TAAF2015「コンペティション部門」のグランプリ発表。長編アニメーション部門のグランプリは、アイルランドの「Song of the Sea」

2015年3月22日(日)に開かれた、「東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)2015」の授賞式にて、「コンペティション部門」のグランプリおよび優秀作品が発表された。

TAAFは、アニメーションの新興を目的にした国際アニメーション映画祭で、今年の「TAAF2015」は、3月19日(木)~23日(月)の期間、TOHOシネマズ日本橋を中心に開催された。「TAAFの「コンペティション部門」は、2013年1月1日以降に完成したアニメーション作品で、プロ・アマ問わず応募のあった、日本国内で未興行のアニメーション作品を対象としたアワード。60分以上の作品は長編アニメーション部門、30分未満は短編アニメーション部門となる。本年は長編部門で21作品、短編部門は60か国以上の国と地域から1206の作品の応募があった。

長編アニメーション部門でグランプリを授賞したのは、アイルランドのトム・ムーア監督が手がけた「Song of the Sea」。少年ベンと、“最後のアザラシの子”である妹、サワースの2人が、海のそばの家に帰るため、消えゆく古代の魔法世界へと不思議な旅に出発する物語。海で暮らすアザラシが陸に上がり人間になるという、アイルランドに伝わる神話をもとにした作品だ。

また、優秀賞には、フランスのアレクサンドル・ヘボヤン、ブノワ・フィリッポン両監督による「MUNE」が選ばれた。こちらは、最新の3DCG による3Dアニメーションで、月の番人と太陽の番人、月の番人に恋をしたキャンドルが織り成す、おしゃれでちょっぴり切ないラブストーリーとなっている。

 

いっぽう、短編アニメーション部門でグランプリを受賞したのは、ロシアのコンスタンティン・ブロンジェット監督が手がけた「Mi ne mozem zhit bez kosmosa」(英題「We can’t live without cosmos.」)となった。宇宙飛行士を夢見る2人組が、いっしょに夢を実現させるため、日々のトレーニングに全力で挑むという15分20秒の作品だ。優秀賞には、フランスのデジュリアン・ピサロ監督が手がけた「Bang bang!」と、同じくフランスのサラ・サイダン監督が手がけた「Beach Flags」が選ばれている。

なお、審査員特別賞には、イギリスのエフィー・パッパ監督が手がけた短編アニメーション作品「My Stuffed Granny」が、本審査を鑑賞した一般の観客が選んだ観客賞には、日本人監督がアイヌの方々といっしょに制作した、すぎはらちゅん監督の「七五郎沢の狐」 監督が選ばれている。

 

以下は、グランプリ作品に対する審査員のコメント。

・「Song of the Sea」
「アイルランド(ケルト)の神話をモチーフテーマにしながらも、家族の再生・再構築という、現代でも広い世代に通じるテーマが非常に良い形でシナリオになり、アートディレクションや音楽とのマッチングにも成功しているという、大変素晴らしいバランスの映画だというのが審査員全員の見解です。そして、この作品はシナリオの前編と後編では、テンポが変わるのですが「デリケートな兄弟愛や人間関係の描き方が素晴らしい」という意見と「後半のクライマックス、アクションシーンが見どころだった」という意見で、2つに意見はわかれております。この作品を観客の皆様がどう思うかが非常に楽しみなところです。私ごとではございますが、久しぶりに素直に泣ける映画でした。」
(東映アニメーション 企画営業本部 企画開発スーパーバイザー・関弘美さん)

・「Mi ne mozem zhit bez kosmosa」
「スタイリッシュな画面作りと大人のセンス・オブ・ユーモアを散りばめたこの作品は実は映画制作の類稀なる力量をも見せてくれる。どのカット1つを取ってみても素晴らしい。キャラクターひとりひとりがシンプルな表現の中に各々の個性に満ちあふれている。笑いながら、ハラハラしながら一気にエンディングまで楽しませてくれる。見終わって、なんとも暖かい気分にさせてくれるアニメーション。」
(アニメーション作家・アニメーション協会会長・古川タクさん)

 

「Song of the Sea」
(C) Cartoon Saloon, Melusine Productions,The Big Farm Superprod, Norlum

「MUNE」
(C) 2014 Onyx Films ? Orange Studio – Kinology

「Mi ne mozem zhit bez kosmosa」
(C)”Melnitsa” animation studio and “The CTB film company”. Both are production companies for my film.