TVアニメ「アニメガタリズ」を作った男たちによる座談会。後編でも引き続き、森井ケンシロウ監督、久保博志助監督、広田光毅さん(シリーズ構成)、田沢大典さん(脚本)、竹内宏彰さん(プロデューサー)に、ネタバレを気にせず「アニメガタリズ」の全てを赤裸々に語っていただいた。
⇒【アニメガタリズ特集】森井監督ら主要スタッフが制作秘話や名前の秘密などネタバレ満載で語る!「アニメガタリズ」座談会(前編)
最終話放送後のニコ生「ガタリズTV」でも少し明かされたお母さんの秘密や、実は壮大な設定があった最後のシーンなど、改めて全話見返したくなる裏話満載でお届けする。
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タケウチ、アノコハエーデ
■第9話「アニケン、ズットテング」
脚本:田沢大典 絵コンテ:なかの 陽
演出:久城りおん 作画監督:村上史明
――8話できれいに最終回を迎えてどうなるのかと思っていたら、「は??」という感じで(笑)。
森井 「は??」ですよね(笑)。
田沢 書いている人間が「は??」と思いましたもん(笑)。
久保 我々もみんなで見たんですけど、「なんだっけ?先週の話は??」って感じでした(笑)。
――そんな9話の脚本は田沢さんが書かれました。
田沢 9話からが第2部。そして10話には天才笹野がいるので、バトンタッチするためのステップを踏んでいるだけです(笑)。
広田 先生、ネジゆるめておきました!
田沢 あとはネジをふっ飛ばしてください、と。
広田 9話と10話がセットで、11話からが“おまけの”第3部ですから(笑)。
森井 9話だと、冒頭の「打ち上げあるある」がすごく好きですね。これもリアルだなと。
田沢 これだけは言っておきたいのですが、「打ち上げあるある」に関してはライター全員の協議のうえで決めたものであって、僕の個人的な意見ではないですから!(笑)
広田 僕が「絶対にいれろ!」と言いました(笑)。
田沢 皆さんの意見を取りまとめて書いたら「田沢さん、長い。闇すぎる」と言われて……。
広田 今度はライターの部分を遠慮がちにしたので、「ダメダメダメ。ここだけは書いておきたい」としつこいぐらいにぶっこみましたね。7話、8話、9話あたりはライターの闇が相当出ています。
久保 どこがメインなんだか(笑)。
田沢 個人的にすごく嬉しかったのは「魔球を投げるシーン」です。大好きだった「ミラクルジャイアンツ童夢くん」みたいな魔球を投げてほしいと頼んだら、「作画をやった人間がいます」と言われて驚きました。
久保 僕もちょっとやっていましたね。
森井 でも、この作品はインターネットが登場する前なので、資料がなくて大変でした。DVD化はされていないし、久保さんの家にもなかったんです。
――野球ネタなら他の有名作品が出てくると思いきや、「童夢くん」というのもナナメ上を行っているなと。
森井 これは避けましょうか、という作品もあったので。
久保 実は、許諾を取って正式名称を使うかどうかという話に関係していて。「アニメガタリズ」は許諾を取らずに、いわゆるパロディ、オマージュという形で進めることにしたので、触れないでおこうという作品もあったんですよ(笑)。
――まだどこからも怒られていないですよね?
久保 これが不思議なことに、怒られていないんですよ。
――音楽周りとかも大丈夫だったのですか?
森井 セルフパロディというか、実際に曲を作っていた人が作ってくれましたから。チラシを配るところも劇伴をやっていた方なので、わかっていてやっています(笑)。
■第10話「アニケン、ヤットハイブ」
脚本:笹野 恵 絵コンテ:金子祥之
演出:金子祥之 作画監督:小林多加志
――第10話はオープニングが唯バージョンになっていて、いきなり驚かされました。これは久保さんがやられたそうですね。
久保 私が犯人です!って、違うんですよ(笑)。脚本会議の時に「結構シリアスな話になるからアバンで唯ちゃんをもってくるのもどうなのか。ここは普通にオープニングに入りましょう」という話になって。その時に僕がポロッと「じゃあ、オープニングで唯ちゃんを出せばいいんじゃないですか?」と言ったら全部やることになったんです(笑)。
森井 どうぞどうぞ、って(笑)。
久保 これはいわゆる公式MADというノリで作っているんですけど、本当のアフターエフェクトのコンポジションを使って、グラフィックを差し替えて作っています。
森井 本編で使われていない表情もありましたね。
久保 あれはキャラ表から使ったものです。全部唯ちゃんに差し替えようとなって、一度1話~8話の素材で作ろうとしたんですけど、意外とカット数が足りなかったんです(笑)。なので、ギリギリまで待って9話の絵が上がってきてから全部差し込みました。ラストでみんなが一斉に走るところは、ここだけ普通に戻すのも変だし……じゃあクソコラか、と。撮影監督さんに特にオーダーしたわけではないですが、元の映像で未乃愛がパッと振り向くところはちゃんとクソコラをひっくり返しているんですよ(笑)。
――こだわっていますね。内容的にはここで第2部完になります。
久保 オーダーとしては、世界の謎はとりあえず置いといて、その他の未乃愛にまつわる伏線は10話で綺麗に回収し、「そうだったんだ!」と1回スッキリしてもらおうというコンセプトです。
広田 「なぜアニ研があんなに目の敵にされているのか」とか「未乃愛のアニメはなんだったのか」など、現実的に起こりうる大団円として10話でまとめましょうと。多少のファンタジー要素はありますけどね。そもそも1話で打ち切られたアニメなら逆に伝説になっていると思ったんですが、それでやっちゃおうと。
久保 意外とネットが全盛になる前だと、そういうアニメって埋没してみんな知らなかったりしますよ。たとえば、4話で打ち切りになった「ドン・ドラキュラ」とかそんなに知らないですよね。
森井 だから、演出さんにも「これ最終回です。最終回っぽくしてください」と言って渡しました。でも、10話はよかったですよね。いい最終回だと思いました。
広田 8話もいい最終回、10話もいい最終回。いいだろここで、って(笑)。
――それと注目は、何と言っても学園長を中尾隆聖さんが演じられたことです。最後にはあのセリフを言って去っていきますし。
久保 10話のアフレコをやる数週間前に中尾さんに決まったのですが、その頃からずっと「ばいばいきんって言ってもらおうか?」「だめかな?」とみんなで言っていたんです(笑)。
――あれはアドリブですか?
久保 脚本にはなかったので、その場でお願いして言っていただきました。(恐る恐る)「ばいばいきん」って言ってほしいんですけど……と言ったら、中尾さんは「フリーザもやりましょうか?」って。ノリのいい方だなぁと(笑)。
森井 中尾さんのパートは、みんなのアフレコが終わってから中尾さんと本渡さんの2人で収録したんですけど、その日の声優さんはみんな残っていましたから。
竹内 学園長との最後の対峙シーンは、本渡さんが全然ひるんでいなかったですもんね。若手だと緊張したり舞い上がったりして声が上ずる人も多いんですけど、本渡さんは全くそんなことなくて。「緊張しないの?」と聞いたら、「楽しいです!」と本当に未乃愛みたいなことを言うから、この子はすごいなと。
久保 互角にやりあっていましたね。