舞台「少女☆歌劇 レヴュースタァライト ―The LIVE ―」#1 revivalが2018年1月6日~8日、渋谷・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて開催された。
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」は、ブシロードとネルケプランニングがタッグを組んだ大型プロジェクト。公式サイトには“ミュージカル×アニメーションで紡ぐ二層展開式少女歌劇”というコンセプトが掲げられており、舞台の「スタァ」を目指す少女たちの物語を「ミュージカル」と「アニメーション」の2つの軸で描く。
アニメーションを2.5次元舞台化した作品は数多いが、本作最大の特徴は、歌劇=ミュージカルの出演者と、アニメーション声優が同一キャストであることだ。「探偵オペラ ミルキィホームズ」シリーズや「ラブライブ!」でおなじみの三森すずこさんをはじめ、伊藤彩沙さん、相羽あいなさんといった人気声優がミュージカルにも出演し、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」出演の小山百代さん、ミュージカル「Les Miserable」「ギャラクシーエンジェル」などに出演の富田麻帆さんら舞台の経験に富んだメンバーがアニメでも声優を務める。キャストのバックボーンはさまざまだが、いずれも歌、声、ダンス、表現、ビジュアルを兼ね備えた実力本位のキャスティングだ。
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト ―The LIVE ―」#1は2017年9月に初演が行なわれ、その好評を受けての再演が本公演である。2018年夏にはTVアニメを放送、2018年10月には天王洲 銀河劇場での「少女☆歌劇 レヴュースタァライト ―The LIVE ―」新作公演を上演と、いよいよアニメと舞台の両輪がリンクして動き出そうとしている。
見目うるわしいキャストたちが繰り広げる、熱いバトル
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト ―The LIVE ―」は、1部がミュージカル、2部がライブという構成だ。
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の舞台となるのは、名門校の聖翔音楽学園。同校で舞台について学び、切磋琢磨しあう俳優育成科99期生の愛城華恋(小山百代さん)、天堂真矢(富田麻帆さん)、星見純那(佐藤日向さん)、露崎まひる(岩田陽葵さん)、大場なな(小泉萌香さん)、西條クロディーヌ(相羽あいなさん)、石動双葉(生田輝さん)、花柳香子(伊藤彩沙さん)ら8人が在籍するクラスに、イギリスの名門演劇学校から神楽ひかり(三森すずこさん) が転入してくることから物語は始まる。
舞台少女たちがキラめきを奪い合う勝負(レヴューオーディション)は、それぞれ個性的な武器を持ってのバトルとして描かれる。オーディションをつかさどる教師であり、同校出身の伝説的女優でもあった走駝紗羽を演じるのは椎名へきるさん! 彼女の圧倒的な存在感と力強い歌声は伝説の女優にふさわしいもので、実は個人的には初演の時は演じているのが椎名さんだとは気づかなかった。さぞ名のあるミュージカル女優なのだろうなと思って調べてみると「椎名へきる」の名前を見つけて2度見した次第である。
謎のメールでレヴューオーディションに呼び出された2人の舞台少女が対峙すると、走駝が「タイトルは『嫉妬』。ショーマストゴーオン!」と、テーマとオーディションの開幕を宣言してバトルは始まる。戦いを表現するのはキャスト陣が繰り広げる本格的な殺陣と、透過スクリーンに映し出されるバトルエフェクトの映像だ。舞台少女たちが武器を打ち合わせると、手前のスクリーンに飛び散る火花や技のエフェクトが映し出され、SEと共に華やかな戦いを演出する。
レヴューバトル描写の肝となるのが、走駝によって提示される「嫉妬」「孤独」といった演技テーマだ。「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の大きな魅力のひとつに、舞台少女同士の人間関係や、スタァを目指す少女たちの心の機微をていねいに描くことがある。
愛城華恋(小山百代さん)と神楽ひかり(三森すずこさん) は子供の頃に舞台への憧れを共有した幼なじみだが、再会した今はひかりが華恋を拒絶している。大好きな華恋の隣にひかりがあらわれて、動揺する露崎まひる(岩田陽葵さん)。同期の中でも圧倒的な実力者である天堂真矢(富田麻帆さん)に激しいライバル意識を燃やす西條クロディーヌ(相羽あいなさん)。生粋のお嬢様の花柳香子(伊藤彩沙さん)と、彼女に付き添って学園に入学した石動双葉(生田輝さん)。才能の差を感じながらも舞台の真ん中に焦がれる星見純那(佐藤日向さん)。8人の仲間が一緒に作る舞台を大切にしたい大場なな(小泉萌香さん)。
そこに神楽ひかりという存在が現れることで、8人の関係にさざなみが立つ。そんな8人と転入生のひかりの関係性や、心の奥に抱えたものが、レヴューオーディションの戦いの極限状況の中で濃密に描きだされていく。舞台上で同時進行するいくつもの戦いの向こうにさまざまな想いが垣間見えるのは舞台、ミュージカルならではの魅力だろう。
再演ならではの見どころを、極私的レビュー!
今回の舞台は再演ということで、初演からの変化についての印象を書くと、9人の舞台での存在感が接近して、ひとつのチームとしてのフィット感が増したような気がする。初演開幕時、個人的には2.5次元ミュージカルの第一人者のひとりである富田麻帆さんの舞台空間を包み込む存在感や、ダブル主演である小山百代さん、三森すずこさんのスキルや表現力は突出しているように感じた。もちろんそれぞれのキャストに強みや魅力があって、果てしない練習を重ねたであろう殺陣で、長物を軽やかに扱う伊藤彩沙さんの姿に感動したりもした。
だが再演で個人的に一番目をひかれたのは、富田麻帆さんが演じる天堂真矢に、全存在をぶつけるように食らいついていく西條クロディーヌ=相羽あいなさんの姿だった。その姿は、天堂真矢を追いかけるクロディーヌにそのまま重なるようであり。初演の舞台を踏み、演者が積んだ経験によって再演から違った印象を受けたのは、生ものである舞台ならではのように感じた。
また、小山百代さんの歌声が、華恋としてのキャラクターをまとったままでのふくらみ、伸びやかさがより魅力的になったようにも感じた。舞台の初演と再演の間には確かな差があったが、TVアニメのアフレコと放送を経て、次の舞台にどんな変化や影響があるのか。その生きた変化を見届けていくこともまた、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」ならではの体験のように思えた。
1部のミュージカルで濃密な時間を過ごしたあと、休憩をおいて始まるのが2部のライブパートだ。「スタァライト」の世界観の延長線上にあるステージで、戦いやドラマから解き放たれた舞台少女たちがキラキラしながら歌い踊るライブが繰り広げられる。初演で披露した「舞台少女心得」「願いは光になって」「情熱の目覚めるとき」「GANG☆STAR」「Fancy You」「Star Divine」の6曲に加え、新曲の「スタァライトシアター」を初披露。「スタァライトシアター」は幕が上がるワクワク感を詰めこんだような底抜けに明るくてハッピーな楽曲だが、転調と共に時に壮大に、時に舞台の時が終わる切なさをたたえた表情を見せていた。
(取材・撮影・文/中里キリ)