寝る前にホラー漫画でも読んで背筋をゾクゾクさせたいと考える人もいるだろう。体験するのはまっぴらごめんだが、漫画の中なら恐怖を存分に味わうのも悪くない。
本稿では、幽霊やスプラッタ、殺人など、ありとあらゆるタイプのホラー漫画を選んでご紹介。スリルを感じながら、ぜひ非日常を楽しんでみてほしい。
- 項目
- バトル・ロワイアル
- 悪の教典
- 惨劇館
- 座敷女
- クダンノゴトシ
- 殺戮モルフ
- 光が死んだ夏
- サユリ
- 見える子ちゃん
- カラダ探し
- 神の左手悪魔の右手
- メイコの遊び場
- 妖怪ハンター 地の巻
- 不安の種
- うずまき
- 黄色い悪夢
- 裏バイト:逃亡禁止
- 鉄民
- 恐怖の口が目女
- どろろ
オススメホラー漫画
バトル・ロワイアル著:田口雅之,高見広春/全15巻
架空の全体主義国家、大東亜共和国で中学のクラスメイトと殺し合いのゲームをすることになった秋也。生存者はひとりしか許されない。生き残るまで殺し合いを強要される中、はたして秋也は大切な人を守れるのか――。
映画版は国内外から高い評価を得ている。しかし映画しか見ていないのであれば損。マンガこそ面白いというファンの声も大きい。ハラハラドキドキの殺し合い、ぜひ読んでみてはいかがだろうか。
悪の教典著:貴志祐介,烏山英司/全9巻
生徒や保護者からの信頼は厚く、非の打ちどころがない教師の本性は、平気で人を殺すサイコパス。自分のクラスの生徒を次々と銃で撃ち殺していく光景は、衝撃としか言いようがない。本作は、そんな教師と生徒の大惨劇を描いた作品だ。
殺人を悪と思っていない、まったく動じない様子も言い知れぬ恐怖を増幅させる。学校で問題が起こると、自分に都合の悪い人間は殺して対処する。こんな教師のいる学校は、いったいどうなってしまうのか。ぜひともその目で結末を見届けてほしい。
惨劇館著:御茶漬海苔
スプラッタホラーの先駆けといわれる御茶漬海苔の代表作。惨劇館の案内人として、作者自身が物語に登場している。
容赦のないグロテスクな描写が特徴的で、登場人物が切り刻まれるなど、ひどい目に遭うことは日常茶飯事。1話完結で構成されているため、サクサク読み進められるのもうれしいところだ。
また、ただむやみやたらと残虐なシーンが描かれるのではなく、事件の背景や人間の恨み・嫉妬などから生まれる悲劇が生々しさを強調しているのもポイント。救いようのないホラーを味わいたい方にオススメの一冊だ。
座敷女著:望月 峯太郎/全1巻
ひとり暮らしをする大学生の森ひろし。ある日の深夜、ひろしは、隣の部屋のチャイムをしつこく鳴らす不気味な大女・サチコと出会う。さらに翌日、アパートを訪れたサチコに「電話を貸してほしい」と頼まれたひろしは、これを承諾して家に招き入れてしまう。
しかしその日を境に、悪夢が始まる。ひろしの部屋の合い鍵を、どういうわけか勝手に作られて侵入されるなどのストーカー行為に悩まされることに。幽霊とも違う、肉体を持った女の恐怖がリアルで、あなたもきっと表情が強張るはずだ。
クダンノゴトシ著:渡辺 潤/全6巻
旅行サークルの大学生7人が、卒業旅行で伊豆に出かけた帰り道に遭遇した悲劇をマンガ化。カーナビにない道に迷い込んでしまった彼らは、この世のものではない「何か」をひいてしまう。車を降りて確認すると、それは人面牛身の「件(クダン)」だったのだ。
昔から日本に伝わる妖怪・クダンを現代によみがえらせた新感覚ホラーともいえる作品。しかし本作が単調な妖怪物語になっていないのは、クダンから死を予言された人間の心理描写にもフォーカスしているから。人間関係の複雑な交錯をもあり、人の怖さも感じられる。
殺戮モルフ著:小池ノクト,外薗昌也/全4巻
友人と池袋を歩いていた女子高生・まどかは、不気味な覆面をした男がナタで次々と人を殺していく現場に遭遇する。首を切り落とされた女性や、縦に真っ二つに切り裂かれた男性など、覆面の殺人鬼は容赦なく人を切りつけていたのだ。
ただおかしいのは、呆然と突っ立っているまどかと目が合ったにもかかわらず、素通りして別の通行人ばかり狙うこと。驚く彼女のかたわらで男は駆け付けた警察官に取り押さえられるも、収監されたはずの殺人鬼がまどかに付きまとうようになり……?
本作は、「血液総量12億4000万リットル(東京ドーム一杯分)」ともいわれるスプラッタホラー。トラウマになること間違いなしだろう。
光が死んだ夏著:モクモク れん
小さな集落に生まれ、幼なじみとして過ごしてきたよしきと光。ある日、禁足地の山で1週間行方不明になった光が、別人のヒカルに変わっていることに、よしきは気付く。それを指摘すると、ヒカルは「殺したくないからこれからも友だちでいてほしい」と懇願する。
ヒカルの正体が未知の「何か」であると判明してからというもの、よしきの周囲ではおかしな事件や不気味な出来事が後を絶たない。ヒカルの正体はいったい何なのか。ほかにはない人外青春ホラーだ。
サユリ著:押切蓮介/全2巻
夢のマイホームを手に入れて幸せいっぱいだった家族を、理不尽な怪奇現象が襲う。実はこの一戸建ては、近所でも有名ないわく付きの物件で、凶悪な地縛霊がとり憑いていた。精神的に追い詰められる家族の恐怖と絶望は、見ていて気の毒になってくるほど。
しかし物語の後半では地縛霊に立ち向かう果敢な姿も描かれている。一般的なホラーマンガにはない、熱い展開も見どころだ。家にとり憑く地縛霊というリアルな設定が、物語への没入感を高めると言っても過言ではない。
見える子ちゃん著:泉 朝樹
アニメ 見える子ちゃん #
ごく普通の女子高生・みこは、ある日突然”見える”体質になってしまった。みこに話しかけてくるものもいれば、近づいてくるものもいる。しかし、みこは内心動揺するも、シカトでやり過ごすことを決意。
本作は見えているのに「無視する」という、ほかのホラーマンガにはないシュールな要素が満載なうえ、クスッと笑える場面もある。恐ろしい異形の存在が登場するが、かわいらしいポップな絵柄とコメディ要素の強さもあり、ホラーが苦手な方にもオススメしたい作品だ。
カラダ探し著:ウェルザード/村瀬克俊/全17巻
夜の高校に集められた6人の生徒の前に現れたのは、不気味な雰囲気の女性・三神遥。彼女が「私のカラダ探して」と言ったことから、6人の「カラダ探し」が始まる。
全身が血まみれの謎の少女“赤い人”に6人は殺されるも、目が覚めるといつもの日常。カラダ探しを終えないかぎり、何度も“赤い人”に殺されてしまう……という地獄のような無限ループが続く。
日常と非日常の境が曖昧になっていく恐怖、あなたも味わってみてはいかがだろうか。
神の左手悪魔の右手著:楳図かずお/全2巻
悪夢、不条理、スプラッタ……人間が抱く恐怖すべての本質をえぐり取り、すくい上げたエッセンスが凝縮された連作短編。主人公の小学生・山の辺 想の見る夢にはいつも“ヌーメラウーメラ”という謎の化け物が登場し、殺人鬼や人間に害をなす化け物を退治していた。しかも不思議なことに、夢で見たことは実際にも現実で起きていたのだった。彼の不思議な夢は一体何なのか? ヌーメラウーメラの正体は果たして? それぞれ独立した5つのエピソードから、徐々にすべての謎が解明していく……。
「漂流教室」や「おろち」など数々のヒット作を生み出してきたホラー漫画界の生ける伝説・楳図かずお。ここで紹介するのは後期の代表作のひとつ「神の左手悪魔の右手」。2006年に実写映画化も果たした純粋ホラー・エンターテインメント!
メイコの遊び場著:岡田索雲/全3巻
激動の時代の只中にある1973年の大阪に、お父ちゃんとともに移り住んできた少女・メイコは常に左目を眼帯で隠している。この左目は、見た者の精神をメイコ自身の仮想空間に引きずり込むという特殊な能力を持っていた(ただし男性相手にかぎる)。メイコはその空間では完全な無敵状態となり、引きずり込んだ相手と残虐な遊びを行った果てに決して元に戻ることのない廃人にしてしまう。その能力を用い、裏社会の人間から一度の依頼につき5,000円で目標を次々と廃人にしていくメイコだが、彼女は昼間に近所の子供たちと遊ぶようになり、徐々に心境に変化が生まれていく……。
2008年に第24回MANGA OPEN大賞を受賞し、鮮烈なデビューを飾った岡田索雲の残虐ホラー・エンターテインメント。ホラー要素が強いものの、読み進めるうちにメイコの成長を喜び、うっかり保護者的視点で読んでしまう人も少なくないはずだ。
妖怪ハンター 地の巻著:諸星大二郎/全3巻
ホラー漫画界のみならず、漫画界全体を震撼させた傑作「妖怪ハンター」の第1弾。異端の考古学者・稗田礼二郎が日本各地を訪れ、その地の歴史や伝承などを独自の視点で検証し、超次元的・超自然的な事件に遭遇していく様を描く。触れてはならない暗黒の歴史を紐解くとき、果たして稗田やその周囲には何が起こるのか? 摩訶不思議な世界をぜひその目で確認してほしい。
カルト的人気を誇る稀代の天才漫画家・諸星大二郎の初連載作品。収録されている短編「生命の木」は2005年には映画化も果たし、今なおファンを増やし続けている。
不安の種著:中山昌亮/全3巻
「後遺症ラジオ」でおなじみの中山昌亮が放つ傑作ホラーシリーズ。何気ない日常生活を送る主人公たちが、突然湧き起こる理不尽な恐怖や怪異と出会う姿を描く。ていねいかつ淡々と描かれる物語は実にリアルで、まるで本当に自分の周囲の人間が体験した話を聞いているかのような恐怖感を覚えるはず。家にひとりでいるときにふと感じる寒気、入浴中になぜか気になる背後など、普段生活していて理由もなく恐怖にかられることもあるだろう。そんな日常に潜む恐怖(まさに不安の種)を視覚化したような本作は、読んだあと後悔するほど怖い。もし読むのであれば、日中に人がたくさんいる場所で読むことをおすすめしたい。
「不安の種」、「不安の種+」「不安の種*」と3シリーズにもわたって続いた大人気ホラー漫画。2013年には映画化も果たしている。身近な世界を描いているだけに、とても漫画とは思えないほどのリアルな恐怖を味わえるだろう。
うずまき著:伊藤潤二/全3巻
呪われた土地・黒渦町に住む女子高生・五島桐絵は、隣町の高校に通う恋人・斎藤秀一を駅に迎えに行く途中、路地に座り込み壁を見つめ続ける秀一の父親に出会う。しかし彼は桐絵のあいさつにも気づかず、壁のカタツムリの殻をじっと見るばかり。駅で落ち合った桐絵は秀一にその出来事を話すも、秀一はその話題を避けようとする。そんな秀一は、帰りがけの公園で黒渦町に嫌悪を抱き始めていることを打ち明ける。うずまきに汚染され始めていると秀一は言い、その後、彼の言ったように禍々しいうずまきにまつわる惨劇が発生する……。
「富江」シリーズがあまりにも有名なホラー漫画家・伊藤潤二の伝説的作品。国内では映画化、アメリカではアニメ化も果たすなど、世界中から熱狂的に愛されている名作だ。
黄色い悪夢著:黄島点心
2019年に「黄色い円盤」で第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した気鋭の漫画家・黄島点心による短編ホラー集。圧縮袋の中の美女、人の上っ面を剥ぐ儀式、美女とスッポンと亀、孤島の蚊と運命の愛……読めば不快と爽快の境をさまよう究極のエクスタシーを感じざるを得ない。奇想天外な世界観で送られるホラー描写は、不気味でありつつもどこかエロティック。そんな描写も相まって、さまざまな意味でゾクゾクとさせられるだろう。
ポップなタッチとは裏腹に不条理な物語を得意とする鬼才・黄島点心。彼の明るくも暗い傑作の数々は読めば読むほど味わい深く、一冊読み終える頃にはきっとファンになっていること間違いなし!
裏バイト:逃亡禁止著:田口翔太郎/既刊11巻
裏バイト、それは合法・違法含むグレーゾーンの高額報酬アルバイト。とある事情により大金を求める黒嶺ユメと白浜和美の女性2人組は、毎回のように怪異や人間たちから命を狙われる危機をはらんだ裏バイトに勤しむ。ユメは自身に降りかかる悪意や危機の予兆を匂いで察知することができる。その予知に似た能力を駆使し、2人は今日も死と隣り合わせのバイト先へ向かう。なぜ2人は大金が必要なのか? 死人が続出する裏バイトの数々とは? まだまだ謎だらけの本作の続きやいかに……。
2018年に連載漫画家デビューし、瞬く間に人気を獲得した田口翔太郎。連載デビュー作の「不死身のパイセン」は恐怖と笑いの緩急をうまく駆使した傑作だ。今作はより恐怖感がパワーアップ! 常に不気味な裏バイト、そして2人の運命をぜひ見届けてほしい。
鉄民著:菅原敬太/全3巻
ドラマ化もした「走馬灯株式会社」の作者・菅原啓太が放つ本作。主人公・滝沢実絽は高校に入学したばかりの女の子。海と山に囲まれた沙々来島でのんびりと平和な日々を過ごしていたのだが、ある日、島の一部の人間と入れ替わり平然と暮らしている“鉄民”という謎の存在を知ってしまう。怖がりで内気な実絽の平凡な日常はそこから崩壊してゆく……。自身がもしも“何か”と入れ替わってしまったら、そしてその“何か”が何食わぬ顔をして自分として生きていかれてしまったら……そんな得体も知れない恐怖を描くSFホラーの金字塔!
恐怖の口が目女著:崇山 祟/全1巻
インターネットの投稿サイト「note」にて連載され、SNSをはじめジワジワと人気の波紋が広がっていった「恐怖の口が目女」。日々スクープを狙う清心学園新聞部部長の美空すずめのもとに、ある日部員の吉永百合子が“大変なことが起きた”と駆け込んでくるところから物語はスタートする。吉永が持ち込んだのは“口が目の女を見た”という都市伝説のようなネタだったが、2人は早速その正体を突き止めるべく調査を開始する。“口が目女”を調査していくうちに、すずめたちはある集団が進めている黒い陰謀へとたどり着く……。
ヴィンテージコミックコレクターや漫画マニアの間でも話題沸騰だった「恐怖の口が目女」。懐かしくも新しいニューウェーブ怪談、刮目して見よ!
どろろ著:手塚治虫/全4巻
テレビアニメ化のみならず実写映画化やゲーム化、さらには現在もリメイク版が製作されている手塚治虫の妖怪アクション活劇。発表から50年以上経った今もなお多くのファンを獲得し続ける名作だ。室町時代中期、醍醐景光の天下取りの願いに対する代償として、体の48か所を欠損した状態で生まれた百鬼丸。14年後、彼は自身の体を魔物たちから取り戻す旅に出るのだが、道中、幼子の盗人・どろろと出会う。百鬼丸の左腕に仕込まれた刀に目をつけたどろろは、しつこく百鬼丸を付け回すようになり、そこから2人の奇妙な旅が始まるのだが……。
「鉄腕アトム」や「ブラック・ジャック」などを生み出した日本漫画界の父とも呼べる手塚治虫が生んだ「どろろ」。悲しみや恐怖、そして笑いなどあらゆる感情が詰め込まれた名作中の名作を、ぜひ一度その目で確認してもらいたい。
フリーのライター・編集として活動。アニメ・マンガ・ゲームが好き。フルパVALORANTにあこがれています。