伝説のSFアニメ「機動警察パトレイバー2 the Movie」が、現在、「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX」として劇場公開中だ。
「機動警察パトレイバー」は、1988年にOVA(初期OVA)シリーズがスタート。その後、コミック連載(週刊少年サンデー)、TVシリーズ、劇場作品、OVA(新OVA)とメディアを拡大つつ、斬新なプロモーションで今なおファンを熱狂させ続けている大ヒットシリーズだ。
今回4DXで公開中の「機動警察パトレイバー2 the Movie」は、TVシリーズ放送、新OVA発売後の1993年に公開されたシリーズ劇場作品第2作目となる。1993年の初公開から28年。2020年夏、約4万人を動員した前作「機動警察パトレイバー the Movie 4DX」に続いて、体感型シアター4DXでの公開となる。
筆者も「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX」を体験してきたが、これがもう最高!横浜ベイブリッジに突っ込むミサイルや、首都高を疾走する荒川の自動車、首都圏上空を飛ぶ戦闘ヘリといった、本作ならではの派手なシーンでは、座席が上下左右に激しく揺れるいっぽう、雪がしんしんと降り積るシーンでは実際に雪が天井からゆったりと落ちてきたりと臨場感は抜群だ。
個人的には終盤、特車2課が戦闘ヘリのガトリングガンでハチの巣になるシーンと、終盤の地下トンネル内での戦闘を、疑似的に体験できて大興奮だった。前者のシーンは「こんなに激しい攻撃を受けながら、よくシゲさんは無傷で生存したなあ」と思ったし、後者は本当に「すごくきれいな花畑」が脳裏にかすめてしまうほどだった。
と同時に、混迷を極める令和の時代にこそ、現実感をもって迫るドラマとセリフの数々に考えさせられることも多々。いろいろな意味で「今、観ておきたい映画」となっている。
そんな「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX」だが、上映を終了する映画館もそろそろ出てくるということで、この週末がラストチャンスとなる地域もあると思われる。まだ本作を体感していないという方は、ぜひ映画館に足を運んでいただきたい!
また、今回「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX」を鑑賞した、キャラクターデザイン・高田明美さんに、4DX版の感想と「機動警察パトレイバー2 the Movie」という作品に対する思いを語っていただいた。
──「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX」の感想をお願いします。
高田 静かな場面でもゆらりゆらり揺れているところがあって、不安をあおるのにいい効果だったと思うし、4DXにした意味があったと思いました。
──個人的には、静かなシーンが多い映画という印象があったんですが、改めて4DXで見ると激しいシーンも多く、非常にエンタメしている映画だと感じました。
高田 そうなんです。だから退屈しないで観られると思います。そういう意味では、「1」が完全にオフな場面と派手な場面のメリハリがある映画だったのに対し、「2」はちょくちょく4DXのよさが感じられる構成になっていると思いました。
やっぱり最初につかみのシーンがドン!とあるのがよかったし、不安を感じたり、しみいるように恐怖が迫るような、心に訴えかけるシーンがあって、そのどちらのシーンにも4DX演出が使われているところがいいですね。そういうところは4DXで観たら、新しい感想を持てると思います。
それにちょうど2月が舞台の映画なので、タイミングもぴったりでしたね。2月26日に観たいという方も多かったんじゃないでしょうか
──ところで、このインタビュー前の雑談中に、本作に対して「鉛を飲むような感覚」があるとおっしゃってて、そこがすごく気になるんですが……。よろしければその意味を教えていただけますか?
高田 本当にそんな感覚があるんですよ。ラストシーンの柘植は楽しそうで、むしろしのぶのほうが罪人のような顔をしてますよね。あれはしのぶが自身の古傷をえぐられたからというのがあるんですけど、やっぱりあの柘植の上機嫌さは「まだこの女は俺に惚れているな」っていう優越感もあったんじゃないかな。そう思うと、ますます腹が立ちます(笑)。もう本当にあのシーンを観るたびに「なんて嫌な男なんだろう!」って思います。
だから、今回、リニューアル版のパンフレット表紙イラストは、しのぶはかわいそうな女なんかじゃないっていう感じで後藤とセットで描かせていただきました。女性ファンの方にも「2」が非常につらかったという方もいらっしゃったようで、今回私の描いた絵に救われたとTwitterでコメントしてくださった方もいました。
(イラストを眺めながら)しのぶの表情には過去を振り切った感じが欲しかったんです。やっぱりみんなが感じた辛い気持ちを自分も抱いていたので、それを晴らしたいと思ったんですね。(思い出したように)本当にいやな男!(笑)
榊原さん(南雲しのぶ役の榊原良子さん)もおっしゃってましたけど、演じる方としても、とてもつらいものがあったと思うんですよね。「二人の軽井沢」(「機動警察パトレイバー NEW OVA」第12話)とかやったうえであれですからね。
うーん……。多分にこれって押井守監督の願望だったんじゃないかなって思うんですよね。一番感情移入しているキャラクターは誰かというと、荒川でも後藤でもないし、女はわからんって言ってるからしのぶでもない。あるいは「後藤には(しのぶを)渡さない」という気持ちもあったのかもしれない。女優を私物化する監督みたいな(笑)。
──あはははは(笑)。まさにパト2は押井監督に翻弄される人々の映画、という感じですね。
高田 そういう側面はあるかもしれませんね。今回の4DX版「2」の公開を記念して、3月19日に榊原さんと伊藤君(「パトレイバー」シリーズ脚本の伊藤和典さん)の3人でトークイベントをする予定なんですが、そこでは「やっぱり嫌ですよね!」みたいなトークをしちゃおうかなと思っています。あまりにヒートアップしたらきっと伊藤君が押さえてくれるのかな?
──そのトークイベントは、すごく楽しみです(笑)。ありがとうございました!
【イベント情報】
■「機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX」公開記念 有料オンライントークショー
・予定開催日時:2021年3月19日(金)20:00~
・予定出演者(※敬称略):
伊藤和典(脚本家:TVシリーズでさっさと逃げられて地獄を見た人)
高田明美(キャラクターデザイナー:劇場版のたびにキャラ表と違う画に悶絶した人)
榊原良子(声優:育ててきたキャラの黒歴史を突然突きつけられた人)
・チケット料金:
パトレイバー公式ファンサイト会員 1,500円
一般 3,000円
※トークイベント限定「南雲しのぶグッズ」付き
・チケット発売:
2021年2月11日20:00~2021年3月31日22:00
パトレイバー公式ファンサイト会員:#
一般:#
・予定トークテーマ:
トークテーマ1.
後藤、南雲はシリーズごとにキャラが違う!
もし押井守が「二人の軽井沢」の脚本を担当していたら……
トークテーマ2.
それぞれの立場から考える「キャラクターの物語」
トークテーマ3.
それでもやっぱり憎めない!
押井守についての四方山話