「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第3話をレビュー、しちゃいます!:気高き驕りの先にあるもの

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」第3話では、大場ななが脚本を含む裏方に回ることを宣言し、人間関係にさまざまな変化が生まれました。華恋(かれん)と双葉が寮に帰らず、放置されたまひると香子が一緒に入浴。そして大きな挫折を知ったクロディーヌの元を訪れたのは双葉でした。

この状況の違和感を喝破したのが香子の「いつも一緒やった人がおらんようになり、意外な2人が仲ようお風呂。変やと思いません? 神楽ひかり、あの子が来てから」という言葉です。全ての関係性の変化は、ひかりの転校から始まりました。思えば第2話のレッスンで純那と華恋がペアを組んだきっかけも、ばななとひかりが先にペアを組んでしまったことだったのです。「戯曲 スタァライト」のメインの配役は8つ。ばななが裏方に回る宣言も、去年はいなかった“9人目”に押し出された形だとも考えられます。

 

いっぽう、前回レヴューで対戦した真矢とクロディーヌの間に流れる空気のおかしさ、クロディーヌの不調を見抜いたのは双葉でした。双葉と香子の関係性は今までこの2人の中で完結していて、ほかの仲間とは少し離れていたからこそ、客観的に場が見渡せたのかもしれません。放課後のレッスン場では、壁際で体育座りをするクロディーヌと、それに背を向けて床にモップをかける双葉の間にある微妙な心の距離感が描かれます。ですが2人が激しいダンスを見せたあと、少し距離が詰まった2人を映すカメラの手前には、ポジションゼロ、ステージのセンターを示すしるしが大写しにされています。

 

天堂真矢との差を思い知らされたクロディーヌと、常に自分を脇役として律してきたが「自分も主役になれるかもしれない」というささやかな“夢”を漏らした双葉。自分が主役ではないのかもしれないと思っていても、それでも手をのばすことをあきらめられない願いという共通点が、2人の距離を近づけたのかもしれません。

 

そして今回のレヴューシーンは、メインが天堂真矢VS愛城華恋。同時進行で、石動双葉VS西條クロディーヌの戦いが描かれました。オーディション3日目のテーマは「誇りのレヴュー」。レヴュー曲のタイトルは「誇りと驕り」です。誇りと驕りとは誰のことを指すのか。そのヒントはまさにレヴュー曲「誇りと驕り」の中にあるように感じました。「誇りと驕り」の前半は華恋の未完成な、これからの可能性を感じさせる歌唱が中心。後半は、真矢の、頂点に立つ者としての孤高と圧倒的な存在を見せつける独唱です。ほとんど2人の掛け合いはありません。

 

唯一2人の掛け合いが成立するのは曲頭、華恋の「(頂からの景色が)私にも見えるはず」に対する真矢の「いいえ見えはしない」という否定のフレーズです。真矢が階段の高みから見下ろし、意地(誇りではなく)があるなら登ってこいと告げますが、その階段はねじれ、断絶して果てしない距離を感じさせます。現時点での力量と、そして価値観の開き。2人は断絶していて、今の時点では同じステージにすら立てていないのです。華恋は高みを見つめて「全然、届かない」と呟きます。純那と華恋、クロディーヌと双葉の間に生まれたような心の結びつき、互いを認め合う心の動きはこのレヴューからは生まれませんでした。

 

それでは、「誇りと驕り」が指すのは誰か。真矢の「あの子は捧げた。それは星に挑む気高き意志」「頂きに輝く星はひとつ。されど……あの子の情熱の炎は」という言葉が示すのは誰か。オーバーラップする映像の演出を見れば、天堂真矢の心の中にいるのが西條クロディーヌであることは明らかです。真矢はクロディーヌを想い、華恋はひかりを想って戦うレヴューが交わらないのは必然でした。

 

驕りという言葉は、表面的にはマイナスのイメージを持つ言葉です。クロディーヌの「自分だけは特別だと思っていた」という言葉はその一端でしょう。ですが、誰もが特別で別格とみなしてきた天堂真矢に対して、本当の意味でライバルとして情熱と嫉妬の炎を燃やして立ち向かってきたのは西條クロディーヌだけなのです。手が届かない高みにある星に対して、それでもあきらめずひたむきに、地道に手を伸ばし続ける者だけが、驕りを本物の誇りに変えることができるのかもしれません。

 

そうして自身が認め、ある意味特別に感じている相手すらもレヴューで斬り捨て、トップスタァとして孤高を保っている真矢にとっては、親友と一緒にスタァになりたいという華恋の甘さは耐え難いものに映ったのではないでしょうか。

 

何かを切り捨て、何かを差し出した少女だけがトップスタァに登りつめるという、キリンの舞台観を象徴するような存在・天堂真矢。彼女との現時点での差を痛感した華恋は、これから自分も何かを差し出す道を選ぶのでしょうか。それとも……? 現時点では、それでも星に手を伸ばさずにいられない、クロディーヌや純那の姿にこそ強く共感してしまうのですが。

 

そして、ひたすらストレスを溜めこむターンに入っている「あの子」のレヴューも、そろそろ見てみたいですね。

 

(文/中里キリ)