2024年1月25日、Nintendo Switchにて「不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録(以下「風来のシレン6」)」が発売となった。本作は、1995年にスーパーファミコン(以下、SFC)にて発売された「不思議のダンジョン2 風来のシレン」を第一作とする人気のダンジョンRPG「風来のシレン」シリーズの最新作だ。今回は、そんな「風来のシレン6」を、シリーズ経験者である筆者の視点からプレイレビューをお届けしていきたい。
風来人「シレン」と語りイタチ「コッパ」の名コンビが14年ぶりの冒険へ! 舞台はお宝が眠るとぐろ島……。
本作は「風来のシレン」シリーズの、なんと14年ぶりとなる完全新作だ。ニンテンドーDSにて発売された「不思議のダンジョン 風来のシレン5 フォーチュンタワーと運命のダイス」以来、新作の発売を今か今かと待ち続けていたシリーズファンも多いことだろう。かく言う筆者もそのひとりであり、幼少期にSFCで初めて「風来のシレン」をプレイして以来、すっかり「不思議のダンジョン」系ゲームの魅力に取り憑かれてしまったゲーマーだったりする。
まずは本作のストーリーからご紹介しよう。
本作の主人公は、旅の風来人「シレン」と、その相棒の語りイタチ「コッパ」。ある日、とある不思議な夢を見た2人は、夢に導かれ、内海にある小さな島々のひとつである「とぐろ島」へとたどり着く。
とぐろ島には、いたるところに海賊のお宝が隠されているうえに、山頂にいる怪物の腹の中には、とびっきりのお宝が眠っているという。そんなうわさを聞きつけて、一攫千金を夢見る全国の強者たちが島に集まった。はたしてシレンとコッパが見た不思議な夢と島の関係は? そして島に眠るお宝とは? 2人の新たな冒険が幕を開ける……。
世界各地を旅する風来人の「シレン」と、その相棒である人の言葉を理解する語りイタチの「コッパ」という、シリーズおなじみの2人が活躍する本作の物語は、まさにこれぞ「風来のシレン」シリーズといった安定感とワクワク感であふれている。さらにそれだけではなく、シレンたちと旧知の仲である風来の女剣士「アスカ」を始め、アカシャチ海賊の若頭「ヒビキ」や、相対する黒鮫海賊の頭「トゥガイ」といった個性豊かなキャラクターたちが多数登場し、シレンたちの冒険を彩り鮮やかに盛り上げてくれる点も見逃せないポイントとなっている。
遊ぶたびに構造が変わる不思議のダンジョンを踏破せよ! 一手のミスでゼロからやり直しになるスリルがクセになる!
「風来のシレン」シリーズは、入るたびに構造が変化する「不思議のダンジョン」の踏破を目指す、ダンジョンRPGだ。遊ぶたびにステージが変化するシステムは、いわゆる「ローグライク」や「ローグライト」と呼ばれるもので、「風来のシレン」シリーズはその完成度の高さから、和製ローグライクの金字塔的作品としてその名を轟かせているといっても過言ではない。
シレンが冒険するダンジョンは見下ろし型視点で描かれ、行動はターン制。シレンが行動するのに続いてダンジョン内のモンスターが行動し、またシレンが行動して次にモンスターが……というターンを繰り返していく流れになっており、数ターン先の展開を常に予想しながら行動をする必要がある。一手間間違うと、敵から一方的にダメージを受けてしまうような局面も多々あり、気が抜けないスリリングなプレイが醍醐味だ。
シレンにはHPだけではなく「満腹度」というパラメーターもあり、ターンが経過するにつれて空腹になっていくため、おにぎりなどの食料の確保も攻略のうえでは欠かせない。敵とのバトルやマップの探索をしつつ、常にHPと満腹度の管理に目を光らせなければならないという、このサバイバル的な要素も本シリーズの魅力となっている。
冒険をはばむ個性豊かなモンスターたちの存在も、本作を語るうえでは欠かせない。
「マムル」や「チンタラ」といった、シリーズのマスコットキャラ的なモンスターたちはもちろん、持ち物をおにぎりに変化させてくる「にぎり変化」や、本作の通貨であるギタンを盗んでしまう「ガマラ」、毒草を投げつけてくる「おばけ大根」といった厄介なモンスターも多数登場する。相手の特徴を把握して、それに合った最適な立ち回りをとることが攻略のカギとなる。
ちなみに、本作には「手帳」という図鑑機能があり、一度出会ったモンスターや見つけた道具などの効果や特徴をいつでも見返すことができる。冒険に役立つだけではなく、図鑑を埋めるやりこみ要素的な側面も持った機能となっている。
ダンジョン内でHPが尽きて倒れると、すべてを失ってダンジョンの1Fからやり直しになるのが、本作並びに「風来のシレン」シリーズの最大の特徴だ。
敵を倒して経験値を稼ぎコツコツと上げたレベルも、ダンジョン内で見つけた道具も、剣や盾などの装備品も、そして稼いだギタンも、何もかも冒険失敗になるとまるごと失われてしまい、またゼロの状態で最初からやり直しとなってしまう。「一瞬の判断ミスで振り出しに戻ってしまう」というこのヒリヒリ感こそが、ほかでは味わえない本作ならではの大きな魅力なのだ。さらにダンジョン内には、目に見えないさまざまな種類の罠が仕掛けられていて、順調だった冒険が罠によって一転ピンチに陥ってしまうこともあり、いついかなるときでも気が抜けない、独特の緊張感が楽しめる。
しかし、たとえすべてを失って振り出しに戻ってしまっても、「次こそは!」という気持ちに自然になるのも本作の特徴である。失敗しても次のチャレンジへのモチベーションが維持される(それどころか、失敗を重ねるたびにモチベーションはどんどん上がっていき、どんどんゲームに夢中になっていく)という、この絶妙なバランスの難易度設計は、まさに職人技だと筆者は感じる。
また、どれだけ失敗してすべてを失っても、「プレイヤースキル」や「冒険のノウハウ」だけは失われず、自分の頭と体にどんどん蓄積されていくのも忘れてはならない本作のポイントだ。この“やればやるほど自然と学んでいく”体験は、シリーズ未経験者にこそぜひ、実際にプレイして味わっていただきたい。
「風来のシレン6」の新要素をドドンと紹介! 激レアな「神器」や厄介な「デッ怪」が冒険をさらに盛り上げる!
ここからは、本作「風来のシレン6」から登場する新要素について紹介していこう。
まず、オプションの充実ぶりをあげたい。いきなりなんだか地味なポイントだなと思われるかもしれないが、これはシリーズ経験者ほど刺さるポイントなのだ。
本作のオプションには、コントローラーのキーコンフィグや各種音量設定、メッセージウィンドウのカラーの設定のような基本的なものはもちろん、冒険を快適にしてくれるものがてんこ盛りになっている。「ダッシュ中に敵と遭遇したら1マス手前で停止する機能」や、いちいちメニューを開かずにさまざまな機能を呼び出せる「便利ショートカット」、シレンが歩いた道筋がミニマップ上に表示される「足跡の表示」などなど、快適なプレイを助けてくれる設定が多数搭載されているのだ。この、かゆいところに手が届きすぎているオプションによって、どんなプレイヤーでも自分のスタイルに合ったゲームプレイが楽しめるだろう。
もちろんオプション以外にも、本作から登場する新要素はたっぷりある。
そのひとつが「神器」だ。これはランダムな性能強化が施されている希少な装備品で、「青の神器」と「金の神器」の2種類が存在する。基本的に通常の武器よりも基本性能が高く、「印」という特殊能力があらかじめ付いていたり、印を付けられる枠の数が多いなど、すぐれた特徴を持っている。要するに、レア装備のようなものだと思ってもらえるとわかりやすいだろう。見た目としても、武器や盾から金や青のエフェクトが立ちのぼっているので、発見した際には非常にテンションが上がる。本作の持つトレジャーハント的な面白さが、この神器によってさらに強化されているように筆者は感じた。
さらなる新要素として「デッ怪」というものがある。これは、ダンジョン内の一部フロアに出現することがある巨大なモンスターだ。見た目にもインパクト抜群のデッ怪は、「デッ怪ホール」と呼ばれるホールから出現し、しばらく徘徊すると姿を消すという行動を繰り返す。デッ怪は攻撃力が高いばかりか、前方と左右からの攻撃は強力な「デッ怪バリア」で無効化されてしまう。後方や中心部を狙って攻撃すれば倒すことは可能だが、倒しても次々にデッ怪ホールから出現するうえに、経験値もわずかしか得られないため、やり過ごして次のフロアに行くという判断も重要となる。このように、「デッ怪」は、スリリングなダンジョン探索にさらなるスパイスを加えてくれる新要素となっている。
「ドスコイ状態」という新要素は少々特殊で、シレンの満腹度が150以上になったときに発動する。発動するとシレンの最大HPや攻撃力が強化されるとともに、罠も無効化するなどの大きなメリットが得られる。初期の満腹度上限は100であるため、シレンが満腹状態のときにおにぎり系の食料を食べたり、胃拡張の種を使うなどで満腹度の上限を上げていく必要があるが、発動した際の恩恵は大きく、攻略の手助けとなることは間違いない。ダンジョン踏破のための戦略の新たな選択肢のひとつとして、この「ドスコイ状態」が機能していくことと思われる。
「もののけ道場」は、ダンジョン内で一度でも遭遇したことのあるモンスターや罠、入手した道具などを自由に配置できる施設だ。モンスターの動きや能力の確認をしたり、道具や装備品の効果を試してみたりして、ダンジョン探索の練習を行うことができる。基本的に「ダンジョン内にて実践で学ぶ」というのが「風来のシレン」シリーズのあり方だが、この「もののけ道場」によって持ち物などをロストするリスクを負うことなく、じっくりと自由に学ぶことができるようになった。シリーズ初心者にはもちろんのこと、熟練者にとっても非常にうれしい新機能だと言えるだろう。
充実の通信要素を紹介! 世界の誰かを救助したり、倒れた自分自身を救助することも!?
「風来のシレン」シリーズは基本的にひとりで黙々とプレイする前提のゲームだが、本作には通信要素も複数存在している。ここからは、そんな通信要素について紹介していこう。
まずは「風来救助」だ。これは、インターネットを使ってプレイヤー同士で助け合えるというもので、自分がダンジョンで倒れてしまった場合は、救助依頼を出して誰かが助けてくれることを待つことができる。依頼を受けた誰かが自分が倒れた場所までたどり着けば、無事に救助成功となり、道具やギタンを失うことなくダンジョンの続きから再開が可能となる。
逆に、誰かを助けに行く場合は、世界中の風来人が集う「救助掲示板」から依頼を受けてダンジョンに向かう。救助中に獲得した道具やギタンは持ち帰ることはできないが、救助の冒険を手助けする「奥義」をセットするための「奥義ポイント」に交換される仕組みになっている。
なお、インターネット接続時に発行される「救助ID」を共有すれば、特定のプレイヤーに救助をお願いすることもできるので、仲間同士で助け合って遊ぶといったことも可能だ。直接的に誰かと一緒に冒険ができるわけではないが、どこかの誰かとの繫がりを感じられる風来救助のシステムは独特の面白さがあり、困難な救助を成功させたおりには、自分が名うての風来人になったような達成感を味わえる。また、自分の冒険に生かせるノウハウを学ぶための練習の場としても、誰かの救助をすることは最適だろう。
自分が倒れてしまったときに便利な風来救助だが、とはいえ、なかなか助けてくれる人が現れなかったり、そもそもインターネット環境が整っていなかったりといった場合もある。そんなときは、自分自身を救助する「自分救助」という手段も存在する。これはその名のとおり、倒れてしまった過去の自分自身を、自分のプレイで助けに行くというものだ。誰かを助けに行くときと同様、奥義ポイントを消費することで、開始時のHPや満腹度をアップさせたり、レベル10から開始できたりといった奥義の発動ができるので、円滑な救助ができる可能性がある。
救助とは異なる通信要素としては「パラレルプレイ」というものがある。これは、ダンジョン攻略中の任意のタイミングで「パラレルデータ」と呼ばれるセーブデータを作成し、サーバーにアップすることで、同じ状況・条件下でダンジョン探索の続きをほかのプレイヤーに挑戦してもらうという機能だ。
パラレルデータ作成時にはパラレルIDが発行されるので、救助IDのときと同様、共有することで特定のプレイヤーにパラレルプレイをしてもらうことも可能となっている。たとえば多人数でのタイムアタックを開催したり、パラレルプレイ中にさらにパラレルデータを作成してリレー形式でプレイしたりなど、工夫次第でさまざまなことができる面白いシステムとなっており、本作の遊び方にさらなる深みをプラスしている。今後、このパラレルプレイを活用したRTAの大会や動画配信での企画などが開催されて、「風来のシレン6」がゲーム界においてさらなる盛り上がりを見せていくのではないかと予想している。
昔からの面白さを損なわず、バランスのいい新要素も加わった「風来のシレン6」は、シリーズ未経験者にも全力でオススメ!
というわけで、「風来のシレン6」のファーストインプレッションをお届けした。
SFC版の初代「風来のシレン」を連想とさせる、オーソドックスで安定した面白さをしっかりていねいに継承しながら、遊びやすさを格段に向上させ、さらに「神器」や「デッ怪」といった新要素を加えた本作。全体的に非常にバランスがよくストレスを感じさせない作りになっているため、長い間、何度も繰り返し飽きずに遊ぶことができるゲームになっていると筆者は感じた。「風来のシレン」やローグライクジャンルのファンはもちろん、シリーズに触れたことがないプレイヤーや不思議のダンジョン未経験のプレイヤーにもぜひ遊んでいただきたい。</>
タイトル情報
- ■「不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探検録」
- 発売日:2024年1月25日
- 対応機種:Nintendo Switch
- 価格:6,985円(税込) ※パッケージ版・ダウンロード版
- ジャンル:ダンジョンRPG
- プレイ人数:1人
- CERO:B(12歳以上対象)
- 開発元・発売元:株式会社スパイク・チュンソフト
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