現在好評上映中の「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」。アキバ総研(あにぽた)の作品レビューでも、多くの方が高い評価をつけており、昔ながらのマジンガーファンを中心に多くのアニメファンの心を虜にしているようだ
そんな「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」であるが、一般の2D上映のほかに、「4DX」「MX4D」といった4D上映版も用意されていることをご存じだろうか。ここで言う「4D」とは、従来型映画の「観る」「聴く」という楽しみに加えて、「体感」という新たな楽しみ方が加わったもの。たとえば、可動式の座席がシーンに合わせてガタガタ動いたり、風やミストや香りといった演出がなされたりといった具合で、まるでテーマパークのアトラクションよろしく、全身で映画を体感しながら楽しめるというものだ。「4DX」も「MX4D」も、できること自体は大きく変わらないので、お近くの対応劇場にて、ぜひ体感していただければと思う。
そんな「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」のMX4D版を、アキバ総研スタッフKが実際に体験! 通常の2D上映とどのように異なる楽しみ方ができるのかをレポートしたい。
(以下、内容に若干のネタバレがありますので、ご注意ください)
シートが序盤からグワングワン動く、動く! いきなりバトルモードに突入ダアッ!!
今回スタッフKが訪れたのは、神奈川県川崎市の川崎駅からほど近い場所にある「TOHOシネマズ川崎」。こちらでは、MX4Dが楽しめる「シアター9」が用意されており、さまざまな作品をMX4Dならではの演出で楽しむことができる。ちなみにこちらの「MX4D」シアターでは、「エアーブラスト(突風)」「ウィンド(そよ風)」「ウォーターブラスト(水しぶき)」「ストロボ(閃光)」「シートポッパー(下からの衝撃)」「セント(香り)」「ランブラー(地響き)」「ネックティックラー(首筋をゾクッとさせる)」「レッグティックラー(足元をチョコチョコ動く)」「フォグ(霧)」「バックポーカー(後ろからの衝撃)」という9つの演出効果を楽しめるという。これは始まる前から、ワクワクするではないか。
シアターに入ると、ズラリと並んだMX4D専用シートがお出迎え。ここでは隣接する3~4シートが一緒に動くようになっており、隣に座った人達と、その臨場感を共有できるわけだ。ちなみに、シートは結構派手に動き回るため、荷物は基本的にシアター外のコインロッカーに預けることになる。コンセッションで飲み物や食べ物を買って持ち込むことは可能だが、飲み物などがこぼれることがあるので、十分注意したい。とはいえ、テーマパークのアトラクションのようにシートベルトが付いているわけではないので、身体が投げ出されてしまうほどの衝撃はない。
シートに着座すると、かなり大きめのシートのため、座り心地は上々だ。左右のアームレストにはドリンクホルダーがあり、その前には何やら不気味な穴が空いている。ここから、MX4Dならではの風やミストなどが吹き出すのだろう。などと、いろいろ想像を巡らせているうちに、上映がスタートした。
本編の上映がスタートする直前に、シート全体が若干持ち上がり、スタンバイ状態になる。これでいつ動いても問題ないということなのだろう。そしていよいよ映画本編がスタート! 本作は最初からいきなり「グレートマジンガー」らによるバトルシーンから開始されるが、これに合わせて、シートは序盤からグワングワンと動く、動く! 投げ出されるほどではないが、前に後ろにガタガタ揺さぶられる感覚は、確かにテーマパークのアトラクションのよう。当然ながら、上映されているシーンに連動してシートが動くので、敵の攻撃を食らったときは、衝撃も大きくなるし、グレートの挙動やアクションに合わせても、左右にグワッと揺さぶられる感覚を得られる。たとえば、振り向きざまにパンチやキックといったアクションでは、振り向く時の横Gと、パンチやキックによる全体の振動の2つが立て続けにやってくるという感じで、なかなか凝っている。まさに、グレートマジンガーに搭乗している剣 鉄也が感じているであろう衝撃を、一緒に感じているようなイメージだ。
また、シートの動作とともに、バトルシーンで特に面白かったのは、爆発による閃光を、シアターの左右壁に取り付けられたストロボで表現していること。グレートの攻撃で次々と爆発していく敵・機械獣に合わせて、劇場中のストロボがバチバチと光るのだ。一般的に、映画館というのは、中を暗くして観るわけだが、このストロボが光ると、劇場中が一瞬昼のように明るく照らし出される。その感覚が新しいのに加え、その時にほかの観客の姿が見えるので、なにか一緒に楽しんでいる共有感が生まれるのだ。これは、ひとりでじっくり観る映画とは全く異なるアトラクション的な面白さである。映画が終わる頃には、みんなで一緒に機械獣と戦っている仲間のような気すらしてくるから不思議だ。
怒濤のラストバトルでは、数十分間にわたって、劇場全体が動き回る!!
こうして序盤のバトルシーンですでに、4DMXのスゴさと楽しさにすっかりやられてしまったわけだが、その後はしばらく平和な日常シーンが続く。本編では、悪の科学者Dr.ヘルと彼の率いる地下帝国を壊滅させた戦いから10年後の世界が描かれる。かつて「マジンガーZ」とともに世界を救った主人公・兜甲児は、今や研究者としての人生を送っており、マジンガーZ自体もすでに過去の遺物のように飾られているだけの存在となっている。
そんな平和な世界で繰り広げられるシーンでは、4DMXもさすがに出番がないかと思っていたのだが、そんなことはない。日常シーンの中で起こるちょっとしたハプニングや衝突でも、シートはガタガタッと動くし、シーンの中で風が吹いてくれば、アームレストからも風が顔に吹き付ける。一番印象的だったのは、今回新たに登場する、統合軍の女性アイドルチーム「マジンガールズ」の登場シーンでは、なぜか甘い香りが……(笑)。あまりにほのかな香りだったので、最初は、誰か近くにいる人の香水の香りかとも思ったのだが、よくよく考えてみれば、この劇場の中にいるのは95%男性ばかりである(笑)。つまり、これこそが、MX4Dの持つ演出機能のひとつ「セント(香り)」の効果なのだ。これには思わず苦笑い。何しろ、マジンガーZと言えば、ロボットアクションであることは言うまでもないが、原作者・永井豪先生ならではの「お色気シーン」ももちろん忘れてはいけない大事な要素のひとつでもある。そんな数少ないお色気シーンに、この甘い香りの演出。なかなかやってくれるではないか。
そして、ストーリーはいよいよ終盤。襲い来る大量の機械獣たちを相手に、兜甲児がマジンガーZを駆っていよいよ決戦に赴く。フルCGで描かれたカラフルな機械獣たちが、一斉にこれでもかと襲い来る様は、本作の最大の見どころであり、通常の2D上映でも興奮度MAXなのだが、MX4Dでは、この興奮度がさらに2倍以上に跳ね上がる! 何しろ、これだけの大量の機械獣を相手に、マジンガーZが激しいバトルを繰り広げるのである。当然ながら、シートは休むことなく、マジンガーの動きに合わせて前へ後ろへ右へ左へとガタガタ、ガタガタと動き回る。その迫力はさながら、テーマパークのアトラクションだ。近くをミサイルがかすめていけば、顔には風が当たり、壁に背中からたたきつけられれば、「バックポーカー(後ろからの衝撃)」によって、後ろからグワッと刺激が走る。時には、「ネックティックラー(首筋をゾクッとさせる)」や「レッグティックラー(足元をチョコチョコ動く)」などの演出で、首元や足元がなにやらゾワゾワしたりするし、劇場の左右では爆発に合わせてストロボがバチバチ光る。もうこれでもか!というほどの、MX4Dによるさまざまな効果のオンパレードが数十分間も続いている間、目の前の大スクリーンで行われているめくるめくバトルを、まさに自分事としてとらえている自分がそこにいたのだ。これは新しい映画の楽しみ方である。いや、むしろ、映画という枠を超えた新しいアトラクションだろう。
もちろん、このMX4Dが効果的な作品は限られるだろうが、ロボットアクションアニメである「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」の場合、その相性はかなりいい。バトルシーンも多め。しかも、シリアスなストーリーというよりは、みんなで一緒に応援したくなるような胸アツなストーリー展開であるだけに、同じ劇場にいる仲間同士がゆっさゆっさとあちこちで揺らされている様子を見ているだけでも、一体感がわいてきて楽しい。細かいことはあまり言えないが、とにかく、本作を観るのであれば、MX4Dでの鑑賞という選択肢も一度検討してみてはいかがだろう。なお、MX4Dでの視聴は通常料金+1200円で、大人一般料金の場合、1800円+1200円=3000円となるが、その料金分の楽しさは絶対に味わえるはずだ。