アニメ業界ウォッチング第15回:異色のアニメ「RWBY」が、ベテラン声優たちの“実力”を引き出す! 「RWBY」日本語版演出・打越領一インタビュー!

アメリカのRooster Teeth Productions制作の3DCGアニメ「RWBY Volume1」が、全国6館・2週間限定という小規模上映ながら、熱烈なファンの支持で大健闘している。

話題のひとつは、深夜アニメでもおなじみのアニメ声優たちが、北米ドラマのような高密度なドラマにトライしていること。「日本アニメそっくりの絵柄なのに、雰囲気は海外ドラマ風」──この不思議なバランスの作品に、日本語で命を吹き込む難題にチャレンジしたのが、演出の打越領一さんだ。

外国ドラマや洋画の吹き替え演出を数多くこなす打越さんに、「RWBY」日本語版制作の舞台裏をうかがってみた。

「日本のアニメが大好き」、その心意気に応えたい

──打越さんは、外画(外国映画)やドラマの吹き替え演出が、メインのお仕事ですか?

打越 たまに国内のアニメの音響演出(「ハッカドール」音響監督など)も手がけますが、海外の映画やドラマの仕事が、圧倒的に多いです。
──最初に「RWBY」をご覧なったとき、どう思われましたか?

打越 キャラクターのルックスは、日本アニメをよく見ている人たちの造形だと思いましたが、アクションのキレと編集が見事で、びっくりしました。
正直にいうと、CGに関しては、ハリウッドで流通しているハイエンドな品質ではない。だけど、アクションの編集がすばらしい……そのチグハグ感を、面白く感じました。大手プロダクションではない中小企業が、自分たちの好きなものにこだわって手づくりした感じがして、そこが楽しかったです。日本アニメ風のルックスと、洋画のドラマ性が合わさっている、そこが魅力ですね。

──その印象を手がかりに、キャスティング作業を始めたわけですね?

打越 そうです。日本語版制作の話をいただいたのは、1年以上前です。ワーナー・ブラザースさんの意向も踏まえつつ、だいたいのキャスティングを、僕から提案させていただきました。声優さんのお名前とサンプルボイスをRooster Teethさんにお送りしまして、先方も日本のアニメ声優にはくわしいので、キャスティングはスムーズに決まりました。アニメ・外画問わず仕事されているベテランの声優さんたちをお呼びできて、よかったです。僕としては、洋画の吹き替えとアニメのアフレコと、両方できる声優さんが理想です。そういう意味では、安心できるキャストが揃いました。

──たとえば、プロの声優さんばかりではなく、話題作りのためにタレントさんを起用しようという考えはなかったのでしょうか?

打越 それは、まったく考えませんでした。ワーナーさんの意向としては、「日本のアニメに近づけたい」。つまり、日本のアニメを大好きな外国人の作った作品に、日本のアニメ声優の声を吹き込んであげたい。Rooster Teethさんの「僕らは日本アニメが大好きで、こんな作品を作ってみました」という、熱い心意気に応えたかったんです。

 

アニメーションの“絵の表現力”を信頼したい

──実際に吹き替えをしてみて、日本のアニメとは勝手の違うところもあったと思うのですが?

打越 ええ、明らかに日本のアニメとは違います。簡単に言うと、よくしゃべる作品なんですよ。台本1ページ以上の長いセリフを、ちゃんと原語の尺に合わせながら演技できるのか……そこで、経験豊富な声優さんたちのスキルが、モノをいうわけです。ですから、アニメというよりは洋画を吹き替えた口調に聞こえる部分も、多々あると思います。結果、国内のアニメとは違う雰囲気が出たし、そこを新鮮に感じてもらえると思います。

──吹き替え現場での、声優さんたちの反応は、いかがでしたか?

打越 とてもユニークな作りの作品なので、面白がっていました。セリフの量が多く、しかもしゃべるスピードも速いので、技術的には大変だったとは思いますけど、基本的には楽しんで演技してもらえましたね。

──「この声優さんが、特に面白かった」という方はいましたか?

打越 ヘタレ兄ちゃんのジョーンを演じてくれた、下野絋さんです。ご一緒したのは初めてですが、ヘタれた演技が、予想以上に良かったですね(笑)。あとやはり、ルビー役の早見沙織さん。意図的に年齢を下げて演じてもらったのですが、バッチリでした。皆さん、本当によかったです。アフレコは4日かかりましたが、その甲斐はあったと思います。

──深夜アニメでは発揮できない、声優さんたちの演技力が開花していますね。

打越 演技力の広さを、見せてくれたと思います。それは貴重なんじゃないでしょうか? 話はズレますが、僕は日本のアニメの台本でよくある「…」や「あ…」が、よくわかりません(笑)。普通、人はそんな声出さないのに変だよな?と、違和感を感じていまして。僕はキャラクターの表情は、絵にあずけるほうが良いと思っています。

──リアクションのないほうが、キャラの表情が生きてきますよね。

打越 アニメーションは絵があるわけですから、僕は、絵で描かれた表情を信頼したい。感情表現を声で付け加えすぎて、イメージを決めてしまうのが、好きではないんです。声優さんも、キャラの顔がアップになったら、「ん…」とか、なにかしら加えないと不安になってしまうのかもしれません。「RWBY」では、原語版にあるリアクションは日本語でも録りましたが、それ以外は「なくてもわかるだろう」と外して、必要最低限におさえてあります。

──それで、純日本アニメ風ではない、クールな雰囲気が出たわけですね。

打越 あくまで、この作品は洋画の吹き替えです。日本のアニメに出ている人気声優さんたちが演じてはいるけれど、セリフのセンスは洋画なんです。そこがポイントですね。
「RWBY」は、一見すると日本アニメ風ではありますが、胸の揺れやパンチラだとか、そういう表現は一切ありません。だから、そういったアニメに抵抗がある人にも楽しんでもらえると思います。アクション満載で、基本的に明るい作品ですから、もっと間口が広がって、大勢の人に見てもらえるとうれしいですね。

(取材・文/廣田恵介)

「RWBY Volume1」 Blu-ray&DVD情報

■RWBY Volume1<劇場限定版Blu-ray>

発売日:2015年11月14日(土)

価格:6,000円+税

収録話数:1~10話

本編:120分

組数:1枚組(Blu-ray)

劇場内のみにて限定発売。Kuma(Rooster Teeth Productions)描き下ろし 特製スリーブケース仕様。特製ポストカード“Dry Brush”4種封入

※数量に限りがございますので、上映期間中に品切れとなる場合がございます。あらかじめご了承下さい。

■RWBY Volume1<初回生産限定版Blu-ray>

発売日:2015年12月9日(水)

価格:8,000円+税

収録話数:1~10話

本編:120分

組数:3枚組(Blu-ray1枚+CD2枚)

■RWBY Volume1<通常版>

発売日:2015年12月9日(水)

●Blu-ray 価格:5,800円+税

収録話数:1~10話

本編:120分

組数:1枚組(Blu-ray)

●DVD 価格:4,800円+税

収録話数:1~10話

本編:120分

組数:1枚組(DVD)