【アニメコラム】アニメライターによる2018年冬アニメ中間レビュー

2018年冬アニメを中間レビュー! 実写化もされた人気コミック原作「ラーメン大好き小泉さん」、バンダイのプラモデルが原案の「ポチっと発明 ピカちんキット」、「まんがタイムきららフォワード」連載の「ゆるキャン△」、秘密を持った女子高生が主人公の「スロウスタート」、京都アニメーションが送る「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の5作品をピックアップしました。

ラーメン大好き小泉さん

ミステリアスな女子高生・小泉さんが、美味しいラーメン店を巡る本格グルメアニメ。取材協力には多数の人気ラーメン店が名を連ねており、モデルとなったほとんどの店舗が実名で登場。ラーメン自体はもちろん、丼に券売機、店内の装飾や芸能人のサインまで忠実に再現した。店の名前をアレンジするというアニメのお約束描写を排したことで、実際に来店したかのような感覚を味わえる。
そんな店内で小泉さんはクラスメイトとも馴れ合わず、ただ黙々とラーメンを食べ続ける。決して健康食とは言えないラーメンを主食に命を賭して丼に向かう姿勢は、健康的な趣味とは言えないアニメを見続けている我々にも響くだろう。ドイツ風ラーメンを食べるときにテクノ調のBGMが流れるなど、細部の遊び心も楽しい一作。

ポチっと発明 ピカちんキット

謎のカタログ「ピカちん大百科」を手に入れた遠松エイジが、いろいろな願いをかなえるプラモデル「ピカちんキット」を取り寄せて、思うままに遊びまくるギャグ作品。不思議なアイテムを題材にした王道のストーリーだが、プラモデルはAmazonから送られてくるという設定が今めかしい。本編にはAmazonの段ボールが登場。箱を開けるカットはペリッというあの感覚が伝わってくるほどリアルだ。「演出協力 Amazon.co.jp」というクレジットは伊達ではない。相棒の犬型ロボット・ポチローも段ボール製。第2話で早くも資源ゴミとして捨てられる展開が涙を誘う。
ピカちんキットは、前を見ながら横を見られる「カンニングラス」、オリジナルのふりかけが作れる「ふりかけメーカー」など、意外と庶民的。サポート役のプラモデル「ピカちんロボ」も送られてくるもののトラブルメーカー揃い。結局は大騒動を巻き起こし「ただのプラモなので静岡に帰ります」と去って行くのがお決まりのパターンになっている。

ゆるキャン△

1人旅好きの女子高生・志摩リンが、山梨に引っ越してきたばかりの各務原なでしこと出会い、キャンプを通じて交流するアウトドア系アニメ。基本的にアニメは友情が何よりも尊いものとされるが、本作ではひとりぼっちのよさもきちんと描かれているのがポイント。友達とべったりしているわけではなく、SNSでひとりキャンプの写真を送ったり、ときには同じテントで一夜を過ごしたりと、つかず離れずのゆるい関係性が居心地よい。
本格的なアウトドア描写も見どころ。火を起こすときには松ぼっくりを使うなど、インドア派である我々には未知の知識が詰まっている。キャンプ飯はどれも美味しそう。ネギをハサミで切って煮込んだ坦々餃子鍋をはじめ、作品を彩るメニューを実際に作ってみたくなってしまう。

スロウスタート

「まんがタイムきらら」連載の4コママンガが原作。女子高を舞台にした日常アニメながら、主人公の一之瀬花名は中学浪人という経歴の持ち主。無事に1年遅れの高校デビューを果たし、新しい友人もできたものの、浪人の事実を隠していることに罪悪感も覚えている。そんな少しハードな面が見え隠れしつつも、全力で明るいコメディを楽しめる。
第1話では始業式のあとに寄り道をしてみんなで桜を見に行くというオリジナル展開を盛り込み、晴れやかな高校生活の幕開けを演出した。キャラクターのアニメーションも目を奪われる仕上がりだ。とくに花名の従姉妹・京塚志温の胸は暴力的なほどに動き回っている。原作ではコマの枠線に胸が乗るほどの巨乳として表現されていたが、それを上回るほどのインパクトである。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

「京都アニメーション大賞」で初の大賞に輝いたファンタジー小説をアニメ化。感情を持たない少女・ヴァイオレットが、手紙を代筆する「自動手記人形」という仕事を得て、新たな道を進む姿を描く。戦うことしか知らなかった彼女は、仕事を通じて多くの人々と出会うごとに人間味が生まれ、自然と表情も豊かになっていく。キャラクターの服装や背景美術も緻密に描写され、物語の舞台であるテルシス大陸の歴史や自動手記人形という仕事が一般化した経緯にも、関心が向くようなつくりとなっている。
第5話は隣国に嫁ぐ王女の公開恋文を手がけるというストーリー。順調に仕事をこなすヴァイオレットの成長ぶりや、王子と王女の間で交わされるロマンチックな文通、さらに手紙を代筆するという行為そのものにも触れたエピソードは出色の出来だ。

(文/高橋克則)

(C) 鳴見なる・竹書房/「ラーメン大好き小泉さん」製作委員会
(C) 2017 PIKACHINKIT
(C) あfろ・芳文社/野外活動サークル
(C) 篤見唯子・芳文社/スロウスタート製作委員会
(C) 暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会