放送中のTVアニメ「攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE」より、完全新作エピソードの詳細が発表された。
世界的人気の名作SF「攻殻機動隊」シリーズの最新作として2013年6月より全4章が劇場上映された「攻殻機動隊ARISE」に完全新作エピソード2話を加えて再構成した本作。攻殻機動隊結成前夜の物語で、若き日の草薙素子がいかにして攻性の特殊部隊=攻殻機動隊を創設するに至ったかが描かれている。総監督・キャラクターデザインは黄瀬和哉さん、シリーズ構成は冲方丁さん、アニメーション制作はProduction I.G。
今回、TV版独自の新作エピソードとして第9話~10話で放送される「PYROPHORIC CULT」前後編の詳細が明らかに。このエピソードは、6月20日に公開となる「攻殻機動隊 新劇場版」へと繋がる電脳ウィルス”ファイア・スターター”を巡る前日譚で、新キャラクター・パイロマニアが登場する。演じるのは、津田健次郎さん。炎を自在に操り、物語の核となっている「洗脳・ゴーストへの侵入・擬似記憶の形成」を一度に行う電脳ウィルス“ファイア・スターター”の信奉者であるパイロマニアをどのように演じるか注目したい。
以下、津田健次郎さんのコメントとシリーズ構成・冲方丁さんによる新エピソードの説明。
・津田健次郎コメント
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を初めて見たとき、こんなに静かで深いSF映画がありうるのだと、とても強い印象を受けました。ですからシリーズ最新作にあたる『ARISE』の出演依頼をいただいた時はテンションがあがりました。アフレコの時もバトーの軽口を聞いたりすると、ついファンの視線に戻ってしまいました。僕が演じたパイロマニアというキャラクターは、見た目が独特でぼうっとしているように見えます。でも、同時に暗いなにかを感じさせるようなザラっとした感触のある存在です。初登場で彼はたき火を見つめているのですが、SF作品らしからぬ自然の中のシーンで、そこからしてパイロマニアの異様な雰囲気が伝わってくると思いました。パイロマニアは感情を抑えて、淡々と喋るキャラクターなのですが、その中でどこまでセリフにエネルギーを込めていくかは苦労したところでした。そういう意味では、抑えたお芝居の多い草薙素子ともどこかしら共通する部分のある存在かなと感じました。パイロマニアは草薙素子と対峙していきますが、それは決して熱い戦いではなく、むしろ静かな戦いです。それはとても『攻殻機動隊』らしいものだと思いました。この全編から漂っている『攻殻機動隊』らしさを楽しんでいただければうれしいです。
・冲方丁(シリーズ構成)による新エピソードの見所、新キャラクターについて
草薙素子と対峙する敵、パイロマニアを描く。それが『ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』#09、#10 の狙いです。パイロマニアは素子が肯定するものを否定し、否定するものを肯定します。彼はウィルス“ファイア・スターター”を全肯定するキャラクターで、それ故に、素子の敵であり同時に社会の敵としても立ちはだかります。ネットはあらゆる価値観を拡散させ、社会的なくびきからの逸脱を可能にします。そのためネットの拡大に社会が追いつけない時、社会よりもネットの価値を重くみる存在が現れます。パイロマニアはそれが行きすぎたキャラクターで、社会よりもウィルス“ファイア・スターター”のほうに価値を見いだしているため、社会を破壊することにいささかのためらいも持ちません。一方、草薙素子は現在、既存の組織構造からはじき出されている存在ですが、それでもズカズカと現場へ入り込んでいって、自分のやるべき仕事をもぎ取っていく。#09、#10 ではそういう草薙素子の“戦い方”が一番強調されたストーリーになっています。そんな草薙素子はパイロマニアにどう立ち向かっていくのか。そこを楽しみに見ていただけたらと思います。
<第9話ストーリー>
#09 PYROPHORIC CULT 前編
2029 年1 月。ニューポートシティ郊外で航空機爆破テロが発生し、荒巻率いる公安9課は米軍情報部から共同捜査の要請を受ける。事件の容疑者として挙げられたのは疑似記憶を植え付ける電脳ウィルス「ファイア・スターター」のブローカーとされる、通称“パイロマニア(放火魔)”。ホヅミ大佐を殺害するためにカルテルから派遣され、自身を追跡していた米軍情報部員を航空機ごと爆破テロによって殺害したとされる。草薙はホヅミ大佐の身柄を餌に、パイロマニア捕獲の為、包囲網を敷くが――。
<第10話ストーリー>
#10 PYROPHORIC CULT 後編
激しい電脳戦の末、パイロマニアの身柄を抑えた草薙だったが、パイロマニアの正体と目されていたテロリストの遺体が航空機爆破の墜落現場で発見された。パイロマニアが何者か、その電脳が解析される中で、共同捜査から外された草薙たち部隊は、ホヅミ大佐の身柄の米軍情報部への移送の護衛へと廻る。だが、パイロマニアは収容施設電脳技師を皆殺しにして脱走、ホヅミ大佐と草薙を強襲するのだった。その電脳に残された意志はただ一つ、自身が“人類進化の鍵”と信仰するファイア・スターターを護る事――。