【Steam】GW初日! 旅行気分で楽しもう! 海外発のPCインディーズゲーム特集・中国編

アキバ総研をご覧の皆さま、いかがお過ごしでしょうか。ゲーム買いすぎちゃう系ライターの百壁ネロでございます。今年もゴールデンウィークがやって来ましたが、ご予定はいかがでしょうか? この時期、毎年旅行に出かけているという人もいるかと思いますが、このご時世ですから、今年はお出かけや旅行は控えて、おうちで過ごす人も多いかも知れません。というわけで今回は、おうちにいながら海外旅行気分を味わえる(かもしれない)海外発のインディーズゲーム特集と題して、日本のおとなりの国、中国生まれのゲームをご紹介していきたいと思います。

項目
ハマりすぎ注意の子育てシミュレーション「Chinese Parents」
ジャパニーズアニメ風の道教アクション「ゼンジョン」
 ロープライス&ハイクオリティな音楽ゲーム「MUSYNX」

1.中国の暮らしが垣間見える!? ハマりすぎ注意の子育てシミュレーション「Chinese Parents」

  • 「Chinese Parents」(墨鱼玩游戏)
  • ジャンル:シミュレーション
  • 2018年9月29日発売
  • 価格:980円(2021年4月9日現在)
  • コピーライト:(C) 2018 墨鱼玩游戏

中国では、日本と比べものにならない壮絶な大学受験戦争が、繰り広げられているという話をよく耳にします。
これからご紹介する「Chinese Parents」は、そんな大学受験を含めた中国の子育て体験をテーマにしたシミュレーションゲームです。

本作の主人公は、中国のとある家庭に生まれた、ひとりの子どもです。プレイヤーの目的は、48ターン後に実施される「高考」こと大学入試を目指してひたすら子どもの能力をのばし、育てていくこと。ちょっとシュールなタッチの独特なイラストが特徴的で、どことなくゆるめの雰囲気が漂います。

子どもには「IQ」「EQ」「想像力」「記憶力」「体力」の5種類のステータスがあります。
プレイヤーはこの5種類のステータスの数値を上げるべく、毎ターン「カケラ集め」と「予定の実行」の2つのアクションを行っていきます。

「カケラ集め」は、マス目で区切られた盤面に敷き詰められた、能力のカケラを集めるミニゲームです。
行動力を消費してカケラを取ると、周囲8マスのカケラのロックが解除され、取得可能になるという、パズルゲーム風のシステムになっており、限られた行動力の中でいかに効率よくカケラを集めていくかがキモとなります。

なかには、同じ色のカケラを一気に獲得できるものや、周囲8マスのカケラをまとめて獲得できるものなど特殊なカケラもあり、それらを駆使して大量のカケラをゲットし、一気にステータスアップできたときの爽快感はひとしおです。

「予定の実行」は、学習と娯楽の2つのカテゴリーの中から、自分が覚えているスキルを選択し、スケジュールを組んで行います。
すると、組んだスケジュールがランダムイベントを交えつつ次々に実行されていき、その結果にあわせてパラメーターが上下します。

スケジュールに組めるスキルは、「カケラ集め」でパラメーターを伸ばし、カケラに混じって出現する電球マークの理解力を集めることで新たなものが習得可能。

たとえば赤ちゃん時代なら、初期スキルは「寝返り」と「音楽に手拍子」だけですが、徐々に「歩く」や「話す」を習得し、さらに進むと「走る」や「我慢」なんかも覚えることができるようになる、といった具合。スキルは習得時に大きく能力値が上がるので、いかに効率よくスキルを覚えられるかというのが本作の攻略のカギのひとつです。

「Chinese Parents」というタイトルにもあるとおり、本作は「Parents(両親)」との関係がとても重要なゲームとなっています。

その代表的なものが「期待」です。これは、いわゆるミッションにあたるもので、EQを500要する「名門小学校合格」や、自転車に乗るスキルを要する「お使い」といった親の期待を、期限内に達成することでステータスにボーナスを得られます。単なるミッションという形ではなく「両親があなた(子ども)に望んでいること」という見せ方になっているのは、本作ならではのユニークなポイントと言えるでしょう。

そして、「期待」と並ぶ本作攻略のうえで欠かせない要素は「親の満足度」。これは、スケジュール内の娯楽を実行すると基本的に下がり、逆に勉強を実行すると上がります。しっかり勉強して親の満足度を上げつつ、適度に娯楽も混ぜて自分のストレスを下げるという、この親の顔色をうかがうシステムは、ほかのゲームに類を見ない圧倒的な生々しさがあります。

本作のユニークなシステムのひとつに「メンツバトル」というものがあります。

これはプレイヤーの母親が、自分の親戚や友人、近所のママ友などを相手に、自分の子の持つ特技を自慢してマウント取り合いバトルを繰り広げるという一風変わったNPCとのバトルイベントです。

使う特技を選んで相手のHPを減らしていくというコマンドバトルRPG風のシステムなのですが、従妹から「あなたの家は昔から何も変わってないから落ち着くわー!」と皮肉を言われてダメージを受け、「プールで3泊してたわ。しかも3食ずっと、魚にエビにカニ!」と、旅行の自慢を放って相手に反撃を喰らわせる……というバトルの風景はあまりにも斬新。なんでも「中国では命よりメンツが大切」と言われることもあるほど、中国の人々はメンツを重んじるそうで、本作で描かれているこのメンツバトルの攻防も、もしかしたら、あながち完全なフィクションではないのかもしれません。

試験や学級委員長選挙、そしてクラスメートとの恋愛といったさまざまなイベントを体験しながら、高校3年生になると、いよいよ大学入試こと「高考」は目前。

ゲーム中で「人生の戦場」と表現される、まごうことなきビッグイベント「高考」を終えると、最終的なステータスや取得スキルなどに応じて職業が決まり、エピローグが語られます。

本作にはなんと100種類以上の職業が存在しており、コンプリートを目指してのやりこみ度は抜群。しかも、次回のプレイではクリア時のステータスの一部を引き継いだ自分の子どもを育てることができるので、「次はもっとよい結果を目指そう!」と、何度も何度もぐるぐると周回して楽しめます。中国式子育て、まさに沼……!

ちょっとシュールでブラックな世界観と、実際の中国の暮らしや文化が垣間見える生々しさが入り混じったゲーム体験が新鮮で楽しい「Chinese Parents」。いま流行りの「ウマ娘プリティーダービー」で育成シミュレーションゲームのおもしろさにハマった人なら、本作もきっとハマるはず! 興味が湧いた方はぜひ、中毒性抜群の「中国式子育て」を体験してみてください。

2.ハクスラ&ローグライクが楽しめる、ジャパニーズアニメ風の道教アクション「ゼンジョン」

  • 「ゼンジョン」(IndieLeague Studio)
  • ジャンル:アクション
  • 2019年6月24日発売
  • 価格:930円(2021年4月9日現在)
  • コピーライト:(C) 2019 IndieLeague Studio

「道教」という宗教を知っていらっしゃるでしょうか。儒教、仏教に並ぶ中国3大宗教のひとつである道教は、道(タオ)を中心概念とし、不老不死のからだを得ることを究極の理想とする、中国の固有宗教です。日本ではややなじみの薄い道教ですが、これからご紹介する「ゼンジョン」は、そんな道教をベースにした作品です。

本作は、見下ろし型視点のアクションゲームです。ポップなグラフィックが特徴で、キャラクターデザインはジャパニーズアニメ風。一見、日本発のインディーズゲームに見えますが、「何若琳」「袁了玉」などの日本では見慣れないタイプのキャラクター名をはじめ、ストーリーにも「法力」「浄壇守護」「洞天福地」などいかにも中国らしい雰囲気の言葉が散りばめられており、独特の世界観が形成されています。

本作のストーリーは、数か月前の月食の際に、何者かによって破壊された洞天福地の結界。その結界を修復するために、南子仙師という仙人風の老人の指示を受けた、弟子の少年少女たちが戦いへ向かうというあらすじ。

この「洞天福地」というのは、道教において神仙が住む洞窟の地「洞天」と仙人が修行した地「福地」の総称で、仙人たちが暮らすと信じられている、中国に伝わる伝説の理想郷だそうです。現代風のビジュアルのゲームでありながら、ストーリーのベースに古くから中国に伝わる道教の考えが置かれているというのは、唯一無二とも言える本作のユニークなポイント。

本作の操作キャラクターは全部で5人。プレイヤーは、ゲーム開始前に彼らの中から、ひとりを選択します。

キャラクターは「通常攻撃」「ダッシュ(回避)」「特殊攻撃」「守護神召喚攻撃」の4種類のスキルを持っており、キャラによってそれぞれ性能が異なります。

たとえば赤髪のマフラー少年・袁了玉は近距離に特化した性能、眠そうな目とピンクのヘッドホンがトレードマークのダウナー系少女・侯淑彦は遠距離が得意というように、キャラごとに得意な戦い方が異なります。

本作はオンラインマルチプレイにも対応しているので、前衛担当・後衛担当のようにフレンドと役割分担をしてプレイするのも盛り上がりそうです。

キャラクターと難易度を決めると、いよいよゲームスタート。

マップはランダム生成となっており、プレイヤーは、マップに設置された次のステージへのワープポイントである転送装置を目指して進んでいきます。

ハクスラアクションの代名詞的存在である「Diablo」シリーズを彷彿とさせるような斜め見下ろし視点アクションの本作ですが、大量の敵がワラワラと出てくる点が大きな特徴。
スキルを駆使して敵の群れを一掃する爽快感もまた「Diabloo」に似たおもしろさがあります。
通常攻撃以外のスキルには再使用可能となるまでのクールタイムが設定されているので、やみくもに連打をせず、戦況を見極めながら的確に使っていくことが攻略のカギとなります。

しかし本作、多彩なスキルがあるとは言え、敵の数がとても多く、なかには遠距離攻撃を仕掛けてくる相手もいるため、気を抜くとあっという間にやられてしまいます。

そこで重要となるのが、「ハクスラ」ことハック&スラッシュゲームのようなドロップアイテム要素です。
本作は、ステージ中に設置されたアイテムボックスから、ランダムでドロップするアイテムを取得することで、「火元素のダメージ40パーセントアップ」、「攻撃が当たるたびに50パーセントの確率で5HP回復」など、さまざまなパワーアップ効果を得られるシステムになっています。

しかも、これらの効果はほとんどが重複可能となっているため、同じアイテムでも取れば取るほど強くなっていきます。自分がどんどん成長していく感覚はゲームとしてはオーソドックスなものではありますがやはり気持ちよく、「次はどんなアイテムをゲットできるかな」と、ついついやめどきを見失ってプレイし続けてしまう魅力があります。

ちなみに、アイテムボックスには陰陽マークこと「太極図」があしらわれているのですが、調べてみたところ、どうやらこれも道教と関わりの深いシンボルだそうで、本作の世界観の徹底ぶりに思わず感心してしまう筆者でした。

ランダムで出現するアイテムを獲得してどんどん強くなっていくハクスラ要素と、ランダムマップ&ゲームオーバーですべてのアイテムを失うスリルあふれるローグライク要素という、アクションゲームの人気要素をしっかり備えた堅実な作りの「ゼンジョン」。ハクスラやローグライク好きの方はもちろん、キャラクターデザインや独特の世界観にひかれるものを感じた方もぜひ、遊んでみてください。

3.収録曲数60曲以上! ロープライス&ハイクオリティな音楽ゲーム「MUSYNX」

  • 「MUSYNX」(I-Inferno)
  • ジャンル:リズムアクション
  • 2018年12月5日発売
  • 価格:410円(2021年4月9日現在)
  • コピーライト:(C) 2018 I-Inferno

流れる音楽にあわせてタイミングよく対応するボタンを押して楽曲を奏でる「音ゲー」こと、リズムアクションゲーム。「BEMANI」シリーズや「太鼓の達人」など、日本ではアーケードタイトルが主流というイメージがありますが、Steamでは、以前「かわいいは正義! 美少女大活躍のPCゲーム特集」でご紹介した「Muse Dash」のような、PCで遊べるインディーズタイトルも多数リリースされています。ご紹介する「MUSYNX」も、Steamでリリースされている中国発の音楽ゲームです。

本作は、曲に合わせて流れてくる音符(ノート)をタイミングよく押して演奏する、オーソドックスなスタイルの音ゲーです。曲選択画面で見られる各曲のジャケットのイラストが、どれも個性的で美しく目を引きますが、なんと言っても本作の最大の特徴は収録曲数の多さ。本記事執筆時点で410円というお手頃価格でありながら、収録曲数はなんと60曲以上の大ボリューム。有料ダウンロードコンテンツを購入するとさらに多くの曲をプレイできるようになりますが、DLCなしでも十分すぎるほど楽しめる曲数です。

収録曲のジャンルは、ロックやテクノ、クラシックなどバラエティ豊かにそろっていますが、全体としてはボーカルありのポップス系が多い印象。中国発の音ゲーということで、曲一覧には漢字のタイトルが多く並び、ボーカルも中国語のものが大多数を占めています。なかには、日本ではなかなかお目にかかれない中国語VOCALOIDを使用した楽曲もあり、中国のオタクカルチャーを垣間見ることができます。

オリジナル曲だけではなく、コラボ曲が多い点も本作の特徴です。「美少女大活躍のPCゲーム特集」で取り上げた、音ゲー「Muse Dash」の楽曲はじめ、「PCビジュアルノベルゲーム特集」で取り上げた、パズル風ノベルゲーム「WILL: A Wonderful World / WILL:美好世界」や、さらには本記事のいちばん初めにご紹介した子育てシミュレーション「Chinese Parents」の楽曲もあったりします。国とジャンルを超えたインディーズゲームの共演を楽しめるのは、ゲーマーにとって特にうれしいポイントと言えるのではないでしょうか。ちなみに、筆者がいずれ「ちょっとえっちなゲーム特集」で取り上げたいとひそかに企んでいる「NEKOPARA」の楽曲もありました。う~ん、かわいい……。

演奏画面は、画面の奥から音符が流れてくるという、珍しい3D形式になっています。通常の音符に加えて、長押しが必要なロングノートも降ってくるシステムになっており、「beatmania IIDX」や「pop’n music」などアーケードの定番タイトルに似たプレイ感覚が楽しめます。

ちなみに、設定で演奏画面を3Dから2Dに変えることもできます。普段から音ゲーを遊んでいるプレイヤーは、こちらの画面の方がなじみ深く、プレイしやすいかも知れません。

そんな本作を語るうえではずせない大きな特徴は、ずばり「演奏感」です。音ゲーの中には、音符を押しても音が鳴らない、もしくは曲中の演奏とは別の鈴やパーカッションの音が鳴るタイプのタイトルがありますが、本作はボタンを押した際にしっかりと曲の一部を構成する音が鳴ります。押すタイミングがズレたり押し損なうと、曲が成り立たなくなってしまうというスリルとともに、「自分がこの曲を演奏しているんだ」という実感と気持ちよさを味わえるこの仕様は、まさに音ゲーの王道スタイルと言えるでしょう。

ゲームは、4ボタンモードと6ボタンモードがあり、いつでも自由に切り替えられます。
ライトに遊びたいなら4ボタン、腕に自信があるなら6ボタンと、腕前や気分によって遊び分けられるのはうれしいポイント。さらに全曲、イージーとハードの2種類の難易度が完備されているので、音ゲー初心者から上級者まで幅広く楽しむことができます。さらにさらに、本作はオンラインランキングにも対応しており、曲ごとに記録される「SYNC RATE」というスコアを用いて全世界のプレイヤーと腕前を競うことが可能。ゲームセンター気分でスコアアタックを楽しむことができます。

音ゲーは、未経験の人にはなんとなくハードルが高く感じられがちなジャンルですが、本作は初心者でも音楽を演奏する楽しさを気軽に味わえるような機能や仕様が多数あります。

そのひとつが、曲開始前に設定できるサウンドエンハンサーというオプション。これは、ボタンを押すタイミングが多少ズレた場合でも、音楽を違和感なく演奏させる機能です。「オート」「ストロング」「ウィーク」「オフ」の4種類の補正の強さがあり、「オフ」にすると、ボタンを押さなければ音楽が歯抜けになってしまいますが、逆に「オート」に設定すればボタンを押さなくても音が鳴り、音楽が常に完璧に演奏されるようになります。初心者は、まずはこの「オート」で音楽を覚えて、「ウィーク」「ストロング」「オート」へと徐々に補正を弱くしていくのがオススメです。

音ゲープレイヤーになじみ深いオーソドックスな演奏システム、収録曲の多さとクオリティの高さ、そして初心者でも遊びやすい充実したオプションや難易度設定と、音ゲーとしてハイレベルな作りになっている「MUSYNX」。ワンコイン以下というお求めやすい価格もあいまって、音ゲー未経験者にも音ゲー通にも幅広くオススメできるタイトルです。

ゲームで外国文化に触れて疑似海外旅行を楽しんでみよう!

というわけで、おススメの3作をご紹介しました。

シミュレーション、アクション、音ゲーと、中国発のタイトルをバラエティ豊かに取り上げてみましたが、いかがだったでしょうか。海外発のタイトルは、ゲームを通してその国のお国柄を感じられるのがおもしろいところです。なかなか気軽に海外旅行に行けないこのご時世、ゴールデンウィークはおうちでゲームを遊びながら外国の文化に触れてみるのも一興ではないでしょうか。

筆者:百壁ネロ
ゲーム買い過ぎちゃう系フリーライター。現在積みゲー300本以上。小説家でもあります。著作は「ごあけん アンレイテッド・エディション」(講談社)、「母の嘘(「悪意怪談」所収)」(竹書房)。
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