2014年秋アニメ中間レビュー!「四月は君の嘘」「SHIROBAKO」など、注目の5作品を紹介

2014年秋スタートの新作アニメは何と50作品以上。かなりの豊作にも思えるシーズンだが、早くもそろそろ放送開始から約2か月が経過しようとしている。今回は、そんな秋アニメの中から、いずれも異なる魅力を持つ5タイトルをアニメ専門ライターが中間レビューという形で紹介する。

ハイクオリティな演奏シーンが注目されている『四月は君の嘘』。『のだめカンタービレ』や『坂道のアポロン』など、音楽をテーマにした作品を送り出してきたノイタミナが新たな1ページを切り開いている。

アニメファンだけでなく業界内でも話題沸騰中の『SHIROBAKO』。意外と知られていない監督や制作進行などの仕事内容に加え、登場人物が実在のアニメ関係者をモデルとしている点も高い関心を集めている。

水樹奈々を筆頭に実力派声優陣が集結した『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』。キャストの豪華さにも関わらず、過酷な運命に翻弄されるシビアなストーリーが展開し、視聴者の度肝を抜いた。

前半がダンスアニメ、後半が実写パートという比較的珍しい構成の『トライブクルクル』。ダンス描写は本格的で、作画と3DCGが織り成す熱いムーブを感じ取ってほしい。

ゲームメーカー・セガの歴代ハードが美少女化した『Hi☆sCoool! セハガール』。誰もが知っている名作から現在稼働中の最新作まで、多数のゲームが登場しているコメディ。

以上5作品の中間レビューを下記に掲載した。ますます盛り上がりを見せる秋アニメたちをお見逃しなく。

四月は君の嘘 『四月は君の嘘』
トラウマを抱える元天才ピアニストの少年・有馬公生と、独創的な演奏で聴く者を魅了するバイオリニストの少女・宮園かをり。モノクロに染まっていた公生の心が、かをりとの出会いによってカラフルに彩られていく。かをりを象徴する舞い散る桜はもちろん、公生の頭から鮮血が流れるバイオレンスな描写も、彼の体にまだ色が残っていることの証明にほかならない。黒いメガネのテンプルが透けることで強調される青い瞳からも、次第に目が離せなくなる。

圧巻は2人でコンクールに出場する第4話だが、1人原画で話題となった第5話も胸に迫ってくる内容だ。ときに大胆なデフォルメを取り入れた表現は、かをりの演奏スタイルを彷彿させるほど。そんな華麗な仕上がりを見て、本編の風間先生のように怒り出す人はいないだろう。原作完結と同時に来春フィナーレを迎える『四月は君の嘘』をこれからも追いかけていきたい。

SHIROBAKO 『SHIROBAKO』
アニメ制作のほぼ全工程に携わる制作進行を中心に、監督や声優などさまざまな職種に焦点を当てている本作。印象に残ったのは、見せ場を作画にするか3DCGにするかでもめる第5話・第6話だ。自分のカットが3Dへ変更されたことに納得できないアニメーターの遠藤。ついに担当回を降りるとまで言い出した彼は、尊敬するベテランアニメーターが今は3Dの分野で活躍していることを知る。そして先達の忠告を素直に受け入れて現場に戻ろうと決める……どころか、その言葉がさらなる混乱を引き起こす。

『SHIROBAKO』が単なるお仕事紹介アニメに陥っていないのは、まさにこの点にある。先輩アニメーターの助言を聞いても動かなかった彼の心を変えたのは一体何だったのか。そこにスタッフの揺るぎない自信とプライドを感じ取ることができる。

クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』
何ひとつ不自由のない暮らしをしていたお姫様が、「マナ」と呼ばれる、魔法を使えないノーマだと暴かれたことで転落の道を歩んでいく。演出のショッキングさは今期アニメの中でも随一。身ぐるみを剥がされ、身体検査の屈辱を受け、僻地の離島に収監される描写は女囚ものを思わせるハードな出来栄えだ。変形人型兵器のライダーとしてノーマの少女たちとドラゴン狩りを繰り広げるアクションも鮮烈で、次は誰が犠牲になるのかわからないドキドキ感がストーリーを加速させる。

主人公のアンジュも一筋縄ではいかない性格の持ち主。他のノーマたちを人間扱いしない、もらったプレゼントを即ゴミ箱に捨てる、さらには次回予告で監督にツッコミを入れる始末。だが物語が進む内にアンジュにも変化が見え、水着回などバラエティに富んだエピソードが展開されている。秋作品の中でももっとも予想が付かない本作に要注目。

トライブクルクル 『トライブクルクル』
歴史記念館の鏡の前で日々ダンスに励む主人公のハネル。鏡はマジックミラーになっていて、部屋の中では1人の少女・カノンがダンスを覗き見している。そのシチュエーションだけでも魅力的だが、カノンはハネルのダンスを見ているうちに踊り出してしまう。鏡を隔ててシンクロする2人のダンス。いつの間にか日は沈み、マジックミラーは透け、今度はハネルが彼女の踊る姿を目撃することになる。

2人の立場が「クルクル」と逆転した瞬間、物語が動き出すという構成は実に鮮やかだ。オーディエンスの反応で勝敗が決まるダンスバトルがテーマであり、「見られること」を細やかに描いた点も面白い。観客を気にせず本能のおもむくままに踊るハネルと、背の高いことがコンプレックスで人の目を気にし過ぎるカノン。正反対の2人がどのように成長していくのだろうか。古今東西のアニメや映画のパロディ(ヒッチコック!)が盛り込まれるなど、自由な演出にも引き込まれてしまう。

Hi☆sCoool! セハガール 『Hi☆sCoool! セハガール』
美少女擬人化されたセガの歴代ハードが同社のゲームと夢の競演。看板キャラクターのソニックをはじめ、『バーチャファイター』や『スペースチャンネル5』などの人気キャラが制作当時のポリゴンで登場する姿には感動を禁じ得ない。画面を飛び交う多彩なパロディ、郷愁を誘うBGMと効果音、100文字オーバーの用語解説を2.5秒で読ませるアイキャッチ、センター先生の手に汗握る熱演などなど、詰め込み過ぎなところも往年のセガ感があふれ出ている。

そんなタッチに思わず頬がゆるむものの、一抹の寂しさを覚えてしまうのは我々が知ってしまっているからだ。セガはすでにハード事業から撤退し、本社も本作の舞台・大鳥居から品川へ移転したことを。そう、これは夢。まさに夢なんだ。そして「知的創造」「あふれる英知」「若い力」と中年オタの失ったモノが次々と連呼されるエンディング・テーマで現実に引き戻されてしまう。もはや「宇宙」と書いて「大空」と読めるほどの若さを持たないおれは一体どうすればいいんだ……。そんな不安はさて置いて、今はただ至福の15分間を満喫したい。

(文:高橋克則)