今年放送20周年を迎えたTVアニメ「ONE PIECE」の主題歌に、あの最強の布陣が再び集結!
7月からスタートした『ワノ国編』のオープニング主題歌は、きただにひろしさんが歌う「OVER THE TOP」。「ウィーアー!」(1999年)、「ウィーゴー!」(2011年)を手がけた藤林聖子さん(作詞)、田中公平さん(作曲)、根岸貴幸さん(編曲)、きただにひろしさん(歌)というまさに「ウィーアー!の一味」が再集結して制作された珠玉の1曲だ。抜群の疾走感があり、すべてを突破するルフィたちの心情を描いた王道アニソンとなっている。
毎週作品の幕開けを飾っているこの曲を収録したCDが、いよいよ2019年9月25日にリリースされる。そこでアキバ総研では、今回も熱い歌声を聴かせてくれたきただにさんを直撃。楽曲の聴きどころやこだわりポイント、アニソンへの想い、自身のアーティスト人生と「ONE PIECE」の関わりなど、たっぷりお話をうかがった。
ターニングポイント助けてくれたのが「ONE PIECE」
――きただにさんはアーティストデビューして25周年、アニソンを歌って20年、さらに年齢が50歳(※インタビュー時点。8月24日で51歳に)と、トリプルで区切りの年を迎えました。改めてアーティスト人生を振り返って感想をお聞かせください。
きただに 1994年に鳴り物入りでデビューしたけど鳴かず飛ばず、バンドは解散してボーカルだけ違う名前で活動するという、よくあるパターンだったんです。売れずに解雇されるということで、路頭に迷っていた時に出会ったのが「ウィーアー!」でした。そこでアニソンシンガーの「きただにひろし」が生まれたんです。だから、音楽人生の大半を「ONE PIECE」が占めているというか、「ウィーアー!」によって始まった音楽人生みたいなものですよね。
――もともとは「ウィーアー!」の仮歌を担当していた、というのは有名な話ですね。
きただに まさかでしたね。世の中に歌の上手い人は本当にいっぱいいるのに、その中でチャンスをいただいてこんなことになるなんて……まさにシンデレラストーリー的だと自分でも思っています。なので、自分を助けてくれた恩返しの気持ちで、これからも奢ることなく絶えずチャレンジャーとして自分を磨き、アニソンシーンを盛り上げるひとりになりたいですね。
――そうしてソロやJAM Projectなど様々な活動をしてきた中で、区切りとなるタイミングで「ONE PIECE」の楽曲が来ている印象です。
きただに そうなんですよ。「ウィーアー!」も「ドラゴンボールZ」の「CHA-LA HEAD-CHA-LA」みたいにずっと流れるのかなと思ったら、1年で違う曲に変わったじゃないですか。でも、20年間いろいろなアーティストや声優に歌っていただき、テレビで「ONE PIECE」のシーンがあれば「ウィーアー!」が流れます。いまだに全世界で愛していただけているのは、すごく嬉しいことですよね。そして、新世界編という大事な場面で電話が鳴り、今度は「ウィーゴー!」で呼んでいただきました。この時は相当なプレッシャーでしたけど。
――「ウィーアー!」や「ウィーゴー!」のレコーディングはどんな感じだったのですか?
きただに 「ウィーアー!」は人生で1番緊張したレコーディングでした。初めてアニソンというものに関わり、偉い人がいっぱいいる現場も初めてだったのですごく緊張しましたね。「ウィーゴー!」は「ウィーアー!」の制作陣が戻ってきて、麦わらの一味もパワーアップして戻ってきたじゃないですか。新世界に旅立つ大事なポイントなのに、戻ってきたきただにがダメだったと言われたらどうしよう……とめちゃめちゃプレッシャーを感じて。でも、TVで流れた時に「やっぱり、きただにひろし最高やわ」とか「(戻ってきてくれて)嬉しい」という書き込みがあり、(田中)公平さんからもすぐに「みんな喜んでくれてるよ」とメッセージが来たんです。
――「ウィーゴー!」の時は本当にそう思いました。
きただに 新世界編に行く直前の放送で「ウィーアー! for the new world」を流していただいて、それで締めて翌週から「ウィーゴー!」が流れるのは自分でも感動しましたね。そうやって期待されて、期待以上のものをファンの人たちに返してあげられる、制作陣やスタッフにも喜んでもらえるのはアーティスト冥利に尽きます。そして今回は、『ワノ国編』に突入するポイントでまた歌わせてもらえることになって。イベントとかで冗談混じりに「また歌いたいなぁ〜」なんて言っていたら、本当に依頼が来てびっくりしました。
――制作陣も再び黄金メンバーが集結ですからね。聴かせていただいた瞬間に「これ!」という感じでした。
きただに 本当に幸せでならないです。歌わせていただくことが本当に嬉しいですし、自分自身も「ONE PIECE」のファンなので、また携われるのが1番幸せですね。
――そんなきただにさんですが、2017年8月に突発性難聴を発症し、アーティストとしてはつらい時期を過ごされたかと思います。
きただに ほんとまいりましたよ。10年ぐらい前に左耳が突発性難聴になって、今もあまり聴力がないんですよ。普通、突発性難聴って片耳で終わるんですけど両耳きちゃって、嘘だろ?と思いました。しかも、ちょうどJAM Projectのレコーディングの時で、ツアーも控えているし……。左耳は治療が遅くて治らなかったので今回は即入院したんですけど、不安しかなかったですよね。おかげさまで、耳鳴りは残っていますが聴力はある程度回復して、ツアーもできました。ツアーの最後には喜びと安堵感で泣いちゃったんですよ(笑)。そんな時に「OVER THE TOP」という曲をいただいて、もう嬉しいとしか言いようがないですね。
――そういう意味でも、「ONE PIECE」の曲は特別な時にきただにさんの元に来るという印象がありますね。
きただに そうなんです。ターニングポイント的なところで助けてくれるんですよ。
ワクワクするイントロ、歌詞はまさに「ONE PIECE」
――では、楽曲についてお聞きします。「OVER THE TOP」の第一印象はいかがでしたか?
きただに 「ウィー」じゃないんだと(笑)。でも、「ウィーアー!」に対してのアンサーソングが「ウィーゴー!」だったから、今回はまた新たな冒険への応援歌になったなと思いました。今までとは違って歌から入るし、めっちゃ早いし、想像の上をいくすごい曲を書いてくれたなと。
――歌から入りつつも、直後のワクワクするメロディはまさに「ONE PIECE」だなと感じました。
きただに やっぱりこのワクワク感は「ウィーアー!」「ウィーゴー!」と同じテイストですよね。トランペットの「パラッパラッパー〜♪」がいい感じのワクワク感を出しているというか、すごく「ONE PIECE」の世界観なんですよね。自分でもテンションが上がります。
――どのような思いを込めてレコーディングしたのですか?
きただに アニメの曲を歌う時にいつも思っていることがあって。それは「(アニメの曲は)その世界観を広げる説明書である」ということなんです。だから、「ONE PIECE」の応援歌というか、世界観を盛り上げようという思いで歌いました。ファンとしての愛情もすごくあるし、世界観をわかっていますからね。
――タイトルの「OVER THE TOP」という言葉には、慣用句的に「ちょっとやり過ぎだよ」みたいな意味もあって。それが「ワンピース」にすごく合っていると思ったんですよ。
きただに たぶん(作詞の)藤林さんも、普通の「上へ上へ」ということじゃなくて、そういう意味を込めているんだと思います。
――そこまでやるのか、というか。
きただに アニソンだから書ける歌詞ってあるじゃないですか。たとえば、『「100年早いって」なんだ? そんなに待てっか 誰が!? ヤバい敵ならワンサカ うっせーヤツから 黙らせろ』とか、アニソンだからこそだなと。
――2番のそこの部分は本当にいいですよね。
きただに この畳みかける感じは、絵が浮かびますよね。『黙らせろ』の部分なんて、ちょっと柄は悪いですが本当に「黙らせろ!」と言っているような感じですし。ただ、『うっせー』の言い方は難しかったんですよ。「うぜぇ」とか「くせぇ」に聞こえちゃって(笑)。
――確かに仮歌の段階では、そう聞こえたりもしました。
きただに 小さい「つ」が入った『うっせー』って格好いいですし、『うっせーヤツから 黙らせろ』ってまさに「ONE PIECE」の世界だなと。ダン!!って叩きのめして、(地面が)ひび割れている感じまで見えますよね。
――そういう爽快感とか、やってくれた感は「ONE PIECE」の魅力のひとつですね。
きただに J-POPではやれないだろ、ってぐらいのやり過ぎ感がありますから。特に、落ちサビからラスサビの「OVER THE TOP!」にかけては、本当にやり過ぎなぐらいになっていて。そういうやり過ぎな部分は「ONE PIECE」のサウンドとしてはありだと思いますし、アニソン歌手としては大事なことだと思います。
――歌っていても気持ちよかったですか?
きただに 気持ちよかったですね。プレッシャーは今回もありましたけど、「ウィーゴー!」から10年近く経ち、自分のスキルも上がって楽しめるようになりました。以前は言われた通りに歌うだけだったのが、自分から「こういうのはどうですか?」と言える立場になってきて、作家とアーティストとのいいディスカッションができたと思います。公平さんとの付き合いも長いですからね。
「ポイ」の言い方にもこだわり
――より具体的にディスカッションで印象的だったところをお聞かせください。
きただに たとえば『古いレキシ丸めてポイ』のところは、仮歌の譜割りだと何回聴いても「ポイ」がおかしく思えたんですね。なので、自宅で『古いレキシ丸めて、ポイ』と録音して、これどうですか?と提案したんです。「このほうが“ポイ感”がいいと思うんですよ」って。それでレコーディングに臨んだんですが、実際にレコーディングしてみると「譜割りのハメ方はいいけど“ポイ感”が足りない」となって。その場で『古いレキシ丸めて、ポイ!!』と、ポイの部分は音程がない感じにしたんです。そういう感じにいろいろこだわりました。
――確かに、フラットに言うよりも“ポイ感”が出ますね。
きただに 昔からそうなんですが、公平さんはイントネーションや歌詞をすごく大切にする作曲家なんですね。だから、歌詞やイントネーションは、このようなやりとりをいろいろやりました。
――個人的にアニメソングは歌詞を聴きたいタイプなので、歌詞がどう聴こえるかにこだわってくれるのは嬉しいです。
きただに アニソンってもともとそうじゃないですか。自己紹介ですよね。今はアニメ自体がスピーディーで映像もストーリーもすごいことになっているから、歌も進化していかなきゃダメなんだろうけど、やっぱりアニソンの大事な部分は残しておきたいなと。たとえば、水木一郎さんの「バビル2世」なんて、住んでるところがダダ漏れですからね(笑)。
――個人情報をみずから公言していくタイプですね。
きただに 『砂の嵐に かくされた バビルの塔に すんでいる 超能力少年 バビル2世』って住んでるところと名前をまず言って、さらに3つの下僕の名前もどんどん言って(笑)。やることなすことを言う、説明書的な歌だったじゃないですか。
――「デビルマン」でも必殺技(能力)の詳細を言いますからね。
きただに そうそう(笑)。アニソンってそれが大事だと思うんです。正直、アニメと全然合っていない歌もあったじゃないですか。アニソンってそうじゃないだろ!とひとりのアニソンファンとして思ったこともありました。でも、アニメ自体の幅が広がり、アニソンの振り幅が大きくなったことでアーティストもすごいことになってきて。そこまでやっちゃうの?ということができるのは、この業界だけだと思うんですよね。
――アニソンの素晴らしいところですよね。最後に、この曲をどんな感じに歌っていきたいですか?
きただに 「ウィーアー!」や「ウィーゴー!」がそうだったように、「OVER THE TOP」も代表曲のひとつになると思うんです。「ウィーアー!」なんて20年前の曲なのにいまだに色褪せなくて、何千回何万回と歌っているけど飽きないですからね。この曲もそうなって、「OVER THE TOP」=「ONE PIECE」ということで、流れた瞬間に「うぉ〜! きた〜!!」となるようにしたいです。そして、あまりいじることなく歌っていきたいですね。ファンが聴きたいのって、やっぱりオリジナルだと思うんですよ。変にクセをつけたりしたら「違うじゃん」って。
――わかります。自分もオリジナルを聴きたい派なので。
きただに もちろん自分の声質や年輪を重ねた部分で太くしていくことはあると思います。でも、何かを変えるのではなくライブでうまく培っていって、もっともっとよい表現力で歌えたらなと思っています。
――それも含めて楽しみにしています。ありがとうございました!
(取材・文・写真/千葉研一)
【CD情報】
■OVER THE TOP/きただにひろし
・発売日:2019年9月25日
・価格:1,620円(税込)
<収録内容>
1.OVER THE TOP
2.BRAND NEW WAVE
3.OVER THE TOP(instrumental)
4.BRAND NEW WAVE(instrumental)
※商品仕様、収録内容、特典内容は予告なく変更する場合もございます。あらかじめご了承ください。
【イベント情報】
“「OVER THE TOP」限界突破ツアー”
「OVER THE TOP」の発売を記念して、“「OVER THE TOP」限界突破ツアー”が決定!きただにひろしが全国のさまざまな場所でミニライブ(フリー観覧)を開催!出演者:きただにひろし
参加方法:フリー観覧
会場でCDを購入いただいた方には握手会参加券&ラバーバンドプレゼント
公式サイト:#
日程:2019年9月28日(土)
会場:チャチャタウン小倉(福岡)
開演時間:13:00~
日程:2019年9月28日(土)
会場:シーモール下関 シーモールホール(山口)
開演時間:16:00~