フックトイという商品ジャンルをご存じだろか。高速道路のサービスエリアやファミレスのレジ横、スーパーのおもちゃコーナーのフックにひっかけられている、安価なおもちゃのことである。
紙製の台紙がフックにひっかけられていることから「フックトイ」、または安価な価格から「チープトイ」と呼ばれることもあるが、このフックトイ新商品「緑翠の守護神 ムシバトロン」のヘラクレスオオカブトとギラファノコギリクワガタがネット上で話題になったばかりか、市場に出回るとたちまち売り切れが続出! ひそかなヒット商品となっている。
本商品を発売するのは、東京・両国にある玩具メーカー「ザ・アクセス」。もともとはフックトイのほか、全国の水族館、動物園などで販売されるグッズ、おもちゃを製作する老舗「ヒーロー」の、国内営業を担う販社からスタートした企業である。
今回、いかにして「ムシバトロン」が誕生したのか。そして、今後のフックトイ業界はどうなるのかを、同社代表取締役・清水学さん、EC部マネージャー・大村修一さん、デザイナー・大上夏海さんに、ロボット大好き声優の泰勇気さんと一緒にうかがってきた。
左から大上夏海さん、清水学さん、大村修一さん
久々の新規金型ロボットとなった「ムシバトロン」
泰 「バトロンシリーズ」は昔から知っていたんですが、今回、「ムシバトロン」で完全新規に型を起こされたじゃないですか。ここに至るまでにどういう道のりがあったのかを教えてください。
清水 今回、Twitter上で「どんな新商品がいいですか?」とアイデアを募ったところ、いろいろな方から使えそうなアイデアも使えなさそうなアイデアもいただき、最終的に個人的な趣味で虫にしちゃいました。その理由には2つあって、ひとつは「立体昆虫図鑑」という商品がなかなか好調だったことです。虫には手堅いファンがいるということと、単純に虫だとロボット形態、虫形態ともにかっこいい商品ができそうだなというところです。
そもそもうちの会社は、昔から昆虫関係の商品を扱っていまして、先代の父が独立して会社を立ち上げた時に最初に売れた商品がぜんまいで動く虫のおもちゃだったんですよ。カブトムシ、クワガタ、テントウムシ。この3つのおかげで、父は独立しても食えたという経緯もあります。
泰 根底には、伝統的に会社として虫好きがあったと。
清水 そうですね。かつて僕が香港に駐在している頃に、毎年2月か3月あたりに父も来ていたんですが、その時にいつも「今年は昆虫を何コンテナ売るか」っていう話をしていました。当時から虫は、そこそこ売れる商材だという認識はありましたね。
泰 虫は国や地域を問わず、世界中で人気のある題材ですよね。
清水 ネタとして虫は手堅いです。中国の工場とは、「今回の商品はどっちがお金を何割出すか」という話をいつもしていて、ネタによっては工場側が1円も出したくない言う時があるんです。たとえば「シーバトロン」のジンベエザメとか1円も出してくれませんでしたね。でも虫をやるといったら、ふたつ返事で「出すよ」と言ってくれましたからね。おっしゃる通り、虫は世界的に売れるという見込みがあったんでしょうね。
泰 海洋生物も人気がありそうだと思うんですが。
清水 海洋生物も、サメとかイルカのように売れるものもあるんですが、キワにいけばいくほど手に取ってもらえなくなるんです。
泰 ダイオウグソクムシロボはどうでしたか?
清水 全然ダメでしたね!(笑)あれは本当に個人的趣味で作ったんですが、まだ1ロット分消化していないと思います。話のタネとしてはよかったんですけど、経営的にはほとんど貢献していません。できが悪くて、個人的にはあまり気に入っていないマンタロボ(オニイトマキエイ)のほうがまだ売れていますね。
──ギラギラのシルバー塗装がインパクト大でした。
清水 最初はゴールドの予定だったんですが、とある水族館の館長さんに聞いたところ「シルバーがいい」ということでシルバーにしたんです。メインのお客さんとして水族館の来場者を考えていたので。そこで売れなきゃよそではもう売れないと思ってましたから(笑)。
泰 あはは(笑)。そんな中、今回、新規金型で「ムシバトロン」が出ると聞いて、嬉しくなりました。
清水 それまでもずっと新しい変形ロボが作りたかったんですが、マーケットサイズが読めなくて。だからある程度金銭的にも時間的にも余裕がないと作りにくくて、そういうわけでしばらく(新作ロボットは)お休みしていたんです。マーク時代(前身の企業・有限会社マークのこと)はアホみたいに変形ロボットを作ってたので好きではあるんですが、ザ・アクセスになってから新規にゼロから金型を起こしてやったのって、シリーズとしては2点くらいしかないです。
業界のビッグネームがDMで直接売り込みに!
──話は前後しますが、改めてザ・アクセスの会社の成り立ちから教えていただけますか?
清水 もともとは、48年前に私の父が「ヒーロー」という玩具会社を初めたのが最初だから、けっこう古い歴史があるんです。その頃は日本国内で作っていたおもちゃを、中南米、中近東、ヨーロッパあたりに輸出していました。輸出していたのは、四ツ木あたりで作ったブリキのおもちゃとか金町辺りで作ったプラスチックのおもちゃだったんですが、だんだん国内のおもちゃ工場が減ってきて持っていくものがなくなってきた。そこで、今度は海外で作っているおもちゃを日本に輸入して販売することにしたそうです。ただ国内に販売するといっても、お客さんもわからなければマーケットもわからない。そこで当時、某玩具メーカーに勤めていた(父の弟にあたる)おじを呼び寄せて、会社を作るから社長になれと言ったそうです。それでできた会社がマークでした。
──マークというと、1980年代に「銀河疾風バクシンガー」「戦国魔神ゴーショーグン」のプラモデルなどを出していたメーカーですね!
清水 もともと海外に販売していた頃のノウハウを生かして、金型をいろいろ作って、それをもとに国内向けに商品を売っていたんですけど、けっこう権利問題とかが複雑になっていて、最終的に父とおじが喧嘩別れしまして、ヒーローはうちの父が、マークはおじが引き取ることになりました。
その時、ヒーローにあった変形ロボットの金型って「ゼロシーダ」シリーズ(※)の、「ゼロシーダII」しかありませんでした。あとは全部マークのほうに行っちゃいました。
そこで、うちの父はいわゆるゼンマイのカブトムシとかクワガタを売って、どうにか会社を立て直して国内のマーケットに復帰することになります。そこからしばらくは、「ゼロシーダ」を細々とやるのみで、変形ロボットは出してませんでした。
※ゼロシーダ……「ヒーロー/ザ・アクセス」オリジナルの変形ロボットシリーズ。自動車、ジェット機、バイク、動物などさまざまな題材をロボットに変形、合体させる人気シリーズ。
マーク時代に発売されたプラモデル
──そんな経緯が……。
清水 その後、僕にもヒーローに戻って来いとお呼びがかかって、香港に駐在するようになりました。その間にチャンピオンクラウンとかフライングドラゴンといった現地の玩具メーカーと仲良くなって、そこらの商品を輸入して始まったのが、今の変形ロボ──「バトロンシリーズ」ですね。
もともと父の作っていたのが「ゼロシーダII」だったんですが、僕が入ってからはその名前はあまり使わなくなっていきました。というのも、もともと「ゼロシーダII」には壮大なストーリーがあって、それを作っていたのが企画会社のビークラフトさんだったんです。それこそ、本気でアニメ化しようとか考えていたんじゃないかな。
泰 ビークラフトさんは今、バンダイさんでプラモデルの「マスターグレード」シリーズの設計とかされていますよね。
清水 すごいですよね。その後、ビークラフトさんとの取引が一段落つき、弊社はそこから中国一辺倒になります。父が開発に携わったのは2個くらいで、それもアイデアだけ出して、設計、原型の作成は中国現地だったんじゃないかな。あとはフライングドラゴンとチャンピオンクラウンが作ったのを買って、輸入するくらいでした。
人気の「シーバトロン」シリーズ。こちらは開発中のクリアバージョン
──「バトロンシリーズ」は自社開発でしょうか?
清水 もともとはフライングドラゴンから売り込まれた商品でした。当初、うちと仲良くしてくれていたんですが、途中から別の会社が割り込んできて、日本国内ではそちらと取引するようになったんですね。
だから、その期間はチャンピオンクラウンから変形ロボットを買っていたんですが、チャンピオンクラウンの作るロボットって統一性がなくて、サイズもバラバラならモチーフもバラバラでシリーズものとして扱うのが非常に難しいんですよ。「ランドロボ5」とか「スカイロボ5」とかはチャンピオンクラウンから買ったものです。
泰 確かにその2つはかっこよかったけど、ほかはあまり印象ないですね。
清水 フライングドラゴンのほうが、大きさとかデザインの統一性がとれてて、扱いやすかったです。その後、1990年代末にフライングドラゴンと関係を修復してからは、また取引を再開するんですが、今度はフライングドラゴンが廃業することになったので、別の工場で作っている感じですね。
泰 そんな中、久々の自社開発のロボットとして「ムシバトロン」が発売されましたが、店頭に並んだ瞬間、売り切れになるほど話題になっていますね。
清水 ここだけの話、初回は大した数を入れなかったんですよ、だから、余計に品薄感が出てしまったんじゃないかな。
──SNSでのアイデア募集が一部で大きく盛り上がりましたね。
清水 2019年12月にSNSで何か募集しようということで、ギフトショー用のポスターを募集したのが最初だったんですよ。いつも人にものを聞いたり頼ったりせず社内で完結したり、箱イラストを描いてもらう時も知り合いのイラストレーターにお願いするという形でやっていたんですが、この時、初めてSNSで募集するというのをやってみたんです。そしたらけっこうたくさんご応募いただけたんですが、……無知って恐ろしいなと今は思うんですが、何も考えずにお願いしたのがアニメーターの横田守さんだったんです。
泰 えーー!
清水 僕は全然知らなかったんですが、大村も「えぇーーっ!」っていう反応でした(笑)。
大上 応募者の皆さんの絵をほぼ均等に見せていただいたんですが、この人、アメコミ風の絵も描けるんだ~。あ、Wikipediaがありますよって(笑)。
清水 だから本当にやりがい搾取というか、言葉が悪いんですが、皆さんの「一度フックトイにかかわってみたい」という気持ちをありがたく利用させていただいてお仕事をお願いしたという状況なんですよ。
その後も、原型師の森口あらんさんから「フックトイの開発に一度かかわってみたいけど、言っちゃ悪いけどお宅のロボットは顔がよくない」「失礼な話ですが、よろしければ一度やらせていただきたい」ってDMが来たりしまして。それで「いいですけど、お金はほとんど出せないですよ」って返答したら、「いくらでもいいからやらせてほしい」と言ってくださって。
その後、パッケージのイラストレーター募集をした時に、倉持キョーリューさんから応募をいただいたんですが、その時も倉持さんが有名な方とは全然知らず……。その時、「パッケージはもう別の方にお願いする予定なので、よろしければ別の仕事をしませんか」とお声がけしたところ、ムシバトロンの開発自体にかかわっていただくことになりました。
泰 僕、倉持さんとは20年来の友達なんですが、フックトイにかかわるのが夢だってずっと言っていました。
清水 その感覚がわからなくて(笑)。だってバンダイさんとかとお仕事した方が、仕事の格的には上じゃないですか。なぜフックトイの仕事をしたいのかがわからない。
──クリエイターの皆さんが、実はフックトイにかかわりたかった、という話は意外でしたか?
清水 もう意外ですよね。だって、別にへりくだっているわけじゃないんですけど、バンダイがあってタカラトミーがあって、エポック社、アガツマなどがあって、そこと比べたらうちなんて下層も下層。本当に制作にかけられる予算は限られているし、経験も少ない。上のメーカーなんてものすごいメンバーが、時間もお金もかけて作っているわけですから、そこと比べると、なんでこんな物の開発に携わりたいんだろうって不思議なんですよね。
泰 たぶん子どもの頃に親御さんに買っていただいて、心惹かれた記憶があるんじゃないでしょうか。僕がそうなんですが、幼少期に触れた時の刺激が忘れられないと思うんです。あと、倉持君がそうだったと思うんですが、新しい変形ギミックを考えるのが楽しいんですよ。
清水 そうですよね。倉持さんには、「ムシバトロン」のギラファで本当に救われたんですよ。ギラファは途中、変形ギミックで詰まっちゃって。勢いだけで開発を始めちゃうから、突き当りにぶつかるのも早くて、そうなると今までだったら「もういらないや」って放棄しがちだったんです。今回も、これ以上サイズを小さくできないし、ギミックもかっこわるいからもう嫌だと思ってたら、倉持さんがやりますと言ってくれまして。その後、出していただいたスケッチを見たら、さすがプロという感じでしたね。
泰 では、もともとのギミックは全然違う物だったんですね。
清水 そうですね。
大上 大きさも、完成品の1.3倍くらいでした。
清水 倉持さんに助けてもらったからブレイクスルーできたわけですが、今までこういう経験がなかったんです。壁に突き当たった時の解決策として、SNSが使えると初めてわかった仕事でした。これまでは突き当ったら突き当たったまま、できあがるのはマンタみたいな感じだったんですけど、あれ、本当にカッコ悪いんですよ。マニアの人は「これぞチープトイだ」って喜ぶんですけど、僕としては不本意ながらああいう形になってるんです(苦笑)。一度「ムシバトロン」を作ったら、もうあの路線には戻れないです。
泰 「ムシバトロン」でハードルが上がってしまった。
清水 上がりましたね。これからも楽しいから変形ロボット玩具を作っていくとは思うんですが、問題の解決方法が今回の一件で変わったと思います。まず何を作るのかというところで、SNSを完全に無視して商品開発することはもうできないかもしれない。良くも悪くも。開発段階からSNSを活用してみんなと一緒に盛り上げていくことで、フォロワーの皆さんにも喜んでもらえるし、こちらとしてもリアクションを見ながら楽しく開発できる。こういう経験を「ムシバトロン」でしてしまったので、もう今までみたいに一方通行で作り続けるのは難しいかもしれないですね。
射幸心をあおる「熱い」パッケージデザイン
──「ムシバトロン」を触ってみて、素材感のよさに感動したんですけど、これまでの「バトロンシリーズ」とそんなに材質は大きく変えてはいないですよね。
清水 変えていません。実は、今お願いしている工場の社長がものすごい職人気質で、あまり妥協しないタイプの人なんです。だから生産が遅くなってしまいがちなんですが、今回の商品では、僕が当初の予定から3~4段階ほど変形ギミックを足してしまったので値段が上がるかと思ったら、あまり変わらない値段でやってくれたんですよ。材料に関しても、羽根を立ち上げるところとか強度的にちょっと怖かったんですが、採算度外視でいい材料を使ってくれたり。もう本当に今回はみんなに頼りっぱなしです。
泰 確かに最初はちょっと触るのが怖かったんですが、遊んでいくうちにパーツがなじんでいって、その時に今までと素材が違う感じがして「これがフックトイか?」と驚いたんです。
清水 そんな感じでギラファは倉持さんにがっつり設計していただいたんですが、ヘラクレスの本体は社内でストンと仕上がったので、顔だけ森口さんにやっていただきました。SNSは恐ろしいなと思ったのが、この違いをユーザーの皆さんもなんとなく感じ取っていて、「変形ギミックはギラファ」「可動の多さはヘラクレス」って言ってらっしゃるんです。
泰 ヘラクレスの可動の多さは確かにびっくりしました。
清水 ヘラクレスは体の厚みがあるから、収納しやすいんです。ギラファの何が大変って、クワガタって体が平べったいからいろんなものが入らないんですよ。
──虫形態のリアルさも追及していると。
清水 そうですね。いつもそうなんですけど、弊社には架空の物から架空の物に変形させるほどの技術も想像力もないので、まずはゴールだけは決めるようにしています。たとえばロボットから変形して、終点はヘラクレスオオカブトにすると。そして、ヘラクレスはカッチリ作りこむけど、ロボットは架空の物なので多少は譲れる、という風にしないとなかなか商品の設計ができないんです。
だからギミックは後から考えるようにして、最初にこっち(ロボットではないほう)の形だけは最初に作っちゃうんです。ジンベエザメの場合は、ロボット形態は多少不細工になってジンベエザメ形態だけは譲れない、というところからだいたい始めています。ロボットの形態が多少カッコ悪くても、生物形態がかっこよければ少しは売れるので。
──デザイナーの大上さんが、パッケージのデザインをされているのでしょうか?
大上 そうですね。できあがったイラスト素材をいただいて、それにあわせてパッケージ全体をデザインしていく形になります。ポーズとかはほとんどお任せです。
──今回、ヘラクレスとギラファがセットになったBOXも発売されますが、こちらのパッケージデザインのコンセプトなどはありますか?
大上 それを聞かれると困るんですけど(苦笑)、前職が広告代理店でパチンコの広告とかポップをたくさん作ってまして、いろいろと「熱い」系のデザインをしていたので、そういうノリは出ているかもしれません。
「このデザイン熱い!」っていう勢いを出すのは好きなので、それで、パチンコ広告で学んだノウハウを生かして、思い切り射幸心をあおるデザインをテーマに今もやっています。たとえばロゴを立体にしたり、炎を燃やしてみたり。
今回のBOXでいうと、今までのブリスターだとおもちゃの後ろにイラストが隠れたりして、なかなか全身を見せることができないんですが、今回は前面がすべて使えることで、大きくイラストを見せたり、格闘ゲームのキャラクター選択みたいにバストアップで並べたり、全部やりたいことができました。
清水 店頭販売するとなると商品が全く見えないし、写真すら入っていないのでちょっと難しいパッケージだと思うんですが、EC限定にすることで、商品の写真自体は販売ページで見せることができるかなと。
──箱裏はバトロンシリーズのロボットがカードになって、切り取れるようになってるんですね。
清水 あ、そこはスペースが余っちゃって……。
(一同笑)
泰 カードとして使うには切らないといけないですね。
大上 突然ここでフックトイ感が出てくるんですよね。
問題の裏面。切り取ってカードにしよう!
清水 いつもは、だいたいこのくらいのサイズに必要事項を入れて、社名を入れて、バーコードを入れて、注意表記を入れて、変形の展開図を入れてって、って話をしているところに、いきなり1面が空いちゃって。ここに何を入れたらいいんだろう。カードを入れちゃおうかって。
いきなり1億円もらった人が、何に使ったらいいかわからなくて、ひとまず牛丼屋で特盛を頼む感覚なんですよね(笑)。だから、これもブレイクスルーですよね。
泰 虫捕りのシーズンになる夏が楽しみですよね。今年は新型コロナウイルスで、ちょっと売り場がどうなるかわからないのですが。
清水 そうですね。今年は、「ムシバトロン」が出るぞ! 博品館が開いた! また閉まった!営業は2日だけ!みたいな感じで、あまりの間の悪さに引きました。
ザ・アクセスが次に目指すものとは
──ちなみにフックトイのユーザーは、どういう層なのでしょうか?
清水 水族館とか販売店で買ってくださるのは、ほとんどお子さんだと思います。ECサイトで買ってくださるのは、ほぼ大人だと思います。
──今は、かつてのように新作のロボットアニメが作られにくい時代ということもあり、刺激を求める変形ロボット好きの人たちがフックトイに集まってきているのかなと思います。
大上 TwitterなどのSNSを見てると、感覚的に想定していた大人のファンの方が可視化されたというか、はっきりとフォロワーとして見えるようになったと思います。ザ・アクセスのロボットを応援してくださる皆さんのプロフィールを拝見すると、皆さん初代「ガンダム」だったり「マクロス」だったり、すでに共通認識で知ってらっしゃるんですよね。
清水 またその人たちが、意外と横でつながっていたりして。しかもその中には、業界的にはビッグネームの方もいたりして、びっくりしますね。
──SNSを通じて、フックトイの新たな可能性が出てきた感じですよね。
清水 こういう商品開発の方法ってあるんだって感じですよね。
泰 でも今だからこそ、ですよね。ちょっと前だと、今盛り上げてくれている人たちも大人でなかったり、実力も発言力もまだまだだったり。
清水 当時ロボットが好きだった方が大人になって、実力も経験もついてきたから、我々が困ってるんだったらちょっと手伝ってあげてもいいよ、って乗ってくれる。そこに助けてもらっています。
だからこちらも一緒に成長していかないと、いつかやりがい搾取だって気づかれちゃうかもしれない(笑)。
──そういう意味では「ムシバトロン」を通じて相当いろいろなものを吸収できたのでは?
清水 そうですね。こういう時は誰に頼もうとか、こういう時はこう進めればいいんだと本当に勉強させてもらいました。僕は根っからの技術屋ではないので、技術的にはたぶん中国の工場にノウハウがストックされたんじゃないかなと思っています。
──そういうお話をうかがっていると、まだまだフックトイには自由な空気、おもちゃの可能性が秘められていますね。
泰 うん、「ムシバトロン」が何かの起爆剤になりそうですよね。
清水 何か新しい広がり方ができるんじゃないかなって期待はしています。たとえばアニメを作ってみたりとか……。どれくらい予算がかかるのか全然想像もつかないんですが……。
──少し話はそれますが、清水さん自身は何か思い入れのあるロボットがあったりしますか?
清水 本当に申し訳ないくらい素でお仕事としてやらせていただいています。幼少期に通過儀礼的にガンダム、イデオン、ザブングル、ダンバインを観ていたんですが、その後は普通にスルーしてきちゃってるんですよ。ただ、逆にその素の感じがよかったのかなと思っています。変に思い入れが強かったりすると、そちらに振り切れちゃったりするから。ある意味ピュアなので、どんどん皆さんの意見を聞きつつ、右に行ったり左に行ったりしながらやってる感じです。
泰 そのバランス感覚が大事なんじゃないでしょうか。「ムシバトロン」もロボット好きだったらもっとマニアックな方向に行ってただろうし、そういう遊びは大きいお友達がおのおので楽しめばいいと思いますね。子どもたちがこれを楽しむことができるのが一番だと思います。僕も小さい頃、「トランスフォーマー」とか「ダイアクロン」みたいな変形ロボット玩具で遊ぶのと同じように、「ゼロシーダ」で遊んでましたが、やっぱりインパクトがあったんですよね。メインストリームのおもちゃとは違う手ごたえ、というものが今の子供にも伝わるといいなと思っています。
清水 今回、SNSでフォロワーの声を聞くまでは、皆さん、うちのロボットの顔が嫌いだったなんて知りませんでした。そんなにマニアじゃないからこそ切り捨てていた要素こそが大事だったんだって今、まさに勉強しています。顔よりも変形のギミックが大事なんじゃないの?って思ってましたから。
泰 そうなんです! ロボットの顔って大事なんですよ!
清水 森口さんも「顔!」っていうから、じゃあ顔を変えようって(笑)。
大上 Twitterでも「ギミックはいいんだけど、顔がアクセスだからな」って書き込みがあって、「アクセス顔」って言われてます。
伝統のアクセス顔
こちらは「ムシバトロン」ヘラクレスオオカブトの顔
こっちがギラファノコギリクワガタの顔
清水 パッケージの絵も、最初は大上が描けないって言ってるのに、「いいから描いてよ」って無理やり「ディノバトロン」を描かせたり。そしたらSNSで「パッケージがいまいちだ」って盛り上がってしまって、大上がへこんじゃったんです。「苦手だって言ったのに無理やり描かされて、そのうえ酷評されて……」って。
大上 これしかできないんだもん!って言いました(笑)。おもちゃを忠実に再現したらああなったんです!
清水 そういう意味では、既存のロボットの顔だけ作り変えて出し直すのもありかもしれないですね。それだとそんなにお金もかからないですし。おまけに、また顔を公募しちゃったりして。
大上さん渾身の「ディノバトロン」パッケージ
──こうなったら世の中のありとあらゆるメカデザイナーさんとコラボレーションしてみましょう!
泰 フックトイ好きで、触ってる方もけっこういらっしゃると思うんですよね。
新技術で大きく広がるフックトイの世界
──今後のフックトイについて、どうなっていくと思われますか?
清水 3DプリンターとCADのおかげで、小ロット商品の敷居がけっこう下がっているんですよね。昔、僕が営業やってる頃に高知で「カツオの変形ロボット作って」って言われて、「そんな簡単にできない」って話をした記憶があるんですが、3DプリンターとCADを活用すればとりあえず小ロットから生産するというのもないわけではないなと思っています。あともうひとつ何かきっかけがあれば、そのレベルにまで行けるかもしれないなって思います。
今回の「ムシバトロン」は最後のほう、原型は手で作ることはなくて、もうほとんど3Dプリンタでー出力してましたからね。3Dプリンターだと、1パーツで構成できるから強度も出るんです。
──フックトイにも変革が起こっているんですね。
清水 まあ、もうコスト的にフックトイじゃなくなりつつありますけどね(笑)。もしかすると、オーダーメイドで変形ロボットを作れる時代が来るかもしれないですね。だから今度「カツオのロボットを作って」って言われたら、実際に小ロットから作れるかもしれない。
──そう考えると、変形ロボットに一日の長があるザ・アクセスは、そこで勝負できそうですね。
泰 魚類ロボなら任せとけみたいな。
清水 魚類は、けっこうギミックを流用できますからね。前まではけっこういろんな玩具メーカーさんがいたんですが、自社開発でフットワーク軽くオリジナルロボを作れる中小企業ってほとんど残ってなくて、結局うちだけが残ったんですよ。
──下町のおもちゃ屋さんを続けるのは、やはり難しいですか。
清水 個人的な趣味ではもう続けられないですね。それなりのスケールメリットを生み出せないと生き残っていけません。
──今後、ザ・アクセスとしては、どんな変形ロボットを作っていきたいと考えられていますか?
清水 次はサメの5身合体ロボ「シャークロボ5」をやりたいなと考えています。ただ、またあいも変わらず話だけが先に出て、アイデアがまだ追い付いていないという状況で、またアイデアを公募するかもしれないです。困ったらみんなに聞くっていう悪い癖がついちゃったかもしれません(苦笑)。
ただモチーフの特定って難しいんですよね。まず売り場ありきみたいなところがあります。昆虫はもともと昆虫関係の商品が売れていたので販路がありましたけど、それ以外だとどうしても魚関係とか恐竜関係にいかざるを得ない。
──水族館とか博物館で買ってもらう。
清水 趣味だけで売れるというのは想定しづらい商品ですので、そういうところで売れる見込みが立たないといけません。それを考えるとなかなか難しいですよね。この前もトカゲロボとかかっこいいなと思ったんですが、トカゲを売る場所がないんですよね。
大上 シャークロボも合体した時のバランスがいい、形がいいだけで考えていくと、知名度と一致しないなんてこともありますから。トカゲは個人的にはやってみたいと思いましたけどね。悪役っぽい感じで。
清水 トカゲは売り先だよね。SNSとかで売り場や売り方の自由度が上がったらもうちょい自由に選択できるんでしょうけど、現状の自社の立ち位置を考えると、自由にモチーフを考えることはできないと思います。
いずれにしても、独断専行で突っ走る前に、ある程度話を聞きながら作るというか。「ムシバトロン」みたいに、ある程度話を聞いて「虫!」ってジャッジしたりはするんですが、広く意見は聞いたほうがいいということは今回学びました。
大上 「これとかどう?」って気軽にSNSで呟けるのは楽しいですね。前は社内で「これ、いけるんじゃないですか?」って話してても、実際にどうかはわからなかったので。
清水 まあここで2人に聴くよりは2000人のフォロワーから話を聞くほうがまともな意見が出てくるとは思いますよ。あんまり聞きすぎると迷うけど。
あ、護衛艦の「いずも」とかどうですかね。絶対にSNSとか盛り上がりますよね。地道に売れるんですよね、自衛隊ものって。でもまだ次回は、具体的には未定ですね。
泰 まだ「ムシバトロン」が出たばかりですからね。
清水 ただもうやり始めないといけないんです。「ムシバトロン」はなんだかんだいって2年かかってますからね。本当は1年で終わらすつもりだったんですが、途中でコロナがきて意気消沈して。あわててやっても売れないから、時間をかけてやろうってことになり、このタイミングでの発売になりました。
実際に店頭で見て買ってもらうっていうのがフックトイの主流ですから、去年の人の動きだったら、発売するだけ無駄だなって。現に去年発売した新商品も、本来ならもっと売れたはずというものが今頃になって動き始めたりしてますから。今年にしてよかったなと思います。
泰 ECサイトも展開されていますが、そちらの手ごたえはいかがですか?
大村 去年の冬くらいから大々的にスタートして、どういう商品がユーザーの目に届くかわからなかったんですが、最近は新型コロナウイルスの状況もあり、お子さんが楽しめるものやパーティーグッズ。あとは昆虫図鑑、ロボットのシリーズが売れております。今まで動かなかったものが急に動き出したりしてる状況を鑑みると、意外と女性で購入される方が多いですね。例えばお母さまがお子さんに買われたり、若い方だったらカラフルなマスクや帽子をご購入いただいています。
今までは弊社から卸してる会社さんがアマゾンや自社のECで販売されたりしていたんですが、最近になってザ・アクセスがECショップを始めたことを知られた方が増えてきまして、かなりユーザーが付き始めていると思います。
清水 以前は「これどこに売ってるんですか?」と聞かれても「大阪の水族館でしか売ってません」みたいにお答えすることがよくあったんですが、最近は「うちのECサイトがあるので、そこからお買い上げください」と言えるようになってきましたね。
大村 「バトロンシリーズ」をECで買われる方は、ドバっとまとめて買ってくださる方が多い印象です。特に「ムシバトロン」は2個セットとか、それぞれ2個ずつとか買ってくださる方が多いですね。今度は「VS BOX」を5月28日より発売を予定していまして、EC限定グッズも今後展開しようと準備しています。
──SNS、ネットショッピング時代で、販売スタイルや商品も大きく変わってきそうですね。
泰 最後に、過去に発売された変形ロボットの再版は今後ありえますか?
清水 実はマーク時代を含めて、50くらいあった金型が全部どこかにいっちゃってるんですよね。どこかの工場の奥に寝てるか、倉庫の端っこで錆びて朽ち果てているか。もしかしたら、金型には価値があると思わずに重石代わりに使われているかもしれませんね。
泰 そこもSNSの力を借りて情報収集してみてはいかがでしょうか。
清水 でも、うちの親の代の商品でしょ。その世代の方ってSNSとかやってないんですよね。2代目、3代目の方など、もし心当たりのある方は、ぜひザ・アクセスにご一報いただけますでしょうか。責任をもって買い取らせていただきます!
【商品情報】
■緑翠の守護神ムシバトロン:ヘラクレスオオカブト、ギラファノコギリクワガタ
・価格:オープン価格
・メーカー:ザ・アクセス
・材質:本体・ABS
脚、角、触覚:PVC(フタル酸系可塑剤は使用しておりません)
・対象年齢:6才以上
■緑翠の守護神 ムシバトロン -VS BOX-
・価格:2,200円(税込)
・メーカー:ザ・アクセス
・材質:本体・ABS
脚、角、触覚:PVC(フタル酸系可塑剤は使用しておりません)
・対象年齢:6才以上
<「緑翠の守護神 ムシバトロン -VS BOX-」販売ページ>
【アマゾンストアURL】 #
【BASEストアURL】 #items/43632742
-VS BOX-オンライン限定特典として、BOXパッケージデザインの 「ムシバトロンVS クリアファイル」 (非売品)を先着順でプレゼント!
※オンライン限定特典は数に限りがございます。 無くなり次第終了となります。 ご了承ください
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