますか?

 

水瀬 当時、私はテレビで見ているだけでしたけど、違うとは思います。本当にキリトとともに成長されている感じがしますよね……って、先輩に対して何目線だよ!という感じですが(笑)。

 

キリトくんの最初って、アスナも含めて対人となると思ったようにコミュニケーションが取れなかったり、女の子に対してすごくシャイだったりしたんですが、シリーズが進むごとにすごくたくましくなっていくんです。アスナの成長も著しいんですが、キリトがどんどんカッコよくなっていくところは作品の見どころになっていると思います。

松岡さんの印象は、最初少し無愛想だったキリトとリンクしているところはあるかもしれないです(笑)。

 

アスナ役の戸松(遙)さんは最初から印象がいい意味で変わらなくて、ずっと明るいムードメーカーというイメージです。先輩だけど親しみやすく話しかけてくださるので、いつも安心感を与えてくれる存在です。

 

 

ーーちなみに本作の収録では、戸松さんや松岡さんと一緒にアフレコはできましたか?

 

水瀬 実はできなくて、私ひとりで収録しました。ただ、キリトとアスナの2人をはじめ、ほぼ全キャストの声が入っていた状態だったので、それを聞きながら演じていました。

 

ーー松岡さんは、再び《アインクラッド》編の頃のキリトを演じることについて何か言っていましたか?

 

水瀬 当時の自分のお芝居を聞いて、その時にベストで出せなかったところを、今の自分の芝居で塗り替えるんだ!と宣言されていたのですが、収録後に「あの日の自分を超えられた」と胸を張っていらっしゃったので、そこはぜひ、皆さんも劇場で確かめていただきたいです!

 

ーーなかなか同じシチュエーションでもう一度お芝居する機会も少ないですからね。

 

水瀬 しかも10年という時が経った中でです。当時は当時にしかできないよ、というのも絶対にあるじゃないですか。それを今の自分でさらにいいものにできたと言い切れるのは、さすが松岡さんだなぁと思いました。

 

 

ひとりでも多くの方にミトのことを好きになってほしい 

ーーそして、水瀬さんが演じるミトですが、そのプレーヤーである高校生の兎沢深澄の雰囲気と少し違いましたね。

 

水瀬 オーディションを受けるときにイラストを拝見したんですが、もっとミステリアスでクールな女の子だと思っていたんです。深澄の学校での姿も、ほかのクラスメイトとは違った雰囲気をまとった、何か特別なものを感じるような描写があって。そこから、ゲームの世界のミトは、日常とのギャップが非常に面白くて、一瞬でミステリアスな雰囲気は飛んでいってしまいました。

 

 

ーー深澄とミトで、雰囲気を変えるような指示はありましたか?

 

水瀬 特にそれはなく、ミトがコミュニケーションを取るのは、ほぼアスナだけなんです。深澄(ミト)にとっては、結城明日奈であってもアスナであっても、彼女に対して見せる姿は一貫して変わらない、というところが大きかったのかなと思います。

 

ーー声に関してはシリアスな感じがしたのですが、どのようにアプローチしていったのでしょう。

 

水瀬 クールで、ちょっと宝塚の男役のイメージがあるくらいだったかなぁ。明日奈に対してはナチュラルにカッコいいことを言ったりするメージがあったんです。髪の毛を結ってあげるシーンで「そういうほうがかわいいよ」ってさらっと言えちゃうところとか。

でも自分がそれを言われると照れるというか、「何だそれ!」って感じもするんですが(笑)、そういうところも含めて、まだまだ高校生らしい未熟な部分もたくさんある子なんだろうなと思って演じていました。

 

 

ーー今回はTVシリーズの第1期で描いた《アインクラッド》編をアスナ目線で描く作品になります。ミトは《SAO》の世界に入ったときにアスナにゲームの攻略法を教えるのですが、それはTVアニメで、キリトがクラインに対してやっていたことなんですよね。

 

水瀬 そうなんです。キリトの立ち位置と似ているところがあるし、自分の能力にちょっと過信していたり、ゲームに詳しいというところでのプライドがあったり、「私に任せておけば、すべて知っているから大丈夫だよ」みたいな部分が、結構キリトに通じるところがあるのかなと思いました。それに対してアスナが、すごいねって喜んでくれるから、いい気になっちゃうという(笑)。

 

ーーあれは実はいい気になっていたのですね(笑)。改めてアスナとのやり取りはいかがでしたか?

 

水瀬 アフレコのときは、ヘッドホン越しにお声を返していただきながらお芝居をしたのですが、その瞬間に「なんて贅沢な時間なんだろう!」と思ってしまうくらい、(戸松)遥さんの演じるアスナが、私というかミトに対して距離感が近くて! 非常にドキドキしながら、こんなにも頼ってくれるんだと思っていました(笑)。

 

2人での会話が毎日当たり前のこととして続いているんだな、という空気感を遥さんが出してくださっていたので、この瞬間は私にとっては特別ですが、ミトにとっては、毎日当たり前にあるアスナとのかけがえのない時間なんだなぁと思っていました。だから私としては、私の感動している思いをなるべく削ぎ落として、「クールに、クールに」と言い聞かせながらお芝居をしていました(笑)。

 

ーー学生の頃から見ていた作品のヒロインですからね。本物だ! 憧れのアスナさんだ!って気持ちが心の中にあるのは仕方がないかもしれない。

 

水瀬 とても至福の時間でした。今後また機会があったら、一緒にかけ合いもできたらうれしいです。でも、それはそれですごく緊張しちゃうかもしれないです(笑)。

 

 

ーーでは映像を見て、すごい!と思ったところはありますか?

 

水瀬 《SAO》は戦闘シーンが醍醐味で、この作品を語るうえでも大切なところだと思うんです。本作では、各キャラクターが武器を振ったときの周りの色など、それぞれ異なるそうなので、エフェクトにはぜひ注目していただきたいです!

 

そしてミトの武器は、これまでのシリーズで登場したことのない“鎌”なんです。《SAO》にはいろんな戦闘スタイルと武器のスタイルがあるんですが、鎌って近距離戦もできるし、遠距離で振ったときに出る技もあったりするので、ミトのバトルシーンも注目ポイントかなと思います! 

 

あとは背景が、10年の時を経て進化をしていて一部CGになっているんです。なので劇場版を観た後に、TVシリーズを見返していただくと、その技術の進化も感じられて面白いのかなと思います。

全体的に映像美はすごいです!

 

ーー戦闘以外でのミトの見どころというと?

 

水瀬 ゲーム好きなゆえに、ついついマニアックすぎる喜び方とかをするんです。たとえばレアなものを見つけたときの反応とか。マニアックな萌え!みたいなのがミトの中にあるので、ゲーム好きの方は「あるある!」とか「わかるわかる!」って、共感できるところだと思います。そういうゲーマーらしいところを凝縮しているキャラクターだと思うんですよね。

 

全体的なストーリーに関しては、ミトというキャラクターの受け取り方はそれぞれあると思います。それでも「ミトの気持ちもわかるよ!」と思ってくれる方が少なからずいてくれることを祈っています。

 

 

ーーでは最後に、ファンへメッセージをお願いします。

 

水瀬 シリーズを通して、始まりの物語である《アインクラッド》編が10年の時を経て再び描かれるというところで、原作をお読みの方も、TVシリーズを見てくださった方もすごく印象に残っているシーンがたくさんあると思います。それを今回はアスナの視点から描いているということで、「劇場版 SAO プログレッシブ」で描き下ろしていただいたミトが、アスナにどのような作用をもたらすのか、ミトという存在が《SAO》の中で、どんな立ち位置になるのかを見守っていただきたいです。

ひとりでも多くの方にミトのことを好きになっていただけたらなと思います。

 

 

(取材・文・撮影/塚越淳一)

【作品情報】
「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」
<公開日>

2021年10月30日(土)

 

<ストーリー>
これは、《閃光》と《黒の剣士》が、その名で呼ばれる前の物語――
あの日、《ナーヴギア》を偶然被ってしまった《結城明日奈》は、本来ネットゲームとは無縁に生きる中学三年生の少女だった。
2022年11月6日、世界初のVRMMORPG《ソードアート・オンライン》が始動した。
ところが、ログインの熱狂冷めやらぬプレイヤーたちが、突如ゲームマスターによってログアウトの手段を奪われ、ゲームの世界に閉じ込められてしまう。ゲームマスターは告げた。
《これはゲームであっても遊びではない。》
ゲームの中での死は、そのまま現実の死につながっている。
それを聞いた全プレイヤーが混乱し、ゲーム内は阿鼻叫喚が渦巻いた。そのうちの一人であったアスナだが、彼女は世界のルールも分からないまま頂の見えない鋼鉄の浮遊城《アインクラッド》の攻略へと踏み出す。
死と隣り合わせの世界を生き抜く中で、アスナに訪れる運命的な《出会い》。そして、《別れ》――。
《目の前の現実》に翻弄されるが、懸命に戦う彼女の前に現れたのは、孤高の剣士・キリトだった――。

<スタッフ>
原作・ストーリー原案:川原 礫(「電撃文庫」刊)
原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec

監督:河野亜矢子
アクションディレクター・モンスターデザイン:甲斐泰之
キャラクターデザイン・総作画監督:戸谷賢都

サブキャラクターデザイン:秋月 彩・石川智美・渡邊敬介
プロップデザイン:東島久志

美術監督:伊藤友沙
美術設定:平澤晃弘
色彩設計:中野尚美
撮影監督:大島由貴

CGディレクター:織田健吾・中島 宏
2Dワークス:宮原洋平・関 香織
編集:廣瀬清志

音楽:梶浦由記
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭正
音響制作:ソニルード

プロデュース:EGG FIRM・ストレートエッジ
制作:A-1 Pictures

配給:アニプレックス
製作:SAO-P Project

<キャスト>
キリト:松岡禎丞
アスナ:戸松 遥
ミト:水瀬いのり

<イントロダクション>
原作者・川原礫がアスナ視点で描く新たな《アインクラッド》編を、完全新作アニメーションで映画化。
これは、ゲームであっても遊びではない――。
ゲームオーバーは現実の死に直結する。全ての原点であるデスゲーム「ソードアート・オンライン」が、劇場のスクリーンで新たに幕を開ける。

(C)2020 川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project