【アニメコラム】アニメライターによる2016年冬アニメ中間レビュー

新年が明けたと思ったらもう2月。2016年冬アニメも折り返し地点を越えて佳境を迎えている。そこで今回は確定申告よりアニメ視聴を優先するアニメライターが冬作品の中間レビューをご紹介。

スニーカー文庫の異世界ファンタジー「この素晴らしい世界に祝福を!」、京アニ大賞奨励賞に輝いた注目ノベル原作「無彩限のファントム・ワールド」、メディアミックスも話題の「プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ」、人気シリーズが13作目に突入「魔法つかいプリキュア!」、「まんがタイム」の4コマをアニメ化「大家さんは思春期!」、合計5作品をラインアップ!

この素晴らしい世界に祝福を!

交通事故によって異世界へ転生したカズマと、彼にムリヤリ連れてこられた駄女神・アクアが繰り広げる冒険ファンタジー。この手のジャンルにありがちな完全無欠の主人公ではないところがポイント。アクアをおとりにクエストを解決したり、女性キャラのパンツを盗んだり、異世界を知恵と勇気で攻略するカズマの鬼畜っぷりがいっそ清々しい。

お金が足りず馬小屋で寝泊まりし、日銭を稼ぐため肉体労働に励む日常描写もコメディタッチで生き生きと表現されている。なぜかスキルを宴会芸に注ぎ込み酒場を盛り上げるアクア、魔王軍の幹部ながら騎士道精神あふれるデュラハン、見た目は怖いが意外とやさしい荒くれ冒険者たちが世界をますます輝かせていく。実際に異世界ライフを体験したくなる一作。

無彩限のファントム・ワールド

大規模バイオハザードの影響で人類の脳機能が変化し、幽霊や妖怪といった虚構の存在・ファントムが見えるようになった世界。人に害なすファントムたちを退治するため、高校生の一条晴彦がチームを組んで戦う学園ファンタジーだ。脳がテーマなだけに、各話のアバンタイトルでは心理学や生理学、哲学などアカデミックな知識をコミカルに解説したミニコーナーが用意されている。だが本編視聴後にはそんなトリビアは消え去り、ヒロイン・川神舞の胸しか記憶に残っていないのだから人間の脳とは不思議なものである。

乳揺れの元祖と言われる「DAICON IV」のオープニングアニメから、人類は胸の動きをどう記憶に留めさせるのか苦心を重ねてきた。もはや乳揺れは文化と言っても過言ではない。それから早30年。胸の谷間すら見せることなく(そう、川神はセーターを着ているのだ!)快挙を成し遂げた京都アニメーションへ称賛を送りたい。そして文化庁の京都移転は正しかったと。

プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ

架空のエクストリームスポーツ・ストライドに青春を賭ける高校生たちの学園ストーリー。障害物を跳び越えながら街を駆けるストライドは、リレー形式にしたパルクールのような競技。バトンは使わずランナー同士のハイタッチで走者交代するため、お互いの信頼関係が何よりも重要になる。

大会は新宿や吉祥寺をはじめ実在の場所を舞台としており、見慣れた景色がレース会場へ変わる面白さが備わっている。ときにはショートカットのため決死の大ジャンプを披露。怪我を辞さない大胆な戦略に打って出るのも、明確なコースが定まっていないストライドならではの魅力だ。仲間を信じて走るランナーとビビッドに澄み切った青空が爽やかな世界観を作り上げる。

魔法つかいプリキュア!

「プリキュア」シリーズ第13作目は魔法がコンセプト。中学生の朝日奈みらいが魔法学校に通うリコと出会い、伝説の魔法つかいプリキュアに変身! 第1作「ふたりはプリキュア」と同じように2人が手を繋いでプリキュアになるなど、原点回帰を思わせる要素が取り入れられた。人間界と魔法界を繋ぐ列車の名前がカタツムリニアというネーミングセンスも、どこかノスタルジーに駆られてしまう。

今回の怪物は2つのモノを合わせて作り出されるヨクバール。モンスターの名前が実はテーマと繋がっているのは、第4作「Yes!プリキュア5」からしばしば見られるモチーフだ。2つのモノを合わせて作り出されるヨクバールが、獣と鳥の性質を持つコウモリのバッティによって生みだされるのも印象深い。奇跡と魔法の名を授けられたキュアミラクルとキュアマジカルがどのような戦いを繰り広げるのだろうか。

大家さんは思春期!

中学生大家の里中チエ、彼女を姉目線で愛でる白井麗子、そしてアパートに引っ越してきた平凡なサラリーマン・前田さんが織りなすショートコメディ。約2分間の本編にはチエちゃんのキュートさがこれでもかと詰め込まれている。引っ越し土産に一喜一憂したり、普段から制服姿で過ごしたり、心とシンクロして髪の毛がヒョコヒョコ動いたりと一挙手一投足が愛おしい。

スピード感あふれるセリフの応酬もショートアニメだからこその仕上がり。オープニングに突如挟まるアパートの風景とチエちゃんが愛用しているパジャマの柄を見れば、「大家さんは思春期!」が「めぞん一刻」に連なる作品だと気付くはず!

(文/高橋克則)