80年代の一般家庭の小物や、高校時代の通学カバンや弁当箱などを再現した、リーメントの「ぷちサンプルシリーズ」。ありふれた小物のミニチュアだからといって、なめてはいけない。実際に容器のフタが開いたり、カバンに他の小物を収納できたり、お菓子にスプーンを差すことができたり……と、実物の機能を、やけに真面目に再現しているのだ。
几帳面さと遊び心の混在する「ぷちサンプルシリーズ」、その知られざる歴史と工夫と世界観を、株式会社リーメント開発本部の後藤薫さん(版権管理部マネージャー)と、五月女友里衣さん(企画開発部)のお2人にうかがった。
「仏壇のミニチュア」を作るのは不謹慎なのか?
──ぷちサンプルは、いつからシリーズを開始したのですか?
後藤 2002年の6月からです。箱入りとカプセルあわせて、約450シリーズ。1つのシリーズに6~8種類ぐらいのアイテムを作りますから、SKU数(バリエーションなどを含めた全種類)は、3,300~3,500種ぐらいでしょうね。
──13年前も昔から、スタートしていたのですね。
後藤 2002年当時は、チョコエッグやタイムスリップグリコを始めとする、食玩ブーム到来で、「ぷちサンプルシリーズ」もコンビニやスーパーのお菓子売場、玩具やバラエティー雑貨売り場など、お取り扱いいただいておりました。当時は1シリーズ平均150万個、中には300万個販売した商品もありました。その恩恵もあり、ブームが去った現在でもファンの方々の支えのおかげで、継続して商品化がされております。
──13年前にくらべると、カプセルトイや食玩も高くなってしまいましたね。
後藤 弊社のぷちサンプルも、当初は250円で販売しておりましたが、現在では中国の諸事情で500円になってしまいました。お菓子売場からは『500円は高くて扱えない』というコメントをいただいておりましたので、新たに9月、学校シリーズ第1弾「ぼくらの理科室」を350円で発売したところ、じょじょにではありますが、お菓子売場のお取り扱い店舗数も増えてきております。
──全種類の入った大きなボックスに、「大人買い」と刷ってありますが(笑)。
五月女 1つ500円の「じいちゃんばあちゃん家」を大人買いすると、だいたい4,000円(税抜)ぐらいです。
後藤 「じいちゃんばあちゃん家」はブラインドボックス入りで、全8種類あります。大人買いすると、一度に全種類が揃うようになっています。ぷちサンプルの購買者は、85%が女性のお客さまですので、女性が購入しやすいように、約4年前から「大人買いで全種類のアイテムが揃います」シールを貼っております。また、シークレットは何が入っているかわからないため、女性にはあまり好まれないようです。
五月女 逆に男性のお客さまは、「どんなアイテムがシークレットなんだろう?」と、楽しみにされるようです。女性のお客さまは、先に中身がわかっていて、それらがすべて揃うことを大事にされるので、何年か前からシークレットは入れないようにしています。
──企画やデザインは社内で行なっているのですか?
五月女 パッケージなどは外部委託になりますが、たとえば「仏壇の形をどうするか」「炊飯ジャーの柄はどのような雰囲気にするか」といった方向性は、社内で決めています。
──とても精密にできているのですが、材質は?
五月女 ATBC-PVCとABS樹脂、透明な部分はGPPSという素材を使っています。「ご先祖様にごあいさつ」の仏壇は、自信作なんです(と、未開封の箱を手にとる)。
──どの箱に仏壇が入っているか、わかるんですか?
五月女 重量感で、なんとなくわかります。
──この仏壇は扉も開くし、すごく凝っていますね。紙にも、なにか細かく印刷してありますが……。
五月女 はい、8種類あるので、「スーパーのちらし」「孫からの手紙」「老人会の集合写真」など、すべて別々のデザインを作って印刷してあります。企画時、社内では「仏壇のミニチュアなんて、不謹慎だと怒られてしまうのではないか」「いや、そういう物こそ、真面目に作ると面白いはず」と、賛否が分かれました。結果、他社さんのキャラクターのフィギュアと仏壇を組み合わせて遊んでくれている方がいて、「やはり仏壇を入れて正解だった」と、ホッとしています。
それと、「あたたか石油ストーブ」は、面白いんです。ちゃんとポンプで給油するシーンを再現できるように小さなフタが開いたり、ポンプを差し込めたり……。こういう地味なギミックが、お客様によろこんでいただけるようです。
後藤 大人買い用の内箱は、裏にタタミが印刷してあって、組み立てて和室を作れるようになっています。大人買いしてくださった方への特典ですね。