神奈川県川崎市の模型会社ピットロードが、面白いプラモデルを発売している。旧ソ連で試作された宇宙往還機 “ブラン”と、世界最大の大型輸送機をセットにした「An-225 ムリーヤ 大型輸送機&軌道船ブラン」、わずか2~3cm程度の戦闘機を多数セットした「世界の現用戦闘機セット2020」、「世界の最新ステルス戦闘機セット2020」などの航空機を、1/700スケールで発売しているのだ。
1/700といえば、本来は艦船模型のスケールである。ピットロードも「1/700 日本海軍 駆逐艦 陽炎 就役時」、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に 1/700 日本海軍 戦艦 大和」などを積極的に発売している。だが、1/700の航空機と艦船模型を組み合わせることによって、新しい世界が見えてきた……。1/700スケールのプラモデルの面白さを、ピットロード企画開発部の馬場俊幸さん、中村真吾さんにうかがった。
1/700なら、戦艦大和と宇宙往還機ブランを対比できる!
── 艦船模型メーカーの印象が強いピットロードさんですが、会社の1階はノースポートという模型店になっているんですね。
馬場 まず1981年に、店舗としてスタートしました。社長の鈴木幹雄は鉄道模型で知られるグリーンマックスの元社員で、同社の金型を一部、引き継ぐ形で独立したんです。そうした経緯もあって、80年代後半、模型メーカーとして法人化して現在にいたります。当初から、1/700の艦船模型を中心に開発していました。
ただ、当時から1/700スケールは静岡4社(アオシマ、タミヤ、ハセガワ、フジミ)がウォーターラインシリーズを展開していました。ですから、当初はそれらのメーカーさんとかぶらないアイテムを選定していました。ウォーターラインが売れなくなった冬の時代があったのですが、その間にも、弊社は商品開発を続けていました。
中村 かつてはプラモデルだけでなく、レジン製キットも開発していました。
馬場 数を見込めないマイナーな艦船は、インジェクション成型よりレジンで成型したほうが、開発コストを安く抑えられますから。ただ、本体はレジン製でも、細かな装備品はインジェクション成型のプラパーツを入れていました。これらの装備品パーツは現在も販売しているロングセラー製品です。また、6年程前から3D CADで設計した新装備品パーツもシリーズ化しており、こちらもご好評いただいております。
── すると、1/700の飛行機セットも、空母に載せるために発売しているのですか?
馬場 そういうわけでもなくて、1980年代からアメリカの爆撃機、月光や紫電改、さらに一式中戦車などを組み合わせた「本土防空戦」セットなども発売していました。飛行機だけでなく、1/700の小さな戦車・車輛や揚陸艇、格納庫などの建物も、プラモデルとして発売していました。
── では、必ずしも艦船模型のアクセサリーとして、1/700の飛行機を発売しているわけではないんですね?
中村 そうです。たとえば、1/700で「An-225 ムリーヤ 大型輸送機&軌道船ブラン」まで出すと、時代やジャンルを超えて、大きさの比較ができます。「戦艦大和に対して、宇宙往還機ブランはこれぐらいの大きさなのか」「ムリーヤって、やっぱり大きい輸送機なんだな」といった楽しみ方ができるわけです。1/72や1/48などの航空機の定番スケールでは、艦船と航空機、ましてや宇宙往還機との比較なんてできませんよね。
── 1/700のプラモデルを買う方は、コアなマニアの方が多いのですか?
中村 そういうわけでもなくて、中学2年生で1/700スケールを集中的に作っている方もいます。小さいからコレクションしやすいでしょうし、小中学生だったら、塾などが終わってからパッと組むだけで形になる利点もあるでしょうね。「世界の現用戦闘機セット2020」などは、ひとつの箱にたくさんの飛行機が入っている点もうれしいだろうと思います。展示会などに行くと、皆さん、好きなように1/700スケールの模型を楽しまれていますね。
── 1/700の宇宙往還機ブランなどは異色のアイテムだと思うのですが、ラインアップはどのように決めているのですか?
馬場 いちおう稟議を通しているのですが、小さな会社ですので……。同じアイテムであっても、他社さんがキット化していないスケールで出す傾向にはありますね。
中村 ブルー・オーシャン戦略で言うなら、弊社にとって1/700スケールはブルー・オーシャンです。あえて競争の激しいレッド・オーシャンで、1/72スケール以上の航空機を出す必要性は感じていません。艦船とからめやすくてジオラマにもしやすい1/700スケールで航空機を出し続けているのは、弊社ならではの強みでしょうね。