「超時空要塞マクロス」メカの量感と密度を知りたければ、アリイ製「VF-1S ガウォーク」を組み立てろ!【80年代B級アニメプラモ博物誌】第8回

前回、せっかくみんなの知っているガンプラを取り上げたのに、どうも前々回の「ドルバック」のパワードアーマーのほうがアクセス数が多いっぽいぞ……。今回も連載のメジャー化を狙って、1982年の大ヒット作「超時空要塞マクロス」から主役メカのバルキリーを選んでみたが、どうだろうか? しかし、連載タイトルは「B級プラモ」だから、慎重にキットを選定せねば。選んだのは、アリイ製の「1/100ガウォーク VF-1S ロイ・フォッカースペシャル」(当時価格300円)。
アリイ製キットは、背景が銀河というか宇宙っぽくなってしまって、このロイ・フォッカースペシャルのガウォークも、かなり怪しい感じの箱だ。最初、なにかのパチ物キットと勘違いしてしまった。イマイ、アリイの共同事業として始まった「マクロス」のプラモデルシリーズは当初、真っ白なパッケージで、タミヤの1/35ミリタリーミニチュアのようなクールな雰囲気を狙っていたはずなのに、背景色が白からオレンジになったり水色になったり、こうして色とりどりの銀河になったり……ねえ。その迷走ぶりが「マクロス」らしくて面白い。でも、最後まで統一してほしかった気もする。

▲ 箱には「■VF-1Sのパイロット・ロイフォッカー」と書かれているけど、このキャラクター絵の入れ方もキットによっていろいろ。そもそもパイロットの絵は当初は一切なかったと思うんだけど、パッケージデザイナーさんも混乱していたのでしょう。何しろ、ものすごい数のキットが発売されたので……

▲ 小冊子「マクロス情報」のプレゼントを告知するチラシが入っていました。プレゼント企画はいいとして、ハガキの送り先が静岡県の「今井科学」と埼玉県の「有井製作所」の2か所ある。「※どちらかへお送りください」と注記されてはいるものの、当時の混沌ぶりが伝わってくる

それで、イマイ製の「マクロス」キットは「ホビージャパン ヴィンテージ」という本で特集させてもらったし、現在でもBANDAI SPIRITS(バンダイスピリッツ)から再発売されているけれど、アリイ製はねえ……過去に1/100ディフェンダーと、1/100バトロイド バルキリーを買ったけど、スジボリがごりごりと太くて、関節にはポリキャップを使うほど配慮しているのに、形状はガタガタという印象だった。だけど、「キットは素材」という考え方をすれば、ちょっとぐらい仕上がりが荒っぽいほうが、切ったり貼ったり改造する心理的ハードルは下がるよね。
そのあたり、端正なモールドでシャープな組み上がりだったイマイ製「マクロス」とは好対照で面白い……って、かなり強引に誉めてる(笑)。何はともあれ、キットを見てみましょうか。

▲ バトロイド時にはフタが閉じるけど、ガウォーク形態時には開放されているインテーク。内部のモールド、ちゃんと精密じゃん! 一体成型だし、金型代ケチってない(笑)

▲ そして、「マクロス」メカではおなじみの“マルイチモールド”、丸の中に1本の線が走ったアイコン。キットによっては、これがデカールで平面として処理されていたが、当キットではモールドで再現! まあ、付属のデカールにも“マルイチモールド”が刷られているので「どっちかにしろよ!」という気持ちもあるけど、まずはうれしい

▲ やっぱり、決め手はクリア成形のキャノピーと、別パーツ化された座席でしょう! これによって航空機感が一気に増す! 例の“マルイチモールド”が、機首にもしっかりモールドされているのも、お見逃しなく

……あれ? アリイの「マクロス」キット、けっこういいじゃん。誰だよ、「アリイ製キットはモールドが荒い」とか言った無能ライターは? 俺か。
あと、ランナー状態でチェックしておきたいパーツは、これ。頭部です。頭のデザインが複数あるだけで、玩具メーカーも模型メーカーも最低限の金型を増やすだけで、多数のバリエーション商品を発売できる。バルキリーの頭部はやっぱり、「マクロス」のマーチャンダイジングを語るうえでは欠かすことのできない要素ですね。

▲ 当キットはVF-1Sなので、4本のツノが生えている。頭自体の形状はガウォーク用なので、バトロイド用より平べったい。VF-1A、1J、1S、1Dの4種の頭をひとつの金型で抜いて、工場で切り離して各キットに封入したのでしょう。機首と頭部のパーツ番号は「E」で統一されています。ということは、ほかに「A」~「D」の4種類があった?

好印象が消えないうちに、組み立てに入ります。レッツ・ガウォーク!