毎年、数多くのアニメが発表されると同時に、各作品を盛り上げるアニメソングも続々と世に放たれている。星の数ほど生まれるアニメソングから、ミュージシャン・DJの出口博之と、芸人にしてアニソンDJの鮫島一六三(BANBANBAN)が、その年、特に印象に残ったのアニメソングを好き勝手に語り合う恒例の企画が今回もやってきました!
今回は2023年に発表された放送・配信されたTVアニメの中から、お2人が特に語りたいアニメソングを3曲ずつ。さらに劇場公開作品から1曲ずつ選んでいただき、全6回にわたってじっくりたっぷりと掘り下げていきます!
これを読めば、今聴くべきアニソンがわかる……はず!
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それでは「しゃべる!アニソン特別編 2023年BESTアニソン語り」第1回スタート!
出口 2023年はいろんな意味で話題が多かったかな。大きな流れみたいなものが、自分の選曲に影響しているのかも。それまでアニメはオタクのカルチャーというか、サブカルチャーの位置づけにあった印象だったけど、もはやこの数年でメインカルチャーになってる。
鮫島 紅白を見たらわかりますよ。アニソンだらけだったじゃないですか。昔は10分くらいアニソン枠をやって、「宇宙戦艦ヤマト」とか「マジンガーZ」を歌うみたいな感じだったけど、昨年末のラインアップを見たら大きく変わった印象です。
出口 そこにはコロナの問題だったり、ここ数年の社会の大きな変化の影響もあると思うんですが、ともあれアニメ・アニメソングの力が大きく証明された1年だったと思います。というわけで、さっそくいきましょう!
「アイドル」(「【推しの子】」OP)/YOASOBI
出口 2023年、出口が選ぶアニメソング1曲目は、「【推しの子】」の「アイドル」です! 今の話の流れでこの曲を出さないと怒られるって感じ(笑)。
鮫島 そりゃそうですよ。先に言うけど、私も入れてる(笑)。もう入れなきゃね。
出口 2023年の象徴というか、アニメソングの枠を超えて一般層にもリーチして、そこを飛び越えて世界に行ったという曲。やっぱりアニメの力もあるだろうけど、楽曲の力がすごく刺さったのかな。曲の構造や音楽的な分析はよそに譲るとして、自分が見ていた範囲で言うと、外国の方が喜んでいる感じ。特に東南アジア系の方がすごく聞いているみたいな話を聞いています。
鮫島 僕は有名なコンテンツのひとつの定義として、「SNSをやっていない自分の母親が知っているかどうか」というのがあるんですけど、その世代も知ってますからね。大人も子供も知る曲になってしまいましたね。昨今、みんなが知っているものって生まれにくいじゃないですか。でも2023年、アニクラだけじゃなくあちこち地方のお祭りとかでもDJをやらせてもらったんですが、どこでも「アイドル」は鉄板でしたね。子どもが大合唱して、大人が手を叩いて、ちょっとすごかったですね。
ネットミームのなり方も素晴らしかったなと思っています。昨年、「アイドル」がいきなり「ゲッター(OVA「真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ」OP「STORM」。歌唱はJAM Project)」になるっていうネタがネットではやって、誰かがそれを野外アニクラでやったんですが、それにYOASOBIと水木一郎さんの公式Xが反応したんですね。本人がこれを笑ってすましているというすごさもありましたが、ネットミームにみずからなっていく、そういう方向の潔さとかも今っぽいという感じがしましたね。自分の曲をギャグに使われて嫌がる人もいるじゃないですか。そういうのをとうに超えた存在になったというか、演者の手を離れたものになったのも今年っぽいなと思いました。
出口 そこが面白い。知っている人たちだけで内に向いていくんじゃなくて、知っている人以外の世界に広まっているから、全部を更新した感じ。
鮫島 今年はこれだけですべてがひっくり返った感じがありますね。もう太刀打ちできない。
出口 アニソンというよりも、エンタメのあり方みたいな部分にまで話がつながってくるように思います。今後、2024年以降のエンタメのバズらせ方、届け方、浸透のさせ方みたいなところ。どういう人がどういうところで、何を思って観ているのか。そこでの曲の伝わり方というかね。というわけで2023年、私と鮫島さんの1曲めは「アイドル」でした!
鮫島 これを言ってこない奴はもう、嘘つきです!
出口 アニメ見てないだろ !(笑)
「青のすみか」(「呪術廻戦 懐玉・玉折」OP)/キタニタツヤ
鮫島 続いての曲は「呪術廻戦」の「青のすみか」キタニタツヤさんです。選考理由としてこの曲、5回しか使われてないんですよ。「懐玉・玉折」編でしか使われてないんですけど、それにしてはインパクトをアニソン界にとどろかせたなと。12話分使われてないのに、この濃度かという思いがあります。アニクラとか行ってもちゃんと受けますし、「青のすみか」のインパクトの残し方はすごかった。フルで聴いた時の曲自体もすごく爽やかで、曲中で使用されているサンプリング的な音も高校生的なエモさを感じさせて、キタニタツヤさんがこの曲で紅白に行ったっていうのも、それだけ世間に響いてるんだなと感じました。
出口 5話だけで。
鮫島 お話自体もショッキングな内容だったので、もちろんその相乗効果もあったんでしょうけど、そもそも作品にぴったりだったんだろうなと。かっこよかったです。昔のアニソンだと1年間全52話で流れるから、同じ曲が刷り込まれていくじゃないですか。それに対し、「青のすみか」は5話だけで多くのアニメファンに刺さったという点で特筆すべきですね。
出口 やっぱりクールごとの連載で選出しなかったっていうのは、どこまで使われるか、とかがわからなかったがゆえですか?
鮫島 連載の収録時はそこまで思い入れを持てていなかったからです。僕はやっぱり長く使われているアニソンが好きで、たとえば「BIRDIE WING」1クール、2クール連続で使われた「Venus Line」とかが、「よくぞまた使ってくれた!」って思うんですけど、これは逆に尖っていますね。ぶっ刺してきたなと。
出口 1年かけて評価が変わってきたわけですね。
「01」(「アンデッドアンラック」OP)/女王蜂
出口 次に私が選んだのは、「アンデッドアンラック」の「01」女王蜂です。この曲を含めて1年を通して女王蜂を見た時に、毎度すごいなと思いますね。個性が強いバンドなんだけど、その個性が不思議と担当する作品とつながるっていう印象です。「アンデッドアンラック」も「【推しの子】」もそう(「【推しの子】」EDは、女王蜂の「メフィスト」)。作品の本質的なところや、この作品はこういうところが肝だよねっていうところと、バンドの多様性みたいものをバチッと合わせてくるからすごい。
鮫島 女王蜂は本当にいいアニソンをいっぱい作ってくれますからね。「どろろ」もそうでしたよね(「どろろ」OPの「火炎」)。
出口 そう。そのあとに「後宮の烏」OP「MYSTERIOUS」もやってた。あの曲も、なんでこんなに合うんだろうって感じた。作品ごとにバンドの表現が深くなっていく感じがして、そこがすごい。2023年1年を見た時に、象徴的な「メフィスト」があって、そこから「01」にもつながるんだっていうのはちょっとすごい。さっきからすごいとかかっこいいしか言ってないけど。
鮫島 女王蜂は、これからもいっぱいアニソンを作ってほしいバンドですね。どのアニメでも、ちゃんと落とし込んで作ってくれる。
出口 そのバンド・アーティスト特有の色、クセみたいなものとアニメのチューニングの仕方、作品との相性みたいなところは、アニメソングを担当するアーティストの必須条件みたいなところなのかな。
Part2に続く!
ロックバンド・モノブライトのベーシストとして、2007年7月メジャーデビュー。ベーシストとして多数のアーティストのライブ・レコーディングに参加するほか、作編曲、DJ、ライター、番組MCなど媒体を選ばず幅広く活動中。
お笑いコンビBAN BAN BANの「フリーザじゃない方」。2010年、アニソンDJイベント「アニソンディスコ」をコンビで立ち上げ国内外、会場の大小問わずさまざまな場所でアニソンを鳴らす。吉本興業所属。