日本を代表するアクションRPG「イース」シリーズ最新作「イースX -ノーディクス-」が、2023年9月28日に発売された!
「イース」シリーズは、1987年発売の第1作目以来、35年にわたって新作が作られ続けている日本ファルコムの人気アクションRPGシリーズ。今回発売された「イースX -ノーディクス-」は、記念すべき10作目のナンバリングタイトルとなる。
毎回、赤毛の冒険家アドル・クリスティンの大冒険を描く本シリーズだが、今回はシリーズ初の海洋冒険ものとなっている。ノーマンと呼ばれる海洋民族が支配するオベリア湾を舞台に、帆船を駆って東奔西走するシリーズ最新作には、かつてないほどスケールの大きな大冒険が待ち構えている!
今回は12時間程度プレイした時点でのレビューをお届けしよう。
海賊娘と二人三脚で攻略せよ!
今回の物語は、「イースII」と「セルセタの樹海(第4作)」の間の時間軸が舞台。つまり古代王国イースでの最初の大冒険を終え、冒険家として最初の一歩を踏み出した直後のアドルが主人公となる。
そういう意味では、まだ冒険家としてはド新人なわけで、シリーズを遊び続けてきたファンからすると新鮮な印象だろうし、今回が初「イース」という方も、余計な前情報なしでも十分楽しめるはずだ。
相棒のドギとともに海に飛び出し、次の目的地である「セルセタ」を目指して旅を始めたばかりのアドル。しかし、オベリア湾に差しかかったところで、船は海賊に捕縛されてしまう。
海賊の正体は、オベリア湾を支配するバルタ水軍と呼ばれる一団であった。とある事情で、彼らが駐留するカルナックという街に滞在することになったアドルたちは、当面、街で生活費を稼ぐことになる。
その過程で、街を襲う「グリーガー」と呼ばれる怪物の存在を知るアドル。彼らは普通の人間には殺すことができないが、マナと呼ばれる力の持ち主なら息の根を止めることができるという。
ひょんなことからマナの力に目覚めたアドルは、同じくマナの力の持ち主であるバルタ水軍首領の娘・カージャと“盾の兄弟”と呼ばれるパートナー関係となり、グリーガー退治に協力することになる。
そんな矢先、カルナックはグリーガーの襲撃を受けて全滅してしまう。命からがら船で街を脱出したアドルとカージャは、散り散りになった街の住民を探しつつ、グリーガーの暗躍を阻止すべく反撃の機をうかがうことになる。
おまけにグリーガーの幹部・オーズをあと3か月以内に倒さないと、アドルは死んでしまうという呪いまでもかけられてしまったから、さあ大変!
というのが、序盤の大まかなストーリーだ。前途洋々な大冒険の始まりからまさに急転直下! 「イース」シリーズ最大級の逆境からのスタートということで、最初からクライマックス状態で物語が展開することになる。
次から次へと敵味方問わず新たなキャラが登場し、新たな状況がアドルたちに押し寄せるので、次に何をすればいいかわからないということにはまずならない。むしろいつゲームをストップすればいいのかわからないくらいに、テンポよくドラマが進むので、タイパ重視の現代っ子も安心だ。どっしり構えてゲームに臨めば、きっとクライマックスまでプレイヤーを導いてくれることだろう。
カージャとの二人三脚でバトルを乗り切ろう!
ここからは「イースX」ならではのシステムを紹介しよう。
本作の特徴のひとつが、アドルとカージャの2人を操作する「クロスアクション」だ。基本的にツーマンセルで行動することになる今回の「イース」。
2人が別々に行動を取り、敵を各個撃破していく機動性重視の「ソロモード」。そして、2人一緒に行動して敵の強力な攻撃をガードしたリ、2人同時に放つ強力な特殊攻撃「コンビスキル」を発動したりと、重厚な戦闘スタイルの「コンビモード」を切り替えて戦うことがポイントとなる。
まずソロモードだが、これは従来の「イース」シリーズの操作の延長上にあるモードだ。キビキビした挙動が気持ちいいアドルorカージャを操作し、敵の攻撃を回避しつつ、ボタンの組み合わせで発動する各種スキルを敵に叩き込もう。
いっぽうの「コンビモード」は、攻防一体となった「イース」シリーズとしては珍しい戦い方が求められる。マナの力で結ばれたアドルとカージャは、「コンビガード」することで敵の攻撃の大半をガードできる。敵の攻撃をコンビガードすれば「リベンジゲージ」が上昇し、「コンビスキル」のダメージ倍率が上がっていく。敵の攻撃を耐え抜いた後に、大技をドカンと放つのは最高に気持ちいい!
これまでの「イース」シリーズでも、パーティーを組んで冒険するシチュエーションはあったものの、ここまで連携を重視したアクションはなかったかもしれない。
また、もし戦闘中にパートナーのHPが0になってしまった場合は、生存しているキャラクターがHPを半分シェアすることで何度でも復活することが可能となる。まさにアドルとカージャは運命共同体! ストーリー展開だけでなく、ゲーム体験そのものを通じてプレイヤーは2人の結びつき、友情を追体験することになる。
マナの力で多彩なアクションを楽しもう!
「イースX」の鍵を握るのが「マナ」と呼ばれる不思議な力。アドルは、そのマナの力でさまざまなアクションが可能となっている。
マナストリング
手の先からマナの紐を飛ばして、振り子の要領で遠くの場所まで一気に移動できる。ワイヤーアクションのような動きが楽しいが、バトル時には素早く動く敵をとらえたり、巨躯を誇る敵に飛ばして急接近することもできたりと、アイデア次第でいろんな活用法がある。
マナライド
「グリンブルボード」という板状のアイテムを使って空中を滑走しよう。足を取られる沼地や水の上をすばやく移動したり、マナの道筋“マナロード”の上を走ったり、カタパルトのように空中に飛び出したりと、普段は行けない場所までたどり着くのに欠かせないアクションだ!
マナバースト
×ボタンを長押しして発動するチャージ攻撃。アドルは炎、カージャは氷の属性攻撃が発動する。敵にダメージを与えるほか、道をふさぐ植物を燃やしたり、水から氷の柱を発生させて足場を作ったりと、探索するうえでも重要な役割をはたす。
マナセンス
普段は見えないものが見えるようになる能力。破壊できる壁や地面に埋められているお宝、見えない足場が見えるようになるという具合に、周囲の隠し要素が白日の下にさらされる!
アドルの海洋冒険譚を体験しよう!
本作では、アドルが操舵手、カージャが船長となって帆船サンドラス号を駆ることになる。今回はこのサンドラス号が、アドルたちのホームとなる。オベリア湾に散らばったカルナックの住人たちを救助すると、彼らはクルーとしてサンドラス号に乗り込むことになる。
あるものは戦闘員として、あるものは料理人や医師など持ち前の技術を生かすスタッフとして、またあるものは商人としてアイテムを供給して……という具合に、徐々に船内が充実していくのはなかなか心が躍るものがある。
「イースX」最大の特徴のひとつが、海上でのアクションの豊富さである。
カルナックを襲撃したグリーガーたちは、自身の艦船を持っており、オベリア湾内を我が物顔で航行している。サンドラス号が敵艦隊「ノスフリート」と遭遇すると交戦がスタートする。また、商船と思って近づいたら実は偽装したグリーガー艦や海賊だった!なんてパターンもあり、海は気が抜けない!
オベリア湾にはグリーガーに占拠されてしまった島も点在する。そんな島を発見したら、島の奪還戦に挑戦しよう。まず海戦モードでグリーガー艦隊を撃破し、島を取り囲む結界を破壊したら、島に上陸! 拠点内のグリーガーを討伐することになる。
見事、島を奪還すると、周囲の探索ポイントが海図に記載されたりファストトラベル先に設定されたりと、冒険を効率的に進められるようになる。
ここでのポイントは、海上戦であらかじめ設定されたミッションを達成すると、クルーのテンションが上昇し、陸上戦が有利に展開するようになるという点だ。高評価でクリアすると多くの報酬がゲットできるので、華麗な戦いを意識しよう!
また、オベリア湾にはさまざまなスポットが存在。イルカの群れやアドルの釣った魚を食べたがるペンギン。はたまた、グリーガーやカルナックの住人がさまよっていたりと、海には不思議があふれている! 海図を埋めるだけでも楽しい! なんだか冒険に心が惹かれてしまうアドルの気持ちがわかってくるから面白い。
そのほか、航行中は乗員たちとの楽しい会話も楽しめたりする。カージャと自室で休めば、2人きりのプライベートトークも聞けてしまう。
キャラクターの意外な顔や、アドルとのコミュニケーションが描かれるので、お見逃しなく!
ゲームビギナーから古参プレイヤーまで、全方位への気配りがすごい!
ここまで海の上での冒険要素を中心に紹介したが、本作の要素はそれだけではない。
アドルがカルナックで拾った貝殻から聞こえてくる「リラ」という謎の女性からの呼び声、時おりアドルの意識が飛ばされてしまうとたどり着く謎の「情景の島」と、そこに住む老人。オベリア湾に点在する石柱とそこに触れることで流れ込んでくる古代ノーマンたちの記憶……。
数多くの不思議がアドルを待ち構えている。それらの謎が少しずつ明らかになり、そして謎の断片がパズルのようにはまっていく快感は、「これこそ『イース』!」と言うべき魅力である。
また、ゲームバランスの調整も非常に手堅い仕上がり。
本シリーズはアクションRPGといっても、難易度ノーマルならアクションそのものやバトルで行き詰まることがほとんどないのは「イース」ファンならご存じの通り。仮にどうしても倒せないボスキャラに遭遇した場合も、その戦闘のみ難易度を下げてリトライできるのはありがたいところだ。
かと思えば、鬼のように難易度を上げてのマゾプレイも可能となっている。ゲーム中、いつでも難易度を変更できるので、ちょうどいい難易度を見つけて遊んでいただきたい。
新要素が出てきた時のチュートリアルはていねいだし、いつでも操作方法やゲームシステムのログを確認できるので、うっかり説明を見逃した時も安心である。
そのほか、マナストリングで足場のない場所を移動するのが苦手という方もご安心を。設定画面で、足場の有無も選択ができるのである。これなら、穴に落ちて、先に進めない! という事態にもなりにくい。
このようにゲームバランス、ストーリー、システム、難易度のあらゆる面で「ユーザーフレンドリー」に徹した「イースX -ノーディクス-」は、間違いなく2023年下半期のおススメタイトルである。
そういえば「イース」シリーズ初期のキャッチコピーは「今、RPGは優しさの時代へ。」だったが、当時は激ムズ難易度のRPGが猛威をふるっていたことに対するカウンターだったように記憶している。その「優しさ」の精神は、シリーズ誕生から35年の時を経た今作でも健在で、今では各プレイヤーにとって遊びやすい環境をゲーム側が用意するという意味合いも持っているように感じる。
何かと「優しさ」が足りない現代日本だが、たまには「優しさ」に満ちた異世界での大冒険を、心行くまで楽しんでみてはいかがだろうか。
- 【ゲーム情報】
- ■イースX -ノーディクス-
- 対応プラットフォーム:PS5/PS4/Switch
- 発売日:2023/9/28
- ジャンル:アクションRPG
- 価格:8,580円(税込)※ダウンロード版は8,250円(税込)
- メーカー:日本ファルコム