アニメライターが選ぶ、2018年秋アニメ総括レビュー! 「ゾンビランドサガ」「アニマエール!」など、5作品を紹介!!【アニメコラム】

2018年12月に最終回を迎えた秋アニメを徹底レビュー。ゾンビアイドルアニメの「ゾンビランドサガ」、人気ギャンブル漫画のスピンオフ「中間管理録トネガワ」、女子高生がチアで応援する「アニマエール!」、台湾のRPGが原作の「軒轅剣 蒼き曜」、女子トークが炸裂した「ひもてはうす」の5作品を紹介します。

ゾンビランドサガ

「新感覚ゾンビ系アニメ」と銘打ち、オンエア前はストーリーが謎に包まれていたオリジナルアニメ。第1話ではアイドルを夢見る主人公・源さくらが、開始早々トラックに跳ね飛ばされて死亡。10年の時を経て蘇り、7人組ゾンビアイドル「フランシュシュ」のメンバーとして活動させられるという異色のストーリーが話題に。タイトルの「サガ」は「佐賀」のことで、九州発のご当地アイドルとして認知度アップを目指す。
元ヤンのリーダー・二階堂サキの「ぶっ殺すぞ」という口癖や、80年代に活躍したアイドル・紺野純子の「もう死んでますけどね」というセリフなど、本編では彼女たちが死者であることが何度も強調される。だが最終話のライブではそんな彼女たちが生き生きとしたダンスを披露。ラストの決めポーズでは体が止まっておらず、細かく揺れ動いていることを見過ごすわけにはいかないだろう。ゾンビが息づく奇跡的なフィナーレは、彼女たちが目覚めたことを確認させる。

中間管理録トネガワ

シリーズ後半からは「賭博黙示録カイジ」のスピンオフ第2弾「1日外出録ハンチョウ」もアニメ化。普段は地下で強制労働に勤しむ大槻が、外出券を使って地上を遊び歩く悠々自適な1日を描く。外出で向かう先は、仕事中のサラリーマンで混み合う立ち食いそば屋や、学生時代に通っていた中華料理屋など、決して高級店ではないものの、大槻のアイデアによって贅の限りを尽くしているように見えてしまう。自由を奪われた身である彼だからこそ、日常の些細な輝きを見つけることができるのだろう。
大槻役は「スーパーミルクちゃん」シリーズの大統領をはじめ、インパクトの強い中年男性を演じてきたチョーさんが担当。大槻が気ままに街ぶらをする姿は、チョーさんが出演したNHKの教育番組「たんけんぼくのまち」を彷彿とさせ、どこか懐かしい気持ちを味わえる。「カイジ」でおなじみの「ざわ……」ボイスもみずから担当するなど、遊び心が詰まった快作だ。

アニマエール!

原作は「まんがタイムきららキャラット」で連載中の4コマ漫画。人を助けずにはいられないポジティブ少女・鳩谷こはねが、チア部結成を目指すチアリーディングアニメ。バスケ部や少年サッカーチームはもちろん、徹夜で原稿を執筆中の漫画研究部まで、頑張っている人たちであればチア部は応援を拒まない。元気いっぱいだけど実は高所恐怖症のこはねはみんなを応援することで、自分もまた多くの人たちに支えられていることに気付く。
チア曲には、いきものがかりの「じょいふる」やhitomiの「LOVE 2000」などヒットソングのカバーを採用。一世を風靡した流行曲を、アニメ主題歌も多数手がけるアーティストたちが歌い上げた。懐かしい楽曲とチアの華麗な演技が相まって、生きる活力が自然に湧き出してくる。

軒轅剣・蒼き曜

台湾のゲームメーカーが手がけた人気RPG「軒轅剣」シリーズのTVアニメ。伝説の神器・軒轅剣を手にした少女・苻殷(フ・イン)が、機関獣を駆使して世界征服をもくろむ太白帝国との戦いに身を投じていく。機関獣はカラクリ仕掛けを用いた搭乗型ロボットで、そのデザインはコマやカマキリ、サソリなど多種多様。最終的には超巨大な空中要塞まで製造してしまう技術革新っぷりもケレン味が効いている。
注目は第10話「詰問之雫(きつもんのしずく)」。苻殷の妹・寧(ネイ)が水滴刑と呼ばれる拷問にかけられるシーンだ。体の自由を奪われ、額に落ちる水滴をただ見つめることしかできない寧は、精神をゆっくりとむじばまれる。首や腕が容易に切り落されるハードな世界観なだけに、水の雫で正気を失っていく様が恐ろしい。寧を演じた釘宮理恵さんの声色が少しずつ狂気をはらんでいくのも恐怖を倍増させる。2018年は「ペンギン・ハイウェイ」や「ひそねとまそたん」など、印象的な釘宮キャラを堪能できた年だった。

ひもてはうす

「ひもてはうす」と呼ばれる一軒家で共同生活を送る女子5人と猫1匹の日常風景を描いたオリジナルアニメ。男性に縁のない同居人たちが、どうすればモテモテになれるのかを追い求める女子トークを繰り広げる。これまでの石ダテコー太郎監督作品と同じように、キャストの声を先に収録するプレスコ方式が採用されており、アドリブパートでは危険な発言や下ネタが連発する。
台本パートも野球の歴代珍プレーを再現しまくったり、やたら色っぽい声で仮想通貨を紹介したりと、説明してもよくわからないカオスな展開に突入。普段とは異なるシリアスなエピソードを中盤で消化し、最終回は緊急特番として予想外の大物声優をキャスティングするなど意外性にもビックリ。毎回異なるEDイラストもかわいらしく、最初から終わりまで楽しさでいっぱいの一作となった。

(文・高橋克則)

(C) ゾンビランドサガ製作委員会
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(C) 卯花つかさ・芳文社/アニマエール!製作委員会
(C) ひもてはうす製作委員会