アニメライターが選ぶ、2021年冬アニメ総括レビュー!「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」「ゆるキャン△ SEASON2」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】

2021年冬アニメ総括ではシリーズものや、関連作品のあるタイトルをフィーチャー。原作コミックも完結したばかりの「のんのんびより のんすとっぷ」、ついにゲームも始動した「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」、こちらもコミックとともにフィナーレを迎えた「ホリミヤ」、映画も控えている「ゆるキャン△ SEASON2」をピックアップ! さらにショートアニメからは「幼女社長」の計5作品を紹介します。

ウマ娘 プリティーダービー Season 2

競走馬の魂を受け継ぐ少女・ウマ娘がレースで競うスポ根アニメの第2期は、1990年前半に活躍したトウカイテイオーとメジロマックイーンを軸にストーリーが展開。「この作品は実際の競走馬の物語をモチーフとし、事実に基づいた表現を心がけたフィクションです」という第1話冒頭のテロップの通り、史実をどう料理しているのかが本作の見どころだ。競走馬やその騎手の逸話、レース展開なども巧みに取り込まれ、競馬好きならニヤリとし、詳しくない人も思わず調べたくなってしまうに違いない。
本編ではレースに挑むウマ娘だけでなく、彼女たちを見守る人々にもスポットが当てられている。レース中に突然ウンチクを語り出す競馬オタクや、中継に夢中でヘアカットを失敗してしまう美容師など憎めないキャラが多いが、注目は元騎手の細江純子さんが1期から続投したレース解説者だ。回を重ねるごとに磨きがかかり、最終話では感極まる様子すらこなしてしまう芝居には、ウマ娘たちの成長物語に比類するほどの感動がある。2月にリリースされたゲームも大ヒットを記録しており、さらなるアニメ化に期待がかかる。

のんのんびより のんすとっぷ

全校生徒5人の旭丘分校に通う宮内れんげをメインに、自然あふれる田舎での暮らしを描いたほのぼのコメディ。抑制の利いた演出は3期でも健在。第1話ではセリフを排し、人物がいない田舎の景色などを積み重ねて、ようやく21カット目にれんげの顔が映される。過去シリーズの初回を思わせる落ち着いた画面運びは、「のんのんびより」の新たな始まりに相応しい印象を残す。
アニメでは春を起点に1年間の出来事を時系列順に追っているが、2期と3期では季節を再び春に戻し、1期では描かれなかったエピソードを補完する構成を取った。そのため視聴者からはシリーズごとに春夏秋冬を繰り返しているように見えるものの、実際は同じ1年を別の視点から切り取っただけで、キャラクターが年を取らないというお約束から逃れている。成長の予感は、踏み台を使って高い場所にある物を掴もうとする、第1話のれんげの行動からすでに表れていたはずだ。話数を経るごとに日が暮れていく次回予告からは時間が止まらずに流れ続けていることが感じられ、同時に終わりへの寂しさもこみ上げてくる1作となった。

ホリミヤ

クラスの人気者の堀京子と地味でオタクっぽい宮村伊澄。何の接点もなかった2人が、些細なきっかけから互いの距離を縮めていく学園ラブコメディ。原作は「Gファンタジー」に連載された同名コミックで、4コママンガ「堀さんと宮村くん」の構成と作画を一新した作品だ。「堀さんと宮村くん」は「ホリミヤ」と異なるキャストでOVA化されており、5月には最新巻がリリース予定というユニークな展開を見せている。
TVアニメの最終話では卒業を間近に控えた宮村が「もしもの話」として、堀と親密にならなかった世界を想像してみる。誰もカップリングが成立していない学園風景はいっそ清々しいが、宮村は「世界は自分が望んだ方向へ、きっと少しずつ進んでくれるんだと思う」と語り、画面には皆と仲よくなっている光景が映される。そう確信するのは本作がメディアや登場人物の声さえ変わっても、揺るぎない同一性を保っていることと無縁ではないだろう。

ゆるキャン△ SEASON2

女子高生たちがアウトドアを満喫するヒット作の第2期は、メインキャラクター総出で伊豆キャンプに出発。ただソロキャンパーの志摩リンだけは原付で目的地に向かい、ミニバンに乗るほかのメンバーと一線を画しているところが「ゆるキャン△」らしい。移動中だけはソロキャンプ気分を味わえる原付での旅はリンにぴったり。美しい景色を見て思いを巡らせるシーンを見ると一人旅がしたくなってくる。
最終話の後半は帰路に時間を割いているところも本作ならでは。分かれて帰ったリンから連絡がないことを心配する各務原なでしことの程よい距離が心地よく感じられる。2022年には映画の公開も予定されており、どんな旅を見せてくれるのか楽しみだ。

幼女社長

普通の5歳児・六科なじむが社長を務める企業・むじなカンパニーで巻き起こる騒動を描いたショートアニメ。出社しても遊んでばかりの社長だが、子どもらしい純粋な心でクレーマーを撃退したり、人生に疲れたサラリーマンを再起させたりと、予想外の有能っぷりを披露している。さらに第1話で曲がりなりにも契約書を交わしているのを見ると、「意外にしっかりしてるじゃん」と思ってしまうのは、ライターという職業ゆえだろうか(アキバ総研は初仕事前に業務委託契約書を交わし、依頼ごとに発注書が送られてくる希有な取引先である)。
公式サイトで全話楽しめるのもうれしいが、各動画サービスではOPアニメ完全版を配信中。冒頭からアクション全開で要必見の仕上がりだ。完全版ではOPと本編がほぼ同じ尺になってしまうが、そんなアンバランスさもハイテンションな作風とマッチしている。

(文・高橋克則)

(C) 2021 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」製作委員会
(C) 2021 あっと・KADOKAWA刊/旭丘分校管理組合三期
(C) HERO・萩原ダイスケ/SQUARE ENIX・「ホリミヤ」製作委員会
(C) あfろ・芳文社/野外活動委員会
(C) 藤井おでこ・KADOKAWA/むじなカンパニー