心がワクワクするアニメ、明日元気になれるアニメ、ずっと好きと思えるアニメに、もっともっと出会いたい! 新作・長期人気作を問わず、その時々に話題のあるアニメを紹介していきます。
勢い重視。ハイクオリティでハッタリきいててカッコいい!
絵作りが重厚なのでつい誤解しそうになるが、この作品は、わからないところはそのままに、まずノリと勢いを楽しむたぐいの作品だ。原作者もコミックで所信表明しているとおり、目指しているのは“B級”。いわば、壮大なホラ話と思えばいい。
舞台となる街は、ヘルサレムズ・ロット。かつてニューヨークだった都市が、一夜にして異世界とつながり混じりあう、奇怪な特異点になったという場所だ。
そこには、人語を解する異界人や、想像を絶するモンスター、「血界の眷属(ブラッドブリード)」と呼ばれる最強の吸血鬼、超常の能力を持った人間、そしてごく普通の人間も混じりあっている。大小の危険が転がっている中、日常生活を送っているのだ。
「秘密結社・ライブラ」は、この非常識が跋扈(ばっこ)する街で、世界の均衡を保つために暗躍する組織。メインキャラクターはみな、この組織の構成員で特異な能力を持っているわけだが、そもそもその戦い方が、ハッタリがきいていてイイ意味でフザケている。
技名が画面いっぱいにゴンゴンゴーン! と音を立てて登場し、どーん! と1発で勝負が決まる。理屈はない。問答無用! 初見では「え、これで終わり!?」と肩すかしをくらうかもしれないが、これは原作からしてこういうもの。慣れてくるとこの演出の戦闘シーンが気持ちよく感じるようになる。
さまざまな設定や難しく聞こえる言葉が出てきて、わかりにくいと感じるかもしれないが、基本は「技名を叫んでから殴る」作品なので細かいことは気にしない!
ストーリーに、仕掛けや演出の小技が積み重ねられているため、時間的な尺のあるアニメでは、流れが速くてつかみにくく、ややわかりにくい場合もあるのが弱点か。「んんん?」と思ったら、少し巻き戻して、あるいは頭から2度見てみるのも楽しいだろう。
誰が主役でもおかしくない、「秘密結社ライブラ」のにぎやかな面々
敵も味方も仲良くステージでラインダンスをするエンディングフィルムは、力が抜けていてノリのいい、作品の一面をよく表している。圧倒的な楽しさ、心地よさに、何度見ても飽きない。
本編のメインキャラクターは、主に秘密結社・ライブラの構成メンバー。その中で主人公は、第1話でライブラに入った、「神々の義眼」という特殊能力を持つ少年、レオナルドだ。
常識の通用しないユニークなキャラのなかで、唯一普通で一番戦闘力を持たない、巻き込まれ体質だ。今の能力と引き換えに妹の視力を失わせることになった罪悪感を常に背負っていて、それが彼のキャラクターにおける一抹の陰影となっている。
ポンポンと展開する会話劇がこの作品の特徴だが、なかでも注目したいオススメコンビを挙げてみよう。
まずは、レオナルドと、兄貴格のチンピラ、ザップのコンビ。立場としては、同じ組織の先輩後輩に当たるのだが、ザップが素行の悪いダメ人間で(ただし戦闘においては天才的)、レオナルドがツッコミ体質なので、言葉のやりとりは遠慮なく過激。この2人の悪口雑言の応酬が、日常の基本といってもいいくらいだ。
ザップと、姿や気配を消すことができるクールな美女・チェインのやりとりもにぎやかだ。ザップへのツッコミが、チェインの場合はもっぱら靴で踏むといった行動で示される。ドタバタとにぎやかなこと!
ザップに関しては、のちに登場するツェッドとのコンビもかなりいい。師を同じくする、同じ流派の兄弟弟子だが、この2人も仲が悪い! 礼儀正しくていねいな口調で話すツェッドと、チンピラのザップが、ののしりあいながら任務を遂行するさまは、「バディもの」の定番シーンだ。
魅力的なおっさん・おばさんが多いのも、この作品の特徴だ。ライブラの紳士的なリーダー・クラウスと、その副官的なスティーブンは、ナイスおっさんコンビ。人の良すぎる武闘派・クラウスを、頭脳派の武闘派・スティーブンが補佐する。いいコンビだ。
原作好きとしては、原作のどのエピソードがアニメで描かれるのか、非常に楽しみなところ。派手な活劇もいいけれど、日常を描いたマヌケな話もぜひ見てみたい。
また、ホワイトという謎の少女をめぐる展開はアニメオリジナルで、これが独立したエピソードをつなぐ引きになっている。予測できないこのネタが、どう展開していくのかも気になっている。
木村真二の背景美術は、大画面で楽しみたい!
この作品のアニメ化が決定したとき、一番楽しみだったのが美術監督を担当する木村真二さんの美術だ。
アニメで木村真二さんの背景美術といえば、「鉄コン筋クリート」(2006年公開)と「劇場版 青の祓魔師」(2012年公開)がすばらしかった。
「鉄コン筋クリート」では、義理人情とヤクザがはびこる町・宝街を、そして「劇場版 青の祓魔師」では、11年に1度の祝祭のために飾りつけされた正十字学園町を、独特の色彩で描き出した。大画面に映し出される街並みは、猥雑にして美しく、「その場所を体験する」という空気感を感じたものだ。
現実と非現実が同居する、霧にけぶる都市ヘルサレムズ・ロットも、圧倒的な存在感で、テレビシリーズにして劇場作品並みのクオリティで描かれる。可能であれば大型のテレビで見ると迫力と美しさが段違いだ。
川本利浩さんの、原作を生かしつつアニメとしてこなれた美麗なキャラクターデザインもいい。川本さんと言えば「カウボーイ・ビバップ」(1998年放送)が代表作だが、最近では「ノラガミ」(2014年放送)で、美麗な原作コミックの印象をそのままに、魅力的なキャラクターをアニメ向けに起こした。
映像のクオリティが高く描写が重厚なほど、起こる騒動の迫力も恐ろしさもバカバカしさもギャグも際立つ。そんな対比が、話が進むほど加速するといいな……と、ひとりの原作ファンとして期待している。
(文/やまゆー)