「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第7話「大場なな」。いよいよ物語は佳境、折り返しです。
第7話は舞台少女たちの中で常に一歩引いて、“みんな”を見つめてきた大場ななの視点で、2018年3月3日「第99回聖翔祭」(華恋たち99期生の一年生の活動を締めくくる舞台「スタァライト」を上演)を中心とした過去が描かれました。聖翔祭の打ち上げシーンでは、ななが舞台に出演しながら香子の肩をもみ、仲間にごはんやおやつをふるまい、衣装や背景まで手伝っていた万能性が描写されます。ななの「みんなのお母さん」的存在である一面ですね。同時に、双葉に抱きつかれた際のバランスから、ななの女優として恵まれた長身が際立って描かれています。
ここでちょっとした、でも重要な情報が明かされます。聖翔音楽学園99期生俳優育成科は、一年次終了とともに「成瀬彩陽」「オウサカさん(フルネーム不明)」の2人が退学していたという事実です。第6話で石動双葉が自分は入試で30人中30番だった、と話していましたが、転入生である神楽ひかりの出席番号は29。2人の欠番があったことで辻褄があいました。
真矢がななを呼び出したシーンで「決断したのです、彼女たちは。きっと私たちにはわからない激しい苦悩と絶望と、怒りがあったはず」という静かな怒りを込めた言葉がありましたが、それは夢半ばに学園を去った2人のことを念頭に置いたものでしょう。舞台を去る人、望んでも舞台に立てない人があまた存在する中で、恵まれた素質を持つばななが「自分よりみんな」を優先するあまりに全力を出していないのであれば、それは舞台に関わるもの、舞台を夢見る者たちへの侮辱である、と。ななと同じく才能にあふれ、全力で戦い、夢破れた者たちの想いを背負ってきた真矢だけが、ばななの真実に一端にふれられたのかもしれません。
ななと突如現れた「キリン」との出会いにより、最初のキリン・オーディションは始まります。勝ち抜いた者がトップスタァとして、望んだ舞台に立つ権利を与えるオーディション。そこで最強・天堂真矢さえも倒したななが「第99回聖翔祭までの眩しい日々の再演」を望んだことで。
“再演のループ”は始まりました。
大道具の木が枯れ果てるほどの、キリンにも何度目かはわからないほどの果てしない繰り返し。しかし幸せに満たされた空虚なループは、やがて“9人目”である転入生・神楽ひかりの登場により変化を余儀なくされます。
終わらない聖翔祭を望んだ大場なな。
新しい舞台での進化を望み、望み続けているはずの舞台少女たち。
新しい変化を求める(?)キリン。
そして閉じたループに小さな刃を突き立てた闖入者・神楽ひかり。
ついに明かされた真実と舞台の大仕掛けと共に、物語が動き出しました。
それにしても驚いたのは、大場ななのループ(再演)設定が明かされたことで、これまでの6話の印象がガラリと塗り替えられたことです。ひかりの転入シーンではとても意味ありげにばななの表情が抜かれています。あれは変わらないループに侵入した異物への違和感だったのですね。ばなながプリンを持ってひかりを探し当てるシーン、ほとんどホラーに見えます。「ばなな、ひかりちゃん知らない?」の台詞。文字通りに受け取れば所在地を探す言葉ですが、ばななにとってひかりが唯一「知らない、未知の」存在であることを考えるとなんだか意味深です。今までの何気ない台詞の数々が、違った意味を伴って浮かび上がってくる感じ。それは今まで舞台で、コミックで、アニメで紡がれてきた物語が再生産されたような、とても不思議な感覚でした。
そんな今回のエピソードをより深く味わえる、こちらのインタビュー記事もあわせてご一読ください。
⇒舞台少女たちは実は◯◯◯していた!? 第7話で衝撃展開の「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」小泉萌香(大場なな役)×中村彼方(作詞家)最速対談インタビュー
(文:中里キリ)