現在絶賛公開中の「劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ―オリオンの矢 ―」。ベルやヘスティアたちおなじみの面々の新たな冒険を描く内容だ。
祭りの日にヘルメスが開いた見世物で、見事に槍を引き抜いたベル。それは凶暴なモンスターと戦うために、槍を引き抜く「力」を持った人物を探していた女神アルテミスの依頼で行われたものだった。アルテミスとともに、ベル、ヘスティア、リリとヴェルフ、ヘルメスは凶暴なモンスター、アンタレスを倒すためにオラリオの外へ旅立つ。アルテミスとは旧知の仲のヘスティアは再会に喜びつつも、彼女の立ち振る舞いに微妙な違和感を覚える……。
コミカルなシーンもあるものの全体としてはシリアスめで、特に後半のアルテミスとベルの気持ちが触れあっていく流れからの、クライマックスのバトルで彼女の苛酷な運命を知り慟哭し葛藤するベルの、辛い心情描写がていねいに描かれる。そこからアルテミスを「救う」ための決意と行動や彼女との別れのシーンは涙腺崩壊必至! また全体にアンダーなトーンのシーンが続くことで際立つラストシーンでの朝日が、シビアな経験を乗り越えたベルの新たな第一歩を印象付ける。
そんなドラマチックなクライマックスへの伏線的な要素も随所に散りばめられた本作について、ベル役の松岡禎丞さんにネタバレありでお話をうかがった。
ベルの魅力はその真っ直ぐさ、ヘスティアの魅力はやっぱり紐(笑)
── 昨年、劇場版とTVの第2期が同時に発表されたときのお気持ちは?
松岡 やっと来たか!という感じでした。第1期の「ダンまち」も外伝の「ソード・オラトリア」も評判がすごくよかったと聞いてましたし。それに原作のストックも十分にありますし。でもまさか2期の前に劇場版が来るとは!という驚きもありました。だからその意味では、やっぱりビックリしました。
── ベルを演じるうえで意識されていることは?
松岡 お爺ちゃんの言葉をずっと大事に思っていて、「ダンジョンに出会いを求めなくちゃ!」ってオラリオにやって来て今があると思うと、ベルってバカ正直なくらい真っ直ぐなんです。その真っ直ぐさを分け隔てなく、まず自分なりにアプローチしてみる。そんなストレートな部分を意識して演じています。
── ベルは、他人の悪い面を見ても、きっと何か事情があるんだろうみたいな「イイトコ探し」するタイプですよね。
松岡 そうなんですよ。「少しは人を疑おうよ?」って僕も思っちゃうくらいで(笑)。ただ演技という面で考えると、ベルという人間はそういう「疑わない人」だから、僕自身の気持ちを挟むみたいなことは間違いだと思うので、ベルはベルとして松岡は松岡としてきっちり線引きはしてます。
── ベルに対して共感するところや見習いたい部分というのは?
松岡 ベルの真っ直ぐさは見習わないといけないなって思ってます。そのいっぽうで、そういう物事全般に対しては真っ直ぐなんですけど、自分関連の関係性……ヘスティアとの関係とかを変えることに関しては奥手というか。そこは真っ直ぐいかないのか!みたいな(笑)。ただ年頃の男の子としては当然だと思いますし。そういったところも含めてベル全体を通して、僕にとっては「憧れ」が強いかもしれません。
── 松岡さんからご覧になってのヘスティアの魅力というのは?
松岡 やっぱり紐でしょうね! あはははは(笑)。ってそれだけだと、僕がヘンタイになってしまうので、まじめに答えますと……確かに紐は魅力的で、ヘスティアを象徴するものでもあります。ただヘスティアがとってもかわいいなって思うのが、嫉妬の仕方なんですよ。なんていうか、普通の女の子がむくれちゃうのとは違うのかなって思う部分もあって。
── 嫉妬というよりも、小さな子が駄々をこねるみたいな感じですよね。
松岡 そう、そうなんですよ! だから、そういう方向性で「ベル君のことが好きだ」って気持ちを全面に出してるんだけれど、ベルがベルなので(笑)。
── そっち方面はてんでダメですからね(笑)。面白いのが、こういうラブコメシチュエーションだと、互いに想ってはいるけど……。
松岡 普通はどっちもぎこちない感じですけど、ヘスティアはガンガン行ってはいるんですよね。でも第1期1話のラストが象徴的なんですけど、ベルとヘスティアが成り行きみたいな感じで、一緒のベッドで寝ようという流れになったらなったで「そんなつもりじゃない!」って言うのに、疲れてたベルが即寝落ちしちゃうと安心せずに「もう寝てるし!」ってツッコむ(笑)。そういうのがすごくヘスティア感があるなぁって。だから本当に「この子、神様なのかな?」って思う部分もあって。だけど第1期終盤でいざ神威を解放したときに、その言い方だけでなく圧というかオーラがやっぱり神だったんですよね。
── そういえば、ベルはヘスティアのことをずっと「神様」と呼び続けてますよね。劇場版のゲストのアルテミスへも最初こそ「女神様」ですが、出会って数日後のシーンではほかのキャラ同様に「アルテミス様」という言い方に変わるのに。
松岡 ベルはヘスティアのことを、完全に自分とは別個の存在ととらえてるのかもしれないですね。自分は人間だから「神様にこんなことをしてはいけない」とか。それで神様が自分のことを好きだと言ってくれても、その「好き」は「ファミリアとしての好き」なんだと本能的に線引きしてるんだと思うんです。ベルの中では「好き(尊敬)」みたいなことなんですよ、きっと。その線引きを取っ払うことなく、いつまでも名前呼びじゃないところにベルの純真さがすごくて出ますよね。