お待たせしました。「アニメ業界ウォッチング」第6回は、「未来少年コナン」(1978年)から始まり、現在まで多くの方に影響を与え続けてきたNHKアニメについて、編成局・展開戦略推進部の柏木チーフプロデューサーにインタビュー。
いったい、どのように作品が選定されているのかという編成のお話や、柏木さんご自身がご担当された作品などについて、うかがってきました。
――柏木さんは、アニメーション番組の中で、どのような仕事をされているのですか?
NHKでは“制作統括”とクレジットされますが、プロデューサーであり、番組の責任者です。番組を決めるのは「編成センター」という部署ですが、私の役割は、編成センターに番組を提案し、その意向とすり合わせつつ、番組の方向性を決めていく立場です。また、番組を制作するときは現場で意見も言います。その両方が私の仕事ですね。
――すると、シナリオの打ち合わせに出られることも?
作品によりけりですけど、脚本会議に出ることもありますし、アフレコに行くこともあります。キャスティングを決めるオーディションに参加することもあります。
――作品企画は、どういう経路で柏木さんのところまで来るのですか?
制作会社さんや出版社さんがお持ちになる場合もありますし、NHKエンタープライズのプロデューサーが「これをやりたい」と持ってくる場合もあります。あるいは、単独ではなく「この原作をアニメ化するにはどうしたらいい?」と、話し合いをすることもあります。「いちばん効果的な道を探る」というか、いろいろです。決まった枠でおなじみの番組を放送することも大事ですが、「え、こんなのもNHKでやるんだ?」という意外性のある企画を編成に提案することも、私の仕事としては重要ですね。
――柏木さんが初めて関わられた作品は、「十二国記」(2002年)ですね。
「だぁ!だぁ!だぁ!」(2000年)の途中から関わっていますので、企画の最初から関わったという意味では、「十二国記」が最初でした。「十二国記」の原作をライトノベルと呼んでいいのか難しいところですが、漫画原作ではないライトノベルのアニメ化は、NHKでは初めてだったと思います。当時の衛星放送(NHK-BS)のアニメは、原則的に原作付きの企画なんです。まだ衛星放送自体がそれほど知られていなかった頃なので、漫画原作の企画が多かったと思います。だけど、「十二国記」は、原作小説が圧倒的に面白いんですよね。挿絵のイラストも魅力的だったので、アニメ化することに違和感はありませんでした。
――その後も、しばらく原作付きの企画が続きますね。
最近だと、「ファイ・ブレイン 神のパズル」(2011年)がオリジナル企画です。サンライズさんと「何か面白い企画ができるといいですね」という話はしていたのですが、いい企画を考えていただきましたサンライズさんもEテレ(NHK教育テレビ)の枠を意識して企画を考えてくれたと思います。
パズルを解説するためのミニ番組(「もっと×2 神のパズル」)では、声優さんが遊んでくれて、それが人気になったりもしました。NHKの場合、実写のプロデューサーがアニメのプロデューサーになることもありますし、アニメのセクションのすぐ近くに実写の制作チームがあります。また、実写の制作プロダクションとのお付き合いもありますから、実写とのコラボがしやすいんです。そういう利点を生かしたいと、普段から考えています。
――企画の選定基準を聞かせてください。
「面白くて、心に響くもの」というのは、おそらく民放でもNHKでも変わらないのでは、と思います。さらにそのとき、そのときの放送波にもよるし、枠にもよるし、タイミングにもよります。限られた枠を、すべて似かよった番組にするわけにもいきませんから、バランスも考えなくてはいけません。「時間をかけてじっくり制作したいので、企画は早く決めましょう」と相談することもあれば、逆に「いま来た企画だけど、これは今すぐやった方がいいです」という企画の出し方をする場合もあります。
アニメ番組の場合、あまりアップ・トゥ・デートな話題性は関係ないと思われるかもしれませんが、「もしドラ(もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら)」(2011年)は、「なるべく早く放送したほうがいい」という判断でした。